■ あのMTV1000の後継機登場
カノープスから、GRT搭載のPCIハーフサイズのTVキャプチャカード「MTV1200HX」が登場した。
型番からもわかるとおり、MTV1200HXは、ラインナップとしてはMTV1000の後継となる製品だ。MTV1000といえば、ハードウェアMPEGエンコーダ搭載のTVキャプチャカードの代名詞ともいえる定番商品。同社の決算の上方修正発表時にも、その立役者として言及されるなど、TVキャプチャ市場最大のヒット作だ。 そのMTV1000の後継機といえるMTV1200HXだが、先週から比較的地味に店頭販売が開始された。標準価格は42,800円、店頭価格は36,000~40,000円程度と、こちらもMTV1000の後継らしい価格設定。なお、同時にソフトウェアエンコードに対応した「MTV800HX」も発表されている。MTV1200HXから、ハードウェアエンコーダとゴーストリデューサを搭載したドータカード「GME500」を省き、ソフトウェアエンコーダをプラスした製品だ。今回はそのソフトウェアエンコーダのテストも行なったので合わせて参考にしてほしい。MTV800HXの標準価格は24,800円、店頭価格は19,000~22,000円。 ■ ハードウェアは大幅に小型化され、新ソフトウェアを採用
まず、ハードウェア的に大きく変わっているのは、PCIハーフサイズになったこと。MTV1000は、カード長212mmと奥行きが長く、小型のベアボーンやメーカー製PCなどに入らないことがあった。MTV1200HXでは、カード長168mmとなり、大幅に小型化された。 カードは、メインカードとドータカード「GME500」により構成されており、GME500には、ハードウェアエンコーダチップ「MN85560」と、ゴーストリデューサチップを搭載している。また、MTV1000ではPhilips製だったチューナーは、シャープ製の小型のものに変更されている。
ソフトウェアは、従来のMEDIACRUISEに変わり、「Feather G-Spec.」を採用した。G-Spec.はリモコンを模したインターフェイスを採用し、軽快な動作を目指したもので、より直感的に利用できるようになっている。MEDIACRUISEは、若干アクのあるデザインだったが、G-Spec.はかなりすっきりとしている。 また、新たにWDMキャプチャドライバに対応したことで、ハードウェアエンコード以外にも、ソフトウェアウェアエンコーダを自由に選べるようになったのも大きな変更点といえる。
■ 新ソフトウェア「Feather G-Spec.」の使い勝手は?
早速、Feather G-Spec.の使い勝手をテストしてみる。インターフェイスはリモコンに似たデザインで、設定項目はL1ボタン、もしくは、右クリックでメニューが一覧表示される。ほぼ全ての設定がこのメニュー内で行なわれるので、設定の一覧性という意味ではとてもよくできている。
設定項目が散り散りになっていて、わかりずらかったMEDIACRUISEの問題点がほぼ改善されており、かなり使いやすくなった印象だ。動作もMEDIACRUISEより早く感じる。パネルデザインは、Woody、Small、Whiteと、横長のWoodStick、FineStickが選択できる。 録画データの管理も簡単になっており、R1ボタンで、録画予約ファイルを管理する「Media Library」を1クリックで開くことができる。タイトルをクリックすると録画モードから、自動的に再生モードに切り替わり、再生できるようになっており、はじめて使うユーザーでもかなり使いやすくなっている。 特に十時キーの周りのL1~3、R1~3ボタンの配置は利用頻度の高いものが割り当てられており、例えば、DVDを見たい時は、R2ボタンをクリックするだけで、DVD再生モードに切り替えることができるなど、操作系も良く考えている印象だ。
TV録画は、チャンネルの設定だけ行なえばすぐにTV録画が可能。タイムシフトなどの機能は従来どおりで、メニュー内で、エンコーダのハードウェア、ソフトウェアの選択が行なえる。 ハードウェアの場合、MPEG-2/MPEG-1の記録が可能で、MPEG-2は、高画質、普通、1/2解像度、1/4解像度の4つのプリセットモードと、最高15Mbpsまで設定可能なマニュアル設定モードが用意される。また、MPEG-1は、普通(352×240ドット/1.5Mbps)とマニュアルが選択可能なほか、VideoCD(352×240ドット/1.15Mbps)形式での記録も行なえる。 【ハードウェアエンコーダ利用時のMPEG-2プリセット画質設定】
ソフトウェアでは、AVIコーデックとソフトウェアMPEGエンコーダが選択可能となっており、DivXや他のエンコーダも利用できる。なお、MTV800HXには、「Canopus Plus 1000」というソフトウェアエンコーダが同梱される。同エンコーダでは、MPEG-2/MPEG-1/Video CD/Super Video CDが選択可能で、同エンコーダを利用した際のMPEG-2の対応ビットレートは以下の通り。マニュアル設定も可能で、MPEG-2では、720×480ドット/最高14.5Mbpsでのキャプチャが行なえる。 【Plus 1000 Encoder利用時のMPEG-2画質設定】
ソフトウェアとハードウェアの画質の差については、後で掲載しているサンプルを参照していただきたい。パフォーマンス的には、ソフトウェアエンコーダ利用時に、MPEG-2の最高画質「高画質2」でキャプチャすると、Pentium 4 1.6GHz搭載のテストマシンでもオーバーレイ表示がフレーム落ちし、DivXで640×480ドットでキャプチャした際は、より激しくフレーム落ちしていた。また、録画ボタンを押してからのタイムラグも2秒ほどあった。 これより低スペックなマシンで、ソフトウェアエンコードを行なう際には、「録画中にビデオウインドウを表示しない」という項目をチェックしておいたほうがいいかもしれない。
GME500に搭載したゴーストリデューサは、10Tapまでのゴーストを除去できる。受信状態の悪いチャンネルでは、目に見えて効果が確認できるので、特に地上波放送の録画時には、かなり役立つ機能といえる(MTV800HXでは利用できない)。 なお、[入力設定]でビデオプロセッシングという項目があるが、これは、上位モデル用の3次Y/C分離やノイズリダクション設定項目なので使えなくなっている。 iEPGでの録画予約は、タスクトレイ上の「RC Manager」からiEPGサイトを開き、そのまま番組表サイトの「予約」ボタンをクリックすればよい。MTVシリーズの「TV Recording Manager」とほぼ同様の操作性なので、従来製品のユーザーが迷うことは無いだろう。 Featherをはじめとして、動作が軽くなった上に、設定もわかりやすくなっており、全般的な操作性については、大幅に向上しているといえるだろう。なお、MTV1000/2000/2200SXのユーザー登録者は、バージョンアップ用の「キーCD」を入手することで、Feather G-Spec.に有償でアップデートできる。 また、iモード端末を利用して出先からTV予約できる「CiRAgent」や、DVファイルをMPEG-2/1に変換する「DV-MPEG FileConverter」、同社のDVStorm-RTで、MTVのハードウェアMPEGエンコーダを利用できる「MPEG Hardware Exporter」といったソフトも同梱されている。 ノンサポートとなるが、MPEG Toolsと呼ばれるソフトウェア群も付属する。GOP単位でのMPEGカットが可能な「MpegCutter」や、映像と音声を分離する「DeMultiplexer」、MPEGビットレート再変換ツール「MPEG-MPEG File Converter」などが同梱されている。 ■ 画質
画質については、以下にサンプルを公開したので参照して欲しい。ハードウェア/ソフトウェアのそれぞれのMPEG-2プリセットモードと、マニュアル設定の最高画質でキャプチャした。ハードウェアキャプチャ時には、ゴーストリデューサを全てONに設定している。
■ 変更点は地味だが、使い勝手や利用時の自由度は大幅に向上
画質については、ゴーストリデューサを新たに搭載し、特に地上波録画時に効果を発揮するが、それ以外に大きな変更点はない。逆に言えば、よりハイエンドを求めるユーザー以外は、MTV1000の画質でほぼ満足していたといえるのかもしれない。しかし、WDMキャプチャドライバに対応したのは大きな前進だ。 たとえば、DVDに保存するデータはハードウェアMPEG-2でキャプチャ、ハードディスクに貯める場合はDivXといった使い分けが1枚のカードでできるようになり、優先度や再利用方法に合わせた素材を最初から作成できるのは魅力的だ。ともあれ、ユーザーの選択肢が大幅に広がったわけだ。 MTV1000のユーザーが積極的に乗り換えるほどのメリットはあまりないかもしれないが、それでもカードの小型化やFeather G-Spec.などのソフトウェアの進化は大いに魅力的だと思う。変更点は地味かもしれないが、MTV1000の登場から約1年半の間で、正常進化し、ユーザーに優しくなった製品といえるだろう。
□カノープスのホームページ (2002年12月13日)
[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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