■ 今週は番外編でおとどけします
何かと話題のジャパニメーション「千と千尋の神隠し」。第75回アカデミー賞の長編アニメーション賞を獲得し、満を持して北米版のDVD「SPIRITED AWAY」(英題)が4月15日に発売された。 千と千尋の神隠しについては、日本版のDVD/VHSの色味が赤いということで大きな話題を呼んだ。弊誌でも、それを受けてやじうまコーナーで、仏版と日本版の色味が違うことをお知らせした。 この記事はアクセス数も多く注目度も高かった。今回はちょうど新作DVDタイトルが少ない時期ということもあり、変則的ではあるが、番外編として、「SPIRITED AWAY」のDVDをご紹介したい。
■ Amazonで購入 最近、海外のDVDの購入にはもっぱらAmazonを利用している。というのもAmazonは、数多くの国でサイトを開設しており、さらにユーザーインターフェイスが各国とも統一されているので、その国の言語が読めなくても、利用することが可能だからだ。 また、以前利用していた複数のオンラインDVDショップが、規模を縮小したり、つぶれてしまったりしたこともあって、「多少高くてもAmazomの安心感」を選択しているということもある。 今回も、amazon.comに予約を入れておいた。DVDや音楽CDのフライング販売は日本でも常態化しているが、長期の休暇を除き、ほとんどの場合1日ぐらい早く店頭に並ぶ程度。しかし、米国では国土が広いこともあってか、本来の発売日より1週間以上早く出荷されることもよくある。 SPIRITED AWAYもその例にもれず、4月8日に出荷を知らせるメールが届き、1週間後には手元にきていた。ちなみに、購入価格は22.49ドル+送料5.98ドルの計28.47ドルだった。送料を入れても、日本版より安価なのには、市場環境の違いがあるのせよ日本人としては憤りを覚えないでもないが……。 なお、千と千尋の神隠しの内容については日本版の買っとけでレビューしているのでを、そちらを参照いただくとして、今回は日本版、仏版、米国版の比較をメインに行ないたい。
■ 米国版は2枚組みで日本未収録の特典も 仏版が1枚のみだったのに対し、米国版は日本版と同じ2枚組み構成。DISC1に本編を、DISC2に映像特典を収録している。 英語吹替は、「トイ・ストーリー」や「バグズ・ライフ」を監督したジョン・ラセター氏が監修し、千尋の声は「リロ&ステッチ」でリロの声で出演をしたデイヴィー・チェイスが担当と、かなり力が入ってる。実際、日本語版とはまた違った雰囲気となっているので、英語が苦手でも英語字幕を出しながら一度は視聴したい。 特典内容については、日本版とかなり異なっている。まず、DISC1には、ジョン・ラセター氏による作品紹介「INTRODUCTION BY JOHN LASSETER」(約1分、英語音声)と、声優やアメリカ公開版スタッフ、宮崎監督らによる作品紹介「THE ART OF SPIRITED AWAY」(15分、英語音声)に加え、天空の城ラピュタや、魔女の宅急便など計8タイトルの予告編を収めた「SNEAK PEEKS」を収録する。 DISC2には、米国版の声優紹介「BEHIND THE MICROPHONE」(英語音声、約5分)、絵コンテと本編映像の比較「SELECT STORYBOARD-TO-SCENE COMPARISON」(日本語音声/英語音声、約10分)、2001年7月放送の特番「千と千尋の神隠し 公開直前スペシャル!」(NIPPON TELEVISION SPECIAL)(約41分、日本語音声、英語字幕)、オリジナル予告編22編「ORIGINAL JAPANESE TRAILERS」(約30分、日本語音声、英語字幕)が入っている。 「SELECT STORYBOARD-TO-SCENE COMPARISON」は、日本版のDISC2にも入っている、DVDのアングル切り替え機能を使って、本編映像と絵コンテを切り替えて鑑賞できるというもの。しかし、日本版は全編が入っているのに比べ、米国版は約10分だけとなっている。その代わりといってはなんだが、日本版では未収録の日テレ系で放送された「千と千尋の神隠し 公開直前スペシャル!」が収録されてるのが興味深いところだ。
■ やはり日本版とは異なる色調 各国語版の本編の音声仕様は、下表のようになっている。米国版にDTS音声がないのが残念だが、日本語音声もドルビーデジタル5.1chで収録されているので、その点は日本人にはありがたい。ちなみに字幕は英語のみだった。
さて、もっとも気になる色調だが、結論を先に言えば米国版は仏版とほぼ同じ色調で、日本版とはかなり異なっていた。仏版、米国版、日本版それぞれを、同じシーンをPowerDVD XPでキャプチャして、ヒストグラムの比較を行なったのが以下のグラフだ。 その結果、グラフの形状が仏版と米国版がほぼ同じであるのに、日本版だけ傾向が異なっていた。輝度については日/仏/米ともほぼ同じだが、R(赤)は、日本版が形状がほぼ同じであるのに、右方シフトしている。 一方、G(緑)とB(青)は、日本版が左方に寄っていることがわかる。ヒストグラムから見て、データレベルで日本版だけ色味が違っていることは間違いないようだ。
なお、本編の平均ビットレートは日本版が7.44Mbps、仏版が7.22Mbps、米国版が7.1Mbpsと大きな差はなかった。また面白いのがチャプタ数で、北米版と仏版が17個なのに対し、日本版が26個と細かく分かれている。 ちなみに米国版のDVDのオープンニングタイトルは、日本語音声にすれば「千と千尋の神隠し」、英語音声にすると、「SPIRITED AWAY」と表示され、エンディングクレジットも日本語と英語の2種類が用意されていて、言語設定に応じて選択される。
■ リージョン1の再生環境があればお買い得かも 米国版のDISC1とDSIC2を見ていて気づいたことあった。それは、本編の色調と、特典映像に含まれる映像の色調が違っていること。SELECT STORYBOARD-TO-SCENE COMPARISONの映像は、日本版に近い赤が強い色調で、予告編は本編よりさらに白っぽい色調と、いろいろな色の千と千尋が混在していた。 とはいえ、リージョン1再生環境があれば、価格も日本版よりも安いので購入しても損はないだろう。なお、ご存知の方も多いと思うが、amazon.co.jpでも、海外版のDVDなども販売しているが、DVDはリージョンの問題もあるので、基本的に音楽タイトルなどのリージョンオールのものしか売っていない。 しかし、VHS版の「SPRITED AWAY」は販売しているので、リージョン1のDVD再生環境がない人や、個人輸入がめんどくさい人で、どうしても“白い千と千尋が見たい”という人は、VHS版で見るという選択肢もあるにはある。
□Amazon.comのホームページ (2003年4月22日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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