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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語” |
第11回:ついに登場シリコンオーディオプレーヤーの決定打!!
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■ MP3と私
愛用の初期型NOMAD。ボディはマグネシウム合金で、しっかりしている |
これだけの量がライブラリ化されていると、一日分のBGMは一度も手を触れることなく万全。ランダム機能を使って並び替えれば、予想外の曲が飛び出してきて、聴き馴染んだ曲でも新鮮に感じるから不思議だ。
またシリコンオーディオプレーヤーも、初代「Creative NOMAD」を未だに愛用し続けている。その理由としては、以下の4点といったところになるだろう。
- 音飛びがない
- 音がいい
- デザインがいい
- ボイスレコーダにもなる
シリコンオーディオプレイヤーの登場は、自分の生活の中に大きな変化をもたらした。ポータブルCDプレーヤーでは、いくら音飛びガードを使っても音飛びは完全にゼロにはならないのは周知の通り。しまいには駅の階段や歩道の段差にまで気を使い、まるで能楽師のような摺り足で町を歩いたりしている自分を発見してマリアナ海溝より深く落ち込んだりもしたが、MP3プレーヤーの登場でそんなオレ、グッバイ! って感じだったのである。
■ そして、「MPIO」登場
NOMADも悪くないのだが、さすがにパラレルポートによる転送は今どき遅い。またスマートメディアが32MB以上使えないのもイタイ。アーキテクチャ的に1世代も2世代も前の感じだ。そんなわけでずいぶん色々他の機種への買い換えも検討したが、この手のプレーヤーはどれもデザイン的にイマイチで、知らない人が見たらどう考えても1,000円以上するようなものには見えないチャチな作りでガックシ、という局面も度々あった。
しかし、久々に登場したシリコンオーディオプーイヤーの「MPIO(マピオ)」は、AV Watchのニュース記事でまずはそのルックスに惚れ、スペックに惚れた。出たらすぐ買おうと思ったものの、あいにく発売時期に筆者は日本におらず、帰ってきたらばかなりの品薄で入手困難。めっちゃ売れてるんですかそれはヤバイですな。
そこでメーカーさんにお願いしてサンプル機を貸して貰うことにした。さっそくご紹介しよう。
■ 高級感あふれるデザイン
曲面と直線を巧く使ったデザイン。派手さもないが、地味でもない |
まるで20年前のAMラジオみたいなのか、もしくはナマズのような形状で見るなり思わずコメカミ揉んじゃうようなデザインが多いMP3プレーヤーの中では、秀逸といえる。また四隅に黒くやや弾性のある素材を使って、丈夫そうなイメージの演出にも成功している。
さらに、よく使うプレイボタンと、各種設定をコントロールするサムスティックがあるサイドにも同様の弾性素材が使われている。
その反対側に位置するUSBコネクタとDSC(オプションで発売予定のデジタルカメラユニット用)という拡張端子のカバーは、透明なプラスティックゴム製。同じ面にあるスマートメディアのスロットは、蓋などでカバーされるわけではないので、ゴミやホコリなどの侵入には気を付けなければならない。
やりようがなかった、と言われればそれまでだが、コネクタ類と違ってメディアスロットは深いので、ゴミなどが入るとやっかいだ。ポケットの中というのは案外ホコリが溜まるもので、持ち歩くときはセロテープでも貼ってやろうかとも考えさせる。
本体上面には、ヘッドホン端子とホールドスイッチ、ボリュームボタンがある。全体的にボタンのタッチはやや硬めの、クキクキした感じ。ぐらつきは全くなく、堅牢性を感じさせる。
色と質感を変えることで、シンメトリックな形でも操作面がすぐにわかる | プラスティック製カバーは、しっかり穴に埋め込んで固定していないと、ちぎれそうだ | 頻繁に使うボリュームはヘッドホンジャックと同じ面にあり、イメージ的にわかりやすい |
■ 実際の音は?
やっぱり一番気になるのは、その音質だ。特にMP3プレーヤーは今まで音質が悪いとされているので、しっかりチェックしたい。
付属のヘッドホンは、インナーイヤータイプのもので、見た感じではなかなかよさそうだ | イヤーパッドは電気店などで300円程度で売られているので、インナーイヤー型に不満のある人は試してみるのも面白いだろう |
サンプルとして何曲か転送して聴いてみたところ(転送に関しては後述)、付属のヘッドホンは低音域が痩せて、中音域に妙なピークがあり、ちょっとイヤなクセのある感じだ。
ちょっとそのままでは辛いので、試しにスポンジ状のイヤーパッドを装着してみた。すると密閉度が増すせいかスポンジで吸音されるせいかは定かではないが、低音域が持ち上がって全体的なバランスが安定し、妙なクセがだいぶ軽減された。こういう何百円のパーツで遊べるから、オーディオは面白いですな。
また、MPIOには音質補正のために、イコライザーが内蔵されている。[ノーマル]、[ポップ]、[ロック]、[クラシック]、[ユーザー]、[3Dサウンド]の6種だ。それぞれの効果は筆者が聴いた感じだけで申し訳ないが、
[ポップ]:高音域アップ+低音域ややアップ
[ロック]:高音域ややアップ+低音域アップ
[クラシック]:高音域ややアップ
といった具合。[ユーザー]モードでは、高音域と低音域を10段階でアップできる。アップできるだけで、逆にカットはできない。曲やヘッドホンによっては、高音を少しカットしたい局面もあると思うが、その辺はポータブルオーディオということで辛抱しよう。
[3Dサウンド]に関しては、音が逆相っぽくなって、中心がすっぽり抜けてしまう感じ。なんのために付いてんのか、ってかそんなことして面白いのか? 的な謎機能と言えよう。
と、スペックだけ見ると機能的にはイイ感じだが、実際にイコライジングすると、音がやや歪みっぽくなってしまう。特に低域重視のロックモードでは、本当にロックっぽい曲ほど歪みが激しいという結果になる。どうもアンプ部のヘッドルームが低いようだ。なるべくノーマルモードで通すか、ユーザーモードでデリケートに補正してやって、あとはヘッドホンを換えるなどして音質を調整するのがベストのようだ。
購入した「SONY MDR-Q33SL」。街でもよく見かけるし、イメージ広告などにさりげなく使われていたりする |
そこで近くの電気店で今流行っているイヤークリップ式のヘッドホンを買ってきた。MPIOのノーマルモードで聴く組み合わせとしては、悪くないようだ。これでNOMADと聴き比べながらMPIOをしばらく使ってみたが、NOMADの比較的素直で内向的な音に比較して、どちらかというと外側に向いた、やや派手な音になる傾向があるように感じた。
音の明瞭度は上がった分、ハードな曲での歪みっぽさに気が付く、といった具合。ヘヴィメタルやハードコアパンクのようなディストーションギターで埋め尽くされたサウンドの愛好者で、低音をガンガンに出したい人にはちょっとキツイプレーヤーかもしれない。その反面、ボーカル中心の今風の曲や、AOR、ニューエイジ、ワールドミュージック、テクノなど、音の隙間の多い曲では、非常に明瞭なサウンドが得られ、ロックモードにしても、歪みはほとんど気にならない。
また、MP3プレーヤーでよく気になることに、曲間の隙間がある。例えば音楽的には連続しているもののファイルは分かれているメドレーのような部分では、2秒ほど曲間が空いてしまって、その間にすっかり高まったテンションが素に帰ってしまう。しかしMPIOではまったく間隔が無いわけではないが、非常に短く抑えている。ぷつっと切れたな、ぐらいの感覚なので、そこそこ音楽の持つテンションを維持して聴くことができるぐらいのレベルになっている。
■ 卓越したスペック
ではMPIOのスペックはどうだろうか。使い勝手を中心にチェックしてみた。
●電源
まず電源はアルカリ単三電池1本で、連続18時間再生というのがカタログスペックだ。実際の連続再生時間を計るのは「アイテム道」の藤原氏に任せておいて(笑)、筆者が普段の感覚で一日2~3時間使ったところ、1週間ぐらい電池が持ったので、だいたいスペックどおりであると言えよう。
またMPIOのFAQのページにはニッケル水素充電池では動作しないとあるが筆者が実験したところ、ニッケル水素充電池でも動作した。ただもともとニッケル水素充電池は、フル充電状態でもアルカリ電池より電圧が低いので、ハードウエア的な誤動作の心配があるということだろう。それに、このぐらいの電池の持ちであれば、アルカリ電池でもそんなにコストパフォーマンスは悪くないと思う。
●ファイル転送
シンプルなMPIO Manager。MP3エンコード機能などはない | やはりUSB転送は早い。アルバム1枚を2分程度で転送する |
ファイル転送には付属のUSBケーブルで、専用転送アプリケーションを使って行なう。操作は簡単で、上のリストから転送したい曲を選んで、下矢印ボタンを押すだけ。
転送速度は平均して4.5Mbpsぐらいで、5MBぐらいの曲なら10秒足らずといったところ。内蔵メモリとスマートメディアでの転送速度差はない。またファイルの削除は、5MB程度の曲で1秒足らずだ。
●メモリ
内蔵に64MB、その他に128MBまでのスマートメディアが使用できる。合計192MBだと、MP3の128kbpsエンコードで、アルバム3~4枚ぐらい余裕で入る計算になる。この余裕が音楽生活に潤いをもたらすのである。
例えばあなたは外出の行きと帰りで、気分が違わないだろうか。筆者がインプレスに打ち合わせに行くときは「やるぜやるぜオレはやってやる」な気合い系音楽が望ましいし、帰りは「やられたやられたオジサン一本とられちゃったなたはは」な癒やし系音楽が必要になる。そんな様々なケースに対応できるような組み合わせで、アルバム数枚分を入れておきたい。
それには従来のMP3プレーヤーにありがちなアルバム1枚程度の容量では全然物足りないし、そのプアなメモリがMDプレーヤーに対する明確なアドバンテージが得られなかった理由の1つであったわけだ。それが一気に解消された。
●ディスプレイ
文字は大きめで、見やすい液晶ディスプレイ |
丸いディスプレイのうち、フレキシブルに文字が表示できるエリアは3行分である。停止しているときはファイルのリストを表示し、再生中はそれぞれの行に曲のトータル時間、曲名/アーディスト名、ファイルのbps/曲の現在時間が表示される。
どれかボタンを押したときには、3秒間ブルーのELバックライトが点灯するので、暗い場所での操作も問題ない。ちなみに、画面上部にあるレベル表示のように見えるインジケータは、実際にはレベルメータではなく“再生してまっせ風”のイメージとして動くだけである。
曲名やアーティスト名は、日本語の表示が可能。これは内蔵メモリ内に日本語フォントをあらかじめロードさせておくことで実現している。この方式ならその国のフォントを入れることで、現地語の表示が可能だ。実際にMPIOのメニュー表示は、英語、韓国語、日本語、中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語から選べるようになっている。それぞれの国で販売される場合は、現地語のフォントがロードできるようになっているのであろう。
●操作性
便利なサムスティック。これにより、メニューが多少多くても楽に操作できる |
メニューなどの操作性で抜群の威力を発揮するのが、サムスティックと呼ばれる2方向の小さなジョイスティック状のコントローラだ。
垂直に押し込んでメニューに入り、上下に傾けてメニューのスクロールやパラメータを上下させる。また再生中は、ちょっと傾けて曲のスキップ、傾けたままホールドすることで曲のキュー/レビューが可能なのは、便利だ。
●ボイスレコーダー機能
日本ではあんまりボイスレコーダを使っている人を見かけないが、筆者の場合は取材などで録音する機会は結構多いので、ないと困る機能の1つである。欧米ではボイスレコーダーはよく使われており、PDAやMP3プレイヤーではこの機能は重要なセールスポイントであるという。
初期NOMADのボイスレコーダー機能は誤動作が多く、録音モードになかなか入らなかったり、エラーして前の録音の途中から上書きして録音されたりと、結構ひどい目にあいながらも我慢して使ってきた。
一方MPIOの録音機能は、スパッと録音に入り、誤動作もない。音質はそう良いわけではないが、人の声をメモするには十分で、これなら安心して使える感じだ。また、サムスティックによる録音のサーチができるため、長い録音でも必要なところをすぐに探すことができる。ただボディを手で持っていると、そのハンドノイズが入りやすいので、机の上などに置いて使うのがいいだろう。
内部メモリ内に4時間録音できるので、皆さんも会議などで活用してみてはどうだろうか。聞き逃したところを確認したり、「言った」、「言わない」の水掛け論を一気に解決できる。
■ ユーザー=デフォルトで悪い人なの?
コピーガードを外してからエンコードし、転送しなければならない |
MPIOではID機能付きスマートメディアの使用を推奨している。そこで試しにデジタルカメラで使っていたID無しスマートメディア64MBを使ってみたが、これも特に問題なく使用できた。でもこれってイケナイことですか? 筆者は自分のお金で買ったCDを聴くだけでそれを使って悪いことするつもりは毛頭ないんですが、それでもダメ? ダメなの? なーんか最近デジタル著作権関係はミョーに不便でいやーん感激増って感じですな。
てかどこか上の方で発生する利害のためになんでリスナーが余計な出資しなきゃいけないのか納得いかない感じですな。そんなにデジタルコピーがイヤならレコード会社は今すぐID付きカードを無料配布せよって感じですな。
またMP3ではなくWMAにエンコードする際は、Windows Media Playerの著作権管理機能を外す必要がある点に注意。このあたりも別にMPIOが悪いわけじゃなくて、そういう仕組み自体がなーんか「ユーザー=デフォルトで悪い人」みたいな決めつけ方がされてて、あっ、あたしのこと疑ってる、ひどいわひどいわ、って女の子に即嫌われちゃいそうな態度でいいんでしょうか、とか思ってしまう。
そりゃ著作権は尊重しなければならないし、かく言う筆者もプロとして著作権者側の一員なのだが、正しいユーザーにも悪人にも均等に不自由にさせるっていうやり方って、なーんか頭悪い人が考えた感じが……。
■ 総論
現在MP3プレーヤーの製造で世界的なリーダーは、韓国である。現在日本で販売されているMP3プレーヤーの大半は、韓国メーカーのOEMであるという事実がある。そしてこのMPIOも、韓国のDigitalWayによるものだ。
だいたいにおいてシリコンオーディオ、特にMP3に関しては、著作権の問題から大手家電メーカーは腰が引けてるところがある。特に自社系列にレコード会社を持つようなところは手を出したくてもおおっぴらには参入できない、腫れ物に触るような状況であろう。しかしよってたかってデジタルオーディオをいじくり回したあげく、ややこしくてめんどくさいものに仕立ててしまった償いを今ここで支払っているのだ、と言えなくもない。
全体的に見て、MPIOはシリコンオーディオプレーヤーの1つの完成型であると言っていいだろう。デザイン、音質、操作性の面で、久々に欲しいと思わせるプレーヤーの登場である。従来のMP3プレーヤーの持つ余計な部分をそぎ落とし、その代わり潤沢なメモリ環境を搭載したシンプルな作りが、MP3の普及期に求められるスペックだったのだ。
こういったパーフェクトな製品が国内大手家電メーカーからでなく、韓国の1メーカーが製造し、アドテックのようなパソコン系パーツメーカーの流通に乗ってやってくるところに、新しい時代の流れを感じないわけにはいかない。
このMPIO、売れ行きも上々のようで、既に初回出荷分は完売、次期出荷は5月24日頃(おお!明日じゃねえか!)を予定しているという。ちなみに筆者もゲット予定なので、これを読んで買いに走る人は少なくとも1個は残しておいてくれ。たのむ。
□アドテックのホームページ
http://www.adtec.co.jp/
□「MPIO」の製品情報
http://www.adtec.co.jp/CGI/parts/parts_detail.cgi?product_id=AD%2dDMG64
□関連記事
【3月22日】アドテック、重量64gで64MBメモリ内蔵携帯メモリプレーヤー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010322/adtec.htm
(2001年5月23日)
= 小寺信良 = | 無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。 |
[Reported by 小寺信良]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp