■ “ミクロ”にあわせて「プレイやん」もアップデート iPodに代表されるデジタルオーディオプレーヤーの市場拡大にあわせて、「次はビデオ対応のマルチメディアプレーヤー」と意気込むメーカーは多い。しかし、ビデオプレーヤーに関しては、高付加価値製品ということもあり価格は高めで、本格普及には至っていない。 一方で、昨年12月に発売されたPSPや、ゲームボーイアドバンスSP(GBA SP)/ニンテンドーDS用のSDビデオアダプタ「プレイやん」により、3万円程度の出費で高機能なビデオプレーヤーを実現可能となった。こうしたゲーム機をベースとしたソリューションが今入手できる最もリーズナブルなプレーヤーとなっている。 そして、9月13日の「ゲームボーイ ミクロ(12,000円)」の発売にあわせて、GBA SP/ニンテンドーDS用のビデオプレーヤー「プレイやん」もリニューアル。新たに「PLAY-YAN micro」となり、同時発売された。 外形寸法は58.5×43.4×11mm(幅×奥行き×高さ)、重量は16gで、プレイやんと同じだが、そもそもの母艦となるゲームボーイ ミクロが50×101×17.2mm(幅×奥行き×高さ)と、GBA SP(84.6×82×24.3mm)、ニンテンドーDS(148.7×84.7×28.9mm)に比べると遙かに小型。 さらに、対応フォーマットも拡充されており、新たにMP4ファイルをハードウェアレベルでサポート。従来のプレイやんでもアップデータをSDカードに転送することでMP4の再生が可能だったが、PLAY-YAN Microではアップデータの必要無しに単体でMP4再生が可能となった。 MP4ファイル対応により、PSP用のメモリースティックビデオ形式(MPEG-4のみ、MPEG-4 AVCには非対応)に対応できることは、従来のプレイやんでも検証済み。小型のビデオプレーヤーといえば、16日にアイリバーの「U10(29,800円)」も発売されているが、対応ビデオファイルが限られソフトが少ないU10に比べ、対応ソフトの多い、SD-VideoやMP4などをサポートしている点もポイントが高い。 価格は本体のみが5,000円、転送ソフト「Media Stage 4.2 for Nintendo」が付属するMedia Stage Setが6,000円。ゲームボーイ ミクロ(12,000円)とSDカード(512MB 8,000~10,000円/1GB 12,000~15,000円)、PLAY-YAN Micro(5,000円)を合わせると約3万円でマルチメディアプレーヤーが実現できる計算だ。もちろんミクロやSDカードを既に持っていればより安価となるわけで、価格競争力の高さは圧倒的。ミクロ対応の新モデルの実力は? 早速検証してみた。
■ 外装やサイズは旧型とほぼ同じ
旧プレイやんと外装やサイズはほぼ同じ。唯一の違いは前面のシールでPLAY-YAN microとプリントされている点。通常のGBA SP用のカードリッジよりやや奥行きが長く、前面にヘッドフォン出力端子、側面にSDメモリーカードスロットを備えている。 あとは、ビデオコンテンツなどを収録したSDカードをPLAY-YAN Microに差し込み、PLAY-YAN Microをゲームボーイ ミクロに装着するだけで利用可能となる。通常のGBA SPソフトより奥行きが長いため、ゲームボーイ ミクロの本体からはややはみ出てしまうが、デザイン的な収まりはさほど悪くない。
■ “マリオ”インターフェイスも選択可能
装着して、ゲームボーイ ミクロを起動するとメインメニューが立ち上がり、フィルム風のアイコンと、音符アイコンが現れる。ここでフィルムのアイコンを選択するとビデオプレーヤーモードとなる。 なお、PLAY-YAN Microではキーファイルと呼ばれる拡張設定用ファイルがホームページで公開されている。中身はパソコンのテキストエディタなどで編集できる.iniの設定ファイルで、この数字を変更することで、インターフェイスデザインや各種設定を切り替えられる。 このファイルを利用しない場合は、インターフェイスはオーソドックスな[ピクトグラム]だが、設定ファイルをSDカードに転送すると[マリオ]のインターフェイスが楽しめる。そのほか、このファイルを編集することで、ボリューム設定や起動時のオーディオ/ビデオ優先設定、Bass効果のON/OFF、再生モードの初期設定、画面の明るさなどを設定できる。
これらの設定変更は、本体からは行なえず、iniファイルの編集でのみ可能。なんともマニアックな設定方法だが、一度設定してしまえば、普段いじるような項目でもない。なにより、ユーザーの使い勝手や楽しみ方を拡張できる仕組みを用意してくれるのはありがたいところだ。
■ 精細感あるビデオ再生が可能に
ビデオプレーヤーモードに入ると、ビデオコンテンツがサムネイル表示される。ビデオモードでは、SDカードにある再生可能なASF/MP4ファイルを選択し、すべて一覧表示される。ここから、十字ボタンでムービーを選び、Aボタンで再生開始。Bボタンでメニュー画面に戻る。 MediaStage Set付属の「MediaStage Ver.4,2」では、プリセットでPLAY-YAN Micro用動画を選択するだけで、PLAY-YAN Micro用動画の作成が可能。[高画質]、[標準]、[高圧縮]の3モードが用意され、高画質が240×176ドット/30fps/736kbps、標準が240×176ドット/30fps/480kbps、高圧縮が240×176ドット/15fps/224kbpsとなっている。
映像再生してみると、高画質/標準/高圧縮のいずれのモードでも画質的には十分満足できる。プレイやん+GBA SPに比べると、ゲームボーイ ミクロの液晶ディスプレイが圧倒的に高精細ということもあり、思いのほか解像感の高い映像を楽しむことができる。 液晶のスペックとしては2型/240×160ドット/3万2,000色と、今日の液晶ディスプレイとしてはさほど特筆すべき点は無いのだが、色再現も優秀だ。GBA SPと比較して大幅に向上したゲームボーイ ミクロの液晶表示品質が、そのままプラス方向に寄与している。 液晶が小さいため、臨場感や没入感という点ではPSPには及ばないが、精細感としっかりした色再現はポータブルプレーヤーとしては非常に高いレベル。視野角が狭いため、ゲームプレイ時と同じく、両手でのホールドが求められるが、電車での覗き込みなどを避けるという意味では、視野角の狭さもさほど問題ないだろう。 [高圧縮]では字幕が若干読みにくくなり、ブロックノイズも散見できるようになるが、スポーツのような動きの激しいソースでなければ、しっかり内容を確認でき、実用性は高い。従来モデル同様DIGAなどで録画したSD-Videoファイルの再生も可能となっている。 また、新たにハードウェアレベルでMP4ファイルの再生にも対応した。PSP用の動画作成ソフト「Image Converter 2.1」で作成したMP4(MPEG-4)を転送したところ、問題なく再生できた。ただし、Image Converterで作成したH.264/MPEG-4 AVCファイル(メモリースティックビデオ)については、同じMP4拡張子ながら認識されなかった。つまり、新スゴ録「RDR-AX75」で作成したMP4ファイルについては、再生できないと言うことになるが、PCベースでファイルを作成する分にはエンコード速度はMP4(MPEG-4)のほうが高速なので、問題は無いだろう。 従来モデル同様にレジューム再生にも対応。電源を切るとレジュームポイントを消去する。再生中に十字ボタンの左右を押すことで、ムービーの巻き戻し/早送り、上下でボリューム変更を行なえる。再生中にSTARTボタンで一時停止、Bボタンを押すとムービー選択画面に戻る。また、L/Rボタンで画面輝度を変更できる。 また、ボリュームについてはデコードをPLAY-YAN Microで行なっているため、ヘッドフォン出力を本体のボリュームでコントロールすることはできない。スピーカー出力の場合は、ゲームボーイ ミクロ右脇のボリュームと、十字ボタンの上下の両方で調整する。
■ マリオのUIが楽しいオーディオプレーヤー
従来モデルと同様にオーディオプレーヤー機能も搭載。起動後に機能選択画面で音符マークを選択すると、オーディオプレーヤーモードとなる。 音楽再生モードでは、階段状のメニューが現われ、フォルダ階層ごとに階段上のタイトル選択画面が現われるのは従来モデルと共通。ただし、インターフェイスデザインは一新されている。 楽曲はフォルダ単位で管理され、再生開始すると楽曲名やアーティスト名も表示できる。タグ情報はID3Tagに対応し、日本語も問題なく表示できる。タイトル名は数字/アルファベット順にソートされ、[01-曲名]のようにタグ情報を付与しておけば、アルバム曲順の再生も可能。 操作性も従来のプレイやんとほぼ共通で、十字キーの左右で楽曲を選択し、Aボタンで再生開始。STARTボタンで一時停止、SELECTボタンでシャッフル/リピートモード切替。再生中の左右ボタンで早送りや巻き戻し、曲スキップ/バックなどが可能。また、STARTボタンの長押しでHOLDとなる。 対応オーディオ形式はMP3のみ。MP4動画の音声形式としてはAACもサポートしているのだが、iTunes Music Storeで購入した楽曲や、iTunesで作成したAAC(mp4ファイル)を転送しても再生できなかった。 プレイリスト再生機能などは特に備えていない。音質については従来のプレイやんとほぼ同傾向。低域は若干不足も感じるが、専用プレーヤーと比較しても不満を感じる程でもない。従来モデルより若干音場が広くなったようにも感じるが、基本的に大きな差はない。 オーディオプレーヤーモードでもマリオ画面が用意されており、フォルダ内の楽曲の最後までスクロールすると、マリオが土管をくぐってワープするなど、任天堂ならではのユニークなインターフェイスが嬉しい。なお、プレイやんでは、同社のWebサイトから12種類のミニゲームをダウンロードして、プレイできたが、PLAY-YAN microではミニゲーム機能は省かれている。
■ 「楽しいプレーヤー」の地道なアップデート 従来のプレイやんでも十分な機能を備えていたが、GBA SPに比べてゲームボーイ ミクロで液晶表示能力が大幅に向上していることもあり、画質的な満足度もアップ。PLAY-YAN Microと言うよりはゲームボーイ ミクロの実力と言えなくもないが、組み合わせて2万円、SDカードを加えても3万円程度でこうした環境が構築できるのは非常に魅力的。 ニンテンドーDSやPSPと比較すると、液晶が小型なため、臨場感にやや欠ける点は残念だが、小型化とのトレードオフと考えればいたしかたないところ。基本機能はプレイやんと大きく変わらないが、MP4対応など広範なフォーマットサポートも嬉しいところ。 PSPと比較した際のセールスポイントはSDという一般的なメモリーカードであることやMP4/SD-Video両対応など、また、液晶サイズが同じアイリバーU10と比較しても、対応ソフトの充実やゲーム機らしいユニークなインターフェイスなど、他の製品との差別化もきっちりできている。地道なアップデートだが、マリオUIなど「プレーヤーを使う楽しみ」もしっかり搭載。任天堂のエンターテインメントに対するプライドを感じさせてくれる製品だ。 □任天堂のホームページ (2005年9月16日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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