■有機ELテレビはソニーの救世主となるか
ソニーブースでは有機ELテレビの試作品が展示され、そこは黒山の人だかりでブース内の一番の人気コーナーとなっていた。 有機ELは有機物を電極で挟み込んだ構造で、電極から飛び出した電子が有機物を発光させるという仕組み。液晶とは異なり各画素が自発光することから、コントラスト性能に優れるという特徴がある。これまでの有機ELディスプレイは、RGBのそれぞれの原色に発光する有機物の色調にクセがあり、フルカラーとはいうものの、その色特性はかなり不自然であった。
今回ソニーが発表した試作機は、色特性にクセが無く、極めて自然な画調にチューニングされている。白が若干まだ黄色に振られている印象はあるが、これまでのフルカラー有機ELディスプレイの試作機と比べるとかなり良くなっている。純色の鮮烈さはもちろん、階調性も優秀で、暗部発色も液晶やPDPに負けていない。
ソニーによれば、この新有機ELの高画質は「SUPER TOP EMISSION(STE)」という新技術によるという。従来の有機ELではTFT回路の隙間を通して出力光を得ているが、STE方式では各画素にMicro-Cavity構造と呼ばれる微細光学系を利用して多重反射干渉を起こして有機膜層から直接出力光を効率よく取り出す、上面発光方式を採用しているのが特徴。 さらにユニークなのは、カラーフィルタを組み合わせているところ。これまでの有機ELではRGB各色に自発光するサブピクセルで構成していたが、新技術ではRGB各色に発光した光をさらにカラーフィルタで調光する仕組みを採用している。色調がこれまでの有機ELと比較して、大幅に自然になっているのはこうした構造が効いているようだ。 今回展示されたのは27V型と11V型の2タイプで、スペックとしては両方ともコントラストは100万:1以上。ピーク輝度は600cd/m2を達成し、現行のPDP以上のコントラストと、液晶以上のピーク輝度をアピールする。 解像度は27V型が1,920×1,080ドットのフルHD解像度、パネルの厚みは10mm。11V型の方は1,024×600ドット、パネルの厚みはわずか3mmだ。
色域は両モデルともNTSCを100%以上をカバーし、27V型はRGB各10ビットの30ビットカラー、11V型はRGB各8ビットの24ビットカラーでドライブが可能だという。
なお、有機ELで問題となる寿命の短かさについては、今回の発表では大きなアナウンスはなかった。また、展示製品はあくまでプロトタイプということで価格、発売時期は未定だ。 現地の担当者によれば、開発は日本のソニーで行なわれたとのこと。薄型テレビ時代に突入してから、ソニーはプラズマ/液晶で他社パネルを利用し、独自技術のアピールが少なかっただけに、有機ELにかかる期待は大きいはずだ。LCOSベースのSXRDに続き、有機ELが新たなるソニーの独自映像パネルとして育って行くことに期待したい。
■パイオニア、第8世代新プラズマパネルを披露 ~60V型、コントラスト比2万:1以上
8Gプラズマの画面サイズは60V型。本来は2008年北京オリンピック開催時期での発売を目標にして開発が進められてきていたが、開発が順調に進んだことと、競合他社の動きが活発になってきたことを受け、発売時期を1年前倒しにして、2007年夏に設定したのだという。 コントラスト比は2万:1以上を実現。これは従来パネルの約4倍のコントラスト性能になる。ピーク輝度を据え置きつつ、暗部輝度を従来パネルの1/3へと低減させることでハイコントラスト性能を達成。従来の計測機器ではこの暗部輝度が計測限界を超えた“暗さ”であるため、正確なコントラスト比が算出できていないとのことで、実際のコントラストはさらに高いようだ。
解像度は1,920×1,080ドット。画素サイズ、開口率、蛍光体等は従来と変わらないが、画素セル内の発光効率を高め、新フィルタを組み合わせて従来パネルからさらに進化した色再現性をも獲得したという。
シアターでは従来パネルと8Gパネルを横並びにし、暗部階調の再現性と色再現性を見比べられるデモを披露。暗部階調の優秀性は第7世代パネルで劇的に向上したことは本連載で「PDP-5000EX」を取り上げた際にお伝えしたが、それよりも純色の鮮烈さが劇的に向上していることに驚かされた。 暗部発色も素晴らしく、暗い階調表現の中にもちゃんと色味が感じられるほど。人肌の表現も自然で、微妙なカラーグラデーションも美しく決まっており、色深度も深そうだ。
パネル開発は一区切りが付いているようで、現在は夏の製品発売に向けてセットとしての製品開発が行なわれているようだ。PDP-5000EXのようにモニタとするか、あるいはテレビ製品にするか、50V型以下のパネルサイズバリエーション展開をするかといったことについては現在検討中だという。
■CES 2007年「大画面選手権」は日本勢が独占 ~今年はおとなしめな韓国勢? 2007年度の最大画面サイズ選手権優勝はシャープの108V型AQUOSだった。これまで大画面最大サイズといえばプラズマの独壇場だったが、ついに2007年は液晶がトップに立ったことは感慨深い。
プラズマの最大画面サイズは松下の103V型VIERA。サイズではシャープに及ばなかったが、昨年に引き続き、プラズマ最大ナンバーワンの地位を維持した。また、単なるデモ機ではなく、既に受注生産が始まって市販化されている点はポイントが高い。 ここ数年は毎年、液晶とプラズマで「世界一宣言」を連呼し、実際のところ、日本のパネルメーカーを圧倒し続けてきたLG電子とサムスン。なぜか韓国勢が今年はおとなしい。 サムスンのフラットテレビ展示ブースは最新映像エンジンや映像パネルの新駆動技術の展示を中心に展開。新サイズの大画面製品は液晶、プラズマともになし。プラズマの大画面は昨年と同じ102V型と80V型。試作機としては2年前からフルHD解像度のプラズマを展示していたが、実際の発売は2007年が初めてとなる。 2007年に用意されるフルHDプラズマは58V型「HP-T5884」と50V型「HP-T5084」の2機種。HP-T5884は2007年9月発売予定で予価は5,199ドル。HP-T5084は2007年5月発売予定で予価は4,199ドル。
液晶も82V型と70V型を昨年に引き続き展示。今年のフルHD対応液晶テレビの新製品はそれぞれ40V型、46V型、52V型のLNT4065F/LNT4665F/LNT5265Fの発売を予定している。それぞれの価格は未定だが2007年3月の発売を予定。 LG電子のブースも、フラットテレビ展示セクションはやや低調気味。最大画面サイズは昨年に引き続き市販予定のない102V型プラズマを展示した。
ただし、71V型のフルHDプラズマは「71PY1M」という型番が付けられ2007年2月についに市販化される。こちらは1,920×1,080ドット、1200:1ネイティブコントラスト。映像エンジンとして最新世代のLG電子「XDエンジン」を採用。HDMI端子を2系統装備。寿命は45,000時間。パソコン入力にも対応。発売時期は2007年1月~2月を予定。価格は15,000ドルを予定。 競争が最も熱い最小のフルHDプラズマとしては50V型の「50PY3D」をラインナップ。こちらは2007年3月に発売予定とするも価格は未定。また、実機はブース入り口の全ラインナップ展示コーナーの最上部に掲げられているのみ。
LG、最大サイズの液晶はフルHD解像度の100V型。スペック的には1,920×1,080ドット、輝度は700cd/m2、グレー to グレー応答速度が5msと高速。ただ、中央に貼り合わせ後の継ぎ目があり、量産品までの道のりが長いことを感じさせる。 実際に市販されるフルHD液晶は57V型の57LY3D、52V型の52LY3D、47V型の47LY3Dの3タイプ。57LY3Dは動的コントラスト8,000:1を達成。発売は年内を予定するも未定。52LY3Dと47LY3Dは動的コントラスト5,000:1、2007年6月発売予定。 確かに自社ブランドのテレビ商品としてのラインナップに華やかさはなくなってしまったが、サムスンもLG電子もパネルサプライヤとしてもトップメーカー。サムスンとソニーの合弁会社はソニーのBRAVIAシリーズ、LG電子は東芝REGZAシリーズの液晶パネルサプライヤであることは有名な話だ。来年以降、「最大画面サイズ選手権」といった、派手な舞台に戻ってくるのか注目される。
□2007 International CESのホームページ(英文) (2007年1月11日) [Reported by トライゼット西川善司]
AV Watch編集部 |
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