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第50回:最新鋭のF/A-18Fが墜落、パイロットの命運は?
「エネミーライン 特別編」

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ ボスニア内戦の停戦監視中に偵察中の飛行機が……

エネミー・ライン
特別編

価格:3,980円
発売日:2002年9月1日
品番:FXBA-22233
仕様:片面2層
収録時間:106分
画面サイズ:シネマスコープ(スクイーズ)
音声:1.ドルビーデジタル5.1ch(英語)
     2.ドルビーデジタル5.1ch(日本語)
     3.DTS 5.1ch(英語)
字幕:1.英語字幕
     2.日本語字幕
     3.吹き替え用字幕
発売元:20世紀フォックス ホーム
エンターテイメント ジャパン

 個人的な意見を言わせてもらえば、アクション映画に最も要求されるものは、キャストやストーリーよりも迫力だと思う。その点に関して、この映画はかなりレベルが高いといえるだろう。

 「アメリカ国防総省全面協力」。パッケージに書かれた中で最も目立つコピーはこれ。主人公はアメリカ海軍の艦載機パイロット。その乗機は戦闘爆撃機「F/A-18F」。これは映画には初登場の機体でまさに最新鋭。全面協力に偽りはなく、そのほかにも空母を使った迫力ある映像や、現代アメリカ軍の生の映像が次々に登場する。

 そして、舞台は停戦監視中のボスニア。停戦監視の任務中に撃墜されてしまったF/A-18のパイロット(正確にはナビゲーター)が、ただ一人で敵陣から脱出する、というのが大まかなストーリー。原題の「BEHIND ENEMY LINES」で、日本語にすれば、「敵陣の中」といったところだろうか。まさにストーリーを表現したタイトルとなっている。

 実際のボスニア停戦監視中でも米軍の航空機が墜落し、パイロットが敵地から救出されるという事件があった(海軍のF/A-18Fだったかは記憶にないが)。しかし、この映画のストーリーはフィクション。実在の人物や事件をモチーフにしているということだが、ボスニアを舞台にした「リアル風」な展開となっている。


■ 大迫力の墜落シーン、役者の演技も渋い

 しかし、ストーリーはどちらかと言うと従。「敵地からの脱出」というストーリーはなかなか面白いのであるが、なんといっても見所は冒頭の戦闘機墜落シーンだろう。

 偵察飛行中のF/A-18に向けて、ボスニアのセルビア人勢力から発射される地対空ミサイル。ミサイルの発射ボタンにはキリル文字が刻印され、ボタンを押すと白煙とともにミサイルが飛び出し、F/A-18に向かう。

 このミサイルを避けようとするF/A-18とミサイルとの追跡が何よりも圧巻。ミサイルの誘導装置を欺瞞するフレアから、外部燃料タンクを投棄して、火球を使ってミサイルを巻き込もうとしたり、さらに縦横への旋回。これを約5分の長尺で再現している。

 このシーンは映像の迫力に加えて、サラウンド感も秀逸。右に左に旋回するF/A-18と、それを追うミサイルとの位置関係が上手く再現され、そしてクライマックスには大迫力の爆発音。その後の脱出シーンも斬新。これまでの映画での脱出シーンは多くて2、3カットだったと思うが、6、7カットで多面的に表現されていて、飛行機を破壊され脱出する様子を克明に映し出す。

 その後は、「エネミーライン」の名のとおり、敵陣を突破しての脱出劇。見どころはセルビア側のスナイパーとの対決で、追うもの、追われるものの対決が楽しめた。主演のオーウェン・ウィルソンもなかなかの演技を見せていたが、やはりいい演技をしていたのは、空母に残る少将を演じるジーン・ハックマン。最新の機器を駆使して、「必ず部下を助ける」というまさにアメリカ軍的な将校を演じていた。

 しかし、全編を見終わった際の爽快感というのは正直マイチ。どうも「米国防総省全面協力」という臭いが感じられてしまう「政治的に正しいエンディング」になっている印象。

 戦争映画といえば、戦争の悲惨さを伝えるものが多いが、「イントルーダー/怒りの翼」など、戦争行為を全面肯定する映画がたまに制作されてきた。どちらかというとこの作品はその部類に入る。

 全面的に「ボスニアでの戦闘は正義を実行した」という描写ではなく、所によっては米軍側の非も描いている。がしかし、実際の事件、人物をモチーフにしているとはいえ、ストーリーはフィクション。それに「国防省全面協力」ということで、やはり設定もご都合主義的なものを感じる。とはいえ、ボスニア内戦という現在でも歴史になったとは言いがたい微妙な時期を扱っているだけに、2002年度公開のハリウッド映画の設定としては、しかたのないところかとも思う。


■ 最高レベルの航空機アクション、画音ともに良質

 本編の画質はなかなか高画質。映画の中の設定は冬で、白い雪と薄暗い空との対比が美しいシーンが多いのだが、落ち着いたトーンの階調表現で、多少輪郭が淡く感じるが、「ボスニアの冬」を表現していたと思う(ロケ地はチェコだそうだが)。

 本編の収録時間は109分と比較的短めだが、音声トラックはなかなか豪華で、英語、日本語ともに5.1chドルビーデジタルで収録するほか、英語のDTS 5.1chも入っている。加えて、監督と編集のオーディオコメンタリーと、製作と製作総指揮のオーディオコメンタリーも収録しており、オーディオトラックは計5種類となる。

 コメンタリトラックでは、冒頭のF/A-18墜落シーンの解説で、撮影には数カット以外は実際のF/A-18を使用したと言及。あのシーンはミサイルの噴射煙や爆発の火球などはよくよく視聴するとCGとわかる映像だったが、航空機はまさに本物に見えた。映画会社の方針ではフルCGで表現する予定だったそうだが、実機を使用しなければこれだけの迫力は出なかっただろうと思われる。

 意外だったのは監督のジョン・ムーアにとって、この作品がメジャー映画の初監督作品だということ。ストーリーや設定は少々違和感を感じたけれども、本編での演出は斬新なものが多かったように思う。特に、冒頭の墜落シーンはこれまでに見た映画の中の航空機シーンとしては最高レベル。今後の作品に期待したくなる監督だ。

 未公開シーン集は、基本的に本編と同じ映像が収録されいるが、色味などが異なったバージョンや、カットされたシーンが追加されている。しかし、かなり画質が荒く、ブロックノイズが目だっていたが、「オマケ」要素としては悪くないだろう。

 また、定番のメイキングも収録されているが、こちらは「米国防総省全面協力」を全面に押し出した内容。「海軍」だけでなく、「国防総省」が協力しているため、海兵隊の機材も出演していることが改めてわかった。さらに、海軍出身のアドバイザーが映画制作に参加して監修。空母の内部はセットだというが、アドバイザーも「昔を思い出した」というほどリアルだそうだ。

 こういうディティールの部分は、本編のコメンタリでも解説されているが、映像で見るとまた違う印象を受ける。特に大きく扱っていたのは主演のオーウェン・ウィルソンが実際に戦闘機に乗り込む過程。出演の契約は戦闘機に乗り込むことも含まれていたそうで、本物にとことんこだわった制作過程に感心した。

 さて、DVDとしての仕様はなかなか豪華だが、お値段の方はというと、少々高めの3,980円。自分としては冒頭の墜落シーンの観賞用と思って購入したのだが、この価格でもまあ納得できる内容。本編の方もなかなか楽しめるし、航空機が好きで、最新鋭のF/A-18Fを堪能したい方には映像、音響ともに楽しめる内容になっていると思う。

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□20世紀フォックスのホームページ
http://www.foxjapan.com/dvd-video/
□製品情報
http://www.foxjapan.com/dvd-video/cgibin/UserSearch/index_dvd.cgi?jan=4988142109224
□エネミー・ラインのホームページ
http://www.foxjapan.com/movies/enemyline/tv_large.html

(2002年9月13日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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