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第184回:最廉価モデルで最高音質を実現?
〜2ch出力に特化した「オンキヨー SE-90PCI」〜




 オンキヨーからロープロファイルPCI仕様のオーディオインターフェイス「SE-90PCI」が発売された。この新製品、音質向上を図るため大胆にも入力チャンネルを一切省き、現在標準ともいえるマルチチャンネルを廃して2chに絞り込んだという非常にユニークな設計を採用している。

 スペック的には昨年末に発売された「SE-150PCI」の下位機種でありながら、同社では音質はこちらのほうが上という。実際、そのユニークな設計は音に反映されているのか、その音質や性能をチェックした。


■ “再生音質特化”のサウンドカード

SE-90PCI

 SE-90PCIの正式発表を前に、個別の製品説明ということで、オンキヨーの東京オフィスのシアタールームで、その音を聴いた。その時点では、ロープロファイル仕様のオーディオインターフェイスであるということを聞き、正直なところほとんど関心もなくなっていた。すでにSE-150PCIはチェックしているし、ロープロファイル版ということは、どう考えてもそれ以下の製品だろうと予想していた。

 しかし、当日行ってみると、オンキヨーの開発担当者から営業、マーケティング、広報にいたるまでズラリ。そこに私一人がノコノコとやってきた形だったため、少々面食らった。申し訳ないなと思いつつも、興味がないのは仕方ないし……などと思っていたわけだ。

Envy24MT

 先方から資料を渡されたが、それに目を通す間もなく、まずは音を聴いて欲しいと言われた。SE-90PCIは、SE-150PCIと異なり、VIAの「Envy24MT」というオーディオコントローラチップが初めて採用されたとのことだが、チップの音質性能はEnvy24HTと同様。そこで、まずは他社のEnvy24HT搭載の機器のアナログ出力音を聴いた。

 その製品名はここでは伏せておくが某メーカーの有名な製品である。再生したのはCDであり、それをオーディオインターフェイス経由で、オンキヨーのミニコンポの新製品「INTEC 275」のアンプおよびスピーカーで鳴らした。実際に、聴いてみると結構いい。この某社製品で十分じゃないか、などと思ったわけだ。

 そこで、まったく同じ構成の別のPCにSE-90PCIをセットしたマシンに、接続し直して同じCDを鳴らした音を聴いてちょっとビックリ。先ほどの製品で十分とは思ったのだが、同じCDとは思えないほど、高音質になっているのだ。それはノイズレベルの違いなどではなく、音が広がって、音像がしっかりしていること、そして音の抜けがよくて、明らかにダイナミックレンジが違うという感覚だ。さらにVIAのオーディオコントローラ搭載製品ではないが、別の有名オーディオインターフェイスの音とも聴き比べたが、そこにおいてもハッキリとした違いを感じ取れた。

 もちろん、再生しているのが非常にいいシアタールームであるので、これだけの違いが感じられたという面はあるだろうが、それにしても結構な違いであり、急に興味が沸いてきた。

 その後、開発したエンジニアから設計方針などの説明を受けたのだが、これがなかなかユニークであった。冒頭でも紹介したとおり、このSE-90PCIの最大の特徴は、録音機能を無くすとともに、2chの出力に絞った設計になっているということだ。


■ 2chアナログ出力を徹底強化。デジタルは24bit/192kHz対応

出力端子は、アナログとオプティカル各1系統のみ

 実際にモノを見てみると、小さなボード上に、金メッキされたアナログのRCAピンジャックが2つと、オプティカルの出力端子が1つあるだけ。最近の多くのオーディオインターフェイス/サウンドカードにあるようなD-SUB端子や、ミニジャックなどは一切搭載していない、かなり割り切った設計になっているのがよくわかる。

 また、この基板上には、SE-150PCIと同様に結構大きい電解コンデンサがところ狭しと並んでいる。そして面白いのが、アナログの左右のチャンネルの処理を行なう回路だ。この基板を見ればわかるとおり、完全左右対称で部品が配置されており、その中央には銅バスプレートが置かれている。高級オーディオアンプなどで採用されているのと同じ、アナログ出力のシンメトリ配置がされている。


アナログ出力がシンメトリ配置された基盤

 ちなみに、ここに採用されているアナログ部品としては、オペアンプに「NE5532AN」、コンデンサには47μFの「ELNASILMIC II」、高周波ノイズをカットするためのOS-CON、また外付けDACとしてWOLFSONの「WM8716」などが採用されている。ちなみにWM8716は2ch用のDACで、スペック上はSNが112dB、THD97dB、最大サンプリングレート192kHzというものである。

 一方デジタル部分としては、前述したVIAの最新チップ、Envy24MTが採用されているわけだが、これは2in/2outで、24bit/192kHz対応したオーディオコントローラだ。SE-150PCIなどに採用されているEnvy24HTは4in/8outなのに対し、2chに絞ったことで省電力化し、モバイル用途などとしてリリースされたチップであるが、SE-90PCIが2chに絞ったということから、これを採用しているようだ。ただし、この2chの入力部分は使っていないわけである。


 なお、ここでもうひとつユニークなのがデジタル出力部で、24bit/192kHzの音声フォーマットにまで対応している。本来S/PDIFの規格では96kHzにまでしか対応していないので、これは正規のS/PDIFとはいえない。とはいえ、普通に192kHzへと設定しただけのものなので、それほど変わったことをしているわけではない。事実、24bit/192kHzのデジタル出力をしているオーディオインターフェイスはいくつか存在している。しかし、従来のものはすべてコアキシャルであって、オプティカルでの対応は、おそらくSE-90PCIが世界初ではないだろうか。

 というのは、コネクタであるTOS-LINKがその速度まで追いつかなかったからなのだが、今回シャープに特性を変えたコネクタを作ってもらったことにより、対応できたのだそうだ。もっとも接続する相手が少ない問題ではあるが、現在のところは同社では、スピーカー「GX-77」が対応しているとのことだ。


■ セッティングは非常にシンプル

フルサイズのブラケットをつけた状態

 さて、出音は確認はしたものの、一応手元でもテストしてみようということで、モノをお借りして手元のPCにセッティングした。このSE-90PCIは出荷状態でもロープロファイルとなっているが、フルサイズのブラケットも同梱されているので、こちらにつけなおした上で、タワー型のマシンに装着した。

 ドライバCD-ROMをセットすると、ここではオンキヨーの作ったウィザード画面が現れるが、それ以降のドライバのインストールにおいては、完全にVIAのドライバのままであり、オンキヨーのロゴさえも現れない。これはSE-150PCIでも同じだったが、オンキヨーではあえてそのようにしているそうだ。つまり、Envy24をコントロールする部分には手を加えておらず、すべてVIAオリジナルのままであることをアピールしているのだという。それについてどう思うかは人それぞれではあるが、日本語化もされているし、とりあえずインストールでトラブルようなことはなかった。

 その後、出力先のドライバにEnvy24 Familiy Audio(WDM)を指定し、音を出してみたところ、確かにいい音で鳴ってくれる。このようにドライバ上ではSE-90PCIという名称はまったく出てこない。もしかして入力ドライバにもEnvy24 Familiy Audio(WDM)というものが存在してしまっているのではないかと思って確認したが、それは無かった。

ドライバCD-ROMをセットすると、オンキヨーの作ったインストール画面が現れる Envy24をコントロールする部分については、VIAオリジナルのままになっている ドライバ上ではSE-90PCIという名称は出てこない

ドライバのバージョン情報

 なお、コントロールパネルを見てみると、Envy Audio Deckというアイコンが追加されている。これを起動すると、まずはミキサーが登場してくる。見ればわかるとおり、各入力に対するバランスおよびS/PDIF光出力へのレベルを設定するものだ。

 また、スピーカー設定もあるが、SE-90PCIでは2ch固定のため、何もいじることはできない。拡張設定では、デジタル出力に関する設定が主となっており、AC3の選択もできるようになっていた。今回実験はしなかったが、2chのみに対応したオーディオインターフェイスではあるが、AC3を利用し、外部デコーダを使えばサラウンドも扱えるかもしれない。そして情報タブでは、ドライバのバージョン情報などが記載されている。


Envy Audio Deckを起動するとミキサーが表示 2ch固定のため、スピーカー設定は変更できない デジタル出力の設定画面。AC3→PCMやAC3出力などが設定できる


■ 測定結果も非常に良好

 普段はここで、入力と出力を直結しての音質実験を行なうのだが、SE-90PCIには入力端子が存在しないため、実験ができない。もっとも、従来のオンキヨー製品も明らかに出力に力が入れられており、入力はそれほど高音質ではなかったので、直結すると、その結果が入力の質に引っ張らてしまうという問題があったが、今回はテストそのものが不可能になった。

 しかし、何もなしというのもつまらないので、今回はオンキヨーの開発部隊にお願いし、いくつかのデータをとってもらった。第三者による実験ではないため、客観性に欠けるのは仕方ないところだが、なかなかわかりやすい実験結果になった。

 実際の画面の説明に入る前に、この実験内容だが、基本的には、いつもこのコーナーで行なっているのと近いもので、サイン波の周波数特性はスウィープ信号を流したときの特性、またノイズレベルを計測した。問題は入力をどうするかであるが、高性能なオーディオアナライザである、Audio Precisionの「SYS-2722」を用いている。ここに10Hzのハイパスフィルタ、20kHzのローパスフィルタを通しての測定結果となっている。

スウィープ信号の特性。低域だとほぼフラット。高域については、実際は40kHzで-0.2dB程度とのこと

 まず、スウィープ信号の特性だが、16bit/48kHzの信号で左右ともに測定している。開発担当者によると、SE-90PCIは低域の再生については、0.3Hzで-3dBを設計センターとして設計しているため、20Hzでは、ほぼフラットな特性となっているとのこと。

 通常、測定器の方が0.3Hzまで周波数特性が伸びていないため、機器の特性というよりは測定器の特性を計っている場合の方が多いのが実情。そのため、ここではオシロスコープを使っての特性をチェックしている。また高域については、24kHzまできれいに伸びているが、本来の実力は40kHzで-0.2dB程度とのことだ。

 またサイン波については、WaveGene Ver.1.31を使用して24bit/48kHzのフォーマットで1kHz、0dBのサイン波を再生し、LINE OUTから出力されるスペクトラム波形を測定している。

 この結果を見ると、左右ともほぼ同程度のキレイなグラフになっている。いつも見ているように1KHzの整数倍の成分は、いわゆるひずみ(高調波)で、整数倍の関係にないものは、それ以外のノイズといえる。オンキヨーでは、ひずみ率そのものの値よりも、高調波の成分やノイズの質が大きな影響を与えると考えて設計しているとのことで、このグラフだけでは読み取れないさまざまな工夫がされているということだ。


 そのほか、サイン波の測定と同じセッティングのまま、出力を停止した際の測定結果、つまりノイズレベルについても測定している。これもグラフを見る限り、非常に低いレベルのようだ。

サイン波は、左右ともほぼ同程度のキレイなグラフとなった ノイズレベルも、非常に低い数値を示した

ジッター値は、一般的なPCオーディオ機に比べ大きくリード

 さらに、ジッター値の測定も行なった。これは、数百万円の機材がないとなかなか測定ができないが、24bit/88.2kHzのS/PDIFを測定した際のジッターが4.840mUIという結果となっている。この4.84mUIという値については、一般的なPCオーディオ製品と比べると一桁優れた値であり、高級オーディオと肩を並べる値とのことだ。もっともオンキヨー製品における数十万〜数百万円と言った高級品レベルの値ほどでもないとのことだが……。

 SE-90PCIは、非常に割り切ったコンセプトの製品ではあるが、オーディオを楽しむ分には2chの出力のみで十分という人も多いのではないだろうか? 「とにかく出音にこだわりたいが、入力やサラウンドにはあまり興味がない」という人なら、お勧めできる製品である。


□オンキヨーのホームページ
http://www.jp.onkyo.com/
□ニュースリリース
http://www2.onkyo.com/jp/what/news.nsf/view/SE-90PCI
□関連記事
【2005年3月3日】オンキヨー、24bit/192kHz出力対応のサウンドカード
−録音機能を省いて実売1万円を実現。SN比110dB
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050303/onkyo.htm
【2004年11月15日】オンキヨーの新サウンドカード「SE-150PCI」をテスト
〜 人気のカードが一新。外観は石油コンビナート? 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041115/dal168.htm

(2005年3月28日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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