■ ソニーの将来を背負った新生ウォークマン 2004年7月の「NW-HD1」発売以来、「ネットワークウォークマン」のブランドで展開されていたソニーのHDDオーディオプレーヤー。しかし、新モデル「ウォークマンA」では、“ネットワーク”の冠が外れ、素の“ウォークマン”ブランドとして展開されることとなった。こうしたブランド設定からも、「ウォークマン復活」へ向けたソニーの本気が伝わってくる。 実際にソニーの新経営方針説明でも、テレビやハンディカムにならぶ最重点事業に挙げられ、文字通りソニーを代表する製品として定義された。また、ポータブルオーディオや音楽配信を統括する「コネクトカンパニー」の最初の製品となることで、新ウォークマンAにかかる期待は、ユーザーはもちろん、ソニー社内でも相当なものだろう。実際、プロモーションにも力が入っており、テレビCMや渋谷でのデモンストレーションなどの、ウォークマンの宣伝に触れ無い日はない程。 そのウォークマンAシリーズは、1.8インチ/20GB HDD搭載の「NW-A3000」と、1インチ6GB HDD搭載の「NW-A1000」、2GB/1GB/512MBフラッシュメモリ搭載の「NW-A608/A607/A605」が用意される。注目されるのは全モデルで新オーディオソフトの「CONNECT Playe」を搭載することと、CONNECT Playerによって実現されるインテリジェント機能だろう。 ネットワークウォークマンの売れ筋はフラッシュメモリ型の“スティック”だったが、やはり最大の差別化ポイントとして、アピールされた「マシンインテリジェンス」を試さない訳には行かない。ということで、今回はNW-A1000を購入した。製品発表時には実売価格30,000円前後としていたが、現在の実売価格は28,800円前後。直接の競合はiPod nano 4GB(27,800円)あたりだろう。
■ “おもてなし”を意識したパッケージ。やや大きめの本体 パッケージは、写真だとややわかりづらいが、ボディカラーに合わせた紫色の独特の色調が印象的。発表会の「おもてなしの原点に立ち返る(コネクトカンパニー 辻野 晃一郎コ・プレジデント)」という言葉からもわかるように、豪華なパッケージだ。開くと、「Every moment has its music」というメッセージが現れる。気の利いた演出はさすがはソニー製品。同梱品はイヤフォンとCD-ROM、USB接続ケーブル、ACアダプタなどなど。
流線型のボディデザインを採用。イメージとしてはRioが以前発売していたNitrusにかなり近いが、有機ELディスプレイの採用や金属の質感/重量感など、奇抜さと大人っぽさを兼ね揃えたような独特なデザインで、なかなか新鮮だ。ディスプレイサイズは1.5型で、128×128ドット/4階調の有機ELを搭載する。 外形寸法は55×11.5~18.7×88.1mm、重量は109g。手に持った感触はずっしりと重く、1インチHDD搭載の競合機と比較してもやや重いが、重量バランスは良く、手になじむ大きさということもあり、さほど違和感はない。とはいえ、最大の競合となると思われるiPod nano(40×90×6.9mm/幅×縦×厚み)に比べると、大きさや薄さという点では分が悪い。 ディスプレイ下部には、カーソル移動や決定操作を行なう、丸形の操作ボタン(5方向ボタン)や、メニュー呼び出しや検索画面を呼び出すOPTIONボタン、階層移動などを行なうBACKボタンを装備。本体左側面には独特の模様を刻んだLINKボタンを備えている。ボタン操作を行なうと、うっすらと白色に点灯するなど、高級感の演出も気が利いていて、ソニーらしさを感じさせてくれる。 本体上面にはヘッドフォン出力とHOLDボタンを用意。ヘッドフォン出力脇にはリモコン端子も備えている。対応のリモコンは「RM-MC35ELK(6,825円)」、「RM-NWS1(実売3,500円)」。右側面にはボリュームスイッチ、下面にはPC接続用のマルチコネクタを装備している。また、背面にはストラップホールも備えている。
■ 新アプリ「CONNECT Player」には疑問
オーディオデータの転送には「CONNECT Player」を利用する。対応OSはWindows 2000/XP。しかし、藤本氏のレポートにもあるように、このCONNECT Playerの使い勝手はあまり満足いくものではない。特に、起動や、動作レスポンスも非常に遅いのでかなりストレスがたまる。 主にPentium M 1.2GHz/メモリ512MBのLet'snote CF-W4で使用したが、特に起動直後や多くのオーディオファイルを読み込んだ直後は、非常にCPU負荷とメモリ使用量が高く、Photoshopなどの併用ではアプリケーションが落ちてしまったのかと思うほど。通常の音楽プレーヤーソフトとして利用してみるにも、スクロール操作などのレスポンスが今ひとつだ。Pentium II 450MHz、メモリ256MB以上が最低用件とされるが、その倍以上のスペックのマシンでもかなりの遅さだ。 楽曲の検索画面は、[全ての曲]、[アーティスト]、[アルバム]、[アーティスト/アルバム]、[ジャンル/アルバム]から選択可能。アーティスト/アルバム、ジャンル/アルバムでは、アーティスト/ジャンルごとにグループ化して、アルバム検索ができるというもの。 CDリッピングはMP3とATRAC3、ATRAC3plus、WAVEが選択可能。プレイリスト作成機能などの基本的なオーディオソフトとしての機能は一通り備えている。楽曲のリッピングのほか、既存のMP3/ATRAC3ファイルの読み込みも可能。なお、WMAファイルの読み込みも可能だが、WMAのまま転送はできず、転送時にATRAC3に変換される。また、DRM付きのWMAの再生も非対応となっている。
転送速度もあまり早くないほか、いつ転送が終わったのか今ひとつよく分からないのが悩ましい。転送中の表示は一応本体下のステータスバー上に現れるのだが、この表示が曖昧なのだ。[機器との接続中]となっていなければ取り外してもいいはずだが、終わったと思ったらよく分からないタイミングで再び同期を取りに行ったり、いつ転送終了と判断していいのか分からない。転送途中に切断してしまうと、HDD上に楽曲データベースを認識できずに、再度接続/転送をやり直さないといけないこともあり、このあたりの動作状況をもう少しわかりやすく示して欲しいと感じた。 NW-A3000/A1000の最大の特徴とも言える「アーティストリンク」のデータもCONNECT Player上で作成しているようで、リッピング時や楽曲取り込み後はかなりの頻度でGracenote CDDBにアクセスしている。なお、アーティストリンクのデータはプレーヤーでは確認できるが、CONNECT Playerからそれらのリンク情報などを確認することはできない。 また、ジャストシステムが開発した読み仮名変換モジュールを利用した自動読み仮名変換機能を搭載。取り込んだ楽曲から、日本語の曲名/アルバム名/アーティスト名を自動的に読み仮名変換して、50音順、行単位で表示するため、日本語楽曲の検索がより高速に行なえるというものだ。
他のオーディオプレーヤーも大抵は50音順で表示しているようにも感じていたが、それはひらがな/カタカナの楽曲について。実は文字コード順での検索になっているため、漢字のアーティスト名については、ひらがな/かたかなの後によく分からない順番で並ぶということが多い。 しかし、CONNECT Playerで自動読み仮名変換することで、漢字名のアーティストも50音順に表示できるようになった。当たり前のことなのだが、今までこの問題に取り組みを見せるメーカーはほとんど無かっただけにこれは非常に嬉しい前進。使い勝手については後述するが、特に国内メーカーには是非後を追って頂きたい魅力的な機能と感じた。 プレーヤーソフトとしての機能はオーソドックス。ジャケット写真も登録できるが、楽曲単位のみでアルバム単位では登録できない。もっとも、NW-A1000にはジャケット写真表示機能がないので、無くてもさほど問題はないのだが……。また、ウムラウト付きの楽曲はCONNECT Player上で認識されるが、再生はできなかった。しかし、NW-A1000に転送すれば問題なくウムラウトも表示され、再生できた。 「Auto Update 機能」も搭載し、タスクトレイに常住アプリとして登録しておけばアップデートも行なわれる。ソフトの公開直後ということもあり、頻繁なアップグレードが予想されることから、基本的にONにしておいたほうがいいかもしれない。 なお、SonicStage Ver.3.3からもNW-A1000を認識でき、楽曲転送も可能となっているが、アーティストリンクや、インテリジェントシャッフルなど、ウォークマンA自慢の新機能は利用できない。安定性から言えばSonicStageが上回るが、NW-A1000をフルに使いこなしたければ、CONNECT Playerを選択することとなるだろう。
■ 使いやすいインターフェイス。漢字対応50音順表示も秀逸
電源はOPTIONや決定ボタンを押すとONになる。うっすらとフロントのボタン部が点灯しながら、[Goodday GoodMusic]というメッセージが表示されるなど、オーナーシップをくすぐる仕掛けに事欠かず、高級感は充分だ。起動時間は2秒程度。4方向のカーソルキーと中央の決定キー、OPITION、BACKボタンを装備。これらを組み合わせて基本操作を行なう。 ホームメニューでは、9つのアイコンが現れる。左上がプレイモード、左中央が[よく聴く100曲]、[各種設定]、中央列は[イニシャルサーチ]、[リストサーチ]、[プレイリスト]、右列は[インテリジェントシャッフル]、[再生履歴]、[再生画面へ]の9つの選択肢が用意されている。 このうち楽曲検索の中心となるのが、リストサーチと、イニシャルサーチだ。リストサーチはプレイリスト/全曲/アルバム/アーティスト/ジャンル/評価などから絞り込んで検索するオーソドックスな検索メニューだ。一方のイニシャルサーチはカナ、英数字から任意の文字を選択し、その文字からアーティスト/アルバム/楽曲の絞り込みが可能という検索メニューだ。 個人的には通常のリストサーチの方がなじむが、楽曲タイトルからすぐにアクセスしたいといった時などは、イニシャルサーチも使い勝手はある。少し気になるのが、起動時のホームメニューを見るだけではどのモードが一番オーソドックスな検索方法か分からない点。リストサーチ、イニシャルサーチといった言葉から楽曲検索をイメージできるような上級者はともかく、初心者にとってはやや敷居が高い印象だ。
ともあれ、一度リストサーチに入ってしまえば検索は非常に簡単だ。アーティスト/アルバムなど検索モードを指定してから、検索できる。この検索画面は良くできており、基本は50音/英数字順なのだが、例えば[あ]から始まるアーティストを検索すると、ア行のアーティストをリスト表示、ここで縦軸に移動すると順に移動できるほか、横軸はカ→サなど行順のショートカットとして使えるようになっている。縦軸、横軸はシームレスに移動可能となっている。 例えば、ア行のアーティストが10組、カ行は2組あるライブラリで、サ行の一番上の[坂本龍一]にたどり着きたい、といった時は、縦軸移動ではカーソルの下を12回押す必要がある(長押しでも順送りに移動可能)。一方、横軸移動だとカーソル右を2回押すだけでたどり着ける。いずれにしろこの両軸の移動に制限がないので、非常に柔軟な検索が可能だ。個人的には、横軸の移動が可能になったことで、従来のネットワークウォークマン「NW-HD5」よりかなり使いやすくなったと感じた。 また、再生画面でオプションボタンを押すとホームメニューに戻ったりアーティスト/アルバム検索画面を呼び出すことも可能で、簡単に検索に移れる。ここからブックマーク登録をし、本体内でプレイリストを作成できるなど、基本的な操作体系はかなり練り込まれており、使いやすい。
前述の通り漢字名のアーティストも50音順に表示できる。ジャストシステムが開発したカナ変換モジュールも使いながらも、アーティストのデータベースはソニーで作成しているとのことだが、今回試した限りでは特に問題ないようだった。実際に第5世代iPodでのライブラリ表示と比較してみるとその正確さが確認できる。日本メーカーらしい気配りは非常に嬉しい強化ポイントだ。
楽曲の検索性に関しては大きな進歩が感じられたが、残念なのはレスポンスがあまり良くない点だ。特に楽曲再生画面からBACKボタンで階層を戻る時などは2秒弱待たされる印象。 階層を追って楽曲検索を行なう場合は、比較的イメージ通りに移動できるが、楽曲のスキップなどでは少し引っかかるような感触がある。1曲目から5曲目までスキップするため5回右カーソルをクリックしたつもりでも、押した回数とスキップした曲数が一致しないこともあった。他のプレーヤーと比較して大幅に遅いわけではないのだが、NW-HD5など従来のHDDネットワークウォークマンでは不満が無かっただけに、もう一段のレスポンス向上を期待したい。
■ 可能性を感じさせるインテリジェント機能 ウォークマンAの新機能として搭載した「アーティストリンク」や「インテリジェントシャッフル」、さらに「再生履歴」、「よく聞く100曲」などはCONNECT Playerとの同期時のみに利用できる機能だ。動的にプレイリストを作成したり、おすすめ楽曲を提示したりといった“インテリジェンス”がウォークマンAの一つのアピールポイントとなっているというわけだ。
最大のウリとも言える「アーティストリンク」は、本体左脇のボタンで呼び出すことができる。これは、楽曲再生中に気に入ったアーティストに近いジャンルのアーティストをHDD内のライブラリから検索する機能。紹介された楽曲は曲の途中から再生され、次に聞きたいアーティストを選択できる。 楽曲再生中に左脇のLINKボタンをクリックすると、アーティストリンク画面となり、再生中のアーティスト関連すると予測されるアーティスト情報が表示される。関連するアーティストが複数ある場合もリンク表示され、そこから選択すると、楽曲をプレビュー再生。さらに再生ボタンを押し込むと、そのアーティストの楽曲再生を開始する。 試してみたところ、YMOの3人がリンクしないなど、つっこみどころはあるが、まずまず高い精度でリンク情報が提示されるように思える。 基本的はジャンル/年代検索をベースにしていると思われるが、例えば[マイルス・デイビス]だと、60年代から活躍しているのジャズアーティスト、[Gerry Mulligan]や[Wayne Shorter]から、70年台の[ウェザー・リポート]まで表示され、まずまず精度の高いリンクが表示される。 どちらかといえば、邦楽のヒット曲のほうが精度はともかくリンク数が多く、機能としては充実しているように感じた。もっとも、「該当するアーティストが見つかりませんでした」と言われる時もたびたびで、少しマイナーどころになるとほとんど関連づけてくれない。 結果にはそれなりに納得できるものの、すごく使いそうな機能かと言えば、もともとの自分のライブラリということもあり、そんなに目新しい発見は無さそうだ。逆に、「なんでこれ選ぶ?」とつっこみながら使う方が面白いように感じる。ジャンルだけでなく、プレーヤーやプロデューサ、曲の類似性など、より多くの情報をメタデータ化して管理されれば、面白いレコメンド機能となると思うが、今回使った限りではそうした驚きはなかった。元々、6GBのライブラリなので、さほど楽曲数もないので、このレベルであれば転送したファイルをだいたい覚えていられるというのもあるかもしれないが……。 音楽配信サイトのMoraもCONNECT Playerでの対応にあわせて、ベータバージョンながらアーティストリンクの機能が実装されている。Moraの購入者などから、より多くのユーザーの嗜好情報を集めることで、データの精度を高めることができれば、一段と使えるレコメンド機能になるとは思えるし、それだけの可能性は感じさせてくれる機能ではある。 なお、アーティストリンクが対象アーティストが見つからない場合、検索範囲を拡大できる。しかし、ほとんどジャンル検索の拡張程度のようで、例えばジャズ系のアーティストで拡張検索すると、HDD上のジャズのアーティストがずらりと並ぶという感じ。あまり目新しさは感じられない。
インテリジェントシャッフル機能も搭載し、普段良く聞く曲だけを集めた「よく聞くシャッフル」、楽曲のリリース年次データベースを元に特定の年代を自動的に選択し再生する「タイムマシンシャッフル」を搭載。ユニークなのは[タイムマシンシャッフル]。要するにリリース年ごとのシャッフル機能なのだが、4桁の年号をスロット式に回転させて表現するなど、見せ方がうまい。 ただし、録音が1969年でもリリース年が2002年だと、2002年の楽曲として扱われてしまうなど、ライブラリ中の楽曲のタグ情報に依存する点が多く、精度という意味では今一つというところもある。 また、「再生履歴」、「よく聞く100曲」は、再生履歴から自動的にプレイリストを作成する機能。便利な機能だが、残念なのはCONNECT Player上で確認したり、編集してプレイリスト化したりできないこと。このあたりのプレーヤーとハードウェアの連携がすすめば、もっと面白いプラットフォームになると思うのだが。
■ 音質は良好
付属のイヤフォンは本体カラーにバイオレットのアクセントがなかなか格好いい。そのまま十分使えるレベルだが、イヤーパッドが付属しないのが残念なところ。 本体の再生性能は良好で、ソニーらしく、ナチュラルでクセのない印象。前モデルNW-HD5にもかなり近いが、NW-HD5で持っていた中域の独特の勢いは無く、ぐっとオーソドックスな音作り。過度な誇張もなくソースに忠実で、個人的には非常に満足できるサウンドだ。 イコライザは、ヘビー/ポップス/ジャズ/ユニーク/カスタム1/カスタム2を装備。6バンドのカスタムEQも装備している。ATRAC3でもMP3でも特に問題なく適用できる。従来まで備えていたVPT Acoustic Engineは省かれている。 また、ライブ盤などの曲間のギャップをスムーズにつなげて再生する、いわゆる「ギャップレス再生」も可能で、ほとんどギャップを意識することはなかった。ライブ盤で完全に曲間がつながっている場合は、若干ギャップが知覚できることもあるが、それもわずかだで、大抵のアルバムではギャップを意識することは無かった。 バッテリ駆動時間は約20時間。MP3を中心としたライブラリを連続再生してみたところ15時間弱で充電を促す表示が現れた。なお、ACアダプタでの充電のほか、USB充電にも対応する。ただし、USBケーブルは専用の形状で、新しいマルチコネクタに対応したもの。通常のUSBミニケーブルなどを利用することはできない。このマルチコネクタはNW-A1000から新たに搭載したものだが、iPodのDockコネクタのような周辺機器による拡張も期待される。
■ ウォークマンの挑戦は続く? ハードウェアやユニークなコンセプトに可能性を感じさせるが、不安点はやはりCONNECT Playerの完成度だ。マシンがインテリジェンスをもって、ユーザーの思考をアシストし、結果的にユーザーエクスペリエンスを高めるという思想は理解できるが、現状の完成度、特に動作の遅さと、動作状態をいまひとつ理解できないインターフェイスは早急に修正して欲しい点だ。 少なくとも、初めてデジタルオーディオプレーヤーを扱うユーザーが安心して利用できるようなアプリケーションとは言えないし、マニア層でも扱いに困ってしまう完成度だ。また、1.5Mbps以上のブロードバンド環境が求められるというのも、裾野が広がりつつあるオーディオプレーヤー市場に投入される戦略製品としては疑問を感じるところ。ネットワーク化は一つの大きな差別化ポイントとは思うが、それも、まずは基本的な機能がしっかり扱えることという条件があってこそ。現時点では、ユーザー体験という観点から見て、決してほめられるソフトウェアではない。プラットフォームとしての可能性はあるのかもしれないが、現状のソフトウェア-ハードウェアのトータルの完成度は、歴代のネットワークウォークマンに及ばない。
SonicStageも当初はかなり不満の多いアプリケーションだったが、MDというレガシーなデバイスをベースにしていたという理由は理解できた。しかし、CONNECT Playerはフルスクラッチで起こした最新のアプリケーションで、ソニー最高のブランドでもあるウォークマンの復活を期した重要な戦略製品のためのもの。 アーティストリンクやインテリジェントシャッフルなどは機能としては面白いが、基本的なユーザーエクスペリエンスを犠牲にしてまで実現するモノだろうか? 今後のアップデートで解消できると考えているのかもしれないが、もう少し基本的な使い勝手を向上させた上で新機能を追加してもよかったのではないだろうか。WMAやAACの対応などもアナウンスしているものの、なによりCONNECT Playerの完成度を上げることが、新ウォークマンAの魅力を向上させる最善策なのは間違いないと感じる。 ハードウェアは新日本語検索の導入や、新しいインターフェイスなど見るべきポイントも多い。価格面でも6GB容量で28,800円程度と、iPod nanoと比較しても十分な競争力がある。容量を考えれば、こちらを選ぶという選択肢も十分アリだろう。 アプリケーションの完成度やMP3に対応できずに出遅れたソニーが、新たなユーザー体験を提示し、iPodの後塵を拝した時代に終わりを告げる戦略商品が「ウォークマンA」のはず。このプラットフォームを手なずけて、本当に使いやすい製品に仕上げていけるのか。ソニーの“挑戦”はまだまだ続くのかもしれない。 □ソニーのホームページ (2005年11月25日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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