■ ソニーから登場した低価格ノイズキャンセリングヘッドフォン 通勤/通学時に音楽を聴いている方であれば同意していただけるだろうが、移動中の音楽鑑賞で最大の敵とも言えるのが、電車の走行音などの騒音だ。 環境音などの騒音に対する手立てとして手っ取り早いのは、「音量を上げて聞く」ということだが、耳にも悪いし、なにより音漏れなどで周囲に迷惑をかけてしまう。ということで、考えられる対策としては、耳栓型ヘッドフォンを使うことと、いわゆる「ノイズキャンセリングヘッドフォン(NCヘッドフォン)」の使用だろう。 耳栓型はその名の通り耳穴を塞ぐようにイヤフォンを装着し、外部の環境音を遮断するもの。一方のNCヘッドフォンは、「周囲の音と逆相の音を出すことによって、ノイズを低減する」もので、弊誌でもかつてSennheiserの「PXC 250」や、BOSEの「QuietComfort2」をはじめ、ソニーや松下の低価格製品までかなり多くの製品をレビューしてきた。 そして今回取り上げるのは、ソニーから発売された低価格ヘッドフォン「MDR-G94NC」。購入価格は6,560円(10%ポイント還元あり)。先にあげた「PXC 250(実売19,800円)」や、「QueitComfort2(実売39,800円)」より大幅に低価格であり、ハウジング部に電池と消音ユニットを搭載と、小型かつコストパフォーマンスに優れた製品だ。 ■ NCユニットをハウジングに内蔵
パッケージは小型のブリスターパッケージ。同梱品は取扱説明書のほか、1mの延長コードのみとシンプルだ。 ネックバンド式のオープンエア型で、可動式のネックバンドを採用。携帯時には小さく折り畳むこともできる。ハウジングは曲面を多用し、羽をモチーフにしたような独特の形状となっている。 左ハウジングに単4乾電池を収納、ノイズキャンセルのON/OFFは、右ハウジングのスイッチで切り替える。左右のハウジングにマイクを内蔵し、このマイクから拾った音の逆相を再生音とミックスすることで、ノイズキャンセルを実現している。NCヘッドフォンでは、NC専用ユニットをヘッドフォン外部に持っているものが多いが、「MDR-G94NC」はハウジング内に消音ユニットを内蔵している。 重量は約85gで、ドライバは30mm径のドーム型。再生周波数帯域30Hz~15kHz、雑音抑圧周波数帯域は50Hz~12kHz。インピーダンスはNC ON時で24Ω、NC OFF時で45Ωで、感度は100dB/mW(ON)、98dB/mw(OFF)となっている。ケーブルは、約0.5mのOFCリッツ線の片出しで、約1mの延長コードが付属。コードは布巻き仕様だ。
■ 音質はイマイチだが、NC効果はかなり高い
ネックバンドを首の後ろに回し、耳を挟む形で装着する。側圧はさほど強くなく、程よいホールド感が得られるが、イヤーパッドの素材感が多少チープで、ざらついているのが残念なところ。ハウジングはやや大きめで、耳をすっぽり覆うようにホールドする。 NC機構をハウジングに内蔵したヘッドフォンとしては小型な部類だが、大きめで耳をすっぽり覆う程度の大きさがあるので、デザイン的にも似合う人/似合わない人が分かれそうだ。 まずはNC機能をOFFにして、ヘッドフォンとしての性能をテストした。iPodで音楽を再生したところ、低域全般の弱さがやや気になった。特にバスドラやベースの量感、スピードなどにやや不満が残る。中高域には大きなクセは感じないものの、情報量はさほど多くない。2,000~3,000円程度で販売されているオープンエア型のポータブルヘッドフォンといった印象だ。
NCをONにすると、やや低域が強調され、その代わりに若干高域の解像感が落ちているようにも感じる。クラシック系のストリングスや音密度の高いソースではOFFの方が良いが、ロックやポップスの場合、ONにして聴いたほうが気持ちよく感じることも多かった。 NC機能の効果は、編集部や自宅で利用した際にはあまり感じなかった。しかし、いざ地下鉄に乗ってみるとノイズ低減効果はかなりに大きい。特に、電車通過時の「ゴー」という共鳴音などの多くの部分をカットでき、音楽をしっかりと聞くことができる。非連続的なロードノイズに関しては、PXC 250ほどの効果はないが、それでもON/OFFで比較すると大きな違いがある。 ただし、オープンエア型で、耳との密着度も低いので、かなりの外界音が入ってくる。そのため、NC効果は十分なのだが、NCヘッドフォンとしては、ややボリューム設定は高めになる。イヤーパッドやユニット形状の改良でもう少し環境音を遮断できたほうが、より快適だったと思う。 そのほかに若干気になった点は、ノイズキャンセル機能利用時に、曲の無音部や電源をOFFにした際に逆相成分が知覚できてしまうこと。PXC 250やQuiet Comfort2などでもNCのON/OFF時には感じられたものだが、MDR-G94NCではその立ち消え方にやや独特の感触があり、妙に耳に残るのだ。慣れればさほど違和感はなくなるのだが、最初は若干戸惑った。
また、ケーブル長はリモコンに接続することを想定して50cmと短く、首掛け型のシリコンオーディオプレーヤーなどで使用する際もちょうどいいかもしれない。バッグなどに入れたプレーヤーにリモコンを介さずに直結する場合は、付属の延長ケーブルを使用することになる。 電池の持続時間はマンガン電池で約20時間、アルカリ電池で約40時間(カタログ値)。実際にマンガン電池で10時間以上利用しても効果の低下は見られなかった。ただし、ON/OFFスイッチの場所が見えにくいこともあり、切り忘れには注意が必要だ。 なお、低価格なNCヘッドフォンで以前良く見られたような携帯電話との干渉はほとんど無かった。 ■ この「デザイン」は? NCヘッドフォンとしての性能にはそれなりに満足いくが、通常のヘッドフォンとしての性能をもう少し求めたいところ。地下鉄用としては満足だが、もう少し音質が良ければ、静かな場所や自宅でのリスニングなどでも併用できて良かったと思う。 では、地下鉄では常用するか? と言われるとそれもまた微妙。というのも、機能、価格対性能的には満足なのだが、装着した姿を思い浮かべると、ちょっと悩ましい。本体のデザインは格好いいのだが、いざ自分で付けてみると、「奇抜すぎて恥ずかしいかも……」という感じ。このあたりは感性や趣味の問題だが、いずれにしろ「人を選ぶ」デザインだとは思う。 競合製品は、PXC 250よりも、耳栓型ヘッドフォンなどの方が価格ターゲット的には近いだろう。耳栓型が苦手な人で、5,000円~1万円以内でNCヘッドフォンを、と考えれば、現状ではほとんど唯一の選択肢といえる。そういう意味ではかなり稀有な存在だ。しかし、この製品を選択するにあたっての最も重要な要素は、「自分に似合うか」ということではないかと思えてならない。 □ソニーのホームページ (2003年11月21日)
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