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第18回:ソニーのリベンジ!! 5.1chシステム「SA-PSD5」
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筆者の中でもそのことがなんとなく引っかかっており、新モデルが出たらぜひ聴いてみたいと思っていたのだが、今回今年4月に発売になったソニーの普及タイプ サラウンドスピーカーシステム「SA-PSD5」をようやくお借りすることができた。さっそく聴いてみることにしよう。
前回の評価を蒸し返すようで悪いのだが、同価格帯の前モデル「HT-K215」はどちらかというとAVアンプ中心の製品構成で、スピーカの力不足が目立ってしまった製品であったように思う。したがって音質的にもシステムを買ってきてはい完成、という形ではなかった。
それに対して今回のモデル「SA-PSD5」は、あくまでもスピーカ主体で勝負、といった様相を呈している。
製品形態として、AVアンプ部分はサブウーファと一体型になっており、スタイルとしてはオンキヨーの「GXW-5.1」と同様だ。実はこの「GXW-5.1」は、前回の評価でベストバイに選出しており、筆者の独断で当Electric Zooma!のリファレンス システムということになっているのである。GXW-5.1はZooma!の3回目と、こないだの「魁! 藤原流アイテム道」でも扱っているので、興味のある方はご覧いただきたい。
今回は図らずも、前回チャンピオンの「GXW-5.1」と、前回の雪辱を晴らすべく送り込まれた新たなる刺客「SA-PSD5」との一騎打ちという形になった。
■ まずはスペックから
ではまず「SA-PSD5」のスペックを見てみよう。
●サテライトスピーカ
サテライトスピーカはすべて同型で、サイズはこのクラスのものとしては平均的。GXW-5.1のものよりは若干大きめである。背面にスピーカ端子とスタンド取り付け用のネジ穴がある。エンクロージャは樹脂製で、軽量だ。
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●サブウーファ
サブウーファ部は、デコーダとアンプが一体となっているので、サイズは厳密にはエンクロージャのサイズとは言えない。またエンクロージャの材質もその構成から、木製部分と金属部分が混在している。
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●内蔵アンプ
SONY SA-PSD5 | ONKYO GXW-5.1 |
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入力はデジタル(OPTICAL)2系統、アナログ2系統 | 光×1系統、同軸×1系統、アナログ×1系統の入力が可能 |
また定格出力はSA-PSD5が50W×5+80W、GXW-5.1が15W×5+25Wと圧倒的な差がある。
SA-PSD5のアンプの操作部は、上面手前の左側から電源スイッチ、入力切り替えのFUNCTIONボタン、オーディオモードを切り替えるSOUNDFIELDボタンがある。
さらにステータス表示部分を挟んで右側にボリュームとミュートボタンがシンメトリックに配置されている。
SA-PSD5の本体操作は、シンプルながら日常的な使用には十分 |
SONY SA-PSD5 | ONKYO GXW-5.1 | ||
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入力 | OPTICAL×2 | OPTICAL×1、COAXIAL×1 | |
アナログ×2 | アナログ×1 | 定格出力 | サテライト | 50W | 15W |
サブウーファ | 80W | 25W | |
デコーダ | ドルビーデジタル、dts | ドルビーデジタル、dts、ドルビープロロジック II |
●リスニングモード
AVアンプの持つリスニングモードは、最も各メーカーの音響的な思想や特色、そして技術力が発揮できる部分である。「SA-PSD5」で特徴的なのは、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント内にある映画用ミキシングスタジオをシミュレーションしたという、3種類のCinema Studioモードだ。
SONY SA-PSD5 | ONKYO GXW-5.1 |
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プレステ2もコントロール可能なリモコン |
全体的なカラーリングは、「SA-PSD5ではプレイステーション2と併せやすい黒を採用した」、とある。もっともGXW-5.1も黒なのだが……。しかしSA-PSD5のアドバンテージとして、付属のリモコンがなんとプレイステーション2でのDVD操作に対応している。
もちろんプレイステーション2側にDVDリモートコントローラキットのIRレシーバーを取り付ける必要があるわけだが、それでもDVDを見るためのセットとしては一体感がある。
■ まずは音楽ソースから
次に実際の音出しである。前回のリスニングはフローリング床とコンクリート壁のライブな部屋で行なったが、今回はちょっと趣向を変えて、畳敷きの和室という比較的デッドな部屋に持ち込んでみた。フロントのスピーカ位置は高さ約70cm、スピーカ間隔は約60cmである。リスニングポジションまでの距離は1.8mだ。サブウーファはセンターで、畳の床に直起き、リアスピーカは高さ70cmでリスニングポジションの両サイド約80cmの距離から鳴るようにセッティングした。
プレーヤーはプレイステーション2も考えたが、前回同様「Pionner DV-535」を使用しdtsを中心に、OPTICAL出力を取り替えるという方法で比較している。
最初にまず音楽から聴いてみた。試聴したソースは、dtsが'99年に配布した5.1ch Demo CDから、まずHolstの「惑星:Mars」。一聴してわかるのは、低音部の鳴りの良さだ。低周波数方向への伸びも無理なく綺麗で、安定感がある。設定はすべて0dBにしておいたが、ちょっとオーバーのような気がしたので、-3dBほど下げて丁度良くなった。
また多少高音部が強すぎる気がするが、このあたりのきらびやかさはソニーらしい特性だ。
続いてBoys II Menの「Yesterday」。お馴染みのビートルズナンバーをアカペラで仕上げている。各チャンネルに1パートずつが割り振ってあるという、まあデモトラックにありがちなあざとい演出であるが、サラウンド感は非常に自然に聞こえる。高音部が上がり気味の特性ということも手伝って、破擦音や息を吸い込むノイズなどが立ち気味で、ボーカルの艶やかさ、リアリティが全面に押し出され、聴いていて気持ちがいい。
次に、もはやウォールオブサウンド唯一の生き証人とも言える、Brian Wilsonの「Your Imagination」。彼のサウンドの特徴として、声質の通りが悪いのも手伝ってボーカルがエコーの奥に沈んで聞こえるのだが、SA-PSD5で聴く限りではエコーの分離感がよく、しっかりボーカルの輪郭がわかる感じだ。この曲に関しては、包み込むサラウンド感よりも、前後の立体感が綺麗に表現できている。
続いての試聴は、やはりdtsが今年配布したデモDVDから、Steely Danの「Cousin Dupree」のスタジオライブトラック。こういった分離のいいAORスタイルの音を聴くと、サブウーファのカバーレンジが丁度そこにハマルのか、常に鳴り続けているバスドラとベースが別物というか、取って付けたような印象になる。あっここだけコレ(サブウーファ)で鳴ってますネ、というのがわかる感じなのだ。
全体的な印象として、前モデルのHT-K215では感じられなかった、いわゆるソニーサウンドの典型、低音がドカーンと鳴って高音がチャリチャリーン、みたいな特性を感じた。音楽モノのリスニングに関しては、このサウンドが好きかどうかで好みが分かれるところだろう。
同じソースをGXW-5.1でも聴いてみた。聞き比べてみると、この2つの製品の音は傾向がよく似ていることがわかる。違いとしてはGXW-5.1のほうが音に癖がなく、非常に素直な特性を持っているのに対して、SA-PSD5は中音域の一部に少し山があるようで、ボーカルパートあたりが少し鼻にかかったような音に聞こえる。
■ 続いて映画
音楽ソースはこれぐらいにして、映画ソースで聴いてみよう。
まずリドリー・スコット監督「グラディエーター」、dtsによるリスニングである。冒頭の先頭シーンでは、地鳴りのような低音の効きが決め手になっている。音楽ソースでは大げさに感じたサブウーファの鳴りが、このようなシーンでは全く気にならない。というかリスナーの好みで、ソースに応じてこまめに上げ下げしていけばいいのではないかと思う。爆発音から金属のきしみまで、バランス良くなっている。また特筆すべきは、セリフの明瞭感だ。激しい争乱のSEの中でも、はっきり聞き取ることができる。
続いて試聴したのは、昨年夏に公開されて話題となったCGアニメーション大作「Titan A.E.」、これもdtsによるリスニングである。オーディオ的な目玉は、やはりラスト前30分のアイスクリスタルフィールドでの巨大な氷のきしみである。このシーンのおもしろさは、CGの作り物である氷の固まりを、SEのうまさで本物に変えてしまうマジックにあると思う。
SA-PSD5で聴くとセリフを含めた低域から高域にかけてのバランスは申し分ないものの、あともう一息もっと低い重低音方向に伸びが欲しかった。サブウーファのレベルを上げても、ちょっと氷の質量が2割ほど軽く聞こえてしまう感じなのだ。
これも同じくGXW-5.1で同じソースを試聴してみた。前回聴いたときには、ONKYO独自のJ'DRIVE方式で、低音の切れの良さにシビレタものだが、SA-PSD5もこれと同じような感じに聞こえた。もしかしたら今回はデッドな部屋でのリスニングであるため、あまり差が出なかったのかもしれない。また映画での試聴では、音楽の時に感じた中音域の癖の違いはほとんど感じられなかった。
■ 総評
SA-PSD5では、人間の声にフォーカスを当てた作りになっているような印象を受けた。音楽モノを聴くときには若干そのあたりが気になるところだが、他のシステムと聴き比べない限りはほとんど気が付かないレベルであろう。映画に関しては、セリフの明瞭度が上がり、またサラウンド感も非常に自然で、オーディオの状態を気にせず、内容に集中できる。あくまでもシアターサウンドということにこだわった製品のように筆者は思う。
オーディオ的に唯一気になるところといえば、やはりサブウーファが効き過ぎる傾向がある点だ。このあたりは各ユーザーがこまめに設定を変えることでフォローしていただきたい。
GXW-5.1は、フラットな特性で非常に筆者は好きなのであるが、あまりフラット過ぎるのも、人によってはつまらなく聞こえてしまうものだ。そのあたりSA-PSD5はソニーらしい上手いくすぐりというか、「いい音」に聞こえる音を演出して作り込んでいくのだ、という姿勢が伺える。このあたりはなんとなくそれぞれのメーカーの個性を反映しているようで面白い。
ディスプレイは見辛くはないが、角度がいまひとつ |
一方操作系で気になるところは、いくつかあった。まずサブウーファ上面にステータス表示があるのはいかがなものか。デザイン的に綺麗にまとまっており、表示もはっきりしているのだが、正面からだと角度的に見えない。せっかくリモコンで操作できても、ステータスの確認のためにわざわざそこまでトコトコ歩いて見に行かなければならないってのはどーか。例えばリスニングモードなどは、今どれで鳴っているのか、正確に確認したいはずだと思うのだが。
それから入力を切り替えた際に、サブウーファがボコンと鳴るのはどうだろう。どうもオーディオモードが切り替わるときにも鳴るようで、例えばDVDディスクをイジェクトした時にもボコンと鳴る。別にこれが原因でサブウーファが飛ぶこともないのだろうが、ちょっとオーディオ機器としてはイヤな感じがする。
製品としては、今回のSA-PSD5は操作性も音も、前作のHT-K215に比べるともう全然別物である。オープン価格ではあるが、市場価格は3万円台半ばで、HT-K215よりも2,000円ほど高い程度のようである。同じぐらいの価格であれば、もうSA-PSD5で決まりだろう。
しかしこれでサラウンドに入門する人は幸せだと思う。筆者なんかよお、全部で一体いくらかかって(以下略)。廉価システムでこのぐらいの音になっちゃうと、次のランクを考えたときに、一体どこまで行かなきゃならないのか、もう現時点では想像も付かない。実は比較テストをする前にしばらくテレビからの音声をアナログで繋いで、日常的に聴いていたのだが、テストが終わって片づけてしまうと、まあテレビの音のしょぼいことしょぼいこと。家族からも「えーこれ片づけちゃうのぉー」とブーイングの嵐。一度知った贅沢は、後戻りできないのである。
そろそろFF Xも来ることだし、プレイステーション2のため、そして日常的に使うためにも、サラウンドシステムそろそろ1本行っとく? という時代なのであるなぁ。
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Models/New/SA-PSD5_J_1/index.html
□関連記事
【3月14日】小寺信良のElectric Zooma! 第2回「3万円前後の低価格5.1chシステム聴き比べ」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010314/zooma02.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010315/sony01.htm
【6月26日】魁! アイテム道 第19回「このお値段でプロロジック II対応! オンキヨー GXW5.1」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010626/saki19.htm
(2001年7月11日)
= 小寺信良 = | 無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。 |
[Reported by 小寺信良]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp