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第274回:24bit WAVE対応の多機能レコーダ、ZOOM「H4」
〜 4トラック利用可能。USBオーディオとしても動作 〜




H4

 読者の方から取り上げてほしいと多くのリクエストをいただいていた、ZOOMのポータブルレコーダ「H4」。気になっていたのだが、連載のスケジュール上、取り上げるタイミングを逃してしまったのだが、Webメディア取り上げているところがほとんどなく、情報が少ないのが実情。

 価格的には実売で30,000円前後とかなり手ごろなため、EDIROLの「R-09」や、M-Audioの「MicroTrack 24/96」、Korgの「MR-1」あたりの購入を検討している人には、気になる存在だろう。今回、ZOOMからそのH4の最新ファーム1.30が搭載された製品を借りることができたので、いろいろと試してみた。


■ メトロノームやチューニング機能などを装備

 ZOOMのH4の外見は、全体としてもかなり特徴的なデザインになっているが、中でも目立つマイク部は、一見してSONYの「PCM-D1」にソックリという印象を受ける変型X-Y型の配置になっている。風防が標準でついているほか、R-09ではオプション扱いの三脚アダプタも付属する。 【お詫びと訂正】(2007年3月21日追記)
記事初出時に三脚が付属とありましたが、付属するのは三脚アダプタで、三脚は付属しません。お詫びして訂正します。

マイク部 風防や三脚アダプタも付属している

 この辺を見ただけでも、先行する各メーカーの機種のよいところを集めているという印象を受けるが、実は機能的に、PCM-D1やR-09、MicroTrack 24/96、MR-1などの様なデジタルレコーダに留まらないのがH4の面白いところなのだ。というのもH4は、マルチトラックレコーダであり、メトロノームであり、チューニングメーターであり、エフェクタであり、そしてオーディオインターフェイスでもあるという、とっても不思議な機材なのである。とにかく思いつく機能は何でも詰め込んでしまったという感じなのだ。

 R-09などを見慣れているせいか、実際にモノを手に取ってみるとデカイという印象を受けるが、手元にあったR-09とMR-1を並べて大きさを比較してみたところ確かに大きい。手のひらに収まりきらないサイズではあるものの、重量は約240g(電池抜きで190g)なので、重くはない。

R-09(右)、MR-1(中)と比較 手持ちした場合


電池とSDカードは、マイク部の下側に入れる

 電源は単3電池2本もしくはACアダプタで駆動し、カタログスペック上、アルカリ電池で連続4時間の録音または連続4.5時間の再生が可能となっている。電池はマイクの下側を開いて入れる構造になっており、そこにSDカードスロットも備える。H4はR-09と同様、SDカードにデータを記録するタイプのレコーダだ。

 最も標準的な使い方であるステレオでの録音の場合、非圧縮のWAVおよびMP3での記録ができる。WAVの場合16bit/44.1kHzから最高で24bit/96kHzに対応しており、MP3は64〜320kbpsに対応している。


WAV(左)またはMP3(右)で記録可能


録音ボタンやマイクゲイン切替など

 録音の仕方はいたって簡単。フォーマットを選択した後、録音ボタンを押して赤く点滅させた後、再度押せば内蔵のマイクを通じて録音が開始され、もう1回押すと録音が終了する。側面にあるマイクゲインをL、M、Hの3段階で調整することで、音量を調整できるほか、それとは別にINPUT MENUにあるLEVEL設定で0〜127の128段階での調整が可能となっている。

 反対側側面にステレオミニのヘッドフォン端子があるので、これを繋ぐと入力される音がモニターできる。結構感度の高いマイクのようで、Hに設定しておくと、非常に小さな音まで拾ってくれるが、音楽を録音してみると、やや違和感がある。中低域はかなり太い音で取れるが、高域が非常に細く、キレが悪いのだ。

 試しにCDを再生してモニタースピーカーで鳴らした音をほぼ同じ条件で、R-09とH4のそれぞれで録音してみたところ、どうも再現性が低く感じられる。また、ラバー部分などが設けられていないためか、本体を触った際のグリップノイズを拾いやすい。置いて使うか、前述のホルダー&三脚での使用が基本となるようだ。

 このマイク性能に関する問題への対処方法が2つ用意されている。まずは、マイクシミュレーション機能だ。これは内蔵マイクを著名マイク風な音に変化させるためのもの。EDIROLもR-09では省いてしまったが前機種のR-1に用意されていたマイクシミュレーション機能が、H4に搭載されているわけだ。具体的にはShureの「SM57」、Sennheiserの「MD421」、Neumannの「U87」、AKGの「C414」のシミュレーションが用意されている。

 実際に、それぞれを使ってみたところ確かに音のニュアンスはそれっぽく変わって面白い。しかし、これでマイク特性の根本的な部分を直すわけではないので、これがあればすべてOKというわけではなかった。

 もうひとつは、マイクそのものを別のものに変えるという方法。H4にはXLRとPHONE兼用のコンボジャックが2つ用意されており、ここに1つもしくは2つのマイクを接続することができる。コンデンサマイクを接続した場合は、+48Vまたは+24Vのファンタム電源供給もできるので、かなり汎用的に使える。これを使ってみたところ文句なしの音で録ることができた。

マイクシミュレーション機能を搭載 XLRとPHONE兼用のコンボジャックを装備



■ 4トラックMTRとしても利用可能

 ここまで見てきたのはステレオでの録音だが、H4はモード切替によって4トラックのマルチトラックレコーダ(MTR)としても使えるようになっている。最大で2トラックの同時録音、4トラックの同時再生ができるようになっており、録音済みのトラックをモニターしながら別のトラックを録音していく、いわゆる重ね録りがこれ1台でできる。つまりMTRモードで使う場合、競合となるのはR-09やMR-1ではなく、自社の「PS-04」や「MRS-4B」また、BOSSの「MICRO-BR」やKORGの「B4」といったものになる。

 専用のMTRと異なり、多少使いにくい面はあるが、液晶左側の4つのLED付きスイッチがトラックを表しており、赤だと録音、緑だと再生となる。また、パンチイン/パンチアウトといったこともできるし、バウンスもできる。もちろん、内蔵マイクでも外部マイクでも利用できるほか、ハイインピーダンスにも対応しているため、ここにギターやベースを接続して録音することだってできる。

4トラックのMTRとしても利用可能 液晶左側の4つのLED付きスイッチで録音/再生状態を表示

 この4トラックの場合、録音フォーマットはMP3などは使えず、WAVの16bit/44.1kHz固定となる。また、MTRとして活用するためにさまざまな機能が搭載されているのも面白いところだ。


メトロノーム画面

 まずはメトロノーム機能。結構しっかりしたメトロノームで、テンポ設定ができるのは当然として、録音時、再生時のそれぞれでオン/オフする設定やプリカウント数の設定、また音色の選択なども可能となっている。また、マルチエフェクトが搭載されており、かけ録りができるのも大きな特徴。

 エフェクトのジャンルとしては、「Guitar Amp & Stomp Box models」、「Bass Amp ' Pre-Amp models」、「Mic Preamps」、「Compressor / Limmiter」、「Modulation」、「Delay/Reverb」の6ジャンル、計50種類。あまり細かくではないが、ある程度のエディットも可能で、エディットした結果を10種類用意されているメモリへ保存することも可能だ。

 いずれのエフェクトも内蔵マイクに対してかけることも、外部入力に対してかけることもできるようになっている。さらに、チューニング機能も用意されており、ギターやベースのチューニングもできるなど、これひとつで、さまざまな使い方ができそうだ。

エフェクトメニュー エフェクトは外部/内蔵マイクのどちらにもかけられる チューニング機能も搭載

 さらに面白いのは、H4をPCおよびMacとUSB接続することができ、モードを切り替えることで、SDカードリーダとして使うだけでなく、オーディオインターフェイスとして使うことも可能になっている。

PCやMacとUSBで接続 USB接続時のモード選択画面

 SDカードリーダとして使う場合は、H4で録音したWAVデータやMP3データを取り出すことができる。ステレオのファイルはSTEREOフォルダに、MTRデータはプロジェクト名のついたフォルダに収録されている。

 一方、オーディオインターフェイスとして利用する場合、H4は標準のUSBオーディオインターフェイスとして機能するため、WindowsでもMacでもドライバなしで動作する。ただし、サンプリングレートは44.1kHzか48kHzのいずれかとなり、96kHzは選択できない。そして44.1kHzで動作する場合のみ、MTRで利用したのと同じエフェクトが使えるようになっている。

ステレオのファイルは「STEREO」フォルダに、MTRデータはプロジェクト名のついたフォルダに保存 標準のUSBオーディオインターフェイスとして動作

 なお、この場合、入力音は、H4内でヘッドフォン出力およびライン出力へルーティングされており、これを切ることができない。音質チェックのためにRMAAを使ってみようと思ったものの、このダイレクトモニタリングによって利用することができなかった。


■ Cubase LEをバンドル。ASIOドライバも動作

 H4にはSteinbergのCubase LEがバンドルソフトされており、用途としてはMTRでレコーディングしたものをPCに転送して編集したり、H4をオーディオインターフェイス代わり、もしくはマイク代わりで使うというものだ。ただ、MacはともかくWindowsの場合、標準のドライバだと使い物にならないのが実情だ。

 しかし、ZOOMのWebを見てみると、ASIOドライバがアップされているので、さっそくこれを試してみると、確かにASIOとして使え、バッファの調整も行なえる。最小で64samples(44.1kHzで2.18msec)までの設定ができるが、Core2Duoの6400(2.13GHz)のマシンではうまく動かず、そのひとつ上の96samples(44.1kHzで3.27msec)が最小のレイテンシーとなった。ただし、ASIOで使った場合も、ヘッドフォンへのダイレクトモニタリングを切ることはできなかった。

Cubase LEをバンドル 使用するマシンでは、96samples(44.1kHzで3.27msec)が設定できる最小レイテンシーとなった

 H4のメイン機能を一通り紹介したが、いろいろな設定画面があったことからもわかるとおり、とにかくいっぱいの機能が詰まっている。しかし、気になったのはその設定に関する操作性。正面中央にあるプッシュボタン付の十字キーと右側面にあるジョグダイアルの双方を使って操作するのだが、非常に分かりにくい。

 慣れの問題もあるので、しばらく使っていると分かってくるが、どうやるとメニューが表示され、どのキーが決定で、どのキーで右にいくのかなど、最初はさっぱり分からない。この辺の操作性をもう少し向上すると、盛りだくさんの機能がより使いやすくなると思う。

 こうした操作性とマイク特性ではちょっと難点があったが、3万円でこれだけいろいろな機能を持っており、なかなか楽しく遊べるレコーダに仕上がっていることは確かだ。


□ZOOMのホームページ
http://www.zoom.co.jp/japanese/index.html
□製品情報
http://www.zoom.co.jp/japanese/products/h4/index.php
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(2007年3月19日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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