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第63回:VST/VSTiとDirect X/DXiの双方向変換が可能に
~音楽製作ソフト「CONSOLE」~


 日本の小さなソフトハウス、アールテクニカ有限会社からWindows版の音楽制作ソフトウェア「CONSOLE(コンソール)」なるものが開発され、7月22日より公式サイトにてオンライン販売されることになった。

 筆者自身、まったく聞いたこともない会社ではあるが、19日にプレスリリースがメールで届き、おやっ、と思った。リリース文を軽く読んだだけでは、何のことやらさっぱりわからなかったが、タイトルには「アールテクニカ、日本初となるVST、DirectXに対応したオーディオ プラグイン対応ホストアプリケーション『CONSOLE(コンソール)』を発売」とあり、これは調べねばと思った。

 さっそく問い合わせてみたところ、「月曜日に発売の予定ですが、まだ実は完成していません。またヘルプも完成していないのですが、とりあえずβ版の体験版であればお渡しできますが」とのこと。まあ、とにかくどんなものなのかを見てみたいし、ちょうど今回のDigital Audio Laboratoryで扱うネタをどうするか考えていたところだったので、すぐにお願いして試してみた。



 メールできたプレスリリースを見ただけでは、どんなものなのかよくわからなかったので、アールテクニカに連絡する前に、まずは公式サイトにアクセス。すると、そこにあったソフトの画面の雰囲気が、Native Instrumentsの「REAKTOR」とよく似たものだった。つまり、画面上にいろいろとモジュールを表示させて、それを自由に線でつないでいくとシンセサイザやエフェクトが完成するというソフトである。

 結論からいえば、CONSOLEはREAKTORとはまったく目的の違うソフトではあったが、ユーザーインターフェイスや発想には近いものがあった。


■VST/DirectXプラグイン、VSTi/DXiを自由に配置し、リアルタイムに演奏

 CONSOLEは起動の仕方によって、「スタンドアロン・モード」と「プラグイン・モード」の2つに分かれる。まずはわかりやすい、スタンドアロン・モードから見ていこう。

 CONSOLEを起動すると、ただ何もない画面が表示され、マニュアルを見ていなかったこともあり、最初何をどうしたらいいのか、さっぱりわからなかった。が、少し触っていると、プラグインやオーディオの入出力、MIDIの入出力などの一覧を確認でき、それをドラッグ&ドロップで、この画面上に持ってくるとモジュールとして表示されることがわかった。

CONSOLE画面 ドラッグ&ドロップでモジュールを表示

 と、ここまで来ると、ほぼ理解。一般的なソフトではないが、DirectXのSDKに入っているソフトとはよく似た設計のソフトのようだ。つまり、この画面上に並べたモジュールを接続すると、音源やエフェクトとして機能してくれる。まあ、文字にして書くとREAKTORと同じになるが、REAKTORの場合、REAKTORが持っているさまざまなモジュールをつなぎ合わせてシンセサイザなどを作り上げる。対してCONSOLEは、単純に組み込まれているプラグインのエフェクトやシンセサイザを利用するだけ。ある意味、CubaseVSTでもSONARでも、プラグインのホストとなるソフトを持っていれば不要なソフトであるが、実際使ってみると、CONSOLEならではの機能というものがいろいろと見えてきた。

 もう少し具体的な使用例を紹介しよう。

 たとえば、Sound Blaster Audigyの入力と出力、そしてプラグインとして入っているディストーションの3つのモジュールを並べ、これを

  入力 → ディストーション → 出力

と接続すると、Audigyの入力から入ってきた信号にディストーションをかけた結果がAudigyから出力される。これはリアルタイムで動作するので、まさにPCをエフェクトとして利用できる。エフェクトのモジュールの真ん中にあるアイコンを選べば、エフェクトの設定を変更することも可能。もちろん、完全なリアルタイムで動作させるためには、オーディオインターフェイスのレイテンシーが気になるところ、しかし、ASIOドライバに対応しているので、いいオーディオインターフェイスを持っていれば、ほぼ遅れのない処理が可能だ。

3つのモジュールを接続 エフェクトの設定 ASIOドライバに対応

 もちろん、この接続は間に1つのエフェクトを入れるだけでなく、複数のエフェクトを入れることが可能だし、何よりすごいのは、DirectXプラグインとVSTプラグインを完全に同等に扱えること。フリーのプラグインなども数多く出ているので、これらを利用すればかなり遊べる。

 さらに、CONSOLEが面白いのはVSTインストゥルメント(VSTi)や、DXiが利用できること。基本はエフェクトの場合と同じように並べていくわけだが、これらソフトシンセの入力にはMIDIインターフェイスを利用することになる。もちろん、この場合、外部に接続したキーボードなどを弾けば、そのままソフトシンセを演奏することができ、ASIOドライバを利用していれば、レイテンシーの小さい完全なリアルタイム演奏が可能。また、ここでもVSTiとDXiを区別無く、同等に扱うことができるわけだ。必要あれば、画面上にキーボードを表示させ、ここで演奏することもできる。

DirectXプラグインとVSTプラグインを同等に扱える VSTiやDXiも利用できる




■独自のミキサーやシーケンサを装備

 まだ未完成というヘルプを読むと、CONSOLEにはシーケンサ機能が用意されているとある。しかし、どう使ってもシーケンサの画面は現れない。またそれ以外にもミキサーやソフトシンセなどいくつかのオリジナル機能が用意されているようだが、これを使えない。まあ、β版だから仕方がないのかと思っていたが、改めてアールテクニカの方からいただいたメールを見ると、CONSOLEのインストールしたフォルダの中にVSTフォルダがあり、ここにオリジナル機能がいろいろ収めてあると書かれている。

 そういえば、DirectXプラグインとDXiは自動的にすぐ利用できるが、VSTに関してはフォルダを手動で設定するともヘルプに書かれてあった。そうか、それならここを手動で指定すればいいのかと試してみたところ、いくつものプラグインが現れた。VSTiのソフトシンセとしては、chip32_NWとchip32evaいう名称のものがあり、これらを使ってみると、ともに非常に単純な波形の音源で、chip32evaのほうは、自分で波形を描けるなどちょっと面白い。両方ともエンベロープがいじれるようになっていて、多少は音作りもできる。

VSTプラグインは手動で呼び出す VSTiのソフトシンセ「chip32_NW」(左)とchip32eva

 また、同じくVSTiとして、ヘルプにあったCSL_Sequenceというものがあったので、これを使ってみたところ、なるほどシーケンサ。とはいえ、機能は非常に単純で、マウスで入力していくピアノロール型シーケンサだ。このモジュールの出力をソフトシンセにつなぐことで、自動演奏ができるようになっている。なお、必要あれば、同期機能によって、このシーケンサと外部シーケンサをシンクロさせることも可能になっている。

CSL_Sequence 外部シーケンサとの同期機能

 もう1つ、用意されているのがミキサー。ごく単純なミキサーとそれなりのコンソール的なミキサーが用意されている。コンソール的なミキサーは、16チャンネルのミキサーになっており、4つのエフェクトセンドを装備するとともに、パンおよび2バンドのEQが用意されている。これを利用することで、まさにCONSOLEとして利用可能になりそうである。

シンプルなミキサー コンソール的なミキサー




■プラグイン・モードで利用するとこれまで不可能だったことが可能に!

 以上がスタンドアロン・モードであったが、これだけの機能だとちょっとしたオモチャソフトということで終わってしまうかもしれない。しかし、CONSOLEにはより実用的な機能が装備されている。それがプラグイン・モードだ。

 プラグイン・モードというのは、たとえばCubaseVSTやSoundForgeといったソフトからCONSOLEを呼び出して利用するというもの。CubaseVSTからエフェクトとしてCONSOLEを立ち上げると、とりあえずCubaseVSTからは一般のエフェクトと同様にCONSOLEが見える。これだけでは、何の動作もしないが、ここでCONSOLEの画面を見てみると、予めPLUG-IN Audioという出力のモジュールと入力のモジュールが表示されている。この2つの間に自由にプラグインエフェクトを並べることができるのだ。

CubaseVSTからエフェクトとしてCONSOLEを呼び出したところ PLUG-IN Audio

VST/VSTiをDirectX/DXiに相互変換可能

 そうここから先はCONSOLEの世界なので、VSTプラグインでもDirectXプラグインでも自由に混在させて利用できるし、CPUパワーが許す限りいくつでも並べることが可能。つまり、VSTしか利用できなかったソフトでDirectXプラグインが利用できるし、DirectXプラグインしか利用できなかったソフトでVSTプラグインが利用できるようになる。しかも、エフェクトは4つまでといった制限のあるソフトでも、CONSOLEを設定してしまえば、CONSOLE内ではいくらでもエフェクトを並べることができるから、こうした制限を事実上解除してしまうことができる。同様にVSTiとしてCONSOLEを組み込めば、ここでいろいろなソフトシンセを設定したり、さらにはエフェクトまで組み合わせて設定することが可能になる。

 これまでもVST-DX Adaptorなど、VST/VSTiをDirectX/DXiに変換するアダプタソフトは存在していたが、双方向変換が可能でかつ、これほどまでに自由度の高いソフトは存在しなかったように思う。

 価格は6,400円。CONSOLE公式サイトによるオンライン販売のほか、バンドルによる配布も予定されているそうだ。Macintosh版はいまのところ予定されていないようだが、海外への販売も行なっていくようである。PCを楽器として、またエフェクトとして利用してみたい方、また各シーケンスソフトを使っていてプラグイン機能に不満をもっている方などは、ぜひ使ってみてはいかがだろうか?

□アールテクニカのホームページ)
http://www.artteknika.com/
□CONSOLEの公式サイト
http://www.console.jp/
□製品情報
http://www.console.jp/about.html
□関連記事
【6月10日】【DAL】第57回 DXi2、ReWire対応で機能強化「SONAR 2.0」の実力
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020610/dal57.htm
【4月15日】【DAL】第51回 Cubase VSTとの互換性を確保
~ 最新版「Cubasis VST 3.0」と次世代Cubase ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020415/dal51.htm

(2002年7月23日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


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