■ 初のEthernet対応HDDオーディオプレーヤー アップルのiPod、東芝のgigabeat G20、クリエイティブのNomad Jukebox Zen、iRiverのiHP-100/120など、各社揃ってきたHDDオーディオプレーヤー市場。そんな中でもひときわ特徴的な機能を持つのが今回テストする「Rio Karma」だ。
特徴は、付属のドックにEthernet端子を装備し、ネットワーク経由でオーディオデータの転送やデータの同期が行なえること。多くのHDDプレーヤーがUSB 2.0もしくはIEEE 1394経由で転送するのに対し具体的にどういったメリットがあるのかというと微妙だが、とりあえず目新しいのは確かだ。 加えて、MP3やWMAのみならず、OGG Vorbisや、可逆圧縮フォーマットであるFLACもサポート。FLACをサポートしたプレーヤーはKarmaが初という。そういった意味でも高音質を求めるユーザーには、重要な要素となるだろう。 HDD容量は20GBで、大型の液晶ディスプレイを採用している。同社のスポーツ系シリコンオーディオプレーヤーのイメージを引き継いだ、曲面を多用したデザインが特徴的だ。
■ なんとか手に収まる本体。ドックにEthernetやUSB 2.0を装備
パッケージはブリスターパックで、本体のほか、専用クレードル、ヘッドフォン、Ethernetケーブル、USBケーブル、アナログ音声ケーブル、ACアダプタ、CD-ROMなどが同梱される。 本体の外形寸法は77.5×29×79.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は168g(電池含む)で、手に取った感じでは片手に何とか収まるといった具合。第3世代iPod(61.8×15.7×103.5mm/158g)より小型に思えるが、大分厚めとなっているなっている。この辺りは好みが分かれるところだろう。 本体は、前面にメニューボタンと十字方向の基本操作ができるRio Stickを装備。右上端にはロータリーホイールも備えている。上面に電源とヘッドフォン出力、左側面に、ボリュームボタンとホールドボタンを装備。底面には、ドック接続用の専用端子と、USB 2.0、DC入力などを備えている。
クレードルには、専用端子とUSB端子、Ethernet端子を備えており、音楽データの同期などが行なえるほか、ACアダプタと接続して充電ドックとしても利用できる。また、アナログ音声出力も備えており、外部機器へのオーディオ出力が行なえる。
■ 転送はUSB 2.0が高速。操作感は良好
早速オーディオデータを転送してみる。オーディオ転送ソフトは、Rio Nitrusなどと同様にRio Music Manager(RMM)が付属する。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XP。 また、RioのサイトではJavaアプレット形式の転送ソフト「Rio Music Manager Lite(RMM Lite)」も公開している。RMM Liteは、Windowsのほか、Mac OS X(Java1.4.1)、Linux(Java1.4.2)など、Java VMの動く環境があれば利用できる。 本体とPCをUSB 2.0で直結してオーディオ転送が行なえるほか、付属のドックを利用することで、USB 2.0のほか、Ethernet経由での転送にも対応する。これは、ドックがDHCPクライアント機能を有しているためで、Ethernet経由の転送は同一サブネット内であれば、特に設定無しに行なえ、簡単に転送できる。 Windows環境の場合は、USBとEthernet経由でRMMを利用し、その他のOSの場合は、RMM Liteにより、Ethernet経由で転送を行なうといった形だ。Windows環境では、RMMのほかにもRealOne PlayerやWindows Media Playerなどからもデータ転送が行なえる。7.2GBのデータを転送した際の転送時間はRMMが1時間56分(100BASE-TX/Ethernet)/31分20秒(USB 2.0)、RMM Lite(Ethernet)が2時間19分。 【お詫びと訂正】 なお、RMM Liteの利用にはJava VM環境が必要となるほか、本体側でも、転送前にメニューの[機能]から、[Webインターフェイス]を選択し、表示されるIPアドレスをパソコン側で打ち込む必要があるなど、ネットワークの知識が無い人にはやや敷居が高いかもしれない。ただし、これにより多くのプラットフォームでも利用可能になるというのは大きなセールスポイントと言えるだろう。 オーディオデータの作成はRMMで行なえるが、MP3の作成には対応せず、WMAと、Ogg Vorbis、FLACが選択できる。MP3の作成にはほかのエンコードソフトが必要となるが、最近はフリーのMP3エンコードソフトも見られるようになったので、不便はないだろう。
■ 操作感は良好。充実の再生機能
上面のボタンで電源投入すると約2秒程度で起動する。再生/停止などの本体の基本操作は「RioStick」で行ない、RioStick脇のメニューボタンで本体設定やメインメニューの呼び出しなどが行なえる。また、右上端のロータリーホイールもメニュー操作や決定動作、早送り/戻しなどに利用できる。 メニューボタンは、メインメニューの呼び出しのほか、Rio DJ機能の呼び出しなど、各種機能への割り当ても選択できる。操作レスポンスは良好で、階層の上下などは1秒程度、曲を選択した際の再生には3秒弱かかることもあるが、曲送りなどの動作は軽快だ。
操作はわかりやすく、特に戸惑うところは無かった。オーディオデータは、タグ情報を認識し、アルバム/アーティスト/トラック/ジャンル/年代別の振り分けに対応する。RMMで作成したものであれば、WMA、Ogg Vorbis、FLACともにきちんとタイプ別に振り分けができる。 アルバムやアーティストごとの振り分けでは、アルファベット/かな順などでソートされ、わかりやすい。また、大型の液晶を採用しているため、一覧性は非常に高く、再生情報の確認画面では最大9行までの表示が可能だ。
また、再生画面も、再生状態表示のほか、VUメニューを模したインターフェイスも選択でき、なかなか面白い。さらに、シャッフル再生や、リピート再生のほか、RMMで作成したプレイリストの再生や、本体でのプレイリスト作成も可能など、再生機能は非常に充実している。 その中でも面白い機能は、Rio Riotなどでも搭載していた「Rio DJ」だ。これは、特定の条件に合わせてプレイリストを自動作成する機能で、「楽しみたい(Entertain Me!)」、「全曲再生(Play All)」、「マイベスト(Top Tunes)」、「新着音楽(New Music)」、「メモリーレーン(Memory lane)」、「あの頃の…(Sound of…)」、「忘れられた名曲(Forgotten Gems)」、「デジャヴ(deja vu)」、「ランダムミックス(Randam Mix)」の7つのモードが用意されている。 それぞれのモード内容は以下の通り。
■ 音質は良好。付加機能も充実
付属のヘッドフォンは、Sennheiserの「MX300」。単品販売もされており、実売で1,000円台から販売されているものだが、バランスの良い音質で定評のあるインナーイヤフォンだ。同社のRio Nitrusや、iRiverのシリコンオーディオプレーヤーなどでも採用している。 まずは、MP3を再生してみる。再生性能は良好で、特に高域の解像力はポータブルプレーヤーとしては非常に高い。特に弱点らしいポイントも無く、より高品質なヘッドフォンに変更しても、そのヘッドフォンの実力をきちんと出してくれる感じだ。 また、WMAのほか、Ogg VorbisやFLACもサポート。Ogg Vorbisは、特許料などの必要ないオープンソースコーデック。同一ビットレートであれば、MP3よりも音質がよいということを謳い文句にしている。 一方のFLACもオープンソースの可逆圧縮フォーマット。可逆圧縮フォーマットは、古くは、SONICのPerfect Clarity Audio(PCA)、最近ではWindows MediaのLosslessなどがあるが、ポータブルプレーヤーで採用された例は聞かない。当然FLAC対応プレーヤーはRio Karmaが世界初となる。FLACのエンコードもRMMで簡単に行なえ、約277MBのCDで約171MBと、約782MBのCDで約492MBと、WAVのオーディオデータと比較して2/3程度の容量に圧縮された。 音質については、Ogg VorbisとMP3、WMAには同一ビットレートであれば、聴感上顕著な差を感じなかった。FLACでは音の消え際などに若干の違いが感じられたが、さほど大きく違うという印象は受けなかった。
イコライザは、ノーマル/ロック/ジャズ/クラシック/ポップス/トランスの6モードとEQ OFF、Bass/Treble、カスタムモードが3モード用意される。 また、Rio Nitrusと同様にストップウォッチ機能を搭載する。ストップウォッチは、RioStickを押し込むことで、スタート/ストップが行なえる。ラップも取れるなどストップウォッチとしての機能もなかなか充実しており、音楽を再生しながらストップウォッチ機能も利用できるなどの仕様はNitrusと同様。また、付属のデータ用ソフト「Rio Taxi」によりデータストレージとしても利用可能だ。 バッテリは内蔵リチウムイオンで、電池持続時間は最大15時間。約14時間連続再生したところで停止となったので、ほぼカタログ値通りの再生時間といえるだろう。
■ デザインが気に入れば「買い」 全ての機能を理解するのは一苦労といった感じで、とにかく機能は充実している。強いていえば、他のプレーヤーでは録音機能や、FMチューナ機能を備えているものもあるが、個人的にはさほど必要と思わない。これだけ高機能ながら、操作性は比較的わかりやすく、レスポンスもいいので、非常に気持ちよく利用できる。 対応フォーマットの数や、機能の豊富さなどは、HDDオーディオプレーヤーとしては最高レベルといえるだろう。また、Rio DJなど使い込むほどに利用価値が高まる機能を搭載するなど、製品ユーザーと長く楽しめそうな機能も面白い。音質も良好で、Ethernet対応によるマルチラットフォーム化もユーザーにとってはうれしいところだ。個人的にはドックにオーディオ出力が付いていて、簡易ジュークボックス的に使えるところも気に入った。 欠点らしい欠点は見当たらず、強いて言えば40GBなどの大容量モデルがあればよかったのでは? と思うくらい。もっとも、40GBの1.8インチHDDは厚みが増してしまうため難しいのだろう。価格も43,800円とiPod 20GBやgigabeat G20、iHP-120などと比較しても高くないので、高機能を求めるユーザーであれば、「買い」といえるプレーヤーだと思う。 選択に悩むとしたらデザインとサイズだろう。さほど大きいというわけではないが、29mmという厚みは、微妙に収まりが悪く、収納場所に困ってしまう。また、丸みを帯びたデザインとグレーと黒を基調にしたカラーリングは、評価の分かれるところだ。 ともあれ、大型液晶ディスプレイの視認性の高さや、機能の豊富さは文句なしにクラストップレベル。年末に向けてHDDオーディオプレーヤーの購入を検討している人には、有力な選択肢の登場と言えそうだ。 □Rio Japanのホームページ (2003年11月28日)
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