■ 「マッハ!」の次は、「七人のマッハ!!!!!!!」
日本では2004年夏に劇場公開され、「1.CGを使いません、2.ワイヤーを使いません、3.スタントマンを使いません、4.早回しを使いません、5.最強の格闘技ムエタイを使います」をキャッチコピーにして、話題を呼んだ。 その「マッハ!」の生みの親である監督プラッチャヤー・ピンゲーオがプロデュースし、アクション監督のパンナー・リットグライがメガフォンをとったのが「七人のマッハ!!!!!!!」。ちなみに、七人のマッハということで、正式な邦題の「!」数は七つ。 タイトルを見たときに思い出したのは、ウッチャンナンチャン主演、山田大樹監督の映画「七人のおたく cult seven」。特別な才能を持った7人が悪に立ち向かうという設定は似ているといえなくもない。そもそも、邦画で「七人の~」といえば、「七人の侍」ではあるが……。英題は「Born to Fight」なので、結局、日本の配給会社が便乗してつけたのだろう。 七人のマッハ!!!!!!!も、もちろんノーワイヤー、ノーCG、ノースタントは当たり前。「マッハ!」のようにムエタイだけでなく、ムエタイ、テコンドー、ラグビー、サッカー、体操、器械体操、セパタクローの異種格闘技戦。タイが誇るトップ・アスリートたちによるスポーツの技と、バトル・アクションの融合に挑んでいるのが見所となっている。 また主演には、マッハ!のトニー・ジャーに続く、新たなアクション・スターとして、パンナー自身が育て上げてきたダン・チューポンが抜擢されている。 日本では2005年12月に劇場公開されたこの映画が、4月26日にDVD化された。DVDのパッケージにはバリエーションはなく、2枚組みの「プレミアム・エディション」のみ。初回限定仕様で、アウタースリーブ付きとなっている。価格は3,990円で、2枚組みとしては標準的だ。なお、DVDディスクは、金地に出演者で浮き上がるように印刷されている、趣向を凝らしたピクチャーディスク仕様となっている。 ちなみに、「マッハ!」は発売元 クロックワークス/販売元 ジェネオン エンタテインメントだったが、七人のマッハ!!!!!!!は発売元 ギャガ・コミュニケーションズ/販売元 ポニーキャニオンとなっている。
■ 七人のアスリートが華麗に闘う! 麻薬を取り締まる国家特殊部隊に所属する、刑事デュー(ダン・チューポン)。その正義感と類希な身体能力、や、格闘技と射撃の腕前を認められ、部隊長のリーダムロンとともに囮捜査官に任命され、東南アジア最大の麻薬王ヤン将軍の逮捕に向かう。デューは正体を見破られながらも、なんとかヤン将軍を逮捕するが、リーダムロン隊長がその犠牲となり殉職してしまう。 失意に沈むデューを見かねて、タイ・テコンドーの金メダリストでもある妹のニュイは、彼を励まそうとスポーツ・チャンピオンの一団と共に、ある小さな国境沿いの村ファトンへの慰問に誘う。そのメンバーにはリーダー的存在で伝説のサッカー選手タク、器械体操のチャンピオンであるモーとトゥクタ、ラグビー選手ナイト、セパタクローのスター選手ジョーといった、タイが誇るナショナル・チャンピオン達がいた。 彼らの訪問を村人たちは心から歓迎し、デューは傷ついた心を癒されていったが、突如として反乱軍のリーダー、ローファイ率いる武装ゲリラ部隊が村を急襲。無抵抗な村人たちの無差別虐殺を開始する。村を占拠したローファイは、「24時間以内にヤン将軍を釈放しなければ、村人全員が死ぬこととなる」と、タイ政府に向けて声明を放送。切り札として、密かに保有していた核ミサイルをタイの首都バンコクに向け発射するようにプログラムする。 デューとアスリートたちは、彼らを倒し、奪われたものを奪い返すために、村人と共に敢然と立ち上がる。村を救うため、自らの競技で培った肉体と技を武器に、ゲリラ兵たちに戦いを挑む……。 予告編や、パブリシティを見ているだけだと、「アクション満載のちょっとコミカルな明るい映画」と想像していたのだが、実際に観てみるとぜんぜん違っていた。村民も、ゲリラ軍もバタバタと死んでいく。しかし、村民や、ゲリラ軍の組織も詳細には描かれずかなり曖昧なため、個人的には感情移入することができなかった。また、こういうストーリー設定の場合、徐々にメンバーが集まるという形で、ストーリーを盛り上げていくのが普通だと思うのだが、「七人のマッハ!!!!!!!」では、「たまたまそこにいた」という設定なので、そこも感情移入しづらい理由の一つだろう。 「アクション映画に必要なのはスターではない。本物の技と肉体を持つ者だけだ!」という、パンナー・スピリットのもと、タイ全土から一流のアスリートたちが続々と集結。さらに主演には、「マッハ!」では端役だった、パンナーが育て上げたダン・チューポンが抜擢されている。なお、英題の「Born to Fight」は、'80年代に流行ったパンナー・リッティクライが原作・監督のアクション映画シリーズのタイトル。「七人のマッハ!!!!!!!」は、そのリメークと位置づけられている。 正直なところ、ストーリーなんてどうでも良く、とにかくアクションシーンを見せたいという姿勢が最初から透けて見えるが、ド派手なアクションシーンの連続で、見飽きることはない。前作と違いムエタイを主題にした映画ではなく、各スポーツのタイ代表選手による、そのスポーツの動きを活かしたアクションが用いられている。アスリートたちが見せる技が、とにかく半端ではない。最大の見せ場である、走るトレーラー上でのアクションや、手榴弾をキックではじきかえすなどの見せ場がこれでもかと続く。
その技は美しく、スローモーション(高速撮影)が多用されるのだが、蹴られる(殴られる)側が、自ら蹴られる(殴られる)方に動いているのがわかってしまうのはご愛嬌だろう。また、見せ場のシーンをスローでリピートするのは、よくある手法だが、編集でのつなぎ方が一般的な映画のセオリーを外れていて、一瞬、同じシーンであることに気づかなかったこともあった。また、場面転換にブラックアウトが何回も使っているあたりも、違和感を感じた。なお、前作同様に、エンドロール中にNG集が流れる。
■ 映像はザラザラだが、音声は大迫力 DVD Bit Rate Viewerでみたビットレートは5.87Mbps。本編収録時間は約95分と短く、本編ディスクには映像特典はまったく収録されていないが、片面1層ディスクということで、ビットレートは低い。 画質は全体的に粒子が荒く、かなりザラついている。おそらく、低ビットレートなのが理由ではなく、ソースの画質があまりよくないと思われる。ただ、全体的に暗い作品の内容にはあった画質なので、それほど気にはならなかった。 音声はタイ語(オリジナル)をドルビーデジタル5.1chで、日本語吹き替え音声をドルビーデジタル2.0chで収録する。ビットレートはそれぞれ448kbps、384kbps。オーディオコメンタリーも無い。 タイ語の5.1chはグルグル回るようなサラウンド感では今一歩だが、とにかくアクションシーンや爆破シーンが多いので、LFEが効果的に使用されており、迫力はかなりある。その意味では期待を裏切らない仕上がりになっている。
特典ディスクも片面1層で、「オリジナル予告編」(約2分40秒)、「日本版劇場予告編」(約1分10秒)、「メイキング」(約11分)、「キャスト&スタッフインタビュー」(キャスト8人、スタッフ2人)、「来日インタビュー」(ダン・チューポン&ゲーサリン・テータワッタクン、パンナー・リットグライ監督)の計約50分を収録している。 映像特典のメインとなるのは、メイキングだが、「マッハ!」DVDの「メイキング・オブ・マッハ!」の約1時間25分と比較するとかなり短い。内容的にも、マッハ!では、監督とアクション監督、トニ・ジャーの3人がコメンタリとして解説しているというスタイルだったのが、今回はそういった解説は一切ない。音声でも、字幕でも解説はまったくなく、撮影現場の音のみなのは残念なところだ。 とはいえ、ハリウッド映画のアクションシーンのメイキングだと、グリーンスクリーンの前で動いているだけで、撮影風景をみただけではなんのことかわからないが、CGやワイヤーを使っていない生身のアクションシーンの撮影風景の様子は見ごたえがある。 キャスト&スタッフインタビューでは、主演のダン・チューポンがインタビューに答えているのだが、その後ろで、3人がトレーニングをしているのがずーっと映りこんでいるのが気になってしかったなかった。「最も苦労したのが、新たなアクションシーンを絶えず生み出すこと。納得するまで繰り返し、1シーンを100回繰り返したこともある」と撮影の苦労を語っていた。 「炎を扱うシーンでは、特殊なジェルを使った。でも格闘シーンの時、燃えさしがジェルに付着して、そのまま燃え続けて、皮膚まで達してしまった。体に激痛が走ったが、カットの声がかかるまで演じ続けた」という。 製作のプラッチャヤー・ピンゲーオは、「七人のマッハ!!!!!!!」が誕生した経緯を、「当時、各界の選手を結集して映画を作るというのは、漠然とした案にすぎなかったが、突如パンナーが提案したのが『Born to Fight』のリメイク版だった。マッハ!と同じ製作チームが手がけ、マッハ!の手法を応用することで、作品に連続性がもたらされた」と説明している。 また、実際に映画の撮影にあたっては、「我々の構想は、全員の安全を確保した上で、リアルでスリルのある映画を作ることだった」と語っている。 来日インタビューでパンナー・リットグライ監督は、「アクション監督をしたマッハ!のプロデューサーに、自分自身で監督して1本撮ってみてはどうかと勧められた。そこで、20年前に監督した作品をリメークすることにした」と説明する。 最も苦労したシーンは、「トレーラーからの落下シーンは構想から2年かかった。どうやったら、安全なシーンが撮れるか一生懸命考えたが1年かかってもできなかった。一度あきらめかけて、ブルースクリーンや、CGに頼ろうとしたが、映画のコンセプトにあわないと却下された。それでCGに頼らない方法みんなで考えて、最後に成功することができた」と明かしている。 また、「村の爆破シーンは、村をセットで作り、それにあわせて道路も作った。しかし、爆破がうまくいかず、村の一部が残ってしまった。失敗してしまったので、そこで、また一から村を作り直した」という。
■ とにかく、アクションと爆破は期待を裏切らない! ストーリー的には、かなりお粗末なところはあるが、とにかくアクションと爆破は期待を裏切らない映画だ。前作「マッハ!」が約108分と決して長い映画ではなかったが、「七人のマッハ!!!!!!!」 は約95分とさらにコンパクトにまとめられている。 さらに、約95分のほとんどをアクションシーンが占めている。特典ディスクの内容の充実度が少々低いのは気になるが、価格も3,990円と標準的な範囲に収まっているので、アクション映画が好きなら購入して、損はないだろう。
□ギャガ・コミュニケーションズのホームページ (2006年5月9日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|