~ CarryOn Music ver.4に見る楽曲認識の未来 ~ |
CarryOn Music ver.4.00 |
Gracenoteは米国企業であるが、MusicIDを搭載した世界初のアプリケーションが日本メーカーから、日本語のソフトとして登場した。それが、オンキヨーのCarryOn Music ver.4.00なのである。
ご存知の方も多いと思うが、CarryOn Musicは「SE-U55X(S)」などオンキヨーのオーディオインターフェイス、WAVIOシリーズなどにバンドルされているアプリケーション。いわゆるジュークボックスソフトで、MP3やWMA、WAVなどの音楽ファイルを管理、再生、録音できる。その最新版にMusicIDが搭載された。
CarryOn Music自体は、オンキヨーとデジオンが共同開発された製品だ。仕様設計、デザインなどはすべてオンキヨーが行ない、実際の実装やコーディングはデジオンが行なうという形になっており、それは今回のver.4.00でも同様。
インストール時にハードウェアが認識されないと、エラーが出てインストールできない |
では、ハードウェアは不要だが、MusicIDのためにこのソフトを使いたいというユーザーは利用不可能なのかというと、そうではないらしい。オンキヨーの直販サイトであるオンキヨーサイバーショップe-onkyoでは、「COM-350RP」という製品が6,800円で販売されている。
ライセンス料の問題なのか、バンドルはされない |
■ 認識率は上々
では、実際のところ、どれだけの認識できるか試してみよう。今回は、CarryOn Musicそのものの機能については特に触れないが、ver.4.00も以前ver.3.70のものもそれほど大きく変わっていないようだ。
録音後、画面右側にあるボタンをクリックすると楽曲の認識と情報取得がメニューに入る |
次に、画面右側にあるボタンにマウスを持っていくと、「Gracenote MusicIDから情報を取得」との表示が出るので、ここをクリック。
すると、まずは現状の何も情報が入っていない状態が表示されるので、このダイアログで「検索」ボタンをクリックする。自動的にGracenoteのサイトへアクセスするとともに数秒で結果が返ってくるので、改めてトラック情報を見ると、確かにしっかりデータが入っている。
検索ボタンをクリックするとGracenoteのサイトへアクセスし、数秒で結果が返ってくる | トラック情報 |
既存のMP3ファイルでも問題なく認識してくれる |
確かに、手元にあるMP3ファイルなどで試したところ、かなりの認識率で、著名な洋楽、邦楽はもちろんのこと、インディーズのアルバムに入っていた曲までも認識したのは驚きだった。ただ、すべて何でもOKというほどではなく、メジャーレーベルのものでも、ヒットしないものもあった。
でも、なぜ、そんなに多くの情報が登録されているのかというと、MusicIDが組み込まれたのは今回が最初だが、サウンド指紋を生成し、それを登録するソフトはすでに存在していたためだそうだ。具体的には以前にも紹介した、フリーウェアのQuintessential Playerなどで、これらでMP3にエンコードし、サウンド指紋の生成と登録を行なっていたたため、既にこれだけのデータベースが構築されているとのこと。
なお、検索結果が必ずしも1つにならないというのも面白いところ。たとえば、複数になるとHitのところに1以外の数字が表示され、「選択」ボタンがクリックできるようになる。これをクリックすると、複数の結果から選択できるようになる。
時には複数の楽曲候補が出ることも。その場合は、複数の候補の中から、正しいものを選択できる |
■ 15秒あれば認識可能?
録音の実験を試していた気づいたのだが、曲全体ではなく、冒頭部分だけでも認識してくれたのには驚いた。ためしに、どれくらい短くて動作するのか試してみたところ、5秒や10秒では、そもそも検索しに行ってくれない。15秒を越えてはじめて、検索を行なうようだ。認識可能な曲なら15秒でほぼ100%認識してくれた。続いて、頭が欠けたものだとどうなのかも試した。曲の中間をやはり15秒ほど抜き出して実験したところ、今度はうまくいかない。さらに30秒程度にしてもうまくいかなかった。そこで、曲の冒頭の一部だけをカットして実験してもやはりダメ。どうやら、MusicID(もしくはCarryOn Musicの仕様?)では、曲の頭からでないと認識しないようで、頭からスタートしていれば15秒程度で認識する。つまり、TVや街頭で流れている曲の一部を録音して、何の曲か調べるといった使い方には向かない。
なお、先日Gracenoteの日本支社で、別のデモも見せてもらった。それは「モバイルMusicID」というもので、米国のある電話番号にかけて、電話口で鳴っている音楽を聴かせると、曲を当ててくれるというユニークなサービスだ。
こちらは、サウンド指紋が1曲で64ByteというMusicIDと異なり、6秒で20KBほど必要とする別の技術だが、店や街中で流れている曲の曲名を知ることができるという画期的技術である。これに関する国内でのサービス開始のアナウンスはされていないが、こんなことが実現すれば、音楽の楽しみ方に新しい世界が開けそうだ。
□オンキヨーのホームページ
http://www.onkyo.com/jp/
□ニュースリリース
http://www2.onkyo.co.jp/what/news.nsf/view/com_v400?OpenDocument
□Gracenoteのホームページ(英文)
http://www.gracenote.com/
□関連記事
【3月4日】オンキヨー、アナログ録音したデータから曲名取得できるオーディオソフト
-GracenoteのMusicIDに世界初対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040304/onkyo.htm
【2003年6月9日】【DAL】CDDBの運営元、「Gracenote」の歴史と今後
~ 日本法人設立の意図と新技術「MusicID」 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030609/dal103.htm
(2004年3月22日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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