~ 充実したエフェクトで遊べるM-Audio「JamLab」 ~ |
パッケージ |
ご存知の通り、M-AudioからはFireWireおよびUSB接続のオーディオインターフェイスが数多く発売されている。それぞれ入出力の端子の数が違っていたり、サポートしているコネクタが違うなど、ユーザーのニーズによって選べるようになっている。その中で極めて異色なオーディオインターフェイスとして登場したのが、このJamLabだ。
約1mのUSBケーブルの先にポータブルオーディオ程度の黒いボックスが付いていて、そこに入出力端子が1つずつ付いている。ギタリスト専用というのだから当然なのかもしれないが、入力は標準ジャックのモノラル端子が1つだけ。また出力はステレオミニのヘッドフォン兼ラインアウトジャックだけという仕様だ。試しに入力の標準ジャックにステレオのプラグを挿してみたが、やはり片方しか反応しなかった。
ポータブルオーディオプレーヤーほどの大きさのボックスに、標準ジャックのモノラル端子と、ステレオミニのヘッドフォン出力が各1系統 |
これまで各社からさまざまなオーディオインターフェイス、サウンドカードなどが出てきたが、1in/2outというのは珍しい。もちろん、完全に割り切った作りであるだけに、その1inも通常の信号の入力ではなく、ギターやベースなどと接続できるハイインピーダンスの入力だけだ。サンプリングレートは44.1kHzと48kHzをサポート。またサンプリングビットは16bitと24bitが扱えるようになっている。
Windows、Mac双方のドライバが付属しているので、これをインストールすれば、すぐに音の再生や、ギターの録音は可能になるのだが、JamLabの最大の特徴はDSoundのGT Player Expressというソフトがバンドルされていることだ。これはギター用のマルチエフェクトソフトで、スタンドアロンでも動作するし、VSTのプラグインとしても機能する。このGT Playerは国内ではギターメーカーであるFernandesがシェアウェアで扱っているが(米国では2.5というバージョンで119ドル。一方、Fernandes扱いのソフトは1.07で、7,245円)、GT Player Expressはその機能縮小版という位置付けのようだ。
とりあえず、あまり難しいことは考えず、デフォルトの設定のままJamLabにエレキギターをつなぐとともに、ヘッドフォンを接続し、GT Player Expressを起動させた。2つのラックが表示されるが、画面上で上のモジュールのスイッチをオンにすると、結構な音量でギターの音が聞こえる。聞こえない場合は、オーディオインターフェイスの設定をすればOK。試しにテストしてみたところ、ほかのオーディオインターフェイスも使えるようだった。
GT Player Express | 音が聞こえない場合は、オーディオインターフェイス設定を行なう |
ダイヤルでエフェクトを選択し、LOADボタンを押すと、ギター用のデザインのエフェクタがずらりと並び、ディストーション、ディレイ、コーラスなどギンギンに効いたサウンドがヘッドフォンから飛び出してくる。特筆すべきは何の調整もしていない、ということ。
入出力レベルの調整も可能 |
通常、オーディオインターフェイスにギターを接続して、エフェクトを設定して……というと結構、面倒な作業が必要で、慣れていない人が初めてすると、実際に音が出るまでかなりの時間を要してしまう。しかし、このJamLabの場合、ほんとにつなぐだけでOK。レベル調整も何もせずに、最適な音となるのだ。もちろん、必要あれば、入力レベル、出力レベルの調整も可能になっている。
001 Rock | 05 Clearn rhythm | 008 Chorus space |
プログラム・エディタで各エフェクトの組み合わせや並び順なども設定できる |
こうしたプリセットは16個のみだが、自分で、いろいろとパラメータを調整し、保存していくことも可能。またプログラム・エディタを使えば、各エフェクトの組み合わせや並び順なども自分で設定することができる。
ちなみにGT Player Expressの場合、利用可能なエフェクトは、ここまでに登場したBMPディレイ、コーラス、ディストーション、グラフィックEQ、ノイズゲート、リバーブの6つとなっている。またこれらエフェクトそれぞれにもプリセットのパラメータが用意されているので、これを活用するのも便利だ。また、バイパスモードと、そのエフェクトだけにするソロのモードも用意されている。
久しぶりにギターを引っ張り出して弾いてみると、結構このエフェクトのかかり具合がよくて、すぐに何時間も経ってしまった。なかなかいい感じで使えるエフェクトのセットだ。
プレイリスト設定時 |
なお、TRACK PLAYERではプレイリストを設定することも可能なので、練習用として、かなり便利に使うことができる。ただし、Windows版とMac版では、1つ決定的な違いがある。Mac版では、AIFFファイルはもちろん、MP3、CDトラック、WAV、そしてMIDIファイルまでもサポートされているのに対し、Windows版ではWAVのみ。せめてMP3をサポートしてくれていると便利だったのが、ここはちょっと残念なところだ。
また、このTRACK PLAYERは見ればわかるとおり、録音機能も装備している。もっとも、これはオマケ機能といった感じで、単にギターにエフェクトをかけた音がWAVファイルやAIFFファイルで保存されるだけ。保存されると同時にプレイリストの最後に追加されるので、自分の引いた音をソロで確認はできる。しかし、そこから先の応用というのはあまりできないようだ。
さらに、このGT Player ExpressにはReWire機能も搭載されている。このReWireを利用する場合、GT Player側はホストとなるため、スレーブモードで動作するアプリケーションとの連携が可能だ。たとえば、PropellerheadのReasonやAbletonのLiveなどがスレーブ動作する。実際にReWire接続するためには、まずReWire Player Windowをオンにする。すると、さらに一番下にラックが表示される。続いて、試しにReasonを起動してみたところ、Slaveモードで動作してくれた。ここで、ReWire Playerのプレイボタンを押すと、Reasonがそれに同期して動き出すとともに、GT Playerが鳴り、JamLabから音が出てきた。もちろん、これに合わせてギターを弾くことも可能だ。
ReWire Player Windowをオンにすると、一番下にラックが表示 | Reasonを起動すると、Slaveモードで動作した |
VSTプラグインとしても機能するが、エフェクトとしてのみの動作となる |
さらに、このGT Playerはこのようなスタンドアロンでの動作のほかにVSTプラグインとしても機能する。今度はCakewalkのSONARを起動して、VSTのエフェクトを探してみたところ確かにGT Player Expressが存在し、しっかりと機能してくれた。
ただし、この場合はJamLabとは無関係で、単なるエフェクトとしてのみ動作する。もちろん、JamLabはASIOドライバに対応しているから、SONARのオーディオインターフェイスとして利用することが可能。ちなみにASIOドライバ以外にWindowsではWDM、MacではCoreAudioドライバにも対応しているから、ほとんどどのような環境でも利用できるはずだ。
このようにGT Player Expressはそれほど多機能というわけではなく、単純な動作をするだけだが、しっかりとツボを押さえていて、簡単にそして軽快に動いてくれるのが大きな特徴である。
もうひとつ、JamLabの面白いのはM-Audioのオーディオインターフェイス製品ということで、ProTools M-Poweredに対応しているということ。ProTools M-PoweredはProTools LEとほぼ同等のアプリケーションだが、ProTools LEのようにM-BOX2などのDigidesign製品にバンドルされていて、そのDigidesign製品とともに使うのではなく、M-Audio製品とともに動作するアプリケーションで、ソフトウェア単独で直販価格39,900円で販売されている。
ただし、これはソフトウェアだけ購入しても、エラーが出て起動しない。M-Audio製品がドングルとして機能するソフトウェアになっているのだ。もっとも、M-Audio製品をつないでいれば、それだけでいいわけではない。それとは別にUSBドングルも付いていて、これも接続していないと起動しないようにはなっている。実用的かどうかは別にして、JamLabとProTools M-Poweredの組み合わせは、もっとも安いProToolsシステムといえるだろう。
ProTools M-Poweredは、M-Audio製品を接続しなければ起動しない | 起動にはUSBドングルの接続も必要 |
最新ドライバをインストールするとProTools M-Poweredが起動した |
このM-Poweredについては、以前入手していたので、さっそくこれを起動してみたのだが、どうも動かない。もしかして、M-Poweredのバージョンが古いからなのではと、最新の7.1をダウンロードして使ってみたがダメ。
カタログにはしっかりM-Powered対応と書かれているし、発売されたばかりの製品のドライバを入れているので、何も間違っていないはず……と思っていたが、よく確認すると添付されていたのがちょっと古いドライバであったため、うまく起動しなかったようなのだ。最新ドライバをダウンロードしてインストールしたら無事動作した。
JamLabは、非常に安い製品ではあるが、かなり楽しく遊べる製品だった。エレキギターを持っているなら、遊び半分に購入しても後悔しない、なかなかいいオーディオインターフェイス兼エフェクタだと思う。
□M-Audioのホームページ
http://www.m-audio.jp/
□製品情報
http://www.m-audio.jp/products/jp_jp/JamLab-main.html
(2006年8月21日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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