【バックナンバーインデックス】



[週刊] デバイス・バイキング
9.9mm厚の世界最小・最軽量 MDウォークマン
ソニー 「MZ-E10」
発売日:11月10日(購入日:11月2日)
標準価格:オープンプライス
購入価格:29,800円(税抜)

■ とにかく格好いい。最小・最軽量のMDウォークマン

 9月に開催されたMD生誕10周年記念パーティーで大々的に発表された、9.9mm厚、世界最薄/最軽量のMDプレーヤー。その薄さだけでなく、デジタルアンプ内蔵など機能的にもかなり先進的。ということで、11月10日の発売日に即買いと思っていたが、11月2日に新宿のカメラ量販店を覗いたら既に販売中。

 とりあえず「10日の発売じゃないんですか? 」と店員さんに聞いたところ「なぜか1日に入りました」とのこと。発表時にはボディカラーはシルバーのみとなっていたが、ゴールドモデルも同時に発売されている。迷った末に個人的な好みでシルバーを購入。購入価格は29,800円(税込み31,290円/10%のポイント還元あり)。

ボディカラーはゴールドとシルバーが用意される ゴールドモデルもリモコンはシルバー

名刺入れとほぼ同等の厚さ

 箱は結構小さく、同梱品は本体のほか、充電スタンドとACアダプタ、リモコン/ヘッドフォン、ヘッドフォンアダプタ、キャリングポーチなど。

 早速とりだしてみると、とにかく小さくて格好いい。ボディはマグネシウム製で、高級感がある。本体には液晶も無く、ロゴも控えめでストイックな印象。店頭では、他のお客さんが全然興味を示していなかったので、カラーリング的に地味かな? と思ったが、手にとってみると高級感ではポータブルMDプレーヤーのなかでも頭一つ抜けているように感じる。

 本体サイズは、約81.9×9.9×79.1mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約55g(電池含む)とのことで、厚みはMDディスク2枚分ほどで、筆者の使用している名刺入れとほぼ同じくらい。

 リモコンは、ソニーのポータブルプレーヤーでは標準的な円筒形のタイプだが、本体の小ささと比べると、結構大きい印象が残る。また、充電スタンドは垂直に差し込むタイプで、マグネシウムボディの「MZ-E10」を差し込むと、さながらモノリス。

本体はマグネシウム製 MDディスクとの比較 上:MDディスク、中:MZ-E10、下:ザウルスSL-A300

同梱品 リモコンは2行表示も可能 充電スタンドはほぼ垂直に立てるタイプ


■ デジタルアンプを採用し、独自の音場再生技術を搭載

本体の集中コントロールキーで基本操作が行なえる

 本体の操作キーは、再生/停止や曲送り/戻り、ボリュームコントロールなどの操作が行なえる「集中コントロールキー」とグループ機能用の「GROUP」キーのみとなっている。一通りの操作が可能だが、液晶を搭載していないため、基本的には付属の液晶リモコンで操作する形となる。

 リモコンは、従来のソニー製ポータブルプレーヤーと共通イメージの縦長のデザインだが、新設計のもの。ボリュームコントロール用の回転つまみやジョグレバーで再生や停止などの基本操作が行なえるほか、[SOUND]ボタンや[DISPLAY]ボタンを利用して、ピッチコントローラやバーチャルサラウンドなどの機能が利用できる。

 そして、世界最小・最軽量のほかに、「MZ-E10」のもうひとつ大きな特徴といえるのが、デジタルアンプを採用したこと。デジタルアンプ採用のポータブルMDプレーヤーは、シャープの「MD-DS8」が世界初で、既に発売されているし、ビクターやケンウッドからも搭載製品が発表されているが、実際に音を聞くのははじめて。ニュースリリースでは、「デジタルアンプはノイズの影響を受けにくいデジタル信号で増幅を行った後、最後にアナログ信号に変換させているので、ノイズの少ないクリアなサウンドを楽しむことができます」とのことなので、期待を込めつつ試聴してみる。

 ソースは、MDLP2(132kbps)で記録したポップスやジャズなど。宇多田ヒカルの「DEEPRIVER」やモーニング娘。の「Do it Now!」、マイルス・デイビスの「In a Silent Way」、ジェリーマリガンの「Night Lights」などから適当に選曲し、2001年に発表された初のNet MD対応ポータブルMD「MZ-N1」と比較してみた。

 テストしたソースの場合、「E10」の方が解像感が高く、しゃっきりというか、だいぶクリアに感じる。また、小音量時の再現性がだいぶ高くなっているような印象を受けた。特にジャズ関連で、個々の楽器がより際立って聞こえ、一方で音の密度の高いポップスなどではあまり差を感じなかった。

本体背面にはacoustic engineのロゴ

 ピックアップやモーターも新開発のものとのことなので、音質向上の全てがデジタルアンプの採用によるものではないと思うが、「進歩しているな」という印象が強い。

 また、ソニー独自の音声再生技術「バーチャルホンテクノロジー・アコースティックエンジン」を採用し、「スタジオ」、「ライブ」、「クラブ」、「アリーナ」の4つの音場が選択できる。

 この技術自体は、2000年9月に発表されているものだが、実際の製品に採用されたのはおそらく「MZ-E10」がはじめて。再生中にリモコンの「SOUND」ボタンを繰り返し押し、「V-SUR」を選択、SOUNDを2秒以上押すことで、4種類の音場が選択可能となる。

 基本的には、2chのスピーカーで5.1chを擬似的に実現する技術だが、かなり効きがよい。例えば、ジャズ関連の音源だと音の定位がしっかりしている「スタジオ」と、距離感があり、ややこもったような音場を実現する「クラブ」だとその差が顕著にわかるし、ポップスでは、アリーナやクラブの奥行きの違いが結構うまく再現されているので、ソースによって聞き具合をチェックするのも面白い。

付属のヘッドフォン

 また、6帯域それぞれ-10dB~10dBの範囲で7段階可変のイコライザを搭載し、ヘビー/ポップス/ジャズ/ユニークの4モードに加え、2つのカスタムモードを搭載している。なお、バーチャルホンとイコライザの同時利用はできない。

 また、デジタルピッチコントロールを搭載し。+100~-50%までの13段階(-50/-33/-25/-20/-10/-5/0/+5/+10/+20/+33/+50/+100)のピッチ変更が可能。この操作はリモコンからのみ行なえ、再生中にDISPLAYボタンを2秒押した後、ジョグレバーをずらし「USEFUL」→「DPC」と決定することで、設定画面となる。基本的には、語学学習などで利用する機能で、音楽再生時にはあまり実用的ではないが、再生専用機でピッチコントロールが付いているのは珍しい。


アコースティックエンジンで「クラブ」を選択 デジタルピッチコントロールの設定 リモコンのクリップは着脱式で、向きを変えられる


■ 小型、軽量化ゆえの不安も……

蓋を開けたところ

 不安点としてまず挙げられるのは、ボディの剛性。もちろん普通に使う分には問題ないが、蓋の薄さや、剛性感のなさは大いに不安。この手のポータブルデバイスは普段かばんやポケットに入れて持ち歩くため、思いもよらないところで、ぶつけたり、落としたりといったことはありがち。

 ただし、1週間ほど使って、引き出しにはさんだり、PCの下敷きにしてしまったりした割に傷は付いていないので、外装の強度は結構高いのかもしれない。

 もう一点不安なのはバッテリの持続時間と耐久性。持続時間はSPモードで約23時間、LP2で約33時間、LP4で約40時間と、最近のポータブルMDとしてはやや短め。さらに、内蔵のリチウムイオン電池は新開発の3mm厚のもので、ユーザーによる交換ができない。外付け電池ケースも用意されないため、旅行などで長時間充電できない時には注意が必要だ(購入時にも店員に、外部電池は利用できません、と念を押された)。

 ともに、小型化のためのトレードオフと割り切って考えれば理解できることなので、大きな不満点があるというよりは、長く使ったりするには漠然とした不安が残るという感じかもしれない。

本体底面。バッテリは専用の3mm厚のもののため、ユーザーによる交換はできない イヤフォンジャックも専用のもの リモコンを利用しない場合は付属のヘッドフォンアダプタを利用する


■ やや高いが、最薄・最軽量のインパクトは十分

 ということで、やや不安点もあるが、このデザインで世界最薄・最軽量のインパクトだけでも話題性は十分。

 ただ、シリコンオーディオプレーヤーのユーザーなどに乗換えを促すような新機能があるわけでもなく、29,800円といえば、ちょっと足せば録再機が買えてしまう価格。再生専用機は15,000円程度からあるし、1ビットデジタルアンプを搭載してるシャープの「MD-DS8」も23,000円程度となっている(11月2日のMZ-E10購入時の店頭価格は26,800円だったので、対抗して値下げしたと思われる)。また、録再機で最小・最軽量の「MZ-N10」も11月21日に実売4万円程度で発売される予定なので、録音機能と小型化を両立したければ、そちらを選択するのもありだろう(こちらは単3電池も使える)。

 それでもこの1cm以下の薄さと本体の高級感は魅力的。編集部で写真を撮っている際にも、通りかかった数人に「それMD? 名刺入れみたい」などと言われるなど、人をひきつける魅力は十分あるように思う。「高いよ」と思っている人も店頭で手にとって見るとこころ動かされるものががあるのでは? 年内に再生用のポータブルMDプレーヤーを購入しようとしている人は、候補に入れるべき1台だと思う。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース (MZ-E10)
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200209/02-0902/
□製品情報
http://www.ecat.sony.co.jp/audio/walkman/acc/index.cfm?PD=10168&KM=MZ-E10_
□関連記事
【9月2日】ソニー、MD生誕10周年記念パーティーを開催
―9.9mm厚のMDウォークマンなど10周年モデルを発表
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020902/sony.htm
【10月24日】ビクター、充電や動作状況を光で知らせるMDプレーヤー
--連続再生時間は、世界最長の約225時間
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021024/victor.htm

(2002年11月8日)

[usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2002 Impress Corporation All rights reserved.