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Net MD対応のサブウーファ付きCD/MDシステム
松下電器「SC-SV1」
発売時期/2月10日 価格/オープンプライス(店頭予想価格:7万円弱)

■ 主な機能

 CDプレーヤー、MDレコーダ、AM/FMチューナ、アンプなどで構成した本体部と、フロントスピーカー×2、サブウーファを組み合わせたオーディオシステム。本体部にUSB端子を備えており、PC接続時にはUSBオーディオデバイスとして使用できる。さらにMDへの高速転送規格「Net MD」にも対応する。

 PCとの接続性や小ぶりなフロントスピーカーから、デスクトップでのニアフィールド再生が主な用途と考えられる。もっとも、アンプの出力が最大26W(フロント5W×2ch、サブウーファ16W)しかないため、必然的に小音量での聴取が中心になるだろう。

本体部はCD、MD、AM/FMチューナ、アンプを内蔵。横置きも可能で、横置き時専用のゴム足が付属する。また、液晶パネルは青く光り、文字が浮かび上がって見えるのが美しい

 本体部の前面パネルには、同社が好んで使うミラー素材を採用。主な操作ボタンは前面パネルに集められており、縦置き、横置きの両方が可能だ。

 本体上部の液晶ディスプレイは、ブルーのバックに文字が浮き上がって見えるという凝ったもので、タイトル名やトラック名といった文字情報のほか、簡単なアニメーションも表示する。ただし、近距離での視認性は良いが、2mくらい離れると多少見づらい。このことからも、本機がデスクトップ再生に用途を合わせていることがうかがえる。

 またディスプレイの表示方向は、縦置き、横置きに合わせて自動的に回転する。表示文字種は英数字と半角カタカナのみで、ひらがなや漢字の表示は行なえない。

左からCD再生中、MD再生中、CDからMDへコピー中の各表示。離れて見ると多少見づらい。各機能を液晶パネルで説明する「デモモード」もある

CDトレイの開閉ムービー

【MPEG-1】
sa_sv1.mpg(約383KB)
 内蔵するCDプレーヤーは、音楽CDのほかCD-R/RWの再生も可能。なお、MP3を記録したCD-Rを入れて見たが、再生できなかった。CDの回転音は静かで、視聴中に気になることはなかった。

 CDプレーヤーのトレイも凝っている。オープンボタンを押すと液晶パネルが奥へ引っ込み、トランスルーセントのトレイがおもむろに出現するというもの。一連の動作は滑らかで、初めて見る人にとっては、かなりのインパクトがある。

 MDレコーダ部はMDLPに対応し、LP2、LP4での録音が可能。グループ再生機能もサポートしている。また、CDからMDへは最大4倍速でコピーでき、任意の曲を好きな順番で録音できるプログラム録音も行なえる。

 CD、MDとも再生機能は同じで、プログラム(最大24曲)、ランダム、1ソング、リピートと、一般的な機能を網羅している。リピートはプログラムリピート、ランダムリピート、1ソングリピートを選択可能。

 MD編集機能も、イレース、ムーブ、コンバイン、ディバイドなど、一通りの機能がそろっている。ディスク名やトラック名の入力はリモコンで行なうが、最近のオーディオシステムの例に漏れず、携帯電話風の入力方式を採用している。文字ボタンとカーソル移動ボタンが若干離れているのと、ボタンが小さめなのが気になるが、本機の場合、MDへの入力作業はPCからでも行なえるので、とりたてて気にならもないだろう。

本体前面の操作パネル。USB端子は前面にある 本体背面の入出力部。音声入力はアナログ1系統とポータブルMDなどを接続するP-MD端子を搭載。スピーカー端子はクリップ式なので、スピーカーの交換も可能

 チューナはAMとFM、1~3chのテレビを受信できる。AM用のループアンテナと、FM用の簡易アンテナが付属。また、AM/FM放送をMDに録音するときは、数秒前から録音する「TURN BACK」、5分おきにトラックマークをつける「TIME MARK」、TURN BACKとTIME MARKを併用する「TURN/TIME」が選択できる。録音中にトラックマークを自由につけられる「MANUAL」も選べる。

 また、タイマーを内蔵しており、指定した時刻にラジオ放送をMDへ録音する「留守録タイマー」が使用できる。LP4なら320分録音できる(80分ディスク時)ので、音質を気にしないAMラジオのエアチェックなどに威力を発揮する。なお、再生のみのタイマー機能には「おやすみタイマー」と「おめざめタイマー」を搭載している。

 念のため確認してみたが、チューナからMDへ録音したファイルをPCにチェックインすることは不可能だった。これはアナログ入力端子からの録音も同じで、PCへチェックインできるのは、PCからチェックアウトした楽曲のみとなる。

トラック名入力の画面。漢字やひらがなの入力は不可能 3バンドのEQも搭載。各バンドで±4段階の補正が行なえる FMラジオ放送を受信中。電波の受信強度は表示されない

 その他の特徴的な機能としては、3バンドのマニュアルEQがある。BASS、MID、TREBLEをそれぞれ±4段階で調節できる。さすがに、微妙な調整までは行なえないものの、「もう少し低音が欲しい」といったときに便利だ。調整画面はグラフで視認できる。

 また、「HEAVY」、「NIGHT」、「WIDE」といった3種類のプリセットEQも搭載している。マニュアルによると、HEAVYが「ロックなどパンチをきかせるとき」、NIGHTが「夜間など小さな音量で聞くとき」、WIDEが「音に広がりを出すとき」に向いているとある。

 フロントスピーカーは密閉式で、65mm口径のフルレンジユニットを採用している。フロントバッフルは樹脂製のミラー素材。エンクロージャも樹脂製だ。スピーカー自体はかなり軽く、スタンド込みで1.2kgしかない。ただしスタンドは金属製で、重量感は高い。また、スタンドは取り外すことができ、スピーカー単体での壁掛けも可能だ。

フロントスピーカーは65mm口径のフルレンジユニットを採用。エンクロージャ、フロントバッフルは樹脂製

 付属のサブウーファは、80mm径ユニットを使用したバスレフ型。アンプを内蔵しないパッシブタイプで、スピーカーケーブルは本体部に接続する。バスレフポートは前面下と背面上の2箇所に配置。ユニットは右側面下部に設置されている。

 本体部より少し奥行きが短いが、高さは同じなので、並べて使うことを想定しているようだ。ただし、直出しになっているスピーカーケーブルが長いため、本体部をテーブルの上に、サブウーファを足元に、といった設置も可能になる。

 なお、フロントスピーカー、サブウーファともスピーカーケーブルは直出しで、ケーブル交換は不可能。ゼネラルオーディオという製品の性格上、ケーブルを変えたいというユーザーは、それほど多くはないと想定しているのだろう。

サブウーファはバスレフ型。ポートは前面と背面の2箇所にある。ユニットの口径は80mm。スピーカーケーブルは平行型のものが直出しになっている


■ 操作性と音質

付属のリモコン。ボタンは小さいが押しやすい

 本体前面の操作パネルには、再生/一時停止など限られた数のボタンしかない。そのため、操作の多くはリモコンに頼ることになる。CD挿入後に比較的すぐ使う、曲送りや曲戻しボタンすら本体にないのがつらい。

 メニュー体系はミニコンポなどで良く見られる、各ファンクションへ切り換えた後、各メニューの階層へと移行するタイプ。表示される文字はすべて英数字で、このあたりも一般的なミニコンポと大差ない。メニューの反応はおおむね素早く、ストレスなく使用できるレベルだ。ただし、USBオーディオやNet MDといったPC関連のファンクションに切り換えると、PCがSC-SV1を認識するまで1~2秒待たされることがある。

 リモコンも普通のミニコンポと同じ雰囲気。テンキーを兼ねた文字入力部以外の刻印は、すべて英数字となっている。ボタンサイズは小さめだが、特に押しにくいと感じたことはなかった。

 CDとMD(SP、LP2)でテクノやジャズを聞いてみたが、小音量だと密度とスピード感のある音が聞けた。レンジは狭いものの、中高音は滑らかだ。ただし、サブウーファが期待するほど鳴ってくれず、全体的に音調は軽い。サブウーファの再生周波数帯域は53Hz~3kHz。また、音量を上げていくと、徐々に荒さが目立つようになる。

 小音量でのまとまりの良さを考えると、やはり本機はデスクトップ用のシステムといえる。なお、本機のスピーカーで聴くMDのSPとLP2の差は、ほとんどわからなかった。確かに若干くぐもった感じになったり、分離感が薄くなることがあったが、BGMとして聴くならLP2でも問題ないだろう。


■ BeatJam

 Net MD機能は、付属の「BeatJam」から使用する。これは、株式会社ジャストシステムが販売する音楽統合ソフト「BeatJam XX-TREM」のSC-SV1専用バージョンで、XX-TREMにはないNet MD機能が付いたもの。見た目の雰囲気や操作感などはXX-TREMを踏襲しており、BeatJamシリーズのユーザーならとっつきやすいはずだ。

 ただし、CD作成機能やイコライザなど、省かれた機能も多い。そのため、現行ユーザーなら、どちらかというとATRAC3とNet MDに特化した特別バージョンという印象を受けるかも知れない。デコードは、ATRAC3(OpenMGファイル)の他にMP3とWAVEの再生が可能。対応OSは、Windows 98/Me/2000/XPとなっている。Net MD機能のほか、CDからのリッピングとATRAC3へのエンコード、ATRAC3のライブラリ化などが行なえる。CDDB2にも対応する。なお、現在のところ単体発売の予定はない。

同梱の「BeatJam」は、Net MDに対応したSC-SV1専用バージョン。左からCD、ライブラリ、チェックイン/チェックアウト画面

 なお、ソニーのポータブルメモリオーディオなどに付属する「OpenMG Jukebox」がBeatJamより先にインストールしてある場合、OpenMG Jukeboxを最新バージョンにアップデートしておく必要がある。OpenMG Jukeboxの最新バージョンは2.2.08.02260。アップデータはSony Drive内の専用ページで公開されている。

すべての全角文字を半角に変換する「カナ変換機能」は、MDユーザーにとって実用的な機能だ

 BeatJam独自の機能としては、「カナ変換機能」がある。これは、英数と半角カタカナしか使用できないMDプレーヤーへの曲転送に対応したもので、全角で登録してある曲名などをボタン1つで半角カタカナにする機能。日本語IME「ATOK」シリーズで有名なジャストシステムらしい機能だ。いろいろな語句で試して見たが、誤変換はめったにない。ひらがな・漢字表示をサポートしたMDプレーヤーはそれほど多くないので、MDユーザーにとってはうれしい機能だ。

 ただ、カナ変換機能を使うには、曲ごとにプロパティウインドウを開く必要がある。誤変換も少ないので、リスト表示を選択後に、一括して変換する機能があれば使い勝手がさらに向上すると感じた。

 また、Net MDを経由していない録音済みのMDをBeatJamで認識させると、PCからトラック名の入力が可能になる。このときもカナ変換機能が使用可能。なお、こうしたNet MD非経由のMDの場合、中の楽曲をBeatJam経由でPCに取り込むことはできない。BeatJamへは、あくまでもチェックアウトした曲のみチェックインできる。

 4分39秒の曲(LP2)での転送時間は、約38秒という結果になった。なお、ソニーのポータブルMDレコーダ「MZ-N1」で同じ曲を転送した場合、約26秒で完了。SC-SV1の方が若干時間がかかるようだが、2~3曲ならそれほど遅くは感じられない。ただし、アルバム数枚を一度に転送するとなると、大きな差が出ることになる。

Net MDモードに切り換えたところ。つないだだけでは認識されないので、手動で切り換えるが必要ある

 もう1つ気になったのは、PCへの認識が自動で行なえないこと。MZ-N1と同梱ソフト「OpenMG Jukebox」の組み合わせの場合、USBケーブルを接続すると自動的にMZ-N1が認識されるが、BeatJamとSC-SV1では、ファンクションを手動で「Net MD」に切り換えてはじめて認識される。

 「USB Audio」ファンクションとの兼ねあいもあるのだろうが、ケーブル接続後に対し、自動で「Net MD」、または「USB Audio」に切り換えて欲しかった。

 現在、Net MD対応のソフトとしては、BeatJamとOpenMG Jukeboxしかない。両ソフト間では多少異なる部分があるものの、基本的な機能はほぼ同じだ。大きな違いといえば、エンコード可能な形式がBeatJamがATRAC3、OpenMG JukeboxがWMAとATRAC3というくらいだろう。ただし、MDとの連携というNet MD本来の使用用法を考えると、転送先の機器によってはカナ変換機能を備えたBeatJamの方が実践的かもしれない。

 なお、確認したところ、OpenMG JukeboxからSC-SV1を、BeatJamからもMZ-N1を認識できた。曲ファイルを両ソフトで共有するように設定すれば、チェック・イン/チェック・アウトも普通に行なえる。両方のソフトを所有するユーザーは少ないと思うが、「曲情報の検索はCDDB2の使えるBeatJamで、普段の視聴はイコライザのあるOpenMGで、MDへの書き出しはカナ変換の使えるBeatJamで」といった使い分けも可能になる。ただし、OpenMG Jukeboxはソニー製のMDレコーダ、メモリオーディオプレーヤーしか動作保証していない。自己責任で使って欲しい。


■ まとめ

 SC-SV1の大きな特徴は、Net MD機能とUSBオーディオ機能にある。PCで音楽を楽しんでいる人が、新たにミニコンポなどを購入する際、気になる商品となるだろう。単体で見てもCD、MD、チューナの各機能は他のミニコンポに引けを取らないし、今までとりためたMDの曲入力にも活躍する。本体部のミラーデザインや、大き目の液晶パネルも他の機種にはない魅力だろう。

 ただし、アンプ出力とスピーカーの小ささから、デスクトップでの視聴にしか向いていない。部屋を音で満たすようなある程度の音量で聴きたいのなら、他の方法を探した方が良いだろう。実売7万円弱の価格を考えると、なおさら手を出しにくくなる。購入の際には、あくまでPC用途およびデスクトップ用途が主体だという認識が必要になる。


主な仕様
本体部実用最大出力フロント5W×2ch、サブウーファ16W
受信周波数帯域FM:76.0~90.0MHz
AM:522~1,629kHz
TV:1/2/3ch(モノラル)
D/AコンバータMASH(1ビットDAC)
消費電力36W(待機時0.6W)
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
135×342.2×298mm(縦置き時、スタンド含む)
292×342.2×100mm(横置き時、ゴム足含む)
重量約4.9kg
フロントスピーカー形式密閉型1way1スピーカー
ユニット65mmコーンタイプ
インピーダンス
出力音圧レベル81dB/W(1.0m)
再生周波数帯域150Hz~25kHz(-16dB)
200Hz~22kHz(-10dB)
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
114×128×297mm
重量約1.2kg
サブウーファ形式バスレフ型1way1スピーカー
ユニット80mmコーンタイプ
インピーダンス
出力音圧レベル80dB/W(1.0m)
再生周波数帯域53Hz~3kHz(-16dB)
60Hz~2kHz(-10dB)
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
100×204×301mm
重量約2.1kg



□松下電器のホームページ
http://www.matsushita.co.jp/
□ニュースリリース(松下電器)
http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn020116-2/jn020116-2.html
□ニュースリリース(ジャストシステム)
http://www.justsystem.co.jp/news/2002f/news/j01161.html
□SC-SV1の製品情報
http://prodb.matsushita.co.jp/products/fr/SC/SC-SV1.html
□関連記事
【2月10日】松下、同社初のNet MD対応MDミニコンポ
―Net MD対応のBeatJamが付属
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020116/pana.htm
【2001年7月2日】ジャスト、MDのUSB転送規格「Net MD」対応ソフト開発を表明
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010702/just.htm

(2002年3月7日)

[orimoto@impress.co.jp]


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