■ DTCP-IP対応のルームリンク 2011年の地上アナログ停波に向け、地上デジタルへの移行を各社、各団体が推進している。それに伴い、コピーワンスの見直し検討や、IPネットワークの活用などの議論も進められている。 家庭内ネットワークでの録画映像配信についても、従来の運用では、配信する手だてが用意されていなかったが、昨年9月にデジタル放送の録画番組について、DTCP-IPを利用したネットワーク配信がARIBで承認された。 これにより、日本のデジタル放送においてもネットワークを介して録画番組が見られるようになった。まだ対応機器は少ないが、ソニーVAIOのデジタル放送対応モデルでは、DTCP-IPをサポートし、クライアントのVAIO Mediaなどからストリーム視聴が可能となっている。 あわせてネットワークプレーヤーの「ルームリンク」も、新モデルの「VGP-MR200」で、DTCP-IPをサポート。VAIOで録画したデジタル放送を通常のテレビにネットワーク経由で出力可能となった。 アナログ放送においては、何の制限も無くできていたことではあるものの、デジタル放送のハイビジョン映像がホームネットワークで伝送できるようになったというのは、歓迎すべきことだろう。ソニースタイルでの直販価格は24,800円で、従来モデル「VGP-MR100」(生産完了)の直販価格と同じになっている。 ■ デザインは従来モデルを踏襲 本体の基本デザインは従来製品「VGP-MR100」とほぼ共通で、外形寸法は215×145.5×33.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は800g。 本体前面に、電源ボタンを装備。背面にEthernetを備えるほか、IEEE 802.11b/g対応の無線LANを内蔵し、左端にアンテナを装備する。出力端子はD3端子と、S映像、コンポジット、光デジタル音声出力、アナログ音声出力を装備する。 リモコンは上部にテンキーを備えるほか、再生や一時停止、早送り/戻しなどの独立したボタンを装備する。テレビのボリューム操作などにも対応する。
■ 読込み以外のデジタル放送再生レスポンスは良好
基本的なデザインは「VGP-MR100」とほぼ同じなので、新鮮味は余り無い。DLNAガイドラインに準拠し、PCやDLNAサーバーの中のビデオやオーディオファイルをネットワーク経由で再生できる。 最大の特徴はDTCP-IPに対応し、録画したデジタル放送番組を、そのまま家庭内のネットワークで伝送できること。従来モデルでもHDVカメラで撮影したハイビジョン映像を伝送できたが、今回DTCP-IPをサポートしたことでデジタル放送録画映像もネットワーク受信が可能となった。 デジタル放送のネットワーク伝送には、サーバー側にデジタル放送録画に対応し、サーバーソフトにVAIO Media Ver.5.0を採用したVAIOが必要となる。今回はソニー「VGC-VA201DB」を組み合わせて利用した。
VGP-MR200を起動して、Ethernetでルータなど家庭内のネットワークに接続。VAIO Mediaのクライアントとして機器登録するだけで、サーバー機能を持ったVAIOにアクセス可能だ。DLNAガイドラインに準拠しているため、VAIO Media以外のサーバーソフトも認識可能となっている。 無線LANでの接続も可能で、専用の無線LANツールと本体のSETUPボタンを組み合わせて、家庭内のルータのSSIDやパスワードを入力するだけで、簡単にネットワーク設定が行なえる。無線LANはIEEE 802.11a/b/g対応だが、デジタル放送映像の伝送には有線LANの利用が必要となる。 対応サーバーを検出すると、サーバー名が表示される。ここでサーバーを選択すると、メディア選択画面が現れる。任意のフォルダ内の楽曲やビデオを自動認識し、音楽については楽曲や、アルバム、アーティスト単位で振り分けられる。デジタル放送録画ビデオについては専用の「録画したビデオ(デジタル放送)」という項目が用意される。
あとは、視聴したいデジタル放送番組を選択するだけで再生開始される。タイトルを選択してクリックすると、1時間番組の場合、10秒程度待たされる。アナログ録画番組と比較するとかなり再生開始まで時間がかかるようだ。 ただし、再生が始まってしまえば、早送りや巻き戻しなどのレスポンスは良好。早送り/戻しは、リモコンのボタンを押すごとに8/30/300倍と切り替わる。再生開始してしまえば、レスポンスについてストレスを感じることはほとんどない。 また、VAIOで録画した地上アナログ番組は、フィルムロールを利用したサーチが行なえるのだが、デジタル放送番組ではフィルムロールは利用できない。ただし、タイムサーチ機能を備えており、再生中にリモコンの入力ボタンを押すと、再生時間入力画面が現れ、ここで時間を指定すると、任意の時間までファイルスキップしてくれる。
D3接続で28型CRTテレビに接続して鑑賞したが、映像出力品質は良好。ネットワーク出力による問題もなく、デジタル放送映像をそのまま鑑賞できる。サーバー/レコーダとして利用した20型液晶搭載の「VGC-VA201DB」が小型かつ光沢の強いコーティングを施していることもあり、精細ではあるもののパソコンで見ているという印象は否めなかったが、外部ディスプレイが利用できればそうした不満も解消できる。最終的な品質はディスプレイの性能に依存するが、今回試した限りでは、個人的にはネットワーク出力でCRTテレビで視聴した方が好印象だった。 ただし、VAIO側で「Station TV DIGITAL for VAIO」を使ってテレビ視聴している際は、VGP-MR200からサーバーにアクセスできない。また、デジタル放送録画中はサーバーにはアクセスできるものの、VGP-MR200からの再生はできない。 ■ WMVのネイティブ再生に対応
デジタル放送録画映像のほかの再生動画ファイルは、VAIOで録画したビデオカプセルとMPEG-2、MPEG-1、WMV9。WMVについては、従来サーバー側でMPEG-2に変換して再生していたが、新たにWindows Media DRM10に対応したほか、WMVのネイティブ再生が可能となった。 ただし、WMV HDについてはネイティブ再生はできない。VAIO Media上でサーバー側で変換を行なう設定としておけば、720pのWMV HDサンプルについては再生可能だった。1080pのWMV HDについては変換再生もできなかった。 同様にDivXなどのAVIファイルについてもサーバー側で変換することで再生可能となる。再生レスポンスは良好で、早送りや巻き戻しも高速で、ネットワークを意識することもほとんど無い。シンプルなネットワークプレーヤーとして機能的には充分といえそうだ。 また、音楽の再生にも対応し、プレイリスト再生も可能。対応ファイル形式はWAV/MP3/WMA/ATRAC3/ATRAC3plus。JPEGやPNGなどの静止画再生も可能となっている。
■ 対応機器の普及に期待 ネットワークプレーヤーとしての機能、性能は成熟しており、デジタル放送の読み込みに時間がかかる以外は大きな不満も感じない。ネットワークプレーヤーとしては実売で約25,000円という価格については若干高いような気もするが、デジタル放送をネットワーク視聴できるという付加価値を考えれば、納得の範囲だろう。 もっとも、機能を全て利用しようとするとサーバーとしてVAIOが必要となるので、やはり製品の位置づけとしては、あくまでVAIOの周辺機器。DTCP-IPによるネットワーク配信は確かに便利で、アナログでは既にできていたことだけに、デジタル化にあたっても、ユーザーの利便性を損なわない取り組みという点でも評価したいところだ。ただし、対応製品が限定される現状は、まだまだ普及はほど遠い段階といえるだろう。今後地上デジタル対応のPCや、レコーダなどでも積極的なDTCP-IP対応を期待したいところだ。 □ソニーのホームページ (2006年1月27日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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