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第49回:7年ぶりのベッソン&ジャン・レノ作品
“世界の広末”にファン感涙「WASABI」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ ついに出た「涙の」話題作

WASABI

価格:4,700円
発売日:2002年8月23日
品番:JVBF-47057
仕様:片面2層
収録時間:約94分(本編)
      50分以上(特典)
画面サイズ:16:9(シネマスコープ)
音声:仏語(ドルビーデジタル5.1ch)
    日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
発売元:日本ビクター、TBS

 今回買ってきたのは4,700円の「WASABI」。広末涼子の初海外作品、リュック・ベッソンとジャン・レノの組み合わせ、本格的な東京ロケなど、多方面で話題を振りまいた作品だ。例の「涙の記者会見」も、記憶に新しいところだろう。ちなみに、全仏では公開2週目で興行成績第1位を獲得している。

 日本での公開は2002年2月。ハードタッチなテレビスポットがガンガン流れていたので、この作品を「まじめな刑事アクション」だと思った方も多いのではないだろうか。しかし、実態は「ハートフルコメディ+ジャン・レノの軽妙なアクション」といったところ。どちらかといえば、肩のこらない気楽な作品なのだ。

 テレビスポットのとのギャップのためか、劇場公開時の評価はあまり芳しくないようだ。ただし、その中でもおおむね共通していたのが、「ヒロスエがすごかった」という感想。フランス語を流暢に発音するばかりでなく、あのジャン・レノとも堂々と渡り合う広末涼子。「鉄道員」など難しい役どころが印象的な彼女だが、今回も感情起伏の激しい役を立派にこなしている。そんな彼女の姿を再び見ることができるのが、DVD版の「WASABI」である。

 DVDは片面2層で、映像はシネマスコープサイズのスクイーズ。音声は仏語、日本語ともドルビーデジタル5.1chと、洋画のDVDビデオとしてスペックは十分。パッケージはシンプルな白のトールサイズケースだ。深夜に都内のTSUTAYAで購入したのだが、店員は無言で日本公開版のポスターを手渡してくれた。


■ 広末のフランス語に脱帽

 元情報部員で、現在はパリ市警の敏腕刑事、ユベール(ジャン・レノ)。47歳にしていまだ独身の彼のもとに、生涯忘れられない日本女性、ミコが死んだとの悲報が舞い込んだ。

 自分のもとを去って19年、まったく音沙汰なかったミコの葬儀に出席するため、急遽来日したユベール。そこで彼は、自分にユミ(広末涼子)という娘がいることを初めて聞かされる。自分を捨てたと思い込み、父親を憎むユミ。父親の名乗りを果たせないまま、ユベールとユミはミコの遺産をめぐる捜査を進めていく。

 作品の見所は、なんといっても「ジャン・レノ VS 広末」だろう。この作品でジャン・レノは、200億ドルの銀行残高に絶句したり、「ダンスダンスレボリューション」のテンポについていけなかったりと、観客にとっては珍しい「映画でコメディを演じるジャン・レノ」を披露してくれる。それでいて、圧倒的な存在感は健在だ。

 対して、約1カ月でフランス語のセリフをマスターしたという広末。ネイティブスピーカーが彼女の発音をどう感じているのかは知らないが、フランス語に縁のない私には、ほかのフランス人出演者との差異がまったく感じられなかった。中には非常に長いセリフもあり、これには舌を巻いてしまった。また日本人の目から見ても、ジェラール・クラヴジック監督は広末の魅力を良く引き出していると思う。ここまで生き生きとした広末の姿は久しぶりだ。

 もう1つの見所が、東京での本格的なロケ。WASABIは、石原都知事が提唱した支援窓口「東京ロケーションボックス」を初めて利用した作品であり、そこかしこに東京各所の映像が含まれている。この辺りの紹介は、特典の項で詳しく紹介したい。

 ところで、日本を舞台にした海外作品の場合、「外国人の目から見た非現実な日本」の描写が前面に出ているケースが多い。

 しかしこの作品は、都市部で撮影したためか、それほど違和感のある表現はなかった。セットや小道具、BGMの一部に演出過多な部分が見受けられるが、笑って済ませられる程度だろう。リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」に比べると、断然リアルな日本を伝えていると思う。逆に、「悪魔の毒々モンスター 東京に行く」など、この手の「勘違いニッポン」を好む向きには、少々物足りないかもしれない。

 なお、東京以外にも、おまけというかお約束というか、京都を舞台にした場面が出てくる。われわれ日本人にとってはいささか食傷気味だが、やはり観光案内としての側面も必要だったのだろうか。


■ 画質はイマイチ、吹き替えはもちろん本人が担当

 本編の平均ビットレートは5.33Mbps。最近の洋画DVDとしては低い数値だ。実際、輪郭がくずれていたり、背景にノイズが舞っているシーンが頻繁に確認できる。印象としては、「2年前なら高画質」といったクオリティだ。

 とはいえ、クローズアップ時にはしっかり容量を割いているらしく、見苦しいというほどではない。特にジャン・レノのアップはすこぶる高画質だ。ひげの1本1本まで解像している。反面、広末のアップではビットレートを倹約気味。登場回数を重ねるたびに、髪の毛がボロボロになり、肌のきめ細かさも失われていくように見えた。

 あくまでもジャン・レノが主役であり、ワールドマーケット的にも彼の登場シーンを粗略に扱うわけにはいかないのは良くわかる。しかし、われわれ日本人としてはせっかくなので、MPEGノイズの少ないピュアな広末を観たいと思うわけだ。

 なお、音声は448kbpsのドルビーデジタル5.1ch、日本語吹き替えも5.1chだ。もちろん、ユミの吹き替えは広末本人が担当している。音声といえば、広末のセリフの音量が気になった。彼女の場合、日本語のセリフも多いのだが、そのセリフの音量がフランス語に比べて小さい。もっとも、あまりにも自然なセリフなので、広末のアドリブだという可能性もあるが。

 海外公開版だと、広末の日本語パートはどのみち字幕なので、さして重要な場面ではないのだろう。しかし、日本の観客にとっては、ユミというキャラクタをさらに深く知りえる部分でもある。劇場公開時の状態を忠実に再現したものと思われるが、DVD国内版では再考しても良かったのではないだろうか。

Bit Rate Viewerで見た本編のビットレート


■ 特典に「ロケ地情報」、見慣れた景色に異国情緒が……

 映像特典は、35分の「スペシャル・ロング・インタビュー」、15分の「メイキング」がメインコンテンツになる。ただし、スペシャル・ロング・インタビューに広末は出てこない。ジャン・レノのパートも少なく、映像の大半を占めているのはモモ役のミッシェル・ミューラーと、ジェラール監督だ。メイキングについても、広末が活躍する場面はあまり出てこない。期待していただけに少し残念だった。

 特典で面白かったのは、「日本ロケ地情報&撮影秘話」。その名の通り、「どこでロケをしたか」を綴った静止画コンテンツだ。実は本編の視聴中、この原稿のために「劇中のロケ地を調べなければ」と考えていたのだが、労することなく公式情報が得られて助かった。

 収録されているロケ地を列挙してみると、成田空港、レインボーブリッジ、秋葉原、晴海埠頭、湯島天神、荒川区の家屋、カシオ計算機本社、横浜高島屋、帝国ホテル、渋谷INTI、東急ハンズ渋谷、TBS本社、藤沢ジャンボゴルフ、秋葉原万世本店など。人通りの激しいところも多く、スタッフの苦労がしのばれる。また、ロケ地には個人的にも馴染み深い場所が多く、「ひょっとして、俺も本編に映っているのでは?」と変な期待をしてしまった。同様に思い当たる方は、DVDを買って確認した方がいいかもしれない。

 そのほか、「予告編・特報・テレビスポット」、「ポスターギャラリー」、「フォトギャラリー」、「キャスト・スタッフメニュー」を収録している。予告編・特報・テレビスポットでは、日本のテレビスポットも見ることができる。改めてみると、本来コメディだったはずの本作を、まったく違う雰囲気のシリアスな作品として演出していたのがわかる。

 なお、例の記者会見の映像は収録されていない。


■ 広末ファン、ジャン・レノファンは必携だ!

 父と娘を描いた作品だが、もとがコメディだけに、それほど感動的な展開には発展しない。個人的には構わないのだが、その辺りを期待した人は肩透かしを食らうことになる。くどいようだが、テレビスポットのイメージとは全然違う作品なので、購入時には気をつけていただきたい。

 それよりも、コメディとアクション、どっちつかずで中途半端なのが残念だ。某掲示板に「レオンのパロディー?」との感想があったが、まったく同感。TAXi2を作ったリュック・ベッソンとジェラール・クラヴジックのコンビとは思えない。

 もっとも、この作品の魅力はジャン・レノと広末にある。両人ともに新境地を開拓したという意味で、DVDはファンにとって重要なアイテムだ(ただし、ジャン・レノはコメディ初出演というわけではない)。そういう意味ではファン必携といえる作品だろう。

●このDVDについて
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総投票数914票
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319票
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[買いたくなった]
129票
14%
[買う気はない]
466票
51%

□ビクターのホームページ
http://www.jvc-victor.co.jp/movie/
□製品情報
http://www.jvc-victor.co.jp/movie/dvd/product/JVBF-47057.html
□関連情報
【6月7日】【買っとけ】:“広末涼子”15歳の奇跡の瞬間をフィルムに焼き付けた
広末ファンのマストアイテム「20世紀ノスタルジア」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020507/buydvd34.htm

(2002年9月6日)

[orimoto@impress.co.jp]


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