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第103回:DTSディズニー・ミックスで真の姿に!!
「ライオン・キング スペシャル・エディション」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ ディズニー最大のヒット作

ライオン・キング スペシャル・エディション

(C)Disney.
価格:3,980円
発売日:2003年10月10日
品番:VWDS-4714
仕様:片面2層2枚
収録時間:本編約88分
画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
音声:(1)英語(ドルビーデジタル5.1ch)
   (2)日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
   (3)日本語(DTSディズニー・ホーム・シアター・ミックス)
発売元:ブエナ ビスタ ホーム エンターテイメント

 今回取り上げる「ライオン・キング」は、約10年前の'94年に全米公開され、全世界で7億7,000万ドルの興行収入を記録したディズニーの長編アニメーション映画。北米だけでも3億1,290万ドルを記録し、今年公開された「ファインディング・ニモ」に抜かれるまで、アニメ映画興行記録のトップに君臨していた作品だ。

 その人気は映画だけに止まらず、ブロードウェイや劇団四季などで舞台化されたことも記憶に新しい。そのためか、個人的に「古い作品」というイメージがまったくない。DVD化の話を聞いた時も「もう公開から10年も経つのか……」と驚いてしまった。

 購入したのは、発売日翌日の10月11日土曜日。新宿の某カメラ系量販店では空箱のみで現物を陳列しておらず、レジで「ライオン・キングのDVDください」と言うシステム。休日ということもあり、私の前の前に並んでいた子連れのお父さんも「ライオン・キングください」と言っていた。確かに、家族(特に父と息子)で鑑賞するのに、これほど適したタイトルもないだろう。

 購入したソフトを見ると、DVD化にあたって相当力が入っていることがわかる。本編ディスクと特典ディスクの2枚組みはもちろんのこと、本編ディスクには劇場公開版と、未公開シーンが追加されたスペシャル・エディション版の2種類の本編を収録している。

 さらに、仕様で目を引くのは音声の項目。英語と日本語をドルビーデジタル5.1chで収録するほか、日本語を「DTS ディズニー・ホーム・シアター・ミックス」で収録すると書かれている。この「DTS ディズニー・ホーム・シアター・ミックス」という見慣れない単語。編集部では「新しい音声フォーマットか!?」と話題になったが、メーカーの人に話を聞いたり、試聴会に出かけてみると、そういうことでもないらしい。

 「DTS ディズニー・ホーム・シアター・ミックス」とはいったい何なのか? その正体を見極めるためにも、さっそく視聴を開始した。



■ 美しいアフリカの原野と、リアルな食物連鎖

 緑豊かな大地「プライド・ランド」を統治するライオンの王・ムファサは、毎朝、召使いのザズーから動物達の様子を聞き、卑しいハイエナが王国に侵入すれば追い払うなど、王者としての勤めを立派に果たしていた。

 そんなムファサの息子・シンバが物語の主人公。彼はいずれ王となってプライド・ランドを守っていく使命を背負っていた。しかし、王の座を狙う叔父・スカーの企みにより、シンバはヌーの大移動に襲われ、それを助けようとしたムファサは命を落としてしまう。

 父の死を自分の責任だと感じた幼いシンバは、スカーにプライド・ランドを追放されてしまう。いかに百獣の王とはいえ、幼い子供ライオンが1匹で過酷なアフリカの大地を生きてはいけない。シンバの命はまさに風前の灯。そして、スカーが王として君臨したプライド・ランドの運命にも、暗雲が垂れこめていた。

 基本的なストーリーは以上の通り。リーダーになったライオンが、ほかの若いオスを追い払い、群れを支配。しかし、1人になったオスがやがて成長し、リーダーから群れを乗っ取るという話は、動物ドキュメンタリー番組などでよく耳にする。そのあたりからヒントを得た物語と考えて良いだろう。もちろん、ディズニーは否定しているが、日本人としては日本の某漫画・アニメ作品にもよく似ているようという印象が拭えないが……。

 鑑賞を始めると、とにかくアフリカの豊かな自然描写に圧倒される。どこまでも広がる大地、群れをなして飛ぶフラミンゴの優雅な姿、圧倒的なスケールの滝など、思わず深呼吸したくなってくる。アニメではあるが、水の一滴、鳥の1匹までこだわった、実写のそれと見まごうばかりのリアルな描写だ。

 人間は一切登場せず、キリンやシマウマ、ゾウなど、お馴染みの動物達が画面狭しと飛び回る。彼らの動きは実際の動物の模写を基本にしており、ディズニー的な誇張もあるのだが、動きに不自然さはなく、不思議な説得力すら感じさせる。随所にミュージカルシーンも挿入されており、見ているだけで楽しくなってくる。

 過酷なアフリカの大地が舞台なので、辛く、悲しいシーンもあるのだが、最後はきっちりと、誰もが願うハッピーエンドに繋げてくれる。前述した通り、「家族で観るのにピッタリの作品」だろう。

 もちろん、内容が薄いと言うわけではない。「シマウマが草を食べ、ライオンがシマウマを食べ、ライオンの死骸を養分に草が生える」という、食物連鎖の自然の掟や、父親から息子への世代交代、世代を超えて伝えられる教えなどもしっかりと描かれており、芯の通ったストーリーに好感が持てた。

 だが、作品を観終って、とりたてて不満はないのだが、同時に物足りなさを感じてしまった。それは、物語の冒頭とラストがきっちり描写されているにも関わらず、その中間の「過程」があまり描かれていないためだ。

 具体的には、可愛いシンバが、わずか10秒ほどで、たてがみも豊かな大人のライオンになってしまうのだ。まさに「ええ!! もうこんなに大きくなっちゃったの??」という感じ。確かに実際のライオンの成長速度も早いのかもしれないが、もう少し成長過程を見せて欲しかった。

 例えば、父の命を奪い、子供の頃は逃げ惑うしかなかったヌーを、自分の力だけで倒せるようになったりとか、王座を取り戻すために、努力し、修行するシーンなどだ。シンバは心を許せる仲間達とも出会うのだが、彼らと大冒険を繰り広げるするような「あって欲しいシーン」がなく、ちょっと肩透かしを食らったような気分になった。



■ DTS ディズニー・ホーム・シアター・ミックスで視聴すべし

 本編ディスクの映像は、ビスタサイズをスクイーズ収録。音声は、英語をドルビーデジタル5.1ch、日本語をドルビーデジタル 5.1chとDTS ディズニー・ホーム・シアター・ミックス(以下、DTS ディズニー・ミックス)の2種類で収録する。

 ブエナ・ビスタによれば、DTS ディズニー・ミックスは、DVD化にあたって新たにミキシングし直されたDTS音声のことだという。フォーマットとしてはDTSそのものなので、通常のDTS再生環境があれば視聴できる。

 '94年の全米公開時に、当時最新だったドルビーデジタルフォーマットのマルチチャンネルサラウンドが採用されたが、技術面の問題や、録音ミキサーがサラウンドに関するノウハウをあまり持っていなかったため、リアスピーカーやサブウーファを多用しないサウンドデザインになったという。

 だが、「アイマックスシアター」での上映が決まった際、音声を現在の技術で再度ミキシングすることが決定。リアスピーカーやサブウーファを積極的に活用し、ミュージカルなどの音楽シーンでは、オーケストラの中心で聞いているかのような音場を作り出したという。そして、この新しい音声を元に、DVD用に作られたのがDTS ディズニー・ミックスというわけだ。

 確かに、ドルビーデジタル5.1chの音響デザインはおとなしい。ヌーが大移動するシーンでも、「あれ? サブウーファの電源入れ忘れたっけ?」と思うほどあっさりしている。リアスピーカーも、反響音が鳴る程度で包囲感は薄い。

 だが、DTSディズニー・ホーム・シアター・ミックスに切り替えた途端、音響は一変する。ヌーの大移動ではサブウーファのコーンが激しく動き、地鳴りが部屋を揺らす。ミュージカルシーンでも部屋中に音楽が広がり、実に心地いい。

 特に違いがわかるのは、ライオンの吠える声だ。「王者の証」として、ライオンの吠える声の「怖さ」が作品中に効果的に使われているのだが、2つの音声を切り替えると、あまりの迫力の違いに思わず笑ってしまう。ディズニー・ミックスを「王者の咆哮」とするなら、ドルビーデジタル5.1chは「負け犬の遠吠え」だ。ディズニー・ミックスでの視聴をお勧めしたい。

 なお、音声のビットレートは、ドルビーデジタル5.1chがどちらも448kbps。ディズニー・ミックスは、768kpbsとなっている。

 ただ、1つだけ気になる点は、ディスクの容量の問題でDTS ディズニー・ミックスが日本語しか収録されていないということだ。日本語吹替えを担当している声優さんの演技は上手く、キャラクターのイメージを損なうこともない。しかし、劇中のミュージカルシーンで、「Can You Feel The Love Tonight~♪」と歌われるところを、「愛をかんじてぇ~♪」と歌われると、「どうもなぁ……」という気持ちになってしまう。

 このあたりは好みの問題だが、DTS音声を聞きたい場合は日本語しか選べないので注意が必要だ。劇場公開版と特別版の2つの本編を収録するのは嬉しいが、特典をいくつか削るか、ドルビーデジタル5.1ch音声を日本語か英語のみにして、英語のDTS ディズニー・ミックスを収めて欲しかった。

 DVD Bitrate Viewerで見た平均ビットレートは劇場公開版が7.29Mbps。特別版が6.77Mbps。特別版を中心に視聴したが、ライオンやゾウの胴体部など、単色の部分でブロックノイズが見られた。色乗りは良いのだが、輪郭も甘めで、総じてあまり画質の良いタイトルとは言えない。

【劇場公開版】
DVD Bitrate viewer 1.4でみた平均ビットレート

【特別版】
DVD Bitrate viewer 1.4でみた平均ビットレート


■ 自宅がディズニーランドに!?

 特典内容は、何から紹介していいか迷ってしまうほど豊富だ。本編ディスクには、新たに追加された「朝のご報告」シーンのメイキング、「サズーの性格占い」、劇中歌のミュージッククリップ、2種類のゲーム、未公開シーン集などを収録する。

 特典ディスクは、「アジア」、「アフリカ」、「オーストラリア」、「ヨーロッパ」など、計6項目にわかれ、ミュージカル版の紹介やメイキング、映画のドキュメンタリー、動物の生態を紹介するコンテンツなど、様々なものが入っている。

 ただ、メニューに「アジア」の項目があるからといって、「アジアでのライオン・キングの反響」など、その地域に沿った内容のコンテンツが入っているわけではない。分類の基準がよくわからないのだが、各項目で重複しているコンテンツもある。メニューを細分化すると、大量の特典が入っているように見えるのだが(実際に入ってはいるのだが)、もう少しまとめたほうが見やすかったと思う。

 どれも見応えのある内容なので、全部を見るのは一苦労だ。個人的には、ミュージカルのメイキングで、「俳優をライオンやキリン、象などに仕立て上げ、観客に違和感を感じさせないようにする作業」のアイデアが素晴らしく、感動してしまった。

 最も楽しめた特典は、「バーチャルサファリ」というコンテンツだ。内容は、キャラクターに連れられ、観客が車や船でアフリカの大地を仮想探検するというもの。遊園地によくある、大画面に映像が表示され、それに連動してシートが動くアトラクションの、映像と音声部分だけを抜き出したようなコンテンツだ。

 ワイド画面と5.1chサラウンド音声を効果的に使っており、楽しい演出が随所に散りばめられている。暗闇から飛び出してくる動物にドキドキしてしまう。また、ディズニーランドのアトラクション「ジャングルクルーズ」を連想させる、案内人のジョークを織り交ぜた軽妙な喋りも楽しい。なお、アトラクション終了後には、観客の写真まで出来上がっているという手の込み様だ。


■ 父と子の映画

 個人的に、日本のアニメーションは好きだが、ディズニー作品はそれほどでもない。「ライオン・キング」にしても、テレビで放送していたのを観た記憶があるだけだ。

 しかし、今回観直したことで、観客を楽しませようというエンターテイメント性にあらためて関心した。また、親子、とりわけ父親と息子の絆が強く描かれており、世代交代も壮大な食物連鎖の中の一部として表現されている。アニメーション映画と言うよりも、良く出来た動物ドキュメンタリーを観た気持ちになった。

 この作品は、ぜひ子供と一緒に観ていただきたい。また、VHS版などを既に所有している人でも、低音が効いたライオンの咆哮を聴くだけでも買う価値があるだろう。DTSディズニー・ミックスで初めて、ライオン・キングは完成したと言っても過言ではないと思う。

●このDVDについて
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58%

□ブエナ・ビスタのホームページ
http://club.buenavista.jp/
□製品情報
http://www.disney.co.jp/lionking/
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-DTS音声は「ディズニー・ホーム・シアター・ミックス」仕様
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(2003年10月14日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]



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