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ビデオiPodへの挑戦状?
DivX/WMV対応30GB HDDプレーヤー
クリエイティブメディア 「ZEN VISION:M」
発売日:12月中旬
標準価格:オープンプライス
直販価格:39,800円


■ 縦型ビデオプレーヤーの時代?

 2005年のHDD搭載デジタルオーディオプレーヤーのトレンドとして挙げられるのは、“ビデオ対応”だろう。ビデオプレーヤーについては各社がさまざまなアプローチを行なっていたが、トップシェアをひた走るAppleは、iPodを縦型の基本デザインを崩すことなく、ビデオ対応とした。

 縦型のビデオ対応プレーヤーとしてはiriver「H300シリーズ」などの前例もあるが、クリエイティブ「Zen Vision」、COWON「COWON A2」、さらにPSPなど、多くの製品がビデオの魅力を最大点に訴求するために、横長のデザインを採用していた。それらと対比すると、Appleのビデオ対応というアプローチは、あくまでオーディオの付加機能という位置づけといえるだろう。

パッケージ

 そのビデオiPodについて、米国ではテレビ番組のダウンロードサービスなどの新しいビジネスモデル提案がなされ、それなりに盛り上がっているようだ。日本の市場では今のところあまり大きなビデオ活用シーンというのは見られてはいなが、iTunesとの連携によるビデオPodcastなどの新しい使い方が提案されたのは新iPod以降の新たな流れだろう。当然他社も黙っている筈もなく、クリエイティブが新たに発表したのが「ZEN VISION:M」だ。

 ビデオ対応の第5世代iPodと同様に2.5型/320×240ドットのカラー液晶ディスプレイを搭載。iPodと異なり対応ビデオコーデックは、MPEG-1/2/4、WMV9、MotionJPEG、DivX 4/5、XviDとなる。HDDは30GBで価格は39,800円。iPod 30GBの34,800円と比較すると若干割高だが、FMチューナやボイスレコーダといったiPodにはない付加機能も充実している。



■ 新iPodにはさほど似ていない

同梱品

 本体のほか、USBケーブルやACアダプタ、キャリングポーチ、CD-ROM、接続コネクタ、イヤフォンなどが付属する。

 ボディカラーはブラック、ホワイト、グリーンの合計3色を用意。外形寸法は62×19×104mm(幅×奥行き×高さ)。第5世代iPod 30GB(61.8×11×103.5mm)と、縦横はほぼ同じなのだがかなり厚く、iPod 60GB(14mm)よりもさらに5mm厚い。そのため手に持った感触も大分異なっている。重量は約166gで、こちらもiPod 30GB(約136g)/60GB(約157g)よりも重くなっている。

 液晶ディスプレイは2.5型/320×240ドットで、表示色数は26万色(iPodは6万5,000色)。液晶下部に操作ボタンをまとめており、[バーティカルタッチパッド]と呼ばれる縦長のタッチパッドを中央に配し、その左上に[マイショートカット]ボタン、その下に[前/巻き戻し]ボタンを装備。バーティカルタッチパッドの右上に再生/停止ボタン、右下にオプションボタンを装備する。

 本体上面にヘッドフォン出力と、電源/HOLDスイッチを装備。下面には専用のドッキングコネクタを装備する。USB端子やDCジャックなどは備えておらず、ドッキングコネクタに専用の変換アダプタを介して、PCとのUSB接続や充電などを行なう。つまり、連携や充電には必ずこのアダプタが必要となるので、外出先での充電やPC連携などが想定される時には一緒にこのアダプタを持ち歩く必要がある。このあたりはやや面倒に感じる。

 発表時の製品写真を見ると、特にインターフェイス周りのデザインがiPodそっくりと感じた。しかし、今回借りたブラックモデルに関しては、初期設定では起動画面がブルーを基調としたものとなることから、「まあ似ているかな?」という程度。背景をホワイトに設定するとかなりiPodに近づくのだが、本体を持った時の重量感や厚み、そして操作体系などが大幅に異なることもあり、トータルの使用感としてはiPodに似ているという印象はあまり無い。

 もっとも画像だけ見れば、かなり似ているのは間違いない。同社が所有し、「iPodも基づいている」と主張している、UI関連の「Zen特許」への自信からか、iPodに似ているということはさほどネガティブには考えていないようだ。


本体前面。2.5型のカラー液晶を装備 画面をホワイトにするとかなりiPodに近づく印象 操作ボタン部。バーティカルタッチパッドを中心としたレイアウト
上面にヘッドフォン出力と電源ボタンを装備 専用のドック接続端子を装備する 側面
背面 PCとの連携や充電には専用アダプタが必要 イヤフォン

ビデオiPod 30/60GBとの比較
iPod 30GB(左)、ZEN VISION:M(中央)、iPod 60GB(右)

【主な仕様】
「ZEN VISION:M 30GB」iPod 30GB
(参考)
iPod 60GB
(参考)
カラーバリエーションブラック/グリーン/ホワイトブラック/ホワイト
HDD容量30GB30GB60GB
液晶2.5型320×240ドット
261,144色表示
2.5型320×240ドット
65,000色表示
対応音声フォーマットMP3
WMA(DRM対応)
WAV
AAC
AAC VBR
プロテクト付きAAC
Apple Lossless
MP3
WAV
AIFF
対応動画フォーマットMPEG-1/2/4
WMV9
MotionJPEG
DivX 4/5
XviD
H.264ビデオ
MPEG-4(シンプルプロファイル)
FMチューナ
ボイスレコーダ
連続再生時間動画:最大4時間
音楽:最大14時間
動画:最大2時間
音楽:最大14時間
動画:最大3時間
音楽:最大20時間
PCインターフェースUSB 2.0USB 2.0
対応OSWindows XPMac OS X v10.3.9以降
Windows 2000/XP
外形寸法
(幅×奥行き×高さ)
62×19×104mm61.8×11×103.5mm61.8×14×103.5mm
重量約166g約136g約157g
直販価格
(2005年12月16日現在)
39,800円34,800円46,800円


■ 対応ビデオファイルは横長Zen Visionと共通

ZEN VISIONメディア エクスプローラ

 まずは、ビデオ関連の機能をテストしてみる。転送は付属の「ZEN VISIONメディア エクスプローラ」、もしくはWindows Media Player 10から行なう。

 対応ビデオ形式としては9月に発売した3.7インチ液晶搭載の「ZEN VISION」とほぼ共通。ビデオコーデックとしては、WMVとMPEG-4、DivX 4/5、XviD、MPEG-2、MPEG-1、Motion JPEGなどに対応。ただし、WMVについては解像度が320×240ドットまでに制限され、MPEG-2はビットレート2Mbps程度までとなるなど、AVI系のMPEG-4以外の対応はあくまで再生もできるというレベルだ。


【対応ビデオ形式】
コーデック最大解像度/
ビットレート
推奨解像度/
ビットレート
WMV320×240ドット
700kbps
320×240ドット
436kbps
MPEG-4
DivX 4/5
XviD
720×480ドット
3Mbps
640×480ドット
2Mbps
MPEG-2640×480ドット
2.5Mbps
640×480ドット
2Mbps
MPEG-1640×480ドット
1.15Mbps
352×288ドット
1.15Mbps
Motion JPEG640×480ドット
2.5Mbps
-

 また、WMV/320×240ドット以下のファイルであれば、USBストレージとして認識したZEN VISION:Mにそのまま転送可能で、本体の[メディア]-[Video]フォルダにそのまま転送できる。しかし、そのほかのフォーマット/解像度のファイルをストレージとして転送しようとすると、転送ソフト利用時と同じくWMVに変換するよう促される。

 iPod用のH.264ファイルやPSP用のH.264、ファイルコンテナがMP4系のMPEG-4についても転送できず、WMVに変換するよう促すダイアログが表示された。

 また、変換ソフトとしては「Creative ビデオコンバータ」も用意。これを利用することで、ZEN VISION:Mに最適化したWMV作成が可能となり。画質モードは、[最高品質(320×240ドット/30fps/855kbps)]と、[高品質(320×240ドット/30fps/764kbps)]、[最適なファイルサイズ(320×240ドット/30fps/429kbps]の3モードが用意されるが、WMV以外のファイル作成はできない。


WMV以外のファイルをドラッグアンドドロップするとWMVに変換を薦める Creative ビデオコンバータ


■ クセのある操作系。ビデオ再生品質は良好

メインメニュー

 ビデオプレーヤーとして実際に利用してみる。メインメニューを起動すると、ミュージック/フォト/ビデオ/FMラジオ/マイク/エクストラ/システムといった項目が現れ、ここでビデオを選択するとビデオモードとなる。

 本体操作は中央の[バーティカルタッチパッド]を中心に行なう。バーティカルタッチパッドをなぞってメニューの縦方向移動が可能で、パッドを指でタッチすることで、決定動作となる。上の階層に上がるためには、パッド右下の前/巻き戻しボタンを利用する。

 再生画面では、バーティカルタッチパッドの左右枠の部分を長押しすると早送り/巻き戻しとなり、バーティカルタッチパッドを縦方向上下になぞるとボリュームのアップダウン動作となる。

 再生画面でなく、検索メニュー中でボリューム操作する時にはオプションボタンを押して、ボリュームを選択する。

再生画面 ボリューム制御 ビデオ再生時のオプションメニュー

 ややクセがある操作体系で、ビデオのようにファイルが比較的少ない場合であればなんとかやりくりできるが、オーディオのように何千曲も管理する場合には、慣れるまでストレスが貯まる。パッド左上のショートカットキーはカスタマイズ可能で、かなり柔軟なセットアップが可能。しばらく使っていると操作イメージがつかめるようになるのだが、慣れるまではかなり時間がかかった。

タッチパッドの感度設定が重要

 また、初期設定のタッチパッド感度はかなり敏感ですぐにクリック動作となってしまうので、非常にストレスがたまる。使いながら自分の感覚に合った感度設定を行なうことは必須だろう。個人的には感度[低]がベストと感じた。

 画質は、ソースに依存するが、DivX系であればVGA解像度のソースでもそのまま再生してくれるので、精細感は充分だ。発色も良好で色に深みがある。このサイズのポータブルプレーヤーとしては満足行く品質だ。

 同じソースを再生できないため一概に言えないが、発色も良く、バックライトによる黒浮きやコントラストの低下はiPodより少ないように感じる。視野角も充分だ。ただし、映り込みはZEN VISION:Mの方が強く感じる。もっとも同サイズ/同解像度の液晶を搭載しているという点で、ポータブルビデオ体験としてはあまり変わらない。そうした意味では、ビデオを重視した際に決め手となるのは、ビデオ録画やビデオダウンロードサービスから、プレーヤーへの転送を含めたトータルなソリューションとなるだろう。


■ 必要十分なオーディオ機能

オーディオモード

 オーディオプレーヤー機能は従来のZenシリーズとほぼ共通。対応オーディオフォーマットはMP3/WMA/WAVで、転送はビデオと同様にZEN VISIONメディア エクスプローラかWindows Media Player 10を利用する。

 メインメニューから[ミュージック]を選択すると、[プレイリスト]、[アルバム]、[アーティスト]、[ジャンル]、「すべてのトラック」、「レコーディング」、「ブックマーク」、[DJ]などの検索モードが現れる。

 操作は[ビデオ]モードとほぼ共通で、各検索モードを決定し、バーティカルタッチパッドでアルバムやアーティストを選択。そこで、パッドをタッチすれば再生が開始される。ZenVisionと同様に、リスト表示された楽曲の右側にアルファベット順のショートカットを用意。大量の楽曲を管理している場合は、任意のアルファベットを選択して、選曲できるため、パッド操作に慣れればかなり早く楽曲選択/再生が可能だ。検索や再生のレスポンスも良い。

アルファベット順のショートカット検索も可能に 再生画面

 オプションボタンを活用することで、本体内でのプレイリスト作成も可能なほか、お勧めアルバムやオールシャッフルなどのリスト再生が可能な「DJ」も面白い。オーディオプレーヤとしての機能は非常に充実している。

 イヤフォンは従来のクリエイティブ製品とほぼ同じ。音質は付属のヘッドフォンを利用すると若干低域がブーミーな印象も残るが、クリエイティブらしい力強く、落ち着いたサウンド。音量を上げると若干ノイズが感知できるが、目立ったクセもなくさまざまなソースへ対応できそうだ。5バンドのイコライザも搭載している。


フォト表示も可能

 また、フォト機能も搭載しており、iPodと同様に転送したファイルのサムネイル表示/全画面表示やスライドショーが可能。iPodと異なり専用ファイルへの変換などは行なわず、JPEG画像をそのまま転送する。

 また。FMチューナやボイスレコーダも内蔵。ZEN VISIONメディア エクスプローラを利用したOutlook連携機能などの付加機能も充実しているほか、オプションのケーブルを利用したビデオ出力機能も備えている。

 バッテリはユーザー交換不能な内蔵リチウムイオンで、動画再生時に最大4時間。音楽再生時は最大14時間の連続駆動が可能。



■ オーソドックスなDivX対応HDDプレーヤー。WMV対応強化に期待

 機能的には9月に発売した「ZenVision」を踏襲しており、目新しさはさほど無いが、オーディオプレーヤをベースとしたビデオ対応機としては十分な機能と使い勝手を備えている。ユニークなタッチパッド式のインターフェイスは好みが分かれるところだが、手軽に音楽もビデオを見たいという人や、iPod以外のプレーヤーが欲しいという人にとっては面白い選択肢だろう。

 iPodと比較すると厚みや重量の点では劣るものの、PC用途では人気の高く、過去の資産も多いDivX系のファイル再生に対応したという点は非常に大きな差別化ポイント。また、解像度/ビットレートにおいても720×480ドット/3Mbpsまでと、かなり対応範囲が広いのも重要だ。テレビキャプチャカードなどのトレンドはDivXからiPodやPSPに向けたMP4にも対応しつあるが、DivXでライブラリを構築している人にとってはiPodより扱いやすいプレーヤーと言えそうだ。

 より大型のディスプレイが欲しい場合は「ZenVision」も用意されるなど、ラインナップも充実している。個人的にはDivXもいいが、もう少しWMVの対応も強化して欲しいと感じる。352×240ドットまでという制限はWindowsのMTP(Media Transfer Protocols)によるものなので、どちらかと言えばMicrosoft側の問題となるだろうが、DivXと同等の解像度ビットレートまでサポートするとより魅力的になると感じる。

 また、WMVベースのCinema Now!のサブスクリプション型映像配信など、Windows Mediaを利用した新しい映像配信サービスも始まりつつある。こうしたサービスとの連携が見えてくるとビデオプレーヤーの本格普及も見えてくると思うのだが……。国内ではiPodも実現できておらず、PSPのPotrable TVも走り始めたばかり。こうしたサービス面での差別化で、他と差を付けるようなアプローチにも期待したい。

□クリエイティブメディアのホームページ
http://jp.creative.com/
□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=12272
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(2005年12月16日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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AV Watch編集部

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