【バックナンバーインデックス】


第64回:ライセンスフリーの圧縮音楽フォーマットが正式版に
〜 OggVorbis 1.0 〜


 これまでも何度かとりあげたオーディオ圧縮フォーマット「OggVorbis」。ライセンスフリーで、仕様が完全にオープンということをうたい文句に開発を続けてきたOggVorbisが、ついにβ版から1.0へとバージョンアップし、7月20日に正式版が登場した。

 MP3やWMAと比較するとまだまだ知名度は低いが、正式版が登場したことで、一気に広まる可能性も出てきた。そこで改めて、このOggVorbisについてチェックしてみることにしよう。



 現在のオーディオ圧縮フォーマットの代表といって間違いないMP3。これはご存知の通り、MPEG1 Audio Layer 3の略であり、国際標準化組織であるISOが設置したMPEGという委員会において認められたフォーマットでもある。一般的な感覚でいえば、そうした標準フォーマットであれば、誰もがフリーに使えるオープンなものであるはずだ。だからこそ、みんなが利用し、現在のように広く普及したのだろう。

 しかし、実際はそうではなかった。このMP3には関連する特許が数多く取得されており、そのほとんどをドイツのFraunhofer IIS-Aおよび、フランスのTHOMSON MULTIMEDIAが握っている。普及する以前は無償で配布していたが、かなり広まったところで特許権を主張、現在MP3に関する製品を出しているメーカーは、かなりの額を両社に支払っている。具体的には、MP3再生のためのデコーダーが1つにつき0.5ドル、エンコーダが2.5ドル、さらにMP3で音楽配信を行なった場合は1ダウンロードにつきその料金の1%、最低でも0.01ドルが必要となっている。当然、回りまわって一般ユーザーが支払っているわけで、OSの価格やプレイヤーソフトの価格に含まれる形で知らないうちに払っている。



 こうした状況に対し、真のオープンソースのオーディオ圧縮フォーマットを開発しようと立ち上がった団体があった。Xiph. Org Foundationというのがそれだ。Xiph. Org Foundationの主張は、特許フリーで、オープンなオーディオ圧縮フォーマットを作るということ。これまで約2年間、開発を続けてきており、β版をオンライン上でもリリースしてきた。このDigital Audio Laboratoryでも、以前、そのβ版に関してチェックしているので、記憶にある方もいるだろう。

 そのOggVorbisがついに、1.0として正式リリースされた。すでにプレイヤーとしては「WinAmp」、「Sonique」、「ZINF」、などのフリーウェアが1.0をサポートしたバージョンをリリースしているほか、エンコーダのほうも「Ogg Drop」、「Vorbis Tools」、といったものが登場している。もちろん、これら以外にもβ版の時代からサポートしていたソフトがいろいろあるので、それらが1.0に対応するのは時間の問題だろう。

WinAmp Sonique ZINF

Ogg Drop Vorbis Tools

MAGIX MP3!

 たとえば、国内においては先日、株式会社プロトン ソフトボート事業部から「MAGIX MP3!」というソフトが発売された。これは、いわゆるMP3ユーティリティであり、CDから直接リッピング&エンコードでMP3を生成することが可能なソフトである。しかし、このソフトは単にMP3を生成するだけでなく、mp3PRO、WMA、QDesignそしてOggVorbisをサポートしており、MP3と同様にこれらのファイルを直接作りだすことが可能。

 リリースされた日程から考えて、ここに搭載されているOggVorbisのエンジンはβ版であると思われる。また、現在のところソフトボートのホームページにも、本家MAGIXのホームページにもアップデータはあがっていなかったが、近い将来OggVorbis 1.0をサポートするアップデータなどが登場するのではないだろうか。

 フリーウェア版の場合、CDからOggVorbisを生成するのに、いくつかの手順を踏まなくてはならないが、MAGIX MP3!などがあれば簡単にできてしまうのは嬉しいところ。1.0という正式なバージョンが登場したことで、今後この種のユーティリティがOggVorbisをサポートしてくることも考えられる。

 一方で、やはり欲しいのがハードウェア。OggVorbis対応の安いポータブルプレイヤーなどが登場してくれると、だいぶ魅力が出てくる。もちろん後発なのだから、MP3プレイヤーよりも安く、かつ音質的にもいいものが求められる。そうしたものが揃ってくれば、さらに普及が加速するだろう。

 ただし、OggVorbisそのものはMP3と同様に著作権管理機能などは持っていない。そのため、日本のオーディオ機器メーカーなどは、いくらフリーでも参入しない可能性は高い。あるとすれば、OggVorbisをインポートでき、最終的には著作権管理機能を持ったAACやATRAC3などに変換して転送するものになるだろう。



128kbpsでエンコード

 さて、実際に使ってみたところ、使い勝手という面では、従来のβ版ととくに違いは感じられない。エンコードには「OggDropXPd」を利用した。Pentium 4 1.5GHzのマシンを使って128kbpsのビットレートでエンコードを行なってみたところ、45秒の曲に要したのは8秒強。決して速いとはいえないが、MP3などと比較してそれほど見劣りするわけでもない。

 そして、このエンコードした音を再生させて聞いてみたところ、かなり好印象。高音における音のくすみなどがなく、とてもクリアである。高周波成分の多い音色がきれいに聞こえる。これは明らかにMP3よりも上という感じだ。また、以前β版で聞いたOggVorbisの音よりもよくなっているような気がする。

 まあ、β版も1.0も音質という面では、それほど変わるわけはないとは思うものの、聞いた感じで違いがありそうに思えたので、周波数分析を行ないグラフとして比較してみることにした。題材としたのは、いつものようにTINGARAの夜間飛行という曲の45秒と、1kHzのサイン波、20Hzから22.5kHzのスイープ信号。それぞれを、efu氏作のWaveSpectraというソフトを用いてチェックした。

「夜間飛行」オリジナルWAVEデータの波形(45秒)

 グラフを見ていただくと、本連載のの第47回で行なった結果と比較して、128kbpsでの結果が明らかに良いことが確認できるだろう。やはり高域が伸びていたのである。試しに160kbpsでも同様の実験を行なった結果、さらに周波数特性はよくなっている。

 ただし、聞いた感じにおいて、私の耳では128kbpsとそれほど大きな違いは感じられなかった。しかし、当然ながら曲によって結果も変わるので、ぜひ各自で試していただきたい。

 Ver.1.0β
「夜間飛行」 128kbps 約677KB(yakan128.ogg) 約685KB(yakan128.ogg)
160kbps 約823KB(yakan160.ogg) 約859KB(yakan160.ogg)
スイープ信号 128kbps 約277KB(sweep128.ogg) 約264KB(sweep128.ogg)
160kbps 約300KB(sweep160.ogg) 約265KB(sweep160.ogg)
サイン波
(1kHz)
128kbps 約28KB(1khz128.ogg) 約24KB(1khz128.ogg)
160kbps 約32KB(1khz160.ogg)

 なお、サンプルはすべてOggVorbisのデータをWAVへ変換した上で、WaveSpectraに読み込ませている。今回はOggDropXPdがエンコードおよび再生とともに、WAVの形でファイル吐き出すことが可能だったので、WAVEへのデコードにも使用した。

(C)TINGARA
「夜間飛行」(作詞:名嘉睦稔 作曲:名嘉睦稔、TINGARA)
□TINGARAのホームページ
http://www.tingara.com/



 最後に1つ気になったことを書いておこう。それはβ版とのデータの互換性だ。ソフトにもよりけりだが、古いOggVorbisのデータを再生できないケースがあった。実際、Soniqueの最新バージョンで、以前β版で生成したファイルが再生できなかったり、同じデータをMAGIX MP3!で再生できなかったりした。まあ、β版なのでしかたのないことなのかもしれないが、ぜひ、これからの製品はそうした問題が起こらないようにしてほしい。

 OggVorbisも正式版がでてきたことで、フリーで高音質となれば、今後普及していく可能性は非常に高い。まずは、ハードウェアでOggVorbisを再生できる製品の登場を期待したい。


□Ogg Vorbisのホームページ(英文)
http://www.xiph.org/ogg/vorbis/
□関連記事
【7月22日】「Ogg Vorbis1.0」リリース、ライセンスフリーでMP3より高音質(INTERNET Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2002/0722/ogg.htm
【3月25日】【DAL】第48回 圧縮音楽フォーマットを比較する
〜 その7:可逆圧縮フォーマットと、これまでのまとめ 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020325/dal48.htm
【3月11日】【DAL】第47回 圧縮音楽フォーマットを比較する
〜 その6:フリーの「Ogg Vorbis」と、QDesignの「QDX」 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020311/dal47.htm

(2002年7月29日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


00
00  AV Watchホームページ  00
00

ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.