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第266回:コルグのDSDレコーダ上位機「MR-1000」を試す
〜 外部マイクやバッテリなど「MR-1」の不満点を解消 〜



コルグのDSDレコーダ「MR-1000」

 2006年末コルグ(KORG)の1ビットオーディオのポータブルレコーダ「MR-1」についてレポートした。1ビットオーディオというものの認知度が低いためなのか、HDD不足で生産が追いついていないためなのか、量販店の店頭ではまだ商品が入っていなかったり、目立たない展示になっているようだ。そのMR-1の発売から1カ月、その上位モデルとなる「MR-1000」が1月末に発売される。

 そのMR-1000を一足早く借りることができたので、MR-1と比較もしながら、どんな製品に仕上がっているかチェックした。



■ より高レートの録音に対応するDSDレコーダ上位モデル

 MR-1000はMR-1の上位機種にあたるポータブルレコーダだ。MR-1と同様に1ビットオーディオ(DSD)でレコーディングができるのが最大の特徴で、PCMよりもキレイでリアルに録音できることをウリにしている。

MR-1とのサイズ比較。並べてみるとかなり大きいが、重さは意外と軽い

 そのDSDでのサンプリングレートはMR-1がSACDと同じ2.8224MHzであるのに対し、MR-1000では最大5.6448MHzにまで対応する。そのほか、MR-1と同様にPCMでの録音も可能となっており、16bit/44.1kHzから24bit/192kHzにまで対応している。

 MR-1(100×50×25mm/縦×横×厚さ)と比較するとかなり大きく、外形寸法は192×170×56mm(幅×奥行き×高さ)となっている。ところが、持ってみると案外軽く、カタログを見ると電池なしで1kgと書いてある。単3電池8本で駆動するため、電池を詰め込んでも約1.2kgに過ぎない。またキャリングバックも標準で添付されているので、持ち歩く際にも重く感じることはないだろう。

 他社のこの程度の大きさのレコーダと異なり、1ビットオーディオをメインに据えているだけに、マルチトラックのレコーダではなく、あくまでもステレオ2chのレコーダとなっているのも特徴の一つだろう。



■ フィールドレコーディングにおけるMR-1の不満点がほぼ解消

 実際に触ってみると、MR-1との違いがかなりあった。確かにユーザーインターフェイスやメニュー構造などはほぼ同じで、モノクロのバックライト液晶ディスプレイのサイズもほとんど変わらないのだが、MR-1で不満に感じていた部分がほぼ解決しているのだ。

 先日、以前にもインタビューしたフィールドでのレコーディングの第一人者ともいえるネイチャーサウンドアーティストのジョー奥田氏と話をしていたら、まさにMR-1を入手し、テストしてみたという。「1ビットオーディオの性能は非常にいいけど、付属マイクの性能があまりよくないね」というのが、一番に出てきた感想だった。

 ある意味オマケ的なものなので仕方がないが、ミニジャックのモノラル入力が2つというやや特殊な構造なために、ほかのマイクにすぐにつなげないのはちょっと困った点だった。

 それに対して、MR-1000は完全に業務用としてもすぐに使える仕様になっており、マイクが付属しない替わりに、キャノン型マイク入力とバランス型/アンバランス型のTRSフォンのライン入力の2つを兼ねるコンボジャックが左右2つ用意されている。

 また、このマイク入力はファンタム電源にも対応しているので、市販されている高性能なコンデンサマイクも、そのまま接続できる。さらに、ファンタム電源のオン/オフのスイッチのほか、リミッタのスイッチ、ゲインのLow/Hiの切り替えも用意されている。なお出力は前面にモニタ用のヘッドフォンジャックを装備、背面にXLRのキャノン出力とRCAのライン出力を備える。

背面端子類。USB端子やコンポジット(RCA)出力のほか、キャノン型マイク入力とTRSフォンのライン入力兼用のコンボジャックを左右1つずつ搭載 前面には液晶ディスプレイを搭載するほか、各種操作ボタンやつまみ類、ヘッドフォン出力を備える

 実際、手持ちのコンデンサマイクで録音してみると、確かに非常に高音質で、このマイクがこんなに性能良かったのかと思うほどだ。もちろんどのマイクを接続するかにもよるだろうが、MR-1の付属マイクで録音した時とは大きく変わる高音質の世界だ。やはり、せっかく1ビットオーディオでレコーディングするなら、マイクにはこだわりたいところなので、これは重要なポイントだろう。

 もう一点、MR-1でジョー奥田氏が指摘していたのは入力レベルの調整方法。入力レベルを調整するには、メニューの中の「REC LEVEL」という項目を選択しないと調整できない。そのため、現場での使用を考えるとちょっと使いにくいという。これもMR-1がコンパクトさを重視したための不満点だが、MR-1000では大きいだけに、そこも改善されている。

 MR-1000では、前面の液晶ディスプレイ左にレベル調整のノブがステレオで用意されているから、すぐに調整できる。また、前述のとおりリミッタも搭載されているから、急に大音量が入ってきた際なども破綻しないような設計になっている。

 メニュー構造もMR-1とほとんど同じであるが、フロントに入力レベル調整ノブがあるため、「REC LEVEL」という項目は削除されている。

MR-1とMR-1000のメニュー項目の違い。左がMR-1、右がMR-1000で、入力レベル調整を行なう「REC LEVEL」の項目がMR-1000では削除されている



■ バッテリ駆動時間も向上。エネループ利用時で約5時間駆動

 そのほかに、ジョー奥田氏が気にしていたのは、バッテリの持ち時間だ。やはりフィールドに持っていて利用することを考えると、電池寿命は大きなポイントとなる。どのくらい持つかにもよるが、実用を考えると、専用充電池のMR-1の場合、もう一つ電池を入手しなくては使えないだろうといっていた。

MR-1000は単3電池8本で駆動。汎用性の高い単3電池が利用できるのは便利そうだ

 そこで実際に、MR-1とMR-1000で実験してみた。まずMR-1は専用の内蔵充電池をフル充電の状態で、付属のマイクとヘッドフォンを接続の上、バックライトを消して部屋の中で録音を行なった。一方、MR-1000は単3電池8本という構造。これならば、市販の電池がそのまま使えるので、便利そうではある。

 MR-1000に1、2回しか使っていない三洋の「エネループ」をフル充電してから使用。こちらには、コンデンサマイクを接続して、やはり同じく部屋の中で録音をスタートさせた。録音モードはMR-1、MR-1000ともにSACD作成時に用いる業務用のフォーマットであるDSDIFFを使用。ただし、MR-1は2.8224MHzで録音したのに対し、MR-1000では5.6448MHzで録音した。


録音モードはDSDIFFを選択 より高音質の5.6448MHzで録音

 カタログにはバッテリ持続時間については書かれていなかったが、MR-1の2時間58分に対し、MR-1000では5時間6分となった。これだけ持てばフィールド用としても十分だろう。また、電池容量がなくなったところで自動的にシャットダウン処理がされていた。

 なお、MR-1の内蔵HDD 20GBに対し、MR-1000は倍の40GB HDDが内蔵されている。これに5.6448MHzでのDSDレコーディングを行なった場合、約6時間の音声が収録可能。したがって、5時間だとフィールドでは、全容量分の録音はできないが、実用上は問題ない範囲だろう。

 さすがにHDDのショックに対する耐久テストなどは行なっていないが、MR-1000のボディーはアルマイト処理のアルミニウム筐体とのことで、丈夫そうな作りになっている。これを前述のキャリングバックに入れて使えば多少の衝撃も問題にならないだろう。このキャリングバックはリアパネル側も開くようになっているので、フィールドでの利用の場合はキャリングバックに入れたまま使うのが基本のようだ。

付属のキャリングバック 収納したところ。前面部が開くので、入れたままで、液晶をチェックできる 背面側も開くため、バックに収納したままで、マイク入力などが利用できる

 そのほかの点については、MR-1と基本的に違いはない。PCとの接続もUSBで行ない、AudioGateを使って再生したり、PCMへ変換したりすることができる。もちろん、DSDIFF、DSF、WSDの相互変換もできるし、フェードをかけるなどの簡単な処理も可能だ。

 価格的にはMR-1の倍近いので、どちらにするかは難しいところだが、業務用途で考えれば、やはりMR-1000を選択すべきだ。標準価格147,000円の製品でこれだけの音質が実現できるなら、かなり安い買い物と言ってもいいのではないだろう。


□コルグのホームページ
http://www.korg.co.jp/
□製品情報(MR-1000)
http://www.korg.co.jp/Product/DRS/MR-1000/
□関連記事
【2006年12月25日】【DAL】コルグのDSDレコーダ「MR-1」を試す
〜 手軽にDSD録音! 付属ソフトでPCM/DSD高速変換 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061225/dal264.htm
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−「MR-1000」はHDDを40GBに強化し、1月発売に延期
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061117/korg.htm
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−20GB HDD内蔵。5.6MHz対応の音楽制作向けも
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【2006年4月24日】【DAL】Rolandの24bit WAVEレコーダ「R-09」
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060424/dal233.htm

(2007年1月22日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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