■ プレーヤーとしての性能にも注目 計6機種をラインナップする今冬の東芝製レコーダのうち、注目度が高いのは、やはり「ネットdeナビ」対応の「RD-X4」と「RD-XS41」だろう。 量販店などでの店頭価格は、X4が17万円弱、XS41が12万円弱といったところ。録画関連の機能はほぼ同等で、ぱっと見でわかるX4のみのプレミアムは、GRT(ゴーストリダクション)とD1入力の装備、D5モニター機能くらいだ。ただし、RD-X3の後継機だけあり、X4の再生画質へのこだわりは注目に値する。 たとえば、X4が216MHz/12bitの映像DACと動き検出型のIP変換回路を採用するのに対し、XS41では、映像DACが54MHz/10bit、IP変換が適応型にグレードダウンしている。 また音質面でも、X4ではDACに192kHz/24bitのTI製「PCM1737E」を採用し、さらにトロイダル型トランスや低インピーダンスコンデンサなど、高コストなパーツを投入。背面のステンレスパネルやインシュレータにも、XS41にはない物量至上主義的な思想が感じられる。
現在、216MHzの映像DACを搭載するレコーダとしては、X4以外にパイオニアの「DVR-710H」が挙げられる。DVDプレーヤー/レコーダの映像DACは27MHz→54MHz→108MHzと世代を重ね、現在最高水準といえるのが216MHzだ。国産の高級再生専用プレーヤーの選択肢が少なくなっている今、X4と710Hはシアター派にとっても気になる存在だろう。 というわけで、今回はX4とXS41の再生画質を比較しながら、プレーヤーとしての能力を試してみた。なお、レコーダとしての基本機能はほぼXS41と共通なので、小寺信良氏によるXS41のレビューを参照してほしい。
■ ダイナミックレンジ、解像度がすばらしい
まず、DVDビデオで見比べてみた。両機種ともサエクのコンポーネントケーブルで日立のW32-PD2100に出力している。画質調整はとりあえず「標準」で揃え、一通り見た後に若干の調整を加えている。再生NR(ノイズリダクション)は利用していない。 比べてみると、微妙に表現が異なる部分が目に付いた。特に、原色の飽和度、明部と暗部の階調性、ダイナミックレンジ、ワイドショットの精緻さ、ノイズの抑え込みに着目するとわかりやすい。X4はどれも優秀で、「プレーヤーで再生画質がここまで変わるのか」と改めて驚いた。 いくつか見たDVDの中で、最も差を感じたのは「マトリックス・リローデッド」だ。このタイトルは黒側を急峻に落としてコントラスト感を上げているように見えるソフトで、たとえばキアヌ・リーブスのマオカラーコートなどは、XS41ではうまく調整しないと、べたっとした黒一面に見えてしまう。一方、X4ではそれなりに階調が確認でき、素材感やひだの動きも判別できる。 また、X4で視聴して初めてわかったのが、登場人物のサングラスごとに、映りこみや反射面の色、きらめき具合などがはっきりと異なること。ほぼ全員が濃いサングラスをかけているだけあってか、サングラスの撮影はかなりこだわっているようだ。映りこみが細かくなっているため、白側の階調性もXS41より有利なようだ。
原色については、XS41が飽和気味なのに対し、X4は階調を保ったまま。ドゥカティの赤も(緑のフィルターを通した見た目ながら)X4の方が記憶色に近い。人肌はきめ細かさでX4に分があるが、頬に自然な赤味を加えるXS41も面白い。
比較的暗いシーンの多い「スパイ・ゾルゲ」では、部屋の隅に現れるノイズで差が出た。すっきり奥まで解像するX4に対し、XS41では壁に沿ってマゼンタの色ノイズが見える。また、X4の解像感はすばらしく、銀座の服部時計店(現銀座和光)などのCGによるワイドショットの場合、かなり細部まで解像する。 最近のDVDビデオソフトなら、エッジ強調は両機種ともOFFでかまわないだろう。また、ノイズの少ないX4の場合、各種DNRも必要性をあまり感じない。発売が古めのソフトのみ使うことになりそうだ。 地上アナログを録画したDVD-RAMも両機種で再生してみた。録画はX4で行ない、録画設定はGRTあり、録画NR強。ビットレートはSP(4.6Mbps)とマニュアル9.2Mbpsのものを用意した。 番組はスタジオ収録の民放バラエティで、同じプログラムながら、XS41は色温度が低めになる。また、黒側がストンと落ち、髪の毛などがべたっとした印象になる。特にSP録画の番組では気になった。肌にはわざとらしくない程度に赤味が差し、セットなどの色は濃い目に出るようだ。SPでは全体的な解像感が若干物足りないが、9.2Mbpsなら十分なクオリティといえる。 一方、X4はダイナミックレンジが広く、きついライトの下ながら白とびも少ない。黒側の階調も豊かで、髪の毛のつやも自然だ。解像感も高く、輪郭も問題がない。もっとも、先にX4での映像を見ていない限り、XS41でも不満を覚えることはないかもしれない。 なお、DVDビデオの音質に関しては、DTSよりもドルビーデジタルで変化した。X4の方が全体的に中高域がしまり、セリフが聞きやすくなる。「マトリックス・リローデッド」では、ハイハットやシンセブラスがクリアで力強くなった。レンジも少し広がるようだ。アンプやスピーカーの環境次第ではより威力を発揮するだろう。
X4とXS41のGUIは良く似ている。録画に関わる部分は、一部を除いてほとんど同じだ。ただし、初期設定メニュー内の「映像調整」が両者で異なっており、X4の方が細かい調整に対応できる。具体的には右上表の通りで、パラメータは1段刻みで変更できる。X41では赤の飽和が気になるケースが多いが、「色の濃さ」を下げることである程度改善できた。どちらも設定値は「設定1」、「設定2」、「設定3」にそれぞれ記録可能だ。
■ まとめ
まず、予約録画の直前や録画中は、録画画質はもちろん、再生画質設定も変更できない。無理に操作しようとすると、画面中央に「まもなく予約録画が開始されるのでこの操作はできません」と大きな警告表示が出る。 また、ディスクの読み込みが遅いのも気になる。ディスクによって異なるが、DVDビデオの場合、20秒くらいかかるときがある。DVD-RAMはさらに遅く、プログラム数が多い場合は、30秒~1分近く待たされることも多い。チャプタスキップなどの動作もまったりしており、キビキビと動く最近の再生専用プレーヤーに比べると違和感がある。 また、最近の再生専用プレーヤーで採用例の多い、ディスク取り出し後に次回の再生位置を記憶する「ディスクリジューム」機能もない。リモコンのボタンは自照でも蓄光でもないのも不満だ。なお、フロントパネルの各種LEDやFL表示がデフォルトではまぶしいが、リモコンの表示窓切換ボタンを5秒以上押しつづけることで、明るさ2段階で切り替えられ、消灯することも可能。この点は、明るさを調整できないRD-XS41に比べ、RD-X4の方がホームシアター用途を意識しているのだろう。 なお、X4とXS41で異なる録画機能のうち、ウェイトが高いのがGRTとD1入力だ。GRTは環境によっては必須の機能だ。また、D1入力とS映像入力を録り比べてみたところ、若干D1の方が輪郭がすっきりしており、階調不足も感じなかった。さらに、ハイビジョン環境にあるなら、「D5モニター」も利用できる。価格差はあるものの、これらが必要なら、一考する価値があるだろう。
さらに、X4とXS41の違いとして、来春にも始まるという有償バージョンアップが挙げられる。今のところわかっている追加機能は、「DEPG」(単体でのEPG予約録画機能)、「フォルダ機能」、「DVD-RWのVRモード記録」など。具体的なスケジュールや価格は未定だ。
□東芝のホームページ (2003年12月18日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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