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第59回:International CES特別編
~ 2006年「大画面世界一選手権」の勝者は? ~

 毎年恒例、今年もInternational CESでは仁義なき大画面映像機器の世界一戦争が勃発。大画面☆マニアCES編第一回はこの話題からお送りすることにしたい。



■ 2006年の"世界最大"はパナソニックの103V型VIERA試作機!

 毎年、“世界一”決定戦は実質的にはSamsung対LGによる韓国勢によって行なわれてきたが、今年はなんとPanasonicがこの争いに参戦してきた。

 Panasonicは103V型のフルHD、1,920×1,080ドットのプラズマTVを発表し、サムスンやLG電子を上回り、民生向けのフルHD解像度のプラズマTVとしては世界最大のものとなった。

 画面サイズは横2m26.94cm、縦1m27.66cm。対角長にして約2m60.38cmもある。丁度50V型のPDPを縦横2枚ずつ、計4面分並べた大きさになり、総重量もこれに準じたものになるという。50V型PDPのVIERAが約50kgなので今回の103V型PDPは約200kgにもなる。

 画素ピッチは1.182×1.182mm。実際に近づいてみると画素サイズは50V型VIERAのものよりも若干大きいという印象。その大画面性はまさにプロジェクタによって投影されるサイズに等しいわけだが、各画素が自発光により強烈なダイナミックレンジを伴って描き出されている様は、良い意味で異質であった。

 MPEG特有のモスキートノイズは、このように画面が大きくなった分目立ちやすくなるはずなのだが、この103V型PDPではそのあたりが上手く低減されている。新PEAKSテクノロジーベースの映像エンジンはこの103V型でも効果的に活きているようだ。

 全くの試作機であるために発売時期、価格等は一切未定。ただし、発売の予定が全くないわけではないという説明もあり、会場での評判を伺っているようだ。

103V型VIERA試作機の映像を撮影。103V型という大画面でありながら、大味になることなく、この描写力は立派 日本では12月に発売、北米では2006年後半に発売予定となっている65V型VIERA(左)と並べて展示されていた103V型VIERA試作機(右)。65V型がずいぶんと小さく見える 画素の接写写真。水平の格子線が若干太めな印象を受ける



■ Samsung、多彩なバリエーションの世界最大で先進性をアピール

● “世界で最初”の102V型フルHDプラズマ「Z102」

 昨年は「世界最大のフルHDプラズマ」とした名を馳せたSamsungの102V型フルHDプラズマ試作機も、今年はパナソニックの103V型投入により過去のものとなってしまった。とはいえ、依然とSamsung製フルHDプラズマとしては最大サイズであり、たかだか一年でこれを引っ込めてしまうのは惜しい。ということで、今年は冠を変えて、Samsungの先進技術をアピールする尖兵としての再デビューを果たした。

 それは「“世界で最初”の102V型フルHDプラズマ」というもの。色処理エンジンは従来のRGB各10ビットからRGB各13ビットに拡張したものを採用し、10億色から5497億色に発色数を増加しているのが特徴。

 公称輝度は1,000cd/m2。公称コントラスト比は2,000:1を実現。すさまじいまでの輝度ダイナミックレンジは相変わらずで、ハッとするような立体感は1年経った今でも競合に負けていない。発売時期および価格は全くの未定。

“世界で最初”の102V型フルHDプラズマ「Z102」。HDMI入力対応、PC入力対応、2系統のコンポーネントビデオ入力装備

● 世界最大の82V型フルHD液晶テレビ「LNS8297D」

 フルHD解像度の液晶テレビとしては世界最大となるのが、Samsungの82V型「LNS8297D」。ソニーも同系列液晶パネルで同型サイズの製品を発表しているので同着世界最大ということになるだろうか。

 液晶パネルはSamsungが誇るマルチドメイン型液晶の発展系S-PVA液晶を採用。解像度は当然1,920×1,080ドットのフルHD解像度となる。コントラストは動的バックライト制御や動的ガンマ補正を適用して7,000:1を達成する。

 NTSC色域カバー率は92%。映像エンジンはサムスンDNIeを搭載。TVチューナは北米モデルではATSC/NTSCの2タイプを内蔵、デジタルケーブルTVにも対応する。HDMI端子は2系統を装備する。

 SamsungのフラットTVは昨年あたりから映像エンジンDNIeの完成度が劇的に向上しているようで、大きいだけでなく、高画質性能も同時に身につけるようになってきた。実際、液晶ならではの絶対輝度の高さからくるハイダイナミックレンジ感と、アナログ感が漂う滑らかな階調性が美しい。

世界最大の82V型フルHD液晶テレビ「LNS8297D」。発売時期、価格は未定

●LEDバックライト採用では世界最大の82V型フルHD液晶TV「LN8297DE」

 Samsungは世界最大フルHD液晶をもう1バリエーション用意。それはバックライトシステムにLEDを使ったものとしては世界最大という82V型フルHD液晶TV「LN8297DE」だ。

 LN8297DEでは、液晶パネルこそ前出のLNS8297Dと同じだが、そのバックライトシステムとしてRGBの三原色LEDを用いているのが特徴。一般的な液晶TVで採用されている冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)は色スペクトルに偏りがあるために広域な色表現が行ないづらく、また純色表現にクセが出やすいという弱点がある。これに対しRGBのLEDを使ったバックライトシステムでは色純度が高いため美しい純色が出しやすく、なおかつ色再現性も広域になる。

 LEDバックライトシステムでは、液晶パネルのすぐ裏にRGBのLEDをマトリクス配置指せた「直下型」と、RGB-LEDを集約させた光源ユニットからパネル全域に光を導く「導光型」の2タイプがあるが、LN8297DEではどちらの方式を採用しているかは非公開とされている。

LEDバックライト採用では世界最大の82V型フルHD液晶TV「LN8297DE」。HDMI入力は二系統配備。発売時期や価格などは未定

低消費電力と高輝度、ハイコントラストを両立する「Super-LED Technology」と命名されたサムスン独自のLEDバックライトシステム。その詳細は非公開

 しかし、82V型という大型になると直下型ではLEDの個数がかさみ、消費電力やコストの面で実現が難しいため、LN8297DEでは導光型、あるいは導光型と直下型を組み合わせたハイブリッド方式を採用していると思われる。なお、LN8297DEの色域はNTSCカバー率105%となっており、一般的なCCFL方式と比較して30%以上広い。

 公称輝度は非公開だが、公称コントラスト比は公表されていて7,000:1を達成。実際の表示映像を見たが、コントラスト感もさることながら、色ディテールの描写力と、純色の美しさが素晴らしいのが実感できた。特に赤の表現は素晴らしく、赤のグラデーションや陰影描写の立体感は他に類を見ないほどであった。


●市販製品として世界最大の80V型フルHDプラズマ「HP-R8082」

 HP-R8082は、実際に商品化されるプラズマTV製品としては世界最大となる80V型サイズ。解像度は当然フルHDの1,920×1,080ドット。現在、商品化されているフルHDプラズマTVではパナソニックの65V型が世界最大だが、これが実際に市場投入されればこれを追い抜くことになる。後述のLG電子も同様の条件宣言で71V型で世界最大を狙っている。実際に発売されればPanasonicの65V型VIERAを脅かす存在となりそうだ。

市販製品として世界最大の80V型フルHDプラズマ「HP-R8082」。HDMI入力、PC入力の他2系統のコンポーネントビデオ入力もサポート

RGB13ビット色処理エンジンを実装し5,497億色発色を実現する。従来機ではRGB10ビット色処理エンジンで10億色発色に対応していた

 HP-R8082には、Samsungの新世代プラズマTV高画質化技術であるRGB13ビット色処理エンジンを実装し5,497億色発色を実現している点が特徴。展示を短時間見ただけではさすがに5497億色の実感は難しかったが、1,000cd/m2の明るさのハイダイナミックレンジ感は一目見て実感できた。

 コントラストはネイティヴ2,000:1を達成。輝度性能は1,000cd/m2を誇る。発売は2006年2月を予定。価格は15,000ドル。


●実用50V型サイズのフルHDプラズマTVがサムスンからも登場「HP-S5073F」

 プラズマTVでは、各画素をシールしている隔壁の信頼性の確保やプラズマ発光現象そのものの効率が元々あまり良くないといった構造上の制限から画素サイズを極端に小さくできなかった。このことから40~50V型のフルHD解像度プラズマTVの実現は難しいとされてきた。しかし、去年よりパイオニア、パナソニック、日立といったPDPメーカーが続々と技術的ブレークスルーを果たし、試作機レベルで40~50V型のフルHDプラズマTVを発表するようになってきている。SamsungのHP-S5073Fもこの流れを汲んだ製品ということになる。

 解像度はいうまでもなく1,920×1,080ドットの1080pリアル対応。色処理はRGB各13ビット処理エンジンによって5,497億色を実現する。公称輝度は1,300cd/m2という、50V型クラスのフルHDプラズマでは最高レベルの明るさを誇る。

50V型フルHDプラズマHP-S5073F。2系統のHDMI装備。メモリスティック、SDカード、PCカードスロットまでも実装。チューナはATSC/NTSCに両対応でデジタルケーブルTVもサポート

外光を遮断して実効コントラストを高めるFilterBright技術

 この絶対輝度の高さに加え、サムスンの新表示面ガラスフィルタ「FilterBright」技術による徹底した外光遮断効果との相乗効果によりコントラストは実に10,000:1を達成している。

 実際、50V型クラスのフルHDプラズマとしてはかなり明るく、非常にハイコントラストで画素微細化のハンデを全く感じさせない。これは日本メーカーの競合製品に対してもかなりの競争力があると実感した。

 発売時期は2006年第二四半期。価格は日本メーカーの競合機との価格を見極めた上でUS$5,000以下に設定したいとのこと。



■ LG電子~102V型フルHDプラズマ他

●102V型フルHDプラズマ(型番未定) “我々の知る限り”(当社調べ)世界最大

この102V型プラズマは、LG電子のラインナップとしては実際に最大画面サイズモデル

 昨年は「出荷済み世界最大」という限定条件で世界一称号を訴えて、71V型フルHDプラズマを展示したLG電子。

 今年はこの限定条件を外した「正真正銘の世界最大」を狙って出品したのがこの102V型フルHD(1,920×1,080ドット)プラズマ試作機。せっかく意気込んでの展示だったのだが、数十m先のPanasonicブースに展示された103V型にお株を持って行かれた格好になってしまった。ただ、展示セクションに掲げられた「World's Largest」(世界最大)の文字は引っ込めることなく、そのまま展示。

 「103V型のものがどこかにあるらしいが(笑)、LG電子スタッフはまだ誰独り見ていないので、とりあえず当社調べ、我々の知る限り世界最大なんだ(笑)」(LG電子担当者)とのことで、当面はこのままで展示を続ける予定とのこと。

 スペックはコントラスト値5,000:1以外は非公開。LG電子のプラズマらしい、明るさ重視の画調で、特に純白の鋭さが圧倒的であった。確かに「5,000:1」を信じさせられるほどのコントラスト感はある。

 発売時期は未定。価格も未定だが、71V型とのバランスを考えると100,000ドル前後になるのではないかと話していた。


●71V型フルHDプラズマ「MW-71PY10」“量産モデルでは”世界最大


量産モデルでは“世界最大”の71V型フルHDプラズマ「MW-71PY10」

 昨年に引き続き、LG電子は「量産モデルでは世界最大」の71V型フルHDプラズマ「MW-71PY10」を展示。昨年の時点では「2005年内発売」となっていたはずなのだが、担当者によれば「発売時期は2006年第一四半期」とのこと。価格は昨年は75,000ドルだったが、若干引き下げられ、今年は70,000ドルと告知されている。

 外形寸法以外の主要スペックは下記の通りで昨年から変更はない。

  • 画面サイズ:71V型(16:9)
  • パネル解像度:1,920×1,080ドット
  • 輝度:800cd/m2
  • コントラスト:1,200:1
  • 映像エンジン:LG XDエンジン搭載
  • 高画質化エンジン:ファロージャDCDi
  • 接続端子:HDMI/DVI-I/コンポーネントビデオ入力他、PC入力対応
  • 外形寸法:1,750×99×983mm(幅×奥行き×高さ)

□2006 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/default_flash.asp
□関連記事
【1月5日】【CES2006】松下、世界最大103型のプラズマテレビを発表
-50型パネルの4倍。2006年中を目標に北米市場に投入
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060105/ces05.htm
【2005年1月8日】【大マ】2005年「大画面世界一選手権」の勝者は?
【Samsung/LG電子編】世界最大の102型プラズマ、など
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050108/dg43.htm

(2006年1月6日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1,000を超える。

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AV Watch編集部

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