■ 主な特徴 「AX10」は、80GBのHDDを搭載したHDDビデオレコーダ。Ethernet経由でパソコンと接続できるのが最大の特徴で、番組の視聴や、番組名の編集などがパソコンから行なえる。録画した番組をパソコンに転送することも可能だ。NECのHDDビデオレコーダといえば、同じくパソコンとLAN接続できた「SmartVision Pro HD40」が思い出されるが、AX10では単体での録画予約が可能になるなど、より家電らしい設計になっている。 AX10単体での主な機能は、EPG予約、録画番組の視聴、録画番組の削除、記録画質の設定、ライブ映像のタイムシフト付き視聴など。ただし、EPG内のキーワード検索や、録画した番組の編集は不可能。家電よりのデジタルレコーダとして見ると、どちらかといえばシンプルな部類に入るだろう。
MPEGエンコーダ/デコーダ、チューナなどの中核部品は「SmartVision HG/V」とほぼ同じ。そのため、HG/Vに搭載されている3次元Y/C分離、タイムベースコレクタ、ゴーストリデューサ、デジタルノイズリダクションといった高画質化回路がそのまま採用されている。MPEG-2での記録も最大15Mbps(CBR時)まで選択できるなど、画質面では多機能といえる。 タイムシフト時の画質モードは、「長時間」、「標準画質」、「高画質」の3つに「ユーザ設定」を加えることが可能。ユーザ設定では、解像度、ビットレート、VBR/CBRを選択可能。ビットレートは0.5Mbps刻みで指定できる。
EPGはADAMS-EPGに対応し、約1週間分の番組表を取得できる。番組表はリスト形式で表示され、チャンネルごと、ジャンルごと、時刻ごと(1時間単位)で表示可能。現在放送中の番組を一覧表示する機能もある。ただし、表示を切り替えるにはメニュー画面を呼び出す必要がある。 リモコンはSmartVision Pro 3などに付属するものと良く似た形状で、上部のジョイスティックが操作の基本になる。ボタンがやや小ぶりだが、とりわけ使いにくいということはなかった。「予約」、「番組表」、「番組表示」、「画面表示」といった独立ボタンも多く設けられている。また、メニュー下部にリモコン操作のガイドが出るので、慣れないうちは便利だ。
ライブ映像の視聴時には、最大90分までのタイムシフト再生が利用できる。早送り/早戻しは4/20/100倍速が可能で、速度はボタンを押すごとに切り替わる。速度の順番を入れ替えることもでき、たとえば20倍速→4倍速→100倍速といった順序にすることも可能。 また、SmartVisionシリーズ同様、「シーンサーチ機能」も使用できる。これは、時系列順に表示されるシーンのサムネイルを選ぶことで、視聴位置にジャンプするというもの。サムネイルの表示は、0.5秒/1秒/2秒/10秒/60秒/5分から選択できる。なおタイムシフトを設定していると、チャンネル切り替え、一時停止、早送り/早戻しスタートといった操作の際に、約2秒のタイムラグが発生する。
■ パソコンとの連携 パソコンからの操作時には、添付の「SmartVision/PLAYER」を使用する。対応OSは、Windows Me/XP。起動すると「ネットワーク」の欄に「ホームAVサーバAX10」のアイコンが現れる。AX10のアイコンを指定することで、AX10内の録画済番組、EPG、受信放送局などを取得できる。また、パソコンで取得したiEPGの「ADAMS-EPG+」をAX10に転送することも可能。ただし、ADAMS-EPG+の利用には、NECのサイトからダウンロードできる追加モジュールが必要になる。 SmartVision/PLAYERでできることは、録画番組のパソコン上での再生、EPG予約、録画番組のパソコンへのコピー、簡易編集など。EPGでは、AX10単体ではできなかったキーワード検索が可能になるほか、番組表も新聞のテレビ欄のように複数列を使ったものになる。 また、録画番組だけでなく、現在放送中のライブ映像もパソコン上で視聴できる。このとき、転送する映像のビットレートをAX10で設定した長時間、標準画質、高画質、ユーザ設定から選択可能。どのモードでもAX10で視聴する場合と同様、タイムシフト機能を利用できる。 録画番組をパソコンにコピーするには、まずネットワーク上のAx-10-01(デフォルトのホスト名)内にあるexportsフォルダを指定しなければならない。その後、exportsフォルダからコピーしたい番組を選択し、「エクスポート」ボタンを押す。デフォルト設定の場合、コピーした番組はMy Pictureフォルダに保存される。なお、高画質モードで録画した30分の番組を100BASE-TX接続のパソコンへコピーした場合、約12分で完了した。 番組をコピーすると、必要な部分を指定して残りを削除するという、いわゆる「CMカット」がSmartVision/PLAYER上で行なえるようになる。コマ送りができないので、イン点、アウト点を思い通りに指定するのが難しいが、本格的な編集をしたい場合は、標準添付の「Ulead DVD MovieWriter for NEC」を使うという手段もある。ただし、編集はパソコンへコピーした番組のみ可能で、AX10内の番組を直接編集することはできない。編集後にAX10へ書き戻すことは可能だ。
■ まとめ
スタンドアロンで運用することを前提としたほかのHDDレコーダに比べると、Ethernet経由で録画番組を取り出せるのがAX10の強みになる。特に、DVDオーサリング環境を整えているユーザーにとって魅力的な製品といえるだろう。 一方、パソコンとの親和性を売りにした他の製品と比べた場合、単体で予約設定が可能な点や、Ethernetでの高速転送などが利点になる。 また、DVDドライブやDV端子といった装備はないが、そうした後処理についてはパソコンに任せるというコンセプトなのだろう。AV機器から撤退したNECらしい割り切りといえ、単体での機能をシンプルにした結果、店頭価格も10万円弱と比較的廉価になりそうだ。
今回試用した試作機では、SmartVision/PLAYERでの操作時に、番組名の編集やライブ視聴時の番組切り替えなどで、AX10がフリーズする場面が何度かあった。この点についてNECでは、「製品版では大丈夫です」と話しているが、製品版では安定性が向上していることが望まれれる。
□NECのホームページ (2002年11月7日)
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