【バックナンバーインデックス】



プログレッシブDVDプレーヤー+HDDレコーダのコンボデッキ
ビクター「XV-HDV1」
発売日/2月下旬
価格/オープンプライス(実売価格73,000円前後)


■ 主な特徴

 「XV-HDV1」は、80GBのHDDとプログレッシブDVDプレーヤーを組み合わせた異色の製品。HDDと記録型DVDの組み合わせはこれまでにもあったが、再生のみのプレーヤーと一体化した製品は珍しい。全く同じではないものの、機能的には、HDDレコーダ部が「HM-HDS4」のHDD部、DVDプレーヤー部が「XV-A550」に近い。すでにある機能とインターフェイスを1台にまとめ、コストと利便性を追求した製品と見ることができる。HDDレコーダとプログレッシブDVDプレーヤーの両方が欲しかった人には気になる製品だろう。

 なお、DVDからHDDへのコピーは不可能。HDDへ録画できるのは地上波チューナ、外部入力(S映像/コンポジット)の映像・音声のみになる。単純に、2台分の機能を1台のスペースにまとめた製品なので、DVD、HDD両者の連携はないに等しい。「自作DVDの一時保存・編集機」といった用途を考えていた人は、購入時に気をつけた方が良い。

 本体デザインは、フルサイズのAV機器ではあまり例のない逆台形デザイン。安定性を重視するAV機器において、こうしたデザインは珍しい。本体高は68mmで、奥行きは346mm。HDDレコーダとDVDプレーヤーの2台分だと考えると、十分に省スペースといえる。

 また、DVDプレーヤー部はスロットイン式を採用し、電源投入時にスロット上部が紫色に光るなど、デザイン面でのこだわりが随所に感じられる。どちらかといえば、マニアックなAV派ユーザーよりも、カジュアルユーザーを対象としているのだろう。なお、視聴時に部屋を暗くすると、点灯するスロット上部がとてもまぶしいが、ディマー機能を搭載しているので、輝度を下げたりオフにすることは可能だ。

フロントカバーを開けたところ。左に前面入力、右に操作ボタン類を備える。左側にあるProgressiveボタンは、DVD再生時に赤、または緑に光る

 映像入力端子はS映像/コンポジットを3系統を備え、そのうち1系統は前面に装備する。音声入力は3系統で、すべてアナログ。映像出力にはD2×1系統、S映像/コンポジット×2系統を使用できる。ただし、プログレッシブ出力はDVDプレーヤーからだけ出力可能で、HDD部はインタレース出力のみ対応する。

 音声出力は、光デジタルを1系統、アナログを2系統搭載。デジタル出力が可能なのはDVDプレーヤー部のみで、HDDからの出力はアナログdのみ。なお、DVDプレーヤーからのアナログ音声出力は可能で、その場合、5.1chなどのマルチチャンネルは2chで出力される。

 「HDD部の映像出力がインタレースのみ」という仕様は、価格と用途を考えると許容できる範囲だ。しかし、「HDD部の音声出力がアナログのみ」という仕様は気になる。「DVDプレーヤーの音声はAVアンプへ、HDDの音声はテレビへ」という使用法を想定しているのだろう。しかし、ホームシアターが普及しつつある今、どちらもAVアンプにつなぐケースも多い。光デジタル1本、アナログ2本の計3本をAVアンプにつなぐのは、多少スマートさに欠ける。

入力3系統(前面1系統)、出力2系統を備え、出力1はD2/S映像/コンポジットの排他仕様 最近のビクター製品に共通するデザインのリモコン

 付属するリモコンは、同社の現行DVDプレーヤーと同じタイプ。若干のボタンの追加で、HDDレコーダの操作にも対応している。さらに、国内12社のテレビ操作も可能。1つのリモコンで、テレビ、録画機、DVDプレーヤーの3つを扱えるのは快適だ。また、各ボタンの配置も良く考えられており、慣れれば手元を見ることなく操作できるようになる。

 ただし同社製DVDプレーヤーのリモコンと異なり、自照や蓄光機能はない。形は同じなのでぜひ実現してほしかった。

 なお、電源が入っていると常時ファンが回っているため、人によっては動作音が気になるかも知れない。DVDプレーヤーの再生だけを行なっている状態でも、動作音は一向に静まらなかった。ファンノイズはこの種のHDD搭載機にとって不可避な問題なので、シアター用途を考えている場合は、導入前にある程度覚悟した方が良いだろう。もっとも、さらに騒々しい「DMR-E20」を常用しているためか、慣れてしまえばそれほど苦にならなかった。


■ HDDレコーダ部

【録画モードと記録時間】
録画モード 解像度 ビットレート 録画時間
SPモード(高画質) 720×480ドット 8.6Mbps 約20時間
LPモード(標準) 6.1Mbps 約28時間
EPモード(長時間) 352×480ドット 3.1Mbps 約56時間
SEPモード(超長時間) 2.1Mbps 約80時間

 録画はすべてVBRで行なわれ、最大録画時間は約80時間。HDD内には100番組まで保存できる。

 借用した試用機は、画質部分の調整がまだ最終版ではなかった。しかし、SPでの画質は、若干の色のにごりを除けば、オンエア時とほとんど変わらない印象。LPになると多少擬似輪郭が確認できるようになり、EP、SEPでは偽色やブロックノイズが目立つようになる。通常はSP、またはLPを利用した。

 タイムシフトや追いかけ再生も可能で、同社では一連の機能を「一時録画」、あるいは「時間差再生モード」と呼んでいる。一時録画時のビットレートは、SPと同じ8.6Mbps。記録時間枠は30分、1時間、3時間を指定できる。一時記録しない設定も可能。また、チャンネルを切り替えても一時録画は続き、チャンネルを切り替える前までの一時録画を保存する「さかのぼり録画」も使用できる。一時録画状態でのチャンネル切り替え速度は、実測で約1.5秒だった。

 サーチは「早送り/スロー」ボタン、「早戻し/スロー」ボタンで行なう。2秒間の長押しの後、押すごとにスピードが上がり、最大±60倍速まで高速化する。また、「次スキップ」、もしくは「前スキップ」で、チャンネルを切り替えた時点までスキップする。次スキップを数回押すか、リモコン下部の「オンエア」ボタンで、ライブ映像に戻ることができる。

リモコンの「画面表示」を押すと、一時録画の状態が確認できる。チャンネル名、音声なども表示(写真は外部入力) HDD残量と録画ビットレートの設定も、番組を試聴しながら行なえる

(c)CREATIVECAST Professional

 予約録画は、録画日時指定、またはGコードの利用が可能。EPGには対応していない。日時指定予約は、1カ月単位のカレンダーから日付を選び、その後時間と録画モード、チャンネル、タイトル、ジャンルを決定する。画面上のカレンダーを使うインターフェイスは、とてもわかりやすかった。最大予約数は1カ月32番組。また、週ごと、または日ごとに同じ時間、同じチャンネルを上書きする「おまかせ毎週/毎日予約」も利用できる。

 録画した番組は、最大9画面のサムネイルで表示される。サムネイル画像を番組中の好きな画像に差し替えることも可能。シリーズまた、必要のない番組を消去したり、録画した番組を2つに分割したり、保存した番組の任意のシーンを連続再生する「プレイリスト」の作成にも対応する。

 なお、分割と消去を繰り返せば、CMだけを削除できる。しかし、分割した番組を結合できないので、いわゆるCMカットは難しい。また、分割やプレイリスト作成時には、スロー再生やコマ送りを多用しがちだが、スロー再生を行なうたびに、「早送り」、または「早戻し」ボタンを2秒以上長押ししなけれなばならない。個人的には、これがかなり苦痛だった。細かい編集には向かない操作系といえる。もっとも、単体HDDレコーダは、見たらすぐ消去する「録り捨て」を強いられるので、編集を伴う操作はそれほど必要ないだろう。

 タイトルは15文字まで入力でき、使用できる文字種はカタカナ、英数字、記号のみ。録画番組のジャンルを指定することも可能で、これらは「さがす」メニュー内の検索機能で利用できる。

 HDDレコーダとしてはごくシンプルな機能を備えており、一時録画の操作性も悪くない。また、ほとんどの設定画面でオンエア中の画像が小さく表示されるなど、細かい点で感心することが多かった。EPGが使えないのは残念だが、初心者にもわかりやすく、家族で共用できる製品だと感じた。

日時指定予約時の設定画面。日付をカレンダーから選ぶのはわかりやすい。左上には現在放送中の画像を表示する 時刻とチャンネルの設定。ここでタイトルやジャンルを決めることも可能 Gコード予約の設定画面。画面上のテンキーか、リモコンの数字キーで指定する
「さがす」ボタンを押すと表示されるHDDナビゲーション。左上には現在再生中の画像を表示する 録画一覧は9画面のサムネイルで表示される。サムネイルの表示は、東芝製レコーダなどに比べると若干速い 登録ジャンル名の一覧。ジャンルをキーにして検索するときに使う


■ DVDプレーヤー部

最大30枚までのディスクリジュームが可能

 DVDプレーヤー部は、第34回で取り上げた「RX-DV3」とよく似た機能とインターフェイスを持つ。画質面では、同社の製品ではおなじみの「デジタルダイレクトプログレッシブ」を採用し、プログレッシブらしい滑らかな動画表現を実現。プログレッシブスキャンモードは「ビデオ(ノーマル)」、「ビデオ(アクティブ)」、「フィルム」、「オート」から選択できるが、視聴した限りではオートで問題なかった。それでも、DVDタイトルとの相性にあわせ、スキャンモードを固定できるのは安心だ。なお、本体前面のProgressiveランプは、再生映像がビデオ素材の場合は赤、フィルム素材では緑に点灯する。

 プリセットの画質モードは「ノーマル」と「シネマ」の2種類。、さらにユーザーモードを2つ登録できる。調整項目は「ガンマ」、「明るさ」、「コントラスト」、「色の濃さ」、「色合い」、「シャープネス」、「Yディレイ」。色温度は変更できないが、デフォルトが若干低めで、個人的には気にならなかった。

 機能面ではディスクリジュームが便利。最大30枚までの停止ポイントを本体内に記憶する機能で、1度ディスクを出しても、次に再生するときは自動的に停止ポイントから再生してくれる。また、再生中でも基本設定項目が呼び出せるなど、機能面では同社の最近のDVDプレーヤーを踏襲する点が多い。

 また、CD-R/RWに記録したMP3とJPEGファイルの再生も可能。JPEG再生は、RX-DV3にもあった機能だが、画面表示が大幅に高速化している。640×480ドットの画像なら、ほとんど待たされることなく表示された。画質も良くなり、鑑賞用として使える機能になった。

 ただし、640×480ドット以外の画像は輪郭線のジャギーやモスキートノイズが激しい。また、表示も画像サイズに応じて遅くなる。取り扱い説明書でも640×480ドットを推奨しているので、デジタルカメラの画像をそのまま記録した保存用ディスクではなく、XV-HDV1用のディスクを作成した方がよいだろう。なお、JPEG、MP3とも日本語ファイル名の表示には対応していない。


■ まとめ

 再生専用DVDプレーヤーを搭載したところがユニークだが、レコーダ、プレーヤーともに、個別の機能は地味。レコーダとしては平凡で、プログレッシブプレーヤーとしても特別に高画質・高機能というわけではない。ただし、HDDレコーダとプログレッシブDVDプレーヤーを同時に入手できるため、2台を別に求めるより、購入価格や省スペース性の点で有利だ。「シンプルなHDDレコーダがほしい」という人や、「HDDレコーダとプログレッシブDVDプレーヤーを一緒にそろえたい」という人にはしっくりくると思う。

 気になるのは、いくつかの機能でコスト低減のしわ寄せが感じられること。たとえば、HDDレコーダからの音声がアナログ出力だけだったりと、色々な面で機能制限が多い。2台分の機能を1台にまとめ、1台分の価格に近づけるのがこの製品のテーマだが、高級感ある本体デザインだけに、エントリーモデル並みの制約と、中途半端な機能が残念だ。


【XV-HDV1の主な仕様】
DVD部 再生可能ディスク DVDビデオ、ビデオCD、音楽CD、CD-R/RW(MP3、JPEG可)
音声周波数特性 2Hz~44kHz(DVD 96kHz)
2Hz~22kHz(DVD 48kHz)
2Hz~20kHz(CD 44.1kHz)
音声ダイナミックレンジ 100dB以上
HDD部 HDD容量 80GB
受信チャンネル VHF 1~12ch、UHF 13~62ch、CATV C13(63ch)~C63(113ch)
最大録画時間 SPモード(高画質):約20時間
LPモード(標準):約28時間
EPモード(長時間):約56時間
SEPモード(超長時間):約80時間
予約録画数 1年間32番組
入出力 映像入力 S映像/コンポジット×3系統(前面1系統)
音声入力 アナログ×3系統
映像出力 D2×1系統、S映像×2系統、コンポジット×2系統
音声出力 光デジタル×1系統(DVD専用)、アナログ×2系統(DVD、HDD共用)
消費電力 35W(電源ON時)、10W(スタンバイ時)
外形寸法 435×346×68mm(幅×奥行き×高さ)
重量 4.8kg

□ビクターのホームページ
http://www.jvc-victor.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.jvc-victor.co.jp/press/2003/xv-hdv1.html
□製品情報
http://www.jvc-victor.co.jp/dvd/xvhdv1/xvhdv1.html
□関連記事
【リンク集】ディスクビデオレコーダ関連記事リンク集
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/recorder.htm
【1月15日】ビクター、HDDレコーダ一体型DVDプレーヤー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030115/victor1.htm

(2003年3月6日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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