■ ちょっとだけ盛り返してきた? ポータブルMP3/WMAプレーヤー市場
個人的には、iPodの導入以来すっかり熱が冷めている携帯型のMP3/WMAプレーヤー。心なしか魅力的な新製品も減り、市場的にも踊り場かな……、なんて感じていたのだけれど、ここへ来てちょっと面白そうなプレーヤーがちらほらと出てきた。 例えば、アドテックからはリモコン付き/256MB内蔵メモリ+スマートメディアモデル「AD-FD10」とか、SDメモリーカードに対応したスティック型の「AD-FL10」が、SlimXのiRiver(NHJ)からは、128MB内蔵メモリのステック型の「iFP-180T」と、その256MBモデル「iFP-190TC」が発売されている。最近のシリコン系オーディオプレーヤーぜんぜん触っていないので、とりあえずどれかを買おうと悩むこと数時間…… 決め手にかけたので、とりあえずブツを見に新宿に。 パッと見て、いまさらスマートメディアってのも無いし、64MB/128MB+SDの「AD-FL10-64/128」ってのも決め手に欠けるな……などと思い、内蔵メモリのみのiRiverの2製品に絞る。128MBの「iFP-180T」はシルバーボディで19,800円、256MBの「iFP-190TC」はホワイトシルバーボディで27,800円。正直、ボディカラー的には「iFP-180T」が好みなのだけれど、128MBはiPodユーザーとしてあまりにも少なすぎる ……ような気がした。ということで、とりあえず「iFP-190TC」。税込価格は29,190円(ポイント還元あり)。 帰る道々、よく考えれば機能的には一緒だし、格好いいシルバーのほうが良かったかも…… などと後ろ髪を引かれながら帰社。さらに、iRiverのサイトで512MBモデルを来年1月に発売するとのアナウンスがされていることに、買ってから気がついた。「こっちのブラックボディのほうがいいな~」などと、使う前からややがっくり。 ■ 本体はシンプルで操作性も良好
まず本体を見てみると、約31×25×82mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約33gと小型。イメージ的には、100円ライターに電池分のスペースをプラスしたような感じで、握りやすい。ネックストラップも付いてくるので、基本的には首掛けで利用するのが正しいスタイルかと。 操作ボタンは、ボリューム操作や曲送り/戻りを行なうナビボタンを前面に、再生/停止ボタン、メモリー/EQボタン、モード/録音ボタンを側面に備えている。基本的に本体で全ての操作を行なうのだが、非常にシンプルなボタン構成となっている。 同梱品は、携帯用のネックストラップと、USBケーブル、CD-ROM、イヤフォンなど。なお、イヤフォンはSennheiser製の「MX300」。PCとの連携は、USB経由で行なう。本体側のUSBコネクタは専用形状のもので、汎用品が利用できないのはちょっとつらいところ。バッテリは単3アルカリ電池1本。
PC側のソフトウェアは、iRiver Music Managerという専用ユーティリティ。MP3/WMA以外のデータも転送可能だが、USBストレージクラスには対応せず専用のドライバが必要となる。 iRiver Music Managerは、エクスプローラ風のわかりやすいインターフェイスで、ドラッグアンドドロップでファイルの転送や削除などが行なえる。操作性も非常にシンプルなどで戸惑うことは無いだろう。 唯一気になったのが、データフォルダのブックマーク機能が無いこと。テスト環境では\My Documents\My Musicにオーディオデータを保存しているのだが、この場所をiRiver Music Managerに記憶させる設定が無いので、ソフトを起動するごとにマイコンピュータからフォルダを何階層も辿らなくてはいけない。かなり面倒なので早急に改善して欲しいポイントだ。 なお、本体とPCを取り外すときは、Windows上で「ハードウェアの取り外し」を行なう必要があり、その際iRiver Music Managerを立ち上げていると、正しく取り外しができない。一度Managerを終了してからでないとハードの取り外しができないわけだ。やや面倒な仕様だが、それでも著作権保護絡みでPCとの連携がややこしいことになりがちな、MP3/WMAプレーヤーの中ではとり回しが簡単なほうだと思う。 ただし、著作権保護の観点から一度本体に転送した音楽ファイルは、PCにアップロードすることはできなくなっている。 ■ 転送速度には満足。音質は今ひとつか とりあえず転送速度を計るために、約253MBのMP3データを転送。3回テストした転送時間の平均は6分15秒で、インターフェイスがUSB 1.1のデバイスとしてはなかなか良好。おそらくセキュア化処理などを行なっていないのが高速化の要因かと思うが、このあたりは常用するには大きなメリットになる。 早速MP3を聞いてみると、ちょっと低音が軽いような気がする。ちなみに、普段はiPod(初代)をSennheiser製「MX500」で聞いており、今回テスト用に用意したMP3データもiPodで利用しているのと同じ128kbps。試しに、iPodでヘッドフォンをMX300に変更し、同じ曲を聴いてみると、低音が出ていないというより中音域が薄いようだ。 iPodも低音がやや弱めなんて評を良く聞くが(個人的には気になっていないが)、ヘッドフォンの特性を差し引いても全般的に音が薄めかもしれない。もっとも、低価格プレーヤーにありがちな変な低域の誇張などがなく、むしろ音的には素直な印象。ポップス系だとその差もあまり気にならないかったが、個人的にはiPodの方が好み。 もちろんWMAも普通に再生でき、MP3と同様に基本的に全ての機能を利用できる。なお、Windows Media PlayerでWMAデータ作成時に「個人の著作権管理を有効にする」にチェックしてエンコードしたWMAデータの再生は行なえなかった。
本体操作は、液晶横のナビボタンで、ボリュームの上下と早送り/戻しが行なえるほか、再生中にナビボタンの中心をクリックすることで、フォルダ階層を辿れるようになっている。オーディオデータは[ROOT]以下の任意のフォルダに格納可能となっており、フォルダの最大階層は、8階層まで対応している。試しに4階層まで作ってみたが問題なく利用できた。液晶はバックライト付きの4行表示タイプで、ひらがな/カタカナ/漢字などの日本語表示も行なえる。 本体側面の3つのボタン(STREO、MEMORY/EQ、MODE)を備え、モードボタンを利用して、リピート/シャッフルが選べるほか、曲順を指定したプログラム再生も行なえる。また、再生停止中には、「MEMORY/EQ」ボタンで、Normal/Rock/Jazz/Classic/UltraBassの5つのEQモードとユーザーEQが設定可能となっている。 そのほかにも、10秒間のイントロ再生や、フォルダを越えた再生のON/OFFの選択も行なえ、停止時にナビボタンの長押しで、ビープ音設定や、言語設定、バックライト設定、スキャン速度設定などの一般設定画面が表示される。 一度基本操作を覚えてしまえば、MP3/WMAプレーヤーとして戸惑うようなことはない。比較的シンプルでわかりやすい操作性といえる。 気になったのは、再生時にアルバムの曲順がアルファベット順になってしまうこと。例えば、iPodでは、ID3タグのトラック情報を読んでアルバムの曲順で再生できる。ところがiFP-190TCでは、ID3タグでトラック情報を付与していても、アルファベット順で再生されてしまう。 転送前に、iRiver Music Manager上でアルバムの曲順に並び替えても、やはりアルファベット順にソートされて転送されてしまう。アルバムの曲順で再生するためには、プログラムモードで再生リストを作ってプログラムモードで再生すればいいのだが、それも面倒くさい。ID3タグ自体はサポートしており、アーティスト名やアルバム名表示は行なえているだけに、残念なところ。iFP-190TCは、ファームウェアのアップデートに対応しているので、できれば次バージョンあたりで対応して欲しい。 ■ FMチューナやボイスレコーダ機能も搭載
またiFP-190TCは、MP3/WMAプレーヤーのほか、FMチューナやボイスメモ機能を搭載している。モードボタンの長押しで、MP3モードからFMラジオや音声記録モードを選択できるようになっており、ラジオモードでは、FMチャンネルの自動設定なども行なえる。登録チャンネルは最大20チャンネル。 一度チャンネル設定を行なえば、あとは普通のFMラジオとして利用可能。また、ラジオの録音も可能となっており、WAV形式16kHz/130kbpsでの記録が可能。録音したデータは、TUNER000.RECといったファイル名で、ROOT直下の「TUNER」フォルダに保存される。 また、ボイスレコーディング機能も備えており、記録モードはHigh(130kbps)、Middle(65kbps)、Low(32kbps)の3つのモードが選択できる。外部マイクは利用できないが、録音レベルを自動的に制御し、音の遠近を調整するAGC機能を備えており、結構効果がある。会議など複数話者がいる状況でもかなり使えそうだ。 なお、録音したデータはREC形式で、Music ManagerでPCに転送する際にWAVファイルに変換する必要がある。 ■ 本体はシンプルで操作性も良好。手堅くまとまったオーディオプレーヤー ポータブルプレーヤーとしては、操作性も良好でよく練られているという印象が強い。PC側のソフトウェアや本体部も含め、説明書を見なくても基本操作は迷うことなく行なえる。プログラムモードなどは、説明書などを読まないとわからないこともあるが、よく使う機能とあまり使わない機能の切り分けがうまくできているので、この種のプレーヤーに親しんでいる人であれば、買ってすぐに使うことができるだろう。 普通にオーディオプレーヤーとして使った場合の不満点としては、前述の通りのアルバムの曲順表示ぐらい。あと、本体の基本仕様としてやや気になるのは、単3アルカリ電池しかサポートしていないこと。1本で20時間強の再生が可能だが、そのたびに電池を捨てるのはもったいないし、ランニングコストも高い。一応単3ニッケル水素充電池も使用できたが、動作保証外なので安心して使うことはできない。このあたりもうちょっと考えていただきたい。 とはいっても、MP3/WMAプレーヤーとしては、かなり優れたPCとの親和性と、高い携帯性をそこそこの価格で実現しているのは心強い。128MBモデルであれば2万円で購入できるし、プレーヤーに加えFMチューナや簡易ICレコーダとしても利用できるなど機能的な付加価値も十分。過去の競合製品の弱点をうまくブラッシュアップして、うまく纏め上げた製品になっていると思う。
□NHJのホームページ (2002年12月20日)
[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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