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第177回:お手軽・高機能な「GarageBand」がパワーアップ
〜 DTM初心者からプロまで使えるお得なソフト 〜



 MacintoshのDTMツールとして話題の「GarageBand」が、早くも「GarageBand 2」へとバージョンアップした。ご存知のとおりGarageBandは初心者でも簡単に音楽制作ができるというだけでなく、プロミュージシャンでも愛用する人が多いという優れもの。その新バージョンでは何がどう強化されたのか、新機能を中心に検証した。


■ 8トラックの同時レコーディングが可能に

 GarageBandは、まさに現在のMacのキラーアプリのひとつだ。ジャンルとしては、DTM・デジタルレコーディングの分野に位置するソフトだが、ある種閉鎖的だったこの分野の匂いを感じさせないまったく新しいソフトとして、ちょうど1年前に登場した。

 基本的にはループシーケンサであり、トラックにループデータを並べていくだけで簡単に音楽が作れる。古くはWindows上のアプリであるACIDで実現されたものだが、GarageBandの凄さはそうした機能をベースに、ソフトシンセ機能、エフェクト機能、オーディオレコーディング機能、MIDIレコーディング機能を統合させながら、複雑さ、難しさを一切感じさせない設計になっていることだ。

 実際、初心者でも簡単に扱えるということから、これまでDTMとは縁のなかったユーザーにまで広がり、MIDIキーボードやオーディオインターフェイスが売れるようになったというから、業界への貢献度は非常に高い。実際使ってみても、その使い勝手や性能は抜群。決して画期的な機能というわけではないのに、使い勝手などの面が非常によくできているのだ。これだけのソフトがMacintoshに標準でバンドルされており、古い機種のユーザーであっても、「iLife '04」という1万円もしないパッケージを買うと、複数あるソフトの1つとして入っているというのは驚きでもあった。

GarageBand 2のメイン画面。基本的なデザインは前バージョンと同じだ

 そのiLifeが1月29日「iLife '05」にバージョンアップし、GarageBandもGarageBand 2へとバージョンアップした。ユーザーインターフェイスやコンセプトは従来のまま、さらに色々な機能が追加されている。最大のポイントといえるのは、8トラックの同時レコーディングに対応したことだろう。

 旧バージョンでもオーディオのレコーディング、MIDIのレコーディングは可能ではあったが、GarageBand 2になってDAW(Digital Audio Workstation)的な性格を高めたといえる。

 FireWireのオーディオインターフェイスなどマルチチャンネル入力に対応したものを接続の上、あらかじめ各トラックの入力チャンネルを別々に設定しておけば、最大8トラックまで同時レコーディングできる。それと同時に、MIDIも1トラックとしてレコーディングが可能。従来通り、各トラックともにエフェクトの設定が可能で、リアルタイムにエフェクトをかけた音のモニタリングも可能となっている。このことだけでも、Mac本体標準バンドルソフトとは思えない内容だろう。

マルチチャンネル入力に対応したインターフェイスなどを接続すれば、最大8チャンネルの同時レコーディングができる

 次にMIDI機能を見てみよう。従来は編集機能として簡単なピアノロール機能しか搭載されていなかったが、GarageBand 2では譜面機能が追加された。MIDIシーケンス機能として見ればそう大したものではないが、やはり初心者ユーザーにとっては嬉しいところだ。また、単に現状のMIDIデータを見てエディットできるというだけでなく、リアルタイム入力時に、リアルタイムに表示できるのも面白い。

左が旧バージョン。簡単なピアノロール機能しか搭載されていなかったが、右のGarageBand 2では譜面機能が追加された


■ お馴染みのループシーケンス機能も強化

 さて、このGarageBand。やはりメイン機能はループシーケンス機能であり、そのループデータには「AppleLoops」というフォーマットが採用されている。これはAIFFファイルを拡張し、テンポ情報やコード情報とともに、曲ジャンルや楽器名、また明るい雰囲気や暗い雰囲気といった曲風に関するメタ情報を埋め込んだもの。GarageBandはAppleLoopsのメタ情報をもとに、データの絞込みを行なっているため、膨大なライブラリがあっても、そこから簡単に目的のデータを見つけ出すことができる。

AppleLoopsフォーマットには、テンポ情報、コード情報、曲ジャンル、楽器名、曲の雰囲気などのメタ情報が埋め込まれている

 このAppleLoopsのデータ集はGarageBand本体に数多くのものが入っているほか「JamPack」という名前で、Vol.1〜4の4種類がこれまで発売されている。ちなみに最新のJamPack 4はこのiLife '05といっしょにリリースされた「Symphony Orchestra」というオーケストラ系のループ集となっている。

 またサードパーティーからもいろいろ出始めているが、必ずしも広く普及しているとはいえない。やはりループデータとしては、ACIDデータのほうが数多く存在しており、市販のCD-ROMやDVD-ROMがあるほか、オンライン上でもフリーの素材が数多く出回っている。そこで今回GarageBand 2では、ACIDデータもAppleLoopsと同様に扱えるようになった。さすがに、ACIDデータには、AppleLoopsのようなメタデータが埋め込まれていないため、検索はできない。ファイルを見つけてきて、Finderからトラックへのドラッグ&ドロップで利用するしかないが、これで利用の幅が大きくひろがった。ワンショットデータなら、普通のAIFFやWAVデータなども読み込めるようになっている。

 さらに、このAppleLoopsに関しては、もうひとつ強力な機能が追加された。それは自らAppleLoopsを作ってしまうという機能だ。やり方はとっても簡単。オーディオトラックにレコーディングしたデータからループにしたい部分を切り出し、編集メニューから「ライブラリに追加」というのを選ぶと、まさにAppleLoopsのメタ情報を選択する画面が出てくるので、ここで曲ジャンルや楽器名、雰囲気などをチェックしていく。

自分でAppleLoopsフォーマットのループデータを作成できるようになった。曲調なども指定できるため、既存のデータと同じように検索もできる

AppleLoopsの検索機能も強化。絞込み検索ができるようになった

 テンポ情報については、現状のプロジェクトのテンポがそのまま適用されるため、レコーディングの際にはメトロノームに従う必要があるが、それ以外はとくに気にすることもないはずだ。このようにして作ってしまえば、その後ループを選ぶ際、検索条件にひっかかれば他のデータと同様にヒットするようになる。

 なお、JamPackなど多くのライブラリをインストールすると、せっかく検索しても、数多くのものがヒットしてしまう。そこで、どのライブラリを利用するか設定し、あらかじめ絞り込んでしまうという機能も搭載されている。


■ ボーカルエフェクトも追加

 一方、プラグインとして組み込まれているソフトシンセやエフェクトもいろいろ追加されているようだ。細かく比較していないので、どれが新規のものかよくわからなかったが、目立ったのは「ボーカルトランスフォーマー」というもの。これはLogicに搭載されたものの簡易版ともいえるものだが、その名のとおり、ボーカルを調整するエフェクトで、声質を男性から女性に変えたり、女性から男性に変えられる設定が用意されているほか、手動でピッチや声質を変化させることもできる。

ボーカルの声質を男性から女性に、女性から男性に変える機能も装備。手動でピッチや声質を変化させることもできる

曲の途中でのコードチェンジが可能になった

 ソフトシンセに関連していうと、従来のバージョンでは、画面にMIDIキーボードを表示させ、それをマウスでクリックして演奏するという機能があったが、それに加えミュージックタイピング機能というものも追加された。これはMacのキーボードを鍵盤に見立てて演奏できる機能だ。ベロシティー調整などはできないものの、音声チェック用などでとりあえず演奏する時には便利である。

 そして、もうひとつ大きいのは、曲の途中でのコードチェンジが可能になったこと。ACIDなど一般のループシーケンスソフトでは当然の機能として持っているのにGarageBandになかったのがこれ。マスタートラックを表示させ、ここでマスターピッチを+/-12半音を設定することでコード変更が可能になったのだ。

 まあ、ピッチの変更なので、コードチェンジという呼び方は正しくないかもしれないが、これで実質的に可能になったわけだ。ただし、1トラックごとに個別設定するということはできないので、やはりこの辺がまだネックではあるが、かなり強力なソフトであることは間違いない。

チューニングメーターも搭載された

 以上、新機能に絞って紹介したが、これら以外にも、オーディオのピッチやスケールを微妙に調整する機能、チューニングメーターの搭載、各種編集機能の追加……と、幅広く強化されている。

 もちろん、これひとつですべてのレコーディング・編集作業ができるというわけではないが、非常に使い勝手がよく、融通も利くソフトであり、プロユーザーが使っても楽しめるソフトだ。まだ、触ったことのない方、そして旧バージョンを使っていた人も、ぜひこの機会にGarageBand 2を手に入れてみてはいかがだろうか? きっと値段からは想像できなこの機能に驚くことだろう。

□アップルコンピュータのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□製品情報
http://www.apple.com/jp/ilife/garageband/
□関連記事
【1月12日】アップル、HDVの編集にも対応した「iLife '05」
−GarageBand 2はマルチトラック対応に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050112/apple2.htm
【2004年11月8日】【DAL】3大DAWのメジャーバージョンアップを検証
〜 「Logic Pro 7」にGarageBandからステップアップ 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041108/dal167.htm

(2005年1月31日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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