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第183回:洋楽DBの巨人「AMG」が邦楽対応を開始
〜 新サービス「LASSO」の内容とは? 〜





■ 誰もが1度はお世話になっている? AMGのDB

 CDのTOC(Table of Contents)情報を利用したデータベースと言えば、GracenoteのCDDBが一番有名だろう。しかし、オープンソースのFreeDBや、MusicBarainsなど、CDDBとよく似たシステムはいくつか存在している。

Windows Media Playerに洋楽のコンテンツを入れるとAMGのロゴが表示される

 そうした数あるCDのデータベースの中でも有力なのが「AMG」(= All Media Guide)である。見覚えのある方も多いと思うがAMGはWindows Media Playerが採用しており、洋楽のCDをCD/DVDドライブにセットすると、AMGのロゴが表示される。また、WMP以外にもMusicMatchが採用したり、AmazonなどのオンラインCD販売サイトなどが採用しているので、これまでAMGの恩恵を得た人も少なくないはずだ。

 実際使ったことのある方ならご存知のとおり、AMGのサービスは単に曲名、アーティスト名、アルバム名に留まらず、かなり多くの情報を持っているのが特徴である。

 これまでそのAMGのデータベースは基本的に洋楽専用だったのだが、これが邦楽にも対応し、国内においても大々的にサービスをスタートするという。また、AMGはデータベースと関連する技術を利用してLASSO投げ縄という意味)というブランドで新しいサービスを開始しており、国内でも同じサービスを提供するという。

 国内展開における拠点となるのが、AMGの国内の代理店であるレインボー・パートナーズだ。元々このレインボー・パートナーズはGracenoteの代理店であったが、Gracenoteが日本法人を作ったことにより契約が切れたという経緯がある。Gracenoteの代理店時代には、日本の多くのオーディオメーカー、カーオーディオメーカーなどへ売り込み、採用されたという実績も持っている。

 そのレインボー・パートナーズの代表取締役であるケビン・マヤソン氏に、AMGが行なうサービスが既存サービスとどう違うのか、またわれわれ一般ユーザーにとってどんなメリットがあるのかなどを聞いてみた(以下敬称略)。



■ プロが入力したクオリティの高いデータ

レインボー・パートナーズのケビン・マヤソン代表取締役

藤本:AMGのサービスを国内でも開始するそうですが、日本のユーザーはAMGについて知らない人がほとんどだと思います。そこで、まずAMGについて簡単に教えてください。

ケビン:AMGはアメリカのAll Media Guideという‘91年に設立された会社です。一言でいうならば世界最大のもっとも包括的、もっとも品質の高い、音楽、映像、ゲームのメタデータのデータベースを提供する会社です。実際、アメリカのCDショップやネット販売店など25,000店舗以上がここのデータを活用しています。

 また音楽、映像のエンタテインメント業界においては、バイブルといわれるくらいの深いデータを持っています。AMG自らもAllMusic.com、AllMovie.com、AllGame.comなどを運営していますから、誰もが簡単にそのデータベースに触れることができます。このように従来から様々なデータベースを持っていましたが、それを一般に広く使えるLASSOというサービスをアメリカでスタートしており、日本でも間もなく開始する予定です。

AMGが新たに打ち出したエンドユーザー向けのサービス「LASSO」

藤本:メタデータのデータベース会社ですか。わかったようなわからないような感じですが、われわれが一般にCDのメタデータというと、曲名、アーティスト名、アルバム名、ジャンル名といったものを指すと思うのですが、その程度のメタデータに何か違いなどが現れるものなのでしょうか?

ケビン:AMGが持っているメタデータにはそれ以外にも非常に多くのものがありますが、そうしたデータの種類以外にも様々な違いがありますので、他社のサービスと単純に比較するものではないと思っています。その最大の違いがプロが入力している、ということです。

 ご存知のとおり、他社のデータベースは一般のユーザーが入力しているため、クオリティー面で大きな差が出てくるのです。そのクオリティーというのは大きく2種類あります。ひとつは、「完全なミス」。CDを入れたときに表示される内容が本当に正しいのか、ということです。アーティスト名や曲名に間違いがあったり、スペルミスがあったりすることが頻繁にありますが、一般ユーザーが入力しているため、こうれはどうしても避けられない点でしょう。

 また、「データの欠落」ということも頻繁にあります。メタデータには、いつレコーディングされたのか、いつリリースされたのか、作曲者名、作詞者名などの著作権情報などいろいろありますが、人によって、入力する項目に違いが出るため、入っていない情報も多くあるのが実際のところです。

藤本:実際に、オムニバスアルバムなどでもデータがおかしいことは多いですね。アーティスト名がVariousArtistなんて表示されてしまったり……。

ケビン:そうですね。それもまさにユーザー入力の弊害の典型といえるものです。また、間違った情報ではないけれど困る点というのもあります。それが「表記の統一」の問題です。ある人はアーティスト名に「浜崎あゆみ」と入力するけれど、ある人は「AYUMI HAMASAKI」と入力することがあります。また同じ漢字でも「浜崎」と「あゆみ」の間に全角のスペースを入れる人と、半角スペースを入れる人がいます。もちろん、半角のカタカナで入力する人もいます。

藤本:同じような問題は海外アーティストでもありますよね。たとえば「Beatles」となっているものと「The Beatles」となっているもの、そしてそれらをカタカナで表現しているものなどありますよね。

ケビン:そのとおりです。そのCDがどんな曲なのかを知るだけならば、それでいいとしても、現在多くのユーザーはそうしたCDをMP3などの形でHDDにリッピングし、iPodなどへ転送して活用しています。その場合、多くの問題が出てきます。同じアーティストのはずなのに、表記の違いによって、違うアーティストと認識され、別々のフォルダで管理されてしまったり……。

藤本:そういうこと、よくありますね。仕方ないので、後で修正したり、フォルダを整理しなおしたり……。ただ、こうした作業ってかなり面倒です。

ケビン:それに対してAMGのメタデータはプロが入力しているだけに非常に正確です。表記の点でも厳格なルールに従って入力しているので、同じアーティストが別に管理されるということはありません。また、曲名、アルバム名、アーティスト名以外にもさまざまなデータが存在しています。

 例えばジャンル名、ムード、ジャケット写真、アーティストのバイオグラフィ、参加アーティスト情報、似たアーティスト、影響を受けたアーティスト、影響を与えたアーティスト、さらには評価情報などなど。別のデータベースとして管理されているものもありますが、すべてアーティスト名や曲名などがユニークなコードで管理されています。ですので、それらの情報すべてを楽曲に関連付けられるのが、AMGのデータベースの大きな特徴です。

藤本:確かにジャンル名というのも難しいですよね。人によってジャンルのとらえ方が違ったりしますし……。

ケビン:AMGではジャンルとスタイルという2階層があります。たとえばR&Bというジャンルの下にモータウン、ビーチミュージック……といろいろなスタイルを持っているんです。ただ、人によって違うジャンルに思えたり、デビュー当時と、現在では音楽ジャンルが異なっているアーティストなどもいます。そこで、AMGでは複数にチェックが入る構成になっているので、検索もしやすくなっています。



■ 気に入った1曲から他の楽曲へ広がるリンク

藤本:なんとなくすごそうなのはわかるのですが、実際、ユーザーにとってどんなメリットがあるんでしょう?

ケビン:それはアプリケーション側がどう作るか次第ですが、たとえばある曲を聴いて、ギターの演奏がとても良かったとしましょう。そんな時、その曲のギタリストの名前を表示させるとともに、その人が参加した別の作品を一覧で表示させ、違う曲を聴いてみるといった使い方が可能になります。

 同様に、その曲を作曲者の作品を検索したり、そのアーティストが影響を与えた別のアーティストの曲を聴いてみたり……。

藤本:なるほど、そんなことが実現すると、かなり面白そうですね。こうした機能によって音楽配信の可能性が大きく変化するかもしれませんよね。気に入ったギタリストが参加している曲を検索検索しながらその場で買うなんてことは、従来できませんでしたから。

 とはいえ、実際にCDをセットした際、どの程度の認識率となるのかが心配です。ユーザー入力だったからこそ、非常に高いヒット率だったようにも思うのですが。

ケビン:現実的に商業ベースで販売されているCDは全部で70万〜80万アルバムくらいしかありません。他社は数百万アルバムと言っているようですが、同じアルバムを別のタイトルで入力したために、ダブってカウントされていたり、個人が作ったCDなどもデータベースとして登録されてしまっているため、そうした過大な数字になっているものと思われます。

藤本:でも、日本版ボーナストラックが入ったアルバムがあったり、微妙にバージョンの異なる曲が入ったアルバムがあったり、バリエーションはいろいろあります。そうしたものにも対応しているんですか?

ケビン:そうですね。あらゆるアルバムを入手してデータベース化していますから、そうしたものにも対応していますし、技術的にもファジーマッチングという手法を取り入れています。これは、TOCに微妙な違いがあったも、そのことを認識したり、考えられる曲の組み合わせを予測して曲名をヒットさせるというものです。この技術によって、新たに登場するバリエーションでも即座に認識できるようになっているのです。

藤本:質はともあれ、既存のデータベースでは雑誌の付録CDなども認識するなど、かなりヒットするのがすごいな、という印象を持ちました。

ケビン:確かに超レアなものは他社のデータベースのほうがヒット率が高いかもしれません。とはいえ、比較して1、2%の違いに過ぎません。認識率だけで見ると多少の違いがあっても、お客さんはクオリティーを求めているので、その差を十分埋められるものだと思います。

藤本:とはいえ、もし認識しないアルバムなどを見つけたらユーザーが入力できるというほうが合理的ではないでしょうか?

ケビン:ユーザーが入力してデータを送信するという手段は設けています。ただし、それがそのまま反映されるということはありません。あくまでも、「そのCDのデータがデータベースにない」ということをわれわれが認識するためのもので、その情報を元にして、なんとか入手して、改めてデータをこちらで入力してデータベースに反映させるようにします。こうしないと、やはりクオリティーを保つことができませんので。



■ 地道な作業の積み重ねで邦楽にも対応

藤本:従来、AMGを洋楽のデータベースと捉えていた人が多いと思いますが、レインボー・パートナーズはこれを邦楽でも利用可能にするわけですよね? 実際、どのような手段で邦楽に対応させたのでしょうか?

AMGはこれまで数多くの音楽、映画、ゲームの情報をデータベース化しており、このような分厚い本も数多く存在する

ケビン:これは非常に地道な作業です。膨大な邦楽のCDを入手し、それを元にデータ入力していったのです。この入力のために、専門のスタッフを多く招き入れて、かなりの時間をかけてデータベースを構築してきました。具体的には25万曲のデータです。AMGのデータ入力システムは独特で、かなり複雑なのですが、計3回のチェックを行なうことで、正確なデータとして作り上げてきました。もちろん、今後も新曲を中心にどんどんデータは増やしていく予定です。

藤本:先ほど、AMGの出版している本を見せてもらいましたが、ここにはバイオグラフィやレビューなど、いろいろな情報もありますよね。これら洋楽に関する情報の日本語化や、邦楽に関する同様の情報もデータベース化できているのですか?

ケビン:残念ながら、まだそこまでには至っていません。ある程度時間をかけながら、そうした日本語のデータベースも構築していく予定です。

藤本:もうひとつ、音楽認識技術としては、TOC認識以外に、音楽指紋認証というものがありますよね。Gracenoteでいうところの「MusicID」。これのAMG版というのも存在するんですか?

ケビン:もちろんLASSOはトータルなサービスなので、指紋認証もありますよ。実際ご覧いただければわかりますが、非常に高速な認識ができます。また指紋データ自体も50〜70バイトと非常に小さいものなので、こうしたものもTOCデータと合わせて各種オーディオ機器に組み込んでいくことも可能です。

LASSOのデモでは、CDをTOCで認識した上で、さまざまなメタデータを表示できる LASSOはUNICODEになっており、邦楽と洋楽のデータベースがシームレスに見れる。日本語のデータはレインボー・パートナーズによりすでに25万曲が入っている

藤本:非常に楽しみではありますが、実際のところ、いつからその邦楽に対応したLASSOを利用することができるのでしょうか? またWindows Media Playerも対応するんですか?

AMGのデータを利用したデモアプリケーション、Music Exploreではさまざまなデータを組み合わせたユニークなデータ検索、音楽再生が可能となっている

ケビン:データベースのほうはほぼ準備が整いましたが、エンドユーザーが使えるようになるには、製品がリリースされなくてはなりません。具体的な製品リリース予定などは、当社がコメントするべきものではないので、申し上げることはできませんが、近々登場してくると思います。

 日本のコンテンツで洋楽だけに対応したものであれば、Entertainment Plusでスタートした「ヨーガクプラス」というサイトで利用できます。なお、Windows Media Playerが対応するかどうかについてもMicrosoft側の事情なので、コメントすることはできません。

藤本:もうひとつ気になるのは、一般ユーザーがそのLASSOを使う際、有料となるのですか? また、これまで別のデータベースを使っていたユーザーがLASSOに乗り換えるということは可能なんですか?

ケビン:エンドユーザーからお金を取るということはありません。つまり、あくまでも無料でお使いいただくことができます。われわれのビジネスはあくまでもソフトウェアメーカーやAV機器メーカー、また音楽配信サイトなどを対象に行なっているものですから。別の見方をすれば、ユーザーがこのLASSOを利用するには、LASSO対応のソフトや機器を使う必要があります。したがって従来から利用しているものをそのままLASSOに切り替えるということはできないんです。

藤本:ありがとうございました。実際のアプリケーションの登場を楽しみに待っています。

□レインボー・パートナーズのホームページ
http://www.rainbow.co.jp/rp/
□AMG社のホームページ(英文)
http://www.allmediaguide.com/
□AMG社の概要
http://www.rainbow.co.jp/rp/partner/amg/index.html
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(2005年3月14日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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