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第265回:ヤマハがフラッグシップシンセ「MOTIF XS」を発表
〜 アナログミキサーなど、NAMM 2007出展製品を国内発表 〜



1月10日、YAMAHAがプレス向けの製品説明会を開催

 1月18日より、米アナハイムにて世界最大の楽器関連の展示会、「NAMM Show 2007」が開催される。ここでは多くのメーカーから新製品がリリースされるものと思われるが、いくつかのメーカーはそれに先駆けて製品発表を行なっている。

 YAMAHAも1月10日にプレス向けの製品説明会を開催し、NAMM Showでの発表内容を披露した。計4種類の製品群の発表となったが、うち2つは同日国内で正式リリースされた。今回はその製品説明会での発表内容について紹介する。



■ シンセサイザのフラッグシップモデル「MOTIF XS」

 NAMM Show 2007で発表されるYAMAHAの製品群のうち、一番の目玉となるのは同社シンセサイザのフラッグシップモデル「MOTIF」の新モデル「MOTIF XS」シリーズだ。現行モデルである「MOTIF ES」が発表されたのは2003年7月だったので、約4年ぶりのシリーズ一新となる。XSと書いて「エクセス」と読むそうだが、ESと同様、61鍵盤の「MOTIF XS6」、76鍵盤の「MOTIF XS7」、88鍵盤の「MOTIF XS8」の3機種。

 まだ参考出品という形なので、それぞれの価格や発売時期については明らかにされていない。

 XSは「Expanded System」を意味しているとのこと。ESが「Extened System」を意味していたので、何か似た感じだが、拡張性を持たせたESに対し、もうこれ以上拡張する必要はないほど詰め込んで完成したのがXSなのだ、という。

61鍵盤の「MOTIF XS6」 76鍵盤の「MOTIF XS7」 88鍵盤の「MOTIF XS8」

 今回のMOTIF XSの最大の特徴は新音源LSIを搭載し、ウェーブROMの容量を355MBへと拡張したこと。従来どおり、アコースティックピアノやエレクトリックピアノなどのピアノ系、またストリングスとウッドウィンド系のサンプリングデータに重きが置かれており、そこをさらに充実させている。たとえばピアノ音のサンプリング時間を長くする一方で、離鍵時の音もサンプリングして発音に反映させるなど、音のリアルさにかなりこだわりを持った音作りとなっている。

アナログ回路そのものをモデリングする「VCMエフェクト」を搭載

 またVCM(Virtual Circuitry Modeling)エフェクトの搭載も大きなポイント。アナログ回路そのものをモデリングすることで、昔ながらの味のあるエフェクトをシミュレーションしている。また従来アドオンボードでオプションとなっていたボコーダー機能も搭載。アルペジオも6,000種類以上搭載するなど、とにかく機能てんこ盛りとなっている。

 見た目の違いで目立つのは320×240ドットの5.7型カラー液晶を搭載したこと。カラー液晶搭載自体は他メーカーに比較して後発となるが、その分ユーザーインターフェイスはかなり作りこんでいるようだ。

 本体背面には「USB TO HOST」というPCとUSB接続でデータをやり取りする端子、「USB TO DEVICE」というUSBフラッシュメモリなどを接続する端子に加え、ネットワーク接続に対応する「ETHERNET端子」も装備。ただ、直接インターネットに接続しようというのではなく、ネットワークでPCと接続して、共有ドライブと高速にデータのやり取りをするためのもの。サンプリングデータの容量が大きくなってきていることもあり、やはり外部との連携には気を使っているようだ。

 ところで、このMOTIF XSのもうひとつの特徴は、「Cubase AI4」というソフトがバンドルされること。これまでオーディオインターフェイスのGOシリーズなどにはCubase SX1ベースのCubase LEがバンドルされていたが、それとは完全な別モノ。名前からも想像できるように、最新のCubase 4がベースとなったものだ。

 といってもCubase LEの最新版というわけでもない。AIはAdvanced Integrationの意味とのことで、ソフトとハードの融合を表しており、MOTIF XSのハードウェアをCubase側から存分にコントロールできるようになっている。そのキーとなっているのが、「Studio Connections」。Studio Connectionsについては以前、YAMAHAにインタビューしたこともあったが、曲のプロジェクトファイルの中に、ハードウェアの設定もすべていっしょに保存でき、再度読み出せば完全な形で再現できる「Total Recall」を実現する技術だ。


5.7型/320×240ドットのカラー液晶ディスプレイを搭載 ネットワーク接続に対応する「Ethernet端子」を装備 最新のCubase 4をベースにした「Cubase AI4」をバンドル

 また、最新のStudio ConnectionsではTotal Recallに加え、「Audio Integration」というハードのシンセをソフトシンセのように利用できる機能も追加されている。MOTIF XSにはStudio Connectionsに対応したMOTIF XS Editorというソフトが用意されており、これをCubase AI4から利用することができる。

Cubase AI4上から利用可能な「MOTIF XS Editor」

 もちろん、Cubase 4でも同じことができるが、下位バージョンのCubase Studio 4ではStudio Connectionsに対応していないので、Cubase AI4はかなり価値のあるソフトといえそうだ。

 なお、YAMAHAではこのCubase AI4を、今後Studio Connections対応の同社製品に順次バンドルしていくとのこと。既存ユーザーへの対応などについては明らかになっていないが、いずれ何らかのアナウンスがあるかもしれない。



■ コストパフォーマンスの高いキーボード「MM6」

 MOTIF XS以外にもいろいろな新製品が発表された。中でもかなりコストパフォーマンスよく感じられるのが「MM6」という61鍵盤のシンセサイザキーボードだ。

 このMMは「Mini MOTIF」を意味しているとのことで、位置づけとして「MO8/MO6」などのMOTIF ESの弟分シンセサイザのさらに下位モデルとなる。価格はオープンプライスだが、店頭予想価格は5万円台後半とかなり安い。下位モデルとはいえ、ここにはMOTIFのエッセンスがふんだんに盛り込まれている。

 70MBのウェーブROMや、569音色を装備しているが、単なる音源であることに留まらない。「カンタン・楽しい・カッコいい」をコンセプトにしたMM6は演奏経験がない人でも自動的にフレーズ演奏ができる「アルペジエーター」や弾きたい音色をすぐに選べる「カテゴリー・サーチ機能」、「シーケンス機能」などを装備している。またMOTIF XSと同様、USB TO HOST端子、USB TO DEVICE端子を備えている。


店頭予想価格5万円台後半の低価格シンセサイザ キーボード「MM6」 PC接続対応のUSB TO HOST端子や、USBメモリなどを接続できるUSB TO DEVICE端子を備える

 61鍵盤なので、それなりの大きさではあるが、持ってみると驚くほど軽い。重量的には5.0kgとなっている。なお、発売は1月25日で、MOTIF XSよりも先に登場することもあって、これにバンドルされるソフトはCubase LEとなっている。


□ ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/2007/07011002.html


■ マイク入力用コンプレッサ搭載「MGシリーズ」リニューアルモデル4種

 MM6とともに国内正式発表となったのが、アナログミキサーの「MGシリーズ」4機種。アナログミキサーは昨今、高性能でコンパクト、しかも非常に低価格な製品が各社からリリースされ、熾烈な競争になっている。その中でも非常に人気があるのがYAMAHAのMGシリーズだ。2003年の発売以来、すでに約50万台も出荷されたとのことだ。

アナログミキサー「MGシリーズ」のリニューアルモデル。左から「MG82CX」、「MG124C」、「MG124CX」

 MGシリーズは、現行で8機種あるが、そのうち4機種が今回リニューアルされた。具体的には、10ch対応の「MG10/2」が「MG102C」(20,790円)に、8chでエフェクト機能内蔵の「MG8/2FX」が「MG82CX」(29,190円)、12chの「MG12/4」が「MG124C」(38,640円)、12chでエフェクト機能内蔵の「MG12/4FX」が「MG124CX」(49,140円)にリニューアルされた。発売時期はいずれも2月となっている。

 今回の4機種の最大のポイントはマイク入力用のコンプレッサを搭載したこと。つまり、ネーミングのCはコンプレッサを意味している。具体的にはYAMAHAのパワードミキサーであるEMXシリーズ用に開発されたコンプレッサをチューニングして搭載している。素子にはFETを使用することでウォームな音色を実現している。また、マスター部に搭載されたMONITOR MIX機能を使うことでオーバーダビング時に2TR INからの再生信号と録音信号のモニターレベルを個別に調節できるのも大きなポイントといえるだろう。


MG102Cをマイクスタンドに取り付けたところ。軽量/コンパクトなので、マイクスタンドにそのまま取り付けて利用できる

 MG82CXおよび、MG124CXのエフェクトはYAMAHA自慢のマルチエフェクト「SPX」の中から16プリセットを搭載している。具体的にはリバーブが8種類、エコーが2種類、コーラス2種類とフランジャー、フェイザー、オートワウ、ディストーションの計16種類。SPXが気軽に使えてしまうというのは大きなメリットだろう。

 4機種のいずれも非常に軽くコンパクト。MG102CおよびMG82CXは1.6kg、MG124CおよびMG124CXは2.9kgなので、簡単にどこへでも持ち運べる。また軽いので、マイクスタンドにそのまま取り付けて使用できるのも大きな特徴だ。非常に多目的なミキサーで、自宅スタジオでの利用から、ステージでのサブミキサー、さらには結婚式場などの設備音響での利用まで、何にでも使うことができる。


□ ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/2007/07011001.html



■ 音声合成ソフト「VOCALOID」の新バージョンも発表

 そしてもう一つ発表されたのは歌詞とメロディーを入力するだけで歌声を音声合成する「VOCALOID」の新バージョンとなる「VOCALOID2」だ。VOCALOIDはYAMAHAが開発したソフトだが、YAMAHA自身はそれを販売していない。国内で実際に販売しているのは、クリプトン・フューチャー・メディアで、現在、日本語女性ボーカルの「MEIKO」と男性ボーカルの「KAITO」の2種類がある。いずれもシステムはYAMAHAからのOEMの形になっているが、クリプトン・フューチャー・メディアがアドオンした歌声ライブラリがセットとなって発売されている。

 KAITOやMEIKOと同様に、イギリスではZero-G Limitedという会社が、スウェーデンではPower FX ABという会社が歌声ライブラリをセットしたものを発売している。実際これまでのVOCALOIDの歌を聞くと、確かにしっかりと歌っているのだが、かなりアンドロイドの声という感じのやや人間離れしたものだった。従来のロボットボイスから比較すればかなり進化したというイメージはあったが、誰が聞いても妙なことはすぐに分かるものだった。

VOCALOID2のスコア編集ツール「VOCALOID Editor」の画面。インターフェイスが一新し使い勝手が向上している

 それがVOCALOID2になって、かなり人間らしくなった。同じフレーズを歌わせて聞き比べると、その進化具合いがハッキリと分かる。ただ、人間の歌声と区別が付かないというレベルにはまだ程遠い。不自然な面はかなりあるが、だいぶ人間に近づいたといったところだ。

 スコア編集ツールであるVOCALOID Editorのユーザーインターフェイスも一新。黒を基調とした落ち着いた画面で、複数のパラメータを同時に参照できるなど見やすいものになっている。またノートモニター機能といって、音符を一定時間押し続けると、その音符に付与されている音程と歌詞で、その場で歌う機能が搭載されたり、トラックごとに通常の再生を行なうか、レンダリングしたものを再生するかを指定できる切り替え機能などが装備された。

 このVOCALOID2も従来のVOCALOIDと同様、YAMAHAは直接発売しない。国内ではやはりクリプトン・フューチャー・メディアが近いうちに、VOCALOID2に対応した日本語女性歌手のパッケージを発売する見込みだ。

 以上がYAMAHAの今年春の新製品で、NAMM Show 2007で発表する内容だ。国内一般ユーザーへは、2月10日に大阪・京橋のOBP円形ホール、2月17日に東京・品川のザ・グランドホールで開催される「YAMAHA DIGITAL WORLD 2007」でお披露目されることになる。


□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□NAMM Show 2007のホームページ(英文)
http://www.thenammshow.com/
□関連記事
【2004年12月20日】【DAL】DTMにおけるハードとソフトの融合
〜 ヤマハとSteinbergのSTUDIO CONNECTIONSとは 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041220/dal173.htm
【2003年7月7日】【DAL】フラッグシップシンセ「MOTIF ES」を披露したヤマハ発表会
〜 デジタルミキシングスタジオ「01X」の仕様も固まる 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030707/dal107.htm

(2007年1月15日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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