10万円を切るプログレッシブDVDレコーダ |
松下電器「DMR-E30」 |
発売時期/3月15日 価格/93,000円 |
前モデル「DMR-E20」から4cm薄くなった本体。ミラー素材など、同社の最近のデザイン傾向が盛り込まれている |
ミラー部分は横一列並んだ中段のボタンとフロントパネル下部、表示パネルのみ。前面入力端子や一部の操作ボタンは左右の開閉式パネルの裏に隠れている |
E20から高さが4cm低くなったためか、ボディデザインは全体的に引き締まった印象となっている。ただし、トレードマークともいえるタイムワープローラがなくなり、インシュレータがゴム足に変更されるなど、E20と比べて高級感がそがれた感はいなめない。とはいえ、どこか無骨な印象を与えるE20に比べると、リビングにも似合う今風の洗練されたデザインとなった。
操作ボタンの位置や大きさも変わっているが、最も大きな違いは「タイムワープローラー」がなくなったことだろう。その代わりに、開閉式パネルの中にあったカーソルボタンが表に配置され、サイズも大きくなった。このカーソルボタンは、押し込むことで「決定」動作も行なえる。多少、フカフカしていて押しづらいボタンだが、めったに使わないタイムワープローラーよりは実用的だろう。なお、タイムワープ機能自体は、E20と同じくリモコンで操作できる。
また、トレイが新タイプのものに変更された。E20ではPC用DVD-RAMドライブに良く似た箱型のトレイだったが、E30では形状が大幅に変わっている。読み込み速度も若干スピードアップしたようで、録画済のDVD-RAMディスク(Type 2)をトレイに置き、再生ボタンを押して読み込ませたところ、E30が18秒、E20が21秒という結果となった。DVD-Rでは、E30が18秒、E20が19秒でメニューが表示される。
なお、電源OFFから再生ボタンを押した場合は、DVD-RAMだとE30が18秒、E20が21秒。DVD-RだとE30、E20ともに18秒という結果になった。
ディスクトレイも新タイプに変更された。カートリッジ入りディスクは収まりきらないが、ちゃんとローディングされる | 店頭ではわかりにくいが、背面にはファンが設けられている |
■ 外部入力で威力を発揮する「ぴったり録画」
記録モードと記録時間(4.7GB時) | |||
モード | 記録時間 | 解像度 | 音声 |
---|---|---|---|
XP | 約1時間 | 704×480ドット | ドルビーデジタル2ch (256kbps) |
SP | 約2時間 | ||
LP | 約4時間 | 325×480ドット | |
EP | 約6時間 | 325×240ドット | |
※録画モードには「アドバンス」と「ノーマル」があり、「アドバンス」は録画画像に合わせて解像度を変更する |
MPEG-2記録には、視覚感度変調技術を用いた「ハイブリッドVBR方式」を引き続き採用している。XPやSPでは、ほとんど画質の劣化は感じられない。大画面で見ない限り大丈夫だろう。特に、平均ビットレートが5Mpbs前後のSPが安定した画質を実現しているのには驚かされる。ただし、LP、EPではブロックノイズがかなり顕著になる。こうした録画画質の傾向も、E20からの変化は見られなかった。
また、DVD-RAMのみ使える「プログラムナビ」や「プレイリスト」といった機能もE20と同じように使える。「プログラムナビ」は、録画した番組をリスト形式で表示するもので、番組の削除、タイトル入力、プロテクトもここで行なう。「部分削除」も選択でき、CMなど録画番組の不要なシーンを削ることもできる。
録画した番組の視聴はプログラムナビから行なう。タイトル入力もできるが、タイトル名をキーにしたソートや検索は不可能 |
タイマー予約の一覧。Gコードでの予約にも対応している | 部分削除(左)は、不要な部分をディスク上から実際に削除する。一方、プレイリスト(右)は録画した元データに影響を与えない |
「プレイリスト」は、ディスク内の全録画番組から任意のシーンを選び、つなげていくことで1本の作品をつくりあげるというもの。追加できるシーンは最大約999シーンで、追加したシーンの移動や消去といった再編集も行なえる。元の番組データ自体は変更されないので、ディスク容量は変化しない。なお、プログラムナビ、プレイリストともにDVD-Rでは使用不可。DVD-RAMでのみ使用できる。
予約録画は、日時や曜日、時間で予約時間を指定する「フリーセット予約」と「Gコード予約」が選択可能。E20同様、EPGに対応していないのが惜しまれる。また、予約は前面表示パネルとGUI画面上の両方で確認でき、最大16番組分を指定できる。
タイトル名はひらがな、カタカナ、英数、記号のみ。漢字入力は行なえない | 録画・再生中にディスク残量(左)が表示できる。ビットレートのリアルタイム表示(右)は、DMR-E30からの新フィーチャ。追っかけ再生時には、録画・再生とも同時に表示する |
シリーズの特徴である「追っかけ再生」だが、予約録画の最中に帰宅したときなど、日常の中で役立つ場面が多い。E20なら分刻みでの早送り/早戻しが制御できる「タイムワープローラー」が活躍するはず。しかし、個人的には録画中の番組の先頭から再生するだけのことが多く、タイムワープローラーを省略して価格を押し下げた松下電器の勇断を支持したい。
もっとも、タイムワープローラーで操作する機能は、リモコンの「タイムワープボタン」でも利用できる。たとえば、記録中にタイムワープボタンを押すと30秒前に戻って再生し、その後5秒以内に上下ボタンを押せば、1分刻みで移動先の再生位置を指定できる。録画画面と再生画面の2画面表示も可能だ。ただしE30の場合、初期設定中の「TVタイプ」を「プログレッシブ(525P)対応」にしていると、2画面表示が使用できなくなる。「インターレース(525i)」にしたときのみ作動する。
録画機能でのハイライトは、「ぴったり録画」が追加されたことだろう。これは、予約録画でしか使えなかったFRモードを、通常録画や外部入力からの録画で行なえるようにしたもの。録画時間を指定すればディスクの残り容量に合わせたビットレートで記録してくれるので、1時間40分など中途半端な録画時間のときに利用する。予約録画以外でも使えるようになったことで、手持ちのVHSテープなどをDVD化するときに威力を発揮するだろう。
ほぼすべての機能にアクセスできるトップウィンドウ。初期設定はここから行なう。新たに「TVタイプ」が追加された | 新機能の「ぴったり録画」。FRモードが外部入力の録画で使用できるようになった |
なお、音声はどの記録モードでも2chのドルビーデジタルで記録され、ビットレートは256kbps。リニアPCMでの記録は不可能。DVDビデオのデジタル音声は、背面の光デジタル出力端子(1系統)から行なう。ドルビーデジタルやDTSのデコーダは内蔵していない。
■ 再生機能と画質
映像出力端子にはコンポーネント(RCA)とD2を装備。光デジタル音声出力も搭載する |
E30ではプログレッシブ出力をサポートしたため、DVDビデオの視聴にも威力を発揮するようになった。確かに、DVDビデオ「ダイナソー」では、木々のツルや猿の毛並みなどでしっかりした解像感が得られている。画質の傾向は、同社のDVD-RP91を思い起こさせるもの。なお、映像DACは54MHzで、コンポーネント出力にはRCAとD2を各1系統装備している。
ただし、E20で行なえた「コントラスト」、「彩度」、「輪郭補正」といった画質調節の項目がすっぱりとなくなった。ディスプレイ側で調節できるとはいえ、専用のDVDプレーヤーに比べると少しさびしい。ただし、ノイズリダクションは、E20と同じく「3D」、「ブロック」、「モスキート」の4種類がそのまま継承された。
画質関連で新たに加わったのは、プログレッシブとインターレースの切り換えメニュー。さらに、プログレッシブ時の変換方式も選択できるようになった。「Auto1」、「Auto2」、「Video」の3種類が用意され、「Auto1」がフィルム素材用、「Auto2」が30コマ収録フィルム用、「Video」がビデオ素材用となっている。
そのほか、デジタル3次元Y/C分離回路、入力TBC(タイムベースコレクタ)といった高画質化機能をE20同様に搭載している。しかし残念ながら、要望の多かったゴーストリダクションは今回も採用されていない。
■ RF経由でのサンプル映像
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MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。 |
■ 手堅く進化し、購買層の拡大を狙う
付属のリモコンはE20やHS1と同じ形状。再生など良く使うボタンが小さく、慣れないと使いづらい |
今回のモデルチェンジは、タイムシフトが可能になったE20の時のようなインパクトは少ない。しかし、プログレッシブ出力への対応や価格の引き下げなど、地道な商品力の強化が見てとれる。特に、DVDビデオプレーヤーとしての使用も考えている人にとっては、プログレッシブ出力のサポートは大きなニュースだ。
また、価格差がついたことで、上位モデルの「DMR-HS1」とのすみわけもはっきりした。録画時間が週2~3時間ほどで、さらに録画番組のライブラリ化を希望しているなら、手ごろなE30が妥当な選択かもしれない。また、ディスクレコーダの今後は不透明なので、店頭価格が16万円前後のHS1では多少気が引けるという人もいるだろう。
DV端子、ゴーストリダクション、EPGといった要望の高い機能が搭載されなかったのは残念だが、手堅く進化した上で値下げしたE30の発売は、DVDレコーダの購入を考えていた人にとって朗報になるだろう。なお、発売が遅れている「DVR-3000」や「DV-SR100」も4月には発売される見込みだが、こちらはDV端子を搭載。標準価格も125,000円とE30に近いので、DVカメラユーザーにとっては気になる存在だろう。
■ 主な仕様
録画ディスク | DVD-RAM、DVD-R |
再生ディスク | DVDビデオ、ビデオCD、CD-DA、CD-R/RW、DVD-RAM、DVD-R |
受信チャンネル | VHF:1~12ch、UHF 13~62ch、CATV C13~C63ch、BS 1~15ch |
映像入力 | S映像×3系統、コンポジット×3系統 |
映像出力 | コンポーネント(RCA)×1系統、D2×1系統、S映像×2系統、コンポジット×2系統 |
音声入力 | アナログ2ch×3系統 |
音声出力 | アナログ2ch×2系統、光デジタル×1系統 |
消費電力 | 約28W |
外形寸法 | 430×306×79mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約3.7kg |
□松下電器のホームページ
http://www.matsushita.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn020215-1/jn020215-1.html
□製品情報
http://prodb.matsushita.co.jp/products/fr/DMR/DMR-E30.html
□関連記事
【2月15日】松下、93,000円のDVD-RAM/Rレコーダ「DMR-E30」
―本体高を4cm低くし、プログレッシブ出力に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020215/pana.htm
【2001年9月22日】【新プ】ソニー「RDR-A1」 VS 松下電器「DMR-E20」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010922/npp15.htm
【2001年6月28日】【新プ】Panasonic DMR-E20
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010628/npp10.htm
【2001年5月29日】松下、135,000円のDVD-R録画対応DVD-RAM/Rビデオレコーダ
-タイムシフト機能にDVDとして世界初対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010529/pana.htm
(2002年3月22日)
[orimoto@impress.co.jp]
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