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第234回:まさに次世代の高画質。コングも巨大昆虫も1080p
字幕は15言語の国際版HD DVD「キング・コング」

 「買っとけ! DVD」として連載を続けてきた本コーナーですが、HD DVDやBlu-rayタイトルのリリースが開始されたこともあり、今後は、紹介するタイトルをDVDだけではなく、HD DVDやBlu-rayタイトルにも広げます。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! HD DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。
 コーナーのコンセプトは従来から変更なく、編集スタッフ各自が実際に購入したソフトを、思い入れたっぷりに紹介します。「Blu-ray/HD DVD発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ HD DVDソフトの「目玉」が登場

『キング・コング』

価格:4,980円
発売日:2007年1月12日
品番:UNSH-42208
収録時間:約188分(本編)
画面サイズ:シネマスコープサイズ
映像フォーマット:VC-1/1080p
音声:英語(ドルビーデジタルプラス5.1ch)
    日本語(ドルビーデジタルプラス5.1ch)など
字幕:日本語
    英語など
発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

 東芝の新HD DVDプレーヤーやXbox 360 HD DVDプレーヤー、ソニーと松下のBDレコーダやPLAYSTATION 3などようやく再生環境の整ってきた「次世代ディスク」。ソフトについても年末から年始にかけていくつかのビッグタイトルが登場した。Blu-rayでは「X-MEN:ファイナルディシジョン」などが発売されたが、年末年始のHD DVDで最大のタイトルといえば「キング・コング」だろう。

 2005年の映画公開にあわせて、東芝と共同で大キャンペーンを行なったのも記憶に新しいが、2006年春に発売されたDVDも、画質が高く評価されたタイトル。北米ではXbox 360 HD DVDプレーヤーにバンドルされたため、おそらく世界で一番視聴されているHD DVDソフトとなるだろう。

 既に発売済みで、高画質と評判の高かった北米版も入手したが、評判通りに目を見張る高クオリティ。DVDとは比較にならない精細感と、クリアさはHD DVDの魅力を伝えるのに確かなディスクと感じた。ただし、今回発売された日本版は、北米版とは若干仕様が異なっているようだ。このあたりを中心に、注目のHD DVDタイトル「キング・コング」を視聴した。

 なお、当初は12月の発売を予定していたが、その後1月12日に発売を延期。発売日入手のために、通販サイトで予約をしていたが、発売日を過ぎて、発送予定日を越えても発送されないため、1月15日に新宿の大手量販店の店頭を回ってみた。しかし、在庫は無く、各店舗で聞いてみても、入荷後すぐに売り切れて、いずれも次回入荷待ちという状態だった。結局通販サイトの発送を待ったが、Blu-rayも含め、次世代ディスクの人気タイトルはまだまだ入手性がイマイチだ。

 市場が本格的に立ち上がっていないと言うこともあるが、フォーマットが分かれたことで、ソフトメーカーや流通もややおよび腰になってしまったということもあるだろう。欲しいときにすぐに買える環境が早期に整って欲しい。



■ 3時間超の大長編。まとまりは悪いが見所はたくさん

 今までのユニバーサルの国内版HD DVDソフトはDVDとほぼ同じトールケースとなっていたが、キング・コングからは北米版や他社のHD DVDソフトと同様に赤い半透明のケースに変更されている。一目でHD DVDとわかるようになったので、フォーマットが分裂している現在、各社でパッケージデザインを揃えるのはわかりやすくていい。

 以前もDVD版をレビューしているので、あらすじについては簡単に紹介するにとどめる。「キング・コング」は、'33年に製作されたオリジナル版を、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで知られるピーター・ジャクソン監督がリメイクした作品。CGを多用しており、製作費は約2億700万ドルといわれている。

 時は'30年代。野心的な映画プロデューサーのカール・デナム(ジャック・ブラック)は、偶然秘密の地図を手に入れる。その地図を元に、誰も見たことのない冒険映画を製作するため、「ベンチャー号」で危険な航海に出る。その航海に巻き込まれたのは、誠実な脚本家のジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)と、売れない女優アン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)。

 大西洋に出航したベンチャー号は、困難な航海の末、ついに幻の孤島スカル・アイランドに到着。だが、そこで彼らを待っていたのは、凶暴な原住民や、巨大な恐竜、そして巨大なゴリラ「キング・コング」だった……。

 ストーリーは、ニューヨークからスカル・アイランドまでの行程、スカル・アイランドでのキング・コングや原住民との遭遇、ニューヨークを破壊するキング・コングと大きく分けて3つのシーンから構成される。188分と3時間を超える長編となっており、やや冗長と感じるところもある。

 執拗に続く、密林でのキング・コングや恐竜、巨大昆虫とのバトルやアンの災難など、妙に力がこもっているところがあるかと思えば、あっという間にコングがニューヨークに到着していたりと、妙に端折っている部分もある。ただ、それ故、監督が見せたいシーンが明快で、なぜこんなに巨大昆虫が出てくる必要があるのか、とか、真冬のニューヨークで、ノースリーブでエンパイアステートビルに登ったら凍死するだろ、とか、文句を言いながらも引き込まれる妙な勢いのある作品になっている。


■ 申し分なく高画質。多言語対応で特典を省略

 ディスクの仕様については、先行して発売された北米版とは大きく異なっている。

 北米版では、英語のほか、フランス語、スペイン語をドルビーデジタルプラス 5.1chで収録、字幕は英語とスペイン語、フランス語のみとなっていた。

 一方、日本版は、欧州製作の(米国を除く)ワールドワイド版のため、音声は、英語/日本語/フランス語/イタリア語/ドイツ語/カスティーリャ語(スペイン語)を収録。さらに、字幕については、英語/日本語/フランス語/イタリア語/ドイツ語/カスティーリャ語(スペイン語)/韓国語/スウェーデン語/デンマーク語/フィンランド語/オランダ語/ノルウェー語/ポルトガル語/中国語/ギリシャ語となんと15言語も入っている。

 3時間8分の長い本編に加え、これだけの言語を収録するためか、北米版の特徴となっていたピクチャインピクチャ(PinP)によるキャストインタビューやメイキングなどの特典は省かれている。また、ユニーバーサル作品の特徴とも言えるリモコンの[A]-[D]ボタンなどを使った独自のコントローラ「U-Control」も省略されている。

 北米版のU-Controlでは、PinPの呼び出しに加え、ディスクの任意の箇所を記憶して、ワンボタンで呼び出せる「ブックマーク」などの機能も備えていたのだが、日本版では同機能は利用できない。このあたりは残念なところだ。

 とはいえ画質については、クリアで高画質という点では北米版と変わらない。映像は1080pのVC-1で、基本的な絵の傾向についてはほとんど同じに見えるが、若干北米版の方が解像感が高いように感じることも。船上の撮影シーンのナオミ・ワッツの肌や顔の表情、肩紐など、北米版のほうが立体的でシャープな印象。暗い船内の木の質感なども北米版の方がディティールがはっきり出ているように感じる。とはいえ、何度も比較視聴していると、どちらを見ているかよくわからなくなってしまったが……。

 今回はディスプレイを東芝「REGZA 37Z2000」とソニー「KDL-40X2500」、プレーヤーとして「HD-XA1」とXbox 360 HD DVDプレーヤーを利用して視聴したが、ディスク差よりは、プレーヤーやアナログ/デジタル出力による画質差の方が大きい。

 実写部ではフィルム・グレインらしき粒状感が若干あり、CGを多用しながらも適度に映画らしい落ち着いた雰囲気を味わえる。CGを多用したスカル・アイランドでのコングの戦闘シーン、恐竜の大群などの、まるで高解像度の静止画かと見紛うほどクリアな映像や、間接照明のぼんやりとした明かりで照らされた暗い船内における人肌など、様々な見所がある。いずれも画質については申し分無いく、高画質ディスクとして見所の多い作品だ。

 特筆すべきは、暗部の階調やコントラスト。薄暗い船内のシーンでは、朽ちかけて油のしみこんだ木製のドアの質感や、ランプから照らされた室内の机の陰影などが、しっかりと描かれていること。闇夜のスカル・アイランドへの上陸シーンでも、激しい波と霧に揺らされる黒い船体が細部の隅々まで確認でき、夜のニューヨークでコングが暴れ回るシーンでは、ビル街の明かりとビル影の暗がりのコントラストが、強烈なインパクトを残す。

 エンパイアステートビルに上ったコングを引きでとらえたシーンでは、朝の明かりと雲のグラデーションと、ビル影のまだ明けぬ夜の暗がりのコントラストが印象的で、まるで精細な油絵が動いているかのような奇妙な感覚が味わえる。DVDの「キング・コング」も高画質なディスクだと思っていたが、全く比較にならず、文字通り次世代の体験といえる。

 音については、ドルビーデジタルプラス 5.1chで収録。といっても現時点ではドルビーデジタル640kbpsに変換して出力されてしまうのだが、これもかなりの迫力。コングのアクションが多いこともあり、スカル・アイランドでの恐竜との戦闘シーンや、谷に落ちるコングやカールら一行など、リアチャンネルを積極的に使ったサラウンド音場が楽しめる。

 また、LFEがかなり含まれており、あまり意識しないのだが、ふと気づくと重い低音を感じることも。アクションシーンのみならず、原住民の呪文のようなつぶやきや、重圧なコングのうめき声など、スカル・アイランドの薄気味悪さが、音響を通してじわりと伝わってくる。一方、BGMから感じる軽快な'30年代のニューヨークの雰囲気も印象的。音響面でも楽しみどころの多いディスクだ。


■ HD DVDプレーヤーを持っていれば文句なしに買い

 画質面でも音質面でもHD DVDのフォーマットの実力を申し分無く体験できる。HD DVD「最初の一枚」として、十分楽しめる作品だ。4,980円という価格もクオリティを考えると十分納得できる。

 もっとも、特典は何も入っておらず、DVD版では当初の予想通り、さらに13分長い「デラックス・エクステンデッド・エディション」が発売され、特典も追加されている。ファンにとって今回のHD DVDは「決定版」とは言いづらいかもしれない。いずれ、HD DVDでも特典ディスク付きの「デラックス・エクステンデッド・エディション」が出るのだろう。しかし、このクオリティで作品が出されると、DVDに食指が動かなくなってしまうのも事実だ。

 既にDVDを買っている人にも勧めたくなるほど、クオリティの差は大きい。プレーヤーを持っているのであれば、文句なしに買いといえる。もっとも、まだ、多くの人はHD DVDプレーヤーも買わないといけないわけで、プレーヤーへの投資のためにも、さらに、このレベルの大作をどんどんリリースしていって欲しい。

●このHD DVDについて
 購入済み
 買いたくなった
 買う気はない

前回のBD版「『AIR』Blu-ray Disc Box 」のアンケート結果
総投票数3,735票
購入済み
804票
21%
買いたくなった
1,572票
42%
買う気はない
1,359票
36%

□ユニバーサル・ピクチャーズのホームページ
http://www.universalpictures.jp/
□関連記事
【Blu-ray/HD DVD発売日一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/bdhdship/
【2006年12月14日】ユニバーサル、HD DVD「キング・コング」の発売日決定
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061214/upj.htm
【2006年10月18日】ユニバーサル、「キング・コング」をHD DVD化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061018/upj.htm
【2006年9月7日】ユニバーサル、劇場版より13分長い「キング・コング」特別版DVD
-本編2枚、特典1枚の3枚組み。特典は6時間以上
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060907/upj.htm
【2006年6月6日】【DVD】VFX満載のピーター・ジャクソン版「キング・コング」
3時間以上の映像特典。未開の島の生物図鑑まで同梱
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060606/buyd218.htm

(2007年1月23日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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