RM-A1500は、いわゆる「学習リモコン」といわれるジャンルの製品。テレビ、ビデオ、DVDプレーヤー、AVアンプ、BSデジタル/CSチューナ、CATVホームターミナルについては主要メーカーのリモコンコードがプリセット済みで、プリセットにない機器の学習も可能。数多く市販されている学習機能なしの「簡単リモコン」に比べると、汎用性は格段に高い。 すでに同社は、ハイエンドユーザー向けの「RM-A2500」を発売している。登録数最大20台分、約1,200キーの学習機能、手書き入力機能の搭載など、非常に多機能な製品として知られるが、実売価格3万円と高価なのが難点だった。PDAのような見た目や操作方法ゆえに、導入に踏み切れなかった方もいるだろう。 また、同社のラインナップには、登録数4台、学習キー2つの「RM-A75」も存在する。標準価格5,500円と廉価な製品で、あくまでもテレビとビデオだけの操作を前提とした入門機だ。単品機器でホームシアターを構築しているようなユーザーにとっては、機能的にかなり物足りないだろう。 RM-A1500は、最大6台のコントロールと222キー(37キー×6台)の学習が可能。同社ではRM-A2500とRM-A75の中間モデルに位置付けており、「学習リモコンに興味はあるが、リモコンに1万円以上の出費は無理」という利用者に向けたものだと説明している。形状もA2500と異なり、一般的なリモコンを思わせる形となっている。 プリセットにはDVDプレーヤーやAVアンプのコードも搭載。そのためか、パッケージにも大きく「シアター用リモコン」と表記している。確かに、ホームシアター環境が普及するにつれ、「複数台の機器を一元操作したい」という需要は、今後高まっていくはず。A1500のターゲットユーザーの予備軍はかなり多い。
リモコンの動作距離は、ノーマルモードで約7m、ハイパワーモードで約10m。電池には単3電池2本を使用している。電池持続時間は、ノーマルモードで約12カ月、ハイパワーモードで約6カ月となっている。赤外線の照射角度は、試したところ各45度程度はあった。実用上十分なスペックといえ、8~10畳程度のリビングなら、ハイパワーモードでの壁面反射も可能だった。 リモコンのボタン配置は、ディスプレイの下に機器切り替えが並び、以下、電源、テンキー、音量・チャンネル切り替え、録画・再生操作関連、カーソルボタン類と続く。テレビなどで使う「消音」、DVDプレーヤー用の「メニュー」、「サブメニュー」、BSデジタルチューナの「番組表」といったボタンも備えている。 ボタンの配置からは、「シアター用途というよりは、テレビ向きのリモコン」だという印象を受けた。テンキーや音量調節のボタンが大きく、最も指をかけやすい中央部に配置されているからだ。 一方、DVDプレーヤーなどで多用するカーソルボタンや決定ボタンは、リモコン下部に追いやられている。そのため、試用前は「カーソルボタンの片手操作は無理なのでは?」と危惧していたが、リモコン裏面のくぼみに指を掛けることで、思ったより安定した操作が可能だった。 ボタンの押し具合は良好。ゴムも適度に柔らかく、滑りにくい表面処理がしてあるようだ。また、重心が若干前方に偏っているためか、裏面のくぼみに人差し指や中指をかけ、リモコン下部を手のひらで包むと、受光部が自然と前方を向く設計になっている。重量も電池込み180gと適度なので、持ちにくいと感じたことはなかった。
■ 学習機能の操作性 学習機能は、プリセットにない機種をコントロールしたい場合や、A1500にないボタンの機能を組み込むときに利用する。学習手順は、[設定]ボタンの長押し後、簡易的なウィザードに従うというもの。対話形式のため、学習リモコンに不慣れなユーザーでも、それほど苦労することなく完了できるだろう。 また、機器名やボタン名の登録も可能。文字種はカタカナと英数字、記号を使える。携帯電話と同様の入力方式を採用し、入力作業も比較的容易だった。なお、登録したボタン名は、ボタンを押すたびにディスプレイに表示される。その後しばらく表示されたままなので、機器切り替えモードが現在どうなっているか、簡単に確認できていい。 もちろん、赤外線リモコンを使用する機器なら、AV機器以外でも学習できる(非対応の機器もある)。自宅では、リモコン式の蛍光灯とエアコンを設定してみたが、問題なく学習できた。 手持ちの機器をある程度学習したら、次は連続でリモコンコードを発信する「システムコントロール機能」が利用できるようになる。いわゆるマクロ機能で、「テレビの電源ON」→「テレビの入力切替をビデオ1に」→「ビデオの電源ON」といった、よく使う一連の動作を登録できる。 A1500では最大10ステップのコントロールを登録でき、すでに作成したシステムコントロールにステップを追加することも可能。また、各ステップの送信間隔を1~10秒の範囲で設定する機能もある。
実際に、[蛍光灯ON]→[エアコンON]→[テレビON]→[テレビをマルチ表示に]→[テレビの入力切り替えをビデオ5に]→[DVDレコーダのプログラムナビ起動]→[AVアンプのインプットセレクタをVCRに]というシステムコントロールを作ってみた。 私が帰宅するたびに行なっている動作だが、これがボタン1発で進行していく様はなかなか快感。ただし、テレビの入力切替が順送りの場合、送信間隔を長めにしてもうまくいかないことが多い。ダイレクト切り替えボタンがあるなら、それをシステムコントロールに組み込むとうまくいく。 そのほかにも、主にDVDレコーダ用として細かい連続操作を数多く仕込んでみた。ステップごとに追加できるので、思いついたときに登録できるのもうれしい。自分好みにカスタマイズし、道具として強化していくという、学習リモコンならではの楽しさを体験できた。
■ まとめ A2500ほど多機能ではないものの、普通のリモコンのように片手で扱え、ボタンも押しやすい。4~6台程度の機器を制御するだけなら、十分に役立つだろう。細身の本体形状やボタンの押しごこちについてもポイントが高い。 ただし、「シアター用」を謳いながらも、自照式でないどころか蓄光ボタンさえ用意されないのは残念。また、DVDプレーヤーでよく使うカーソルキーや再生・停止関連が下に追いやられ、テンキーが最も良いポジションを占めているのは解せない。さらに、プロジェクタのコードがプリセットされていないなど、本気でシアター用としてお勧めできるかといえば、少し疑問な点もある。 プロジェクタ使う本格的なシアター用途にはA2500を、テレビを中心とした幾分ライトなシステムにはA1500を、という位置づけなのだろう。「DVDプレーヤーやAVアンプがリビングにあるが、どちらかといえばテレビの方が利用頻度は高い」という、ごく一般的な家庭でこそ本領を発揮しそうだ。個人的にはA1500と同じリモコンスタイルのまま、自照式ボタンを備え、カーソルキーと決定キーをメインに据えた製品も見てみたい。 市場で競合するのは、ソニーの「RM-VL1000」(標準価格12,000円)だろう。A1500との主な違いは、液晶にバックライトが付き、タイマー機能を内蔵していること。A1500、RM-VL1000ともに学習機能やマクロ機能は一通り持っており、学習リモコンとしての機能差はそれほどない。後はデザインやボタン配置で比べてほしい。
□ビクターのホームページ (2003年3月20日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
|
|