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第108回:ついに登場したUSB 2.0オーディオインターフェイス
ローランド「UA-1000」をテスト


 5月末にEDIROLが世界初として発表した、USB 2.0対応のオーディオインターフェイス「UA-1000」。このUA-1000がようやく発売されることになった。現在、最終的な調整段階にあるとのことで、早ければ20日には店頭に並ぶという。今回は、出荷直前のUA-1000をお借りるすることができたので、この製品についてレビューする。


■ USB 2.0対応オーディオインターフェイス「UA-1000」

UA-1000

 USB 2.0対応オーディオインターフェイスがようやく登場した。USB 2.0がPCに標準で搭載されるようになってからしばらく経つが、USB 2.0に対応したオーディオインターフェイスは「UA-1000」が初となる。

 USB 1.1では転送レートが遅いため、サンプリングビット数やレートを上げて24bit/96kHzとすると、録音のみ、再生のみしかできなくなるなど、かなり不自由な面があった。しかし、480Mbpsのスピードを持つUSB 2.0ならそうした心配もなく、24bit/96kHzでも8ch以上で録音・再生が同時にできるスペックとなる。

 IEEE 1394でもほぼ同等のことができ、実際mLANという規格はもう5年以上前からあった。しかし、なかなか製品が登場せず、実際に使えるものが出てきたのは最近のことだ。当然USB 2.0対応オーディオインターフェイスに対しての注目度が上がっていたのだが、各社がUSB 2.0対応のオーディオインターフェイスを開発しているという話題が出るようになってから、もう1年以上が経過している。なぜそれほどの時間を要したのかは、近いうちにエンジニアのインタビューを予定しているが、とにかく第1弾の製品が誕生した。

 第1弾の製品というと、話題性だけでデキはイマイチというものが多いが、このUA-1000はかなりよくできている。なお、詳細なスペックはメーカーのWebサイトに記載されているので、そちらを参照してほしいが、簡単に紹介すると、これは1Uのラックマウントタイプのボディーに10IN/10OUTの入出力を装備し、録音・再生が同時にできるというもの。

UA-1000前面 電源を投入すると青色LEDが点灯 マイクプリを搭載した4系統の入力端子などを前面に装備

UA-1000リアパネル。アナログで8IN/8OUTの入出力などを装備

 従来のUSB 1.1用のオーディオインターフェイスとして定評のあった「UA-5」や「UA-700」と同様、フロントパネルにはファンタム電源にも対応し、フォーン/キャノンでマイクプリアンプを内蔵した入力端子が4つ搭載されている。

 またリアパネルにもアナログで8IN/8OUTの入出力があり(うち2つの入力についてはフロントパネルのものと切り替え)、さらにS/PDIFの入出力もオプティカル、コアキシャルが備わっている。またこのオプティカルはADATの入出力としても使えるようになっているなど、非常に柔軟性が高い。そのほかにもMIDIの入出力が1系統、ワードクロックの入出力も備えている。


 フロントパネルはメタリックブルーとブラックのツートンで、電源を入れると青いLEDが点灯するのは最近のEDIROLカラーといえるだろう。また、フロントパネル右側にはサンプリングレートの切り替えスイッチがあり、これで44.1/48/88.2/96kHzの4つの切り替えができるようになっている。

 この4つのほかに「USER SET」という項目もあり、ユーザーが設定した上記4つの周波数のほかに、ADATモードスイッチや外部同期スイッチ、ダイレクトモニタの設定などいくつかの設定を記憶させておくとができる。なお、このスイッチはUA-5やUA-700などと同様に、切り替えてもすぐに有効になるわけではなく、一度電源を入れなおさなくてはならない。今回UA-1000を使っていてちょっと面倒に感じたのはこの点くらいだろうか。

マルチチャンネル出力に対応

 PCIバスのオーディオインターフェイスで、44.1〜96kHzまで対応している製品の場合、通常はソフト側でサンプリングレートの切り替えができるのだが、UA-1000ではそれができず、電源を入れなおすという作業が発生する。通常使う設定が決まれば、それであまり不便を感じることはないとは思うが……。実は最初、デモ曲を鳴らそうと思ったらうまく鳴らすことができず、オヤッ? と思った。それは、96kHzの曲なのにUA-1000側が44.1kHzになっていたため鳴らすことができなかったのだ。

 EDIROLからはSONAR用のデモデータをもらったので、それを鳴らしてみたところ、非常に快適にマルチチャンネル出力ができた。もちろん、これらをヘッドフォンでモニタすることも可能だ。ADATはその規格上44.1kHzと48kHz対応となっているため、この96kHzのサウンドの出力はできなかったが、後で44.1kHzのサウンドを鳴らしてみたところ8chとも問題なく出力ができた。


■ WDMのほかASIO/MMEにも対応

 SONARでの出力設定はWDMが基本だが、もちろんASIOでの設定もできる。ASIO対応の本家であるSteinbergのCubase SXにおいても簡単に設定し、鳴らすことができた。なお、SONARの画面上においてWDMでのレイテンシーは5msec、ASIOでのレイテンシーは3.2msecにまで設定することができ、違和感なく音が出ることを確認した。表示される数字がどこまで正しいのかはよくわからないが、とりあえずMIDIキーボードを使ってソフトシンセを鳴らした感覚は、レイテンシー0に限りなく近いものであった。

WDMドライバ設定 Cubase SX上でのASIOドライバ設定

MMEドライバも使用できる

 またWDM、ASIOに対応していないアプリケーションの場合はMMEドライバを設定することもできる。

 ASIOを設定する画面ではASIOコントロールパネルというボタンがあり、WindowsのコントロールパネルにもEDIROL UA-1000というアイコンが用意されている。これをクリックすると、UA-1000のコントロールパネルが表示される。

 この画面ではどの出力デバイスをどのポートに出力するか、どのポートの入力をどの入力デバイスに入力するかなどのパッチの設定を行なったり、モニターに関するレベル設定を行なう。また、クロックやS/PDIFとADATの切り替えなどもここでできるようになっている。

 なお、モニタ周りの流れ図(図1)や、UA-1000の上面にも描かれているブロックダイアグラムについても掲載しておく(図2)。これをみれば、UA-1000の信号の流れについて把握することができるだろう。


UA-1000のコントロールパネル コントロールパネルで入/出力ポート設定が可能 クロックやS/PDIFとADATの切り替えなどもできる
【図1】モニタ周りの構成について 【図2】UA-1000のブロックダイアグラム


■ 音質は極めて良好

 気になるのは音質は、とりあえずヘッドフォンでモニタしてみたところ非常に音はクリアで、ノイズについてもまったく感じない。また、S/PDIFの出力をモニタスピーカーに出してみたが、これもとてもクリアである。

 そこで、以前各種オーディオインターフェイスで行なったのと同じ実験をしてみることにした。アナログの入出力を直結して行なう実験でその内容は3通り。まず1つ目は何も出力していない状態のものを録音した時、ノイズレベルがどの程度になるかを見る実験。2つ目は-6dBの1kHzのサイン波を出力した時の周波数成分がどうなっているかを見る。そして3つ目は20Hz〜20kHzの-6dBのスウィープ信号を出力した時の入力がどうなるかという実験だ。

 最初、リアパネルのOUTPUT 1/2をINPUT 1/2に接続してみたところ、アンバランスの入力であったため(フロントはバランス)、OUTPUT 5/6をINPUT 5/6に接続して実験を行なった。また、従来の実験では-6dBのサイン波を出力した際、入力も-6dBになるようにレベル調整を行なっていた。そこでUA-1000ではフロントパネルにINPUT 5/6用のSENSという調整ノブがあったのこれを動かしてみたところ、より増幅するためにあるもののようであり、最低レベル(+4dBの設定)で、約-4.5dBとなっていたため、そのまま行なった。

 実験した結果は下図のとおり。

(1)何も出力していない状態のものを録音 (2)-6dBの1kHzのサイン波を出力 (3)20Hz〜20kHzの-6dBのスウィープ信号を出力

 まず無音時のノイズレベルは、波形を見ると多少バラつきはあるが、平均で-100dB程度、MAXで-92dB程度。これまでいろいろ見てきたオーディオインターフェイスと比較し、最高レベルとまではいえないまでも、かなり上位。具体的にいうと、業務用のオーディオインターフェイスとしてとりあげたLynxTwoや、Card Deluxeには劣るが、RME 96/8 PSTとは肩を並べるものだ(RME 96/8 PSTは本来アナログのインターフェイスではないので、あまり比較するべき対象ではないが)。

 このことは1kHzのサイン波の結果からも同様のことがいえる。ここにあるS/Nをあまり真に受けることもないし、一般に言われているS/Nとは別モノなので数値にとらわれてほしくないが、複数のオーディオインターフェイスで同じ実験をしているので、比較の参考にはなるはずだ。88.97dBという値もいいが、スペクトルを見ても、1kHzのところにキレイに1本立っていて、倍音も非常に少ない。さらに、48kHzのサンプリングレートで行なったスウィープ信号の結果もとてもフラットだ。スウィープ信号をレコーディングした結果の波形を見ても妙な形にはなっておらず、高音で減衰しているだけのキレイな波形だった。

 上記実験はすべてのチャンネルを同時に動かした状態では行なっていないが、全体的には動作も軽そうであり、USBでありがちな転送の途切れによるノイズの発生などもまったくなかった。USB 2.0対応であるかどうかは別にしても、オーディオインターフェイスとしてなかなかいいデキであると思う。


■ USB 2.0の今後の展開に期待

 いまやUSB 2.0はPCにとって当たり前の機能として付いているので、これと接続するだけで簡単に24bit/96kHzの10IN/10OUTが可能になるというのはなかなか魅力的。現在あるmLAN/IEEE 1394対応のインターフェイスと比較しても売値が85,000円程度と安く手ごろである。先日発表されたPowerMac G5にもUSB 2.0が付いてくるとのことなので、今後Macintoshの世界でもオーディオインターフェイスにUSB 2.0対応という選択肢も出てくる可能性が高いだろう。

 あとは、EDIROL以外の各社がどう対応してくるのかも気になるところだ。これらについては、また新しい情報が入り次第お伝えしたいと思う。また、UA-1000の開発者へのインタビューも予定しているので、技術的な細かいことなど、そちらで掲載する予定だ。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-1000.html
□関連記事
【5月26日】【DAL】次々と新製品を出し続けるRoland/EDIROL
〜 USB 2.0対応オーディオインターフェイス「UA-1000」など 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030526/dal101.htm
【2月17日】【DAL】PC用オーディオデバイスの音質をチェックする
〜 その4:業務用オーディオカードを試す 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030217/dal88.htm

(2003年7月14日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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