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ユニークなDVDプレーヤー一体型液晶テレビ
東芝 「SD-P5000」
発売:8月16日
販売価格:9万円前後


■ 15V型液晶テレビ+ポータブルDVDプレーヤー

3スタイルに変形できる

 東芝のSD-P5000は、15V型の液晶テレビとポータブルDVDプレーヤーを合わせたような、不思議な製品だ。これまでにもDVDプレーヤー内蔵の液晶テレビはいくつかあったが、ディスプレイを折りたたんで持ち運べるのは珍しい。持ち運べるといっても5.3kgと重く、バッテリも別売なので、家庭内の部屋間・部屋内での移動が主体となるだろう。

 ディスプレイとDVDプレーヤーはアームで取り付けられ、2カ所のヒンジで角度を調整できる。松下電器製のポータブルDVDプレーヤーが良く採用しているデザインで、視聴時の自由度の高さが特徴だ。

 画面を手前に突き出すスタイルをとると、狭い机の上では場所をとらず、寝転んで観るときはディスプレイを視聴者に近づける働きもある。松下電器製ポータブルDVDプレーヤーを試用したときも便利だと思ったが、サイズの大きい15V型ディスプレイだとさらに有用だと感じた。また、180度開くと背面が水平になり、壁掛けも可能になる。

 ただしアームの上下2箇所のヒンジのうち、上はスライド式のストッパーが付いており、外すには結構な力が必要。また、ヒンジが硬く、微妙な角度調整は思ったより難しい。15V型というポータブル機としては大きく重いディスプレイなので、動きの硬さは安全対策なのだろう。また、持ち手がないのも惜しい。ただでさえ重いので、あった方が可搬性を高められたはずだ。

DVDトレイ ディスプレイ背面

 DVDプレーヤー部は、DVDビデオ、音楽CD、ビデオCD、CD-R/RWの再生に対応。CD-Rに記録したMP3、WMA、JPEGの再生に対応する(CD-RWはCD-DAのみサポート)。VR形式やDivXといったフォーマットには対応していない。

 入出力端子も装備しているが、ポータブルDVDプレーヤーによくある映像出力端子が一切ない。代わりに、映像入力としてD1、S映像、コンポジットを装備。この辺に「液晶テレビ」としての主張を感じる。なお、音声出力は光デジタル音声端子を搭載し、DVD音声のビットストリーム出力やPCM変換出力に対応している。

左側面。ヘッドフォン×2、画質調整、+/-ボタン、DC INを装備 右側面はアナログ2ch音声出力、D1入力、電源ボタン 背面。アンテナ、S映像、コンポジット、アナログ音声の各入力、光デジタル出力を搭載


■ 自然な色再現と広いダイナミックレンジ

画質設定

 搭載ディスプレイは1,024×768ドットの15V型。アスペクト比は4:3で、パソコン用ディスプレイでおなじみの解像度とサイズだ。スクイーズのDVDビデオを16:9で見るには、メニューで[セットアップ]→[TV画面形状]→[4:3レターボックス]に設定する。

 ディスプレイの色再現は優れており、肌色もきれい。緑にかぶることもなく、特定色の彩度が高くなることもない。ダイナミックレンジも広い上、暗部の階調表現力も高い。バックライトを最高輝度に上げてると若干の黒浮きが生じるが、クラスを考えると十分なレベルといえる。入力ソースが良ければ、最近の液晶テレビらしい、素直で懐の深い色と豊かな階調表現が期待できそうだ。

 画質の調整項目はシンプルで、「明るさ」、「色あい」、「色の濃さ」、「コントラスト」、「画質」の5つ。「画質」はいわゆるシャープネス処理で、「ソフト」、「ノーマル」の2段階を選択できる。このほか、リモコンの「ディマー」ボタンでバックライトの明るさを4段階に変更可能。「明るさ」や「コントラスト」とあわせて調整すれば、コントラストについてはかなり追い込めた。設定値は1つしか保存できない。

 欠点は、パネル解像度が高い割には、全体的な精細感に乏しいこと。DVDビデオ、地上アナログ波のどちらも補間のアラが目に付きやすい。ある程度離れて見れば問題ないが、本機の場合、比較的近距離から視聴することが多い。さらに、ハイビジョンを表示すればまた印象は変わるのだろうが、側面のD入力はD1(480i)まで対応。おそらく、デジタルチューナの接続を想定してD入力を設けたと思われるが、せっかくなので1080iまではサポートしてほしかった。

 また、斜め線にジャギーが目立つ上、DVDビデオの暗部ノイズや、放送波のちらちらしたノイズなども抑え込まれておらず、これらが解像感の低さにもつながっている。残像感は少ない。ただし、全体的なちらつきが気になった。

 視野角については、上下は広くて実用的。ただし、左右は45度ほどでコントラストが下がり、全体的に茶色がかった色味になる。とはいえ、パーソナルユース中心の15V型なので、気になる局面はあまりないだろう。

 内蔵スピーカーの音質は、液晶テレビとしては上質。通常のステレオ再生に加え、「3Dサラウンド」、「3Dサラウンド(ヘッドフォン)」、「ムービーボイス」も選択できる。3Dサラウンドはあまり広がりを感じなかったが、極端なダイナミックレンジの低下や逆位相感もなく、常用したくなるクオリティ。ムービーボイスは中域を強調するもので、セリフが聞き取りやすくなる。こちらも環境によっては利用価値が高そうだ。


■ DVD-Rに記録した生MPEG-2の再生が可能

リモコン

 テレビとDVDの切替は、本体あるいはリモコンの入力切替ボタンを使うか、ディスクを入れて再生ボタンを押すと、自動的にDVDに切り替わる。DVD再生中に停止ボタンを押すと、次回の再生時にリジューム再生が可能。ただし、テレビを含むほかの入力に切り替えると、リジューム再生はオフになる。DVD→テレビ→DVDといった切替でリジュームができる仕様なら、複合製品の便利さをもっと享受できたと思う。

 トリックプレイ関連の機能は、再生、停止、早送り、早戻し、スロー送り、スロー戻し、スキップ送り、スキップ戻しと、一通り揃っている。リモコンには字幕、音声、アングル、リピート、ABリピートの専用ボタンも設けられ、使い勝手は専用プレーヤーと同等。貸出機では早送りが効かなかったが、それ以外に不都合は感じなかった。

 ただし、本体だけで操作するとなると、カーソルキーが無いためDVDメニューなどを操作できない。本体側のボタンは、入力切替、チャンネル、再生/一時停止、音量、停止、スキップ送り/戻し(長押しで早送り/戻し)、画質調整メニュー呼び出し、+/-(画質調整で使用)。テレビを見る分には問題ないが、DVDの細かい操作は難しい。DVD機能を移動先で使うなら、リモコンも一緒に運んだ方がよさそうだ。

 その一方で、リモコンの[表示]ボタンを押すと、タイトル、チャプタ、字幕、音声などを一括設定するメニューが現われる。この表示ボタンに相当するボタンを本体側につけるだけで、DVD視聴時の操作性はある程度改善されると思う。

2種類からメニューデザインを選べる ファイルブラウザ(スマートナビ)

 DVD視聴時に気になったのが、ディスク回転音の騒々しさ。慣れればそれほどでもないが、使い始めのころは、ディスクが回るたびに心配になった。ポータブルDVDプレーヤーのディスク回転音は概して大きめだが、本機は筐体が大きいこともあり、もっと抑え込んでほしいところだ。

 テレビ関連の操作性や機能は、ごく一般的なもの。30/60/90/120分のオフタイマーも利用できる。リモコンには1から12までのテンキーを搭載し、入力切替、音量調整、チャンネル切替の各ボタンも使いやすい。

 そのほか、音声関連の機能としては、ダイナミックレンジ圧縮のオン/オフ、デジタル音声出力の設定(ビットストリーム/PCM)、イコライザータイプの設定が行なえる。イコライザータイプは、「ロック」、「ポップ」、「ライブ」、「ダンス」、「テクノ」、「クラシック」、「ソフト」から選択可能。項目や効果は、同じくポータブルDVDプレーヤーの「DVP-390C」などと同じだ。個人的には効果が大げさに感じられ、あまり活用する気にはなれなかった。

 本機のもう1つの売りが、MP3/WMA/JPEGの再生機能。これらを記録したCD-Rを読み込ませると、DVP-390Cと同じスマートナビ画面が現われる。日本語ファイル名が表示できない点や、操作方法も共通だ。

 なお、編集部で試したところ、貸出機ではCD-Rに直接記録したMPEG-2を再生できた。DVD-Rに記録したMPEG-2も再生可能で、早戻しやリピート、ABリピートなども可能だった(早送りは確認できず)。パソコンにMPEG-2ファイルを溜め込んでいる人なら便利に活用できそうだ。どうせなら、DivXやWMV、VR形式で記録した記録型DVDなども再生できれば、利用範囲も広がるのだが。

ディスク再生互換テスト
ディスク種別 結果
DVD+R
DVD+RW
DVD+R DL(Book Type=DVD-ROM) ×
DVD-R
DVD-RW(VRモード) ×
DVD-RW(ビデオモード)
DVD-RAM(VRモード) ×
コピーコントロールCD
(michelle branch/hotel paper)
レーベルゲートCD
(SOUL'd OUT/ウェカピポ)
ファイル再生互換テスト
ディスク種別 結果
DivX(CD-R/DVD-R) ×
WMV(CD-R/DVD-R) ×
RMP4(CD-R/DVD-R) ×
MPEG-2(CD-R/DVD-R) ×
JPEG(CD-R)
MP3(CD-R)
WMA(CD-R)
※動作結果はあくまでチェックした個体での動作状況です。また、編集部では個別の動作状況についてお答えできません。ご了承ください。


■ まとめ

 メニュー構成が海外製プレーヤーと良く似ていることもあり、リモコン以外、東芝らしい独自のアプローチがあまり感じられない製品。とはいえ、「テレビとDVDを見る」という基本機能に問題はない。パーソナルユースの液晶テレビとして、あるいは大き目のディスプレイを備えたポータブルDVDプレーヤーとして、利用者に合わせた使い方が考えられる。

 15V型の液晶テレビとして見ると市価で2万円ほど高価だが、DVDプレーヤーが付いていることを考えると9万円前後という価格はまずまずの値段。DVDプレーヤー一体型の利便性に惹かれるなら、小型液晶テレビの検討候補に入れるのも悪くないだろう。

【主な仕様】
ディスプレイ 15V型1,024×768ドット
再生メディア DVDビデオ、DVD-R(ビデオモード)、音楽CD、ビデオCD、CD-R(CD-DA、MP3、WMA、JPEG)/CD-RW(CD-DA、ビデオCD)
入力 D1×1、S映像×1、コンポジット×1、アナログ2ch音声×1
出力 光デジタル音声出力×1、アナログ音声×1、ヘッドフォン×2
外形寸法 350×344×72mm(幅×奥行き×高さ)
重量 5.3kg

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2004_06/pr_j2403.htm
□製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/dvd/j/lineup/player/sd-p5000.html
□関連記事
【6月24日】東芝、DVDプレーヤー内蔵型15V液晶テレビ
-オプションのバッテリで2.5時間の連続駆動が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040624/toshiba1.htm

(2004年8月12日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]


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