~ 「i88X」、「mLAN16E」から第2世代mLANの可能性を探る ~ |
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一方、音楽制作機器新製品は、以前にも少しふれた「i88X」と「mLAN16E」というmLAN関連の2製品。いずれも1月に米国で開催されたNAMM Show 2004で発表されていたものだが、国内において正式に発表されるのは今回が初。3月25日発売ということで、すでに出荷が開始されている。
■ 新登場の第2世代mLAN対応製品
i88X |
i88Xは1Uラックマウントタイプのオーディオインターフェイス。18IN/18OUTという仕様で、第2世代のmLAN対応だから、O1Xなどと接続することで、その威力を余すところなく発揮できるものとなっている。
18IN/18OUTの内訳は以下のとおりだ。
またadatの仕様上、8ch使えるのはサンプリングレートが44.1kHzか48kHzの時となり、88.2kHzまたは96kHzの場合には半分の4ch、トータルでは14IN/14OUTという形になる。
アナログの8chについては、Input1/2がXLRとTRSフォーン兼用のコンボ端子。さらにこれらはファンタム電源対応でマイクプリアンプ内蔵。このマイクプリアンプはDM2000直系という高品位のものだ。またInput1についてはギターやベースと直接接続可能なハイインピーダンスにも対応している。そしてInput3~8はTRSフォーンで、すべてバランス対応となっている。
一方、出力はOutput1~8すべてTRSフォーンとなっていて、Output1/2はマスターアウトのL/Rと兼用。またS/PDIFの入出力はともにコアキシャル。ただし、adat端子をS/PDIFのオプティカル入出力として利用することも可能となっている。なお、このオプティカル端子を通常のadatとして利用するか、4chのダブルモードのadatにするか、S/PDIFにするかはフロントパネル右側のスイッチで切り替えられる。
そのほかにMIDIの入出力も1系統装備したというのが、i88Xの概要だ。機会があれば、このi88Xのアナログ特性などを計測してみたいと思うが、今回は発表会場で見ただけなのでそこまでの検証はできていない。
なお、i88XにもO1Xと同様にプラグインエフェクトが標準で装備されている。具体的には、O1X本体のチャンネルモジュールと同じ機能をソフトウェア化したO1X Channel Module、ボーカルプロセッシング用のマルチエフェクトであるVocal Rack、ボーカルのピッチを補正するPitch Fix、そしてマスタリング用のマルチバンドコンプのFinal Masterの4種類。いずれもWindows用およびMac OS 8.6~9.2のVST 2.0プラグインとして、またMac OS X用のAudio Unitsとして利用できる。
O1X Channel Module | Vocal Rack |
Pitch Fix | Final Master |
mLAN16E |
さて、このi88Xとともにもう1つ登場したmLAN機器が、拡張ユニットであるmLAN16E。これまでもmLAN8Eというものがあったが、これは第1世代製品であるため、O1Xやi88Xとの互換性はないので注意が必要だ。
このmLAN16Eはスペック的にはオーディオが16IN/16OUT、MIDIが6PortIN/6PortOUTという仕様になっているが、現在接続できるのはMOTIF ESのみ。今後、mLAN16Eを搭載可能な機器は増えてくると思われるが、MOTIF ESで使う場合にはMOTIF ES側の制限によりMIDIは4PortIN/4PortOUTとなる。
スペックだけを紹介するとこれだけのことなのだが、O1Xを含めi88X、mLAN16Eの面白さはmLANで接続して初めて見えてくる。mLANというのは、以前のインタビューの際にも紹介しているとおり、IEEE 1394を使って各機器間を接続し、オーディオやMIDI信号をやりとりするというものだ。たとえば、PCとO1X、i88XそしてmLAN16E搭載のMOTIF ESをそれぞれIEEE 1394ケーブルで接続しておくとしよう。この接続はどんな順番に接続していてもOKで、つながってさえいればいい。
mLAN16EとMOTIF ESを接続 | mLAN16Eの接続例 |
ここで、PC上で、今回リリースされたmLAN Graphic Patchbayという設定用のアプリケーションを起動させる。すると、接続されている機器がすべて画面上に表示されるのだが、ここで、画面上で自由に配線すると物理的には何の設定もしなくも、その配線通りに信号が流れるようになるのだ。
このmLAN Graphic Patchbayにはオーディオの画面とMIDIの画面、そしてワードクロックの画面が用意されているが、オーディオ画面で設定すれば、その通りにオーディオ信号が流れる。たとえば、MOTIFにはアナログのオーディオ入力端子があるが、それをO1Xへ接続し、ここのEQを通した上で、PCに入力してレコーディングをするといった設定が、画面上の操作でできてしまう。もちろん、この際にハードウェア的には何も変えなくていい。信号は1チャンネルだけでもいいし、複数チャンネル同時に流しても大丈夫。
mLAN Graphic Patchbayのオーディオ画面 | mLAN Graphic PatchbayのMIDI画面 | mLAN Graphic Patchbayのワードクロック画面 |
同様にMIDIに関しても複数ポートを同時に扱え、どのようにもルーティングできる。一方、ワードクロックについては、接続した機器のうちどれをクロックの供給源にするかというもの。PCをマスターに設定すれば、接続された機器のクロックはすべてPCに同期するし、i88Xに設定すれば、i88Xに同期する。
ここでは、4つの機器を接続する例を示したが、もちろん、PCとi88Xの2つだけを接続することも可能。こうすれば、一般のオーディオインターフェイスと同じ関係になり、単なるオーディオインターフェイスとして機能することになる。
また、前回のインタビューの中で、PC同士のmLANの可能性についても触れたが、現時点ではできないという。というのも、mLAN Graphic Patchbayは2台目以上のPCが存在することを認めておらず、もし繋いでも画面に表示されないようになっているからだ。mLAN Graphic Patchbay自体はすでにヤマハのWebサイトで公開されているので、試しにi88XやO1Xが接続されていない2台のPCに、mLAN Graphic Patchbayをインストールし接続してみたが、お互いを認識することはできなかった。
■ Mac OS XにもOSアップデートで対応
ところで、このmLANの対応OSは、これまでWindows 2000/XPとMac OS 8.6~9.2であり、Mac OS Xには近日対応とアナウンスされていたが、その後どうなったのだろうか。実は3月15日にAppleからリリースされたMac OS X v10.3.3にmLANドライバが搭載された。これはヤマハとAppleの共同開発で、mLANがOS Xの標準機能となったことを意味する。ただ、O1Xやi88XなどをFireWireで接続すれば、即使えるというわけではないようだ。
Mac OS X v10.3.3でmLANをサポート |
ヤマハからmLAN Graphic Patchbayほか、いくつかのツールがWeb上で公開されているので、これらをインストールするとともに、それぞれの機器用の設定ファイルをインストールする必要がある。発表会のあった3月23日時点ではO1Xでしか使えなかったが、その後i88XおよびmLAN16Eでも使えるようになっている。
なお、この第2世代mLANでネットワークを組めるのは、ヤマハのO1X、i88X、mLAN16E以外にもいくつかある。具体的には以下のようになる。
FireStationについては以前、紹介したことがあったのでおわかりのとおり、これらは第1世代のmLAN製品だ。これらがなぜ第2世代に接続できるのかというと、各社からファームウェアのアップデータがリリースされており、それを入れることによって第2世代化するからだ。ただし、ハードウェア的にはいずれもIEEE 1394のS200、つまり200Mbpsの規格となっている。したがって、これらを接続すると、S400で動作する第2世代mLANもすべてS200に落ちてしまうのは仕方ないところだろう。
なお、これまでヤマハからリリースされていた第1世代mLAN製品であるmLAN8E、mLAN8P、mLAN-EX、CD8-mLAN、MY8-mLANに関しては、ファームウェアアップデートという手段を持たないため、残念ながら利用することはできない。
以上、mLAN新製品2機種と、最新のmLAN事情について紹介したがいかがだっただろうか。使い勝手に関する実感はまだないが、FireWireケーブル1本でこれだけ自由にルーティングできるのはかなり面白そうだし、使えそうだ。機会があれば、これらを使った実験なども行なってみたい。
□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□製品情報(i88X)
http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/p/mlan/i88x/
□製品情報(mLAN16E)
http://www.yamaha.co.jp/product/syndtm/p/mlan/mlan16e/
□関連記事
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040304/dal135.htm
【2003年12月15日】【DAL】ついに出たmLAN製品の本命!
~ mLAN対応デジタルミキサー「ヤマハ 01X」を試す ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20031215/dal126.htm
【2003年3月24日】【DAL】mLAN対応オーディオインターフェイス「FireStation」を試す
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030324/dal93.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030331/dal94.htm
(2004年3月29日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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