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第275回:デジタルミキサー「EDIROL M-16DX」を試す
〜 音響特性の自動補正など機能充実。実売7万円 〜




EDIROL M-16DX。ミキサーコントローラとコネクタボックスはD-Sub 15ピンで接続

 Rolandからデジタルミキサーの新モデル「EDIROL Mシリーズ」3機種が発売された。これまでデジタルミキサーというと、YAMAHAの「O2R」や「O1V」など最低でも20万円以上はする高級機というイメージだったが、Rolandは16ch入力の最上位機「M-16DX」を、実売7万円程度という低価格で投入した。

 ミキサーコントローラとコネクタボックスがセパレートであり、USB 2.0のオーディオインターフェイスとしても使えるというかなり斬新なコンセプトのM-16DXを借りることができたので、今回と次回の2回にわたって紹介する。


■ コンパクトなミキサーコントローラと分離型コネクタボックス

 オーディオインターフェイスに、MIDIインターフェイス、USB-MIDIキーボード、フィジカルコントローラ、モニタースピーカー……、DTM・デジタルレコーディング分野での製品も一通り何でも揃い、もう目新しいものはあまりないなと思っていた中、Rolandがまた新たな分野の製品を開拓してきた。

 音楽制作をする上で、やはりミキサーは必要不可欠な存在で、DTMユースにおいては安価なアナログミキサーが主流。O2RやO1Vなどのデジタルミキサーがいいものであることは知っていても、高くてなかなか手が出ないというのが実情だ。

 7、8年前はRolandも「VM-3100/3100Pro」、10年ほど前にはKORGが「168RC」というデジタルミキサーを比較的低価格で出したこともあったが、とっくに生産終了になっている。個人的にも168RCを中古を入手して使っていた時期があったが、やはりスペックが古いのと、ユーザーインターフェイスが悪くて手放してしまった。そこに24bit/96kHz対応のM-16DXという非常にユニークなミキサーが登場したのだ。

 ほぼA4サイズというとてもコンパクトなミキサーコントローラと16チャンネルの入力、メインアウト、ALTアウト、AUX入出力などを備えたコネクタボックスが分かれていて、D-Sub 15ピンのケーブルで接続するという非常にユニークな構造になっている。

 コネクタ・ボックスは1Uで、面積的にA4よりもちょっと小さくなっているが重ねて使うことも可能。また付属のアダプタを取り付けることで、ラックマウントとしても利用できる。このようにセパレートにすることで、非常にスッキリした配線、配置を可能にしている。

ミキサーコントローラとコネクタボックスを重ねたところ 付属アダプタ利用でラックマウントとしても利用できる

 コネクタボックスのフロントにはファンタム電源にも対応したXLRのマイク入力、ギターなどと直結できるHi-Z対応のPHONE入力、S/PDIFのオプティカル、コアキシャルの入出力などが用意されている。またリアには、PHONEジャックの入出力がズラリと並び、RCAの入出力、そしてUSB端子もある。さらに、ミキサー・コントローラにもヘッドホン出力やコントロールルームへの出力、ステレオミニジャックの入力なども用意されている。

コネクタボックスの前面 コネクタボックス背面 ミキサーコントローラにも各種入出力を備える

全体のブロック・ダイアグラム

 コネクタボックスの上部には全体のブロック・ダイアグラムが表示されているが、マニュアルに掲載されている同じ図を載せておこう。これを見れば、結構いろいろなルーティングがとれるようになっているのがわかる。

 たとえばMUTEボタンを押すと、信号がMAINに流れなくなる一方で、ALTアウトから出力できるようになる。また、その状態でも最終段のALTスイッチを押すことで、MAINから出せたり、ヘッドホン側のALTスイッチを押せばヘッドホンから出力できるといった具合だ。


■ 直感的に操作できるインターフェイス

 実際に、M-16DXを手にすると本当に小さい。また、各チャンネルのレベル調整がフェーダーではなく、ツマミになっている。これはミックスダウン用の卓というわけではなく、各機材を接続して使うミキサーなわけだ。

 これまで、結構いろいろなデジタルミキサーを触ったことがあるが、どれも設定が難しいという問題があった。非常に機能豊富で、さまざまな設定ができるが、メニューを呼び出し、各設定にたどり着くまでが大変なのがデジタルミキサーである、という気すらしていた。しかし、このM-16DXのユーザーインターフェイスはかなり良くできていて、ほとんどマニュアルなど見なくてもアナログミキサー感覚で直感的に操作できてしまう。

 たとえば各チャンネルにはレベル調整、パン、Hi、Mid、Lowの3バンドのEQ、AUXセンドなどがあるが、どれかを触ると、そのパラメータが動くのは当然ながら、そのチャンネルのSELボタンが点灯すると同時に、そのチャンネルの情報が液晶ディスプレイに表示される。

各チャンネルのツマミを調整すると、SELボタンが点灯し、液晶ディスプレイ上に情報が表示される

 さらに、SELボタンを押すと、表示がEQの波形表示に切り替わる。ここでパラメータを動かせば当然リアルタイムにグラフ表示も変化するわけだ。しかも、この3バンドEQはパラメトリックEQになっており、周波数の設定を変更することも可能。かなり高機能なEQというわけだ。

ディスプレイ上の表示がEQの波形表示に切り替わる 3バンドEQは、周波数設定の変更が可能



■ 自動音場補正機能を搭載

16バンドのグラフィックEQも備え、最終的な出音を調整できる

 一方、出力段には16バンドのグラフィックEQも用意されている。これをいじることで、最終的な出音を変化させられるのだが、M-16DXの最大の特徴ともいえるのが使用環境に合わせて出力信号を補正する「ルーム・アコースティック・コントロール」という機能だ。

 これは、実際にスピーカーから出る音をマイクで拾って、周波数特性を解析。部屋の音響特性などにあわせて、自動補正してくれるというもの。最近のオーディオ機器には、これと同等の機能を搭載した機材をよく見かけるが、ミキサー機材での対応は珍しい。

 ミキサー・コントローラのリア側中央に小さなマイクが内蔵されており、ここでスピーカーからの音を拾って周波数解析する。使い方は簡単で、フラットにするかドンシャリ系の音にするかなどを選択するとともに、ミキサーを左右スピーカーから均等距離になる位置に設置した上で、ANALYZEボタンを長押しするだけ。スピーカーからはザーというノイズが出てくるが、音量が小さいと測定できず、音量を上げるようにとの指示が表示される。

「ROOM ACOUSTIC SENSOR」の部分にマイクを内蔵し、スピーカーからの音を拾って周波数解析する スピーカー配置や設定などを終えたら「ANALYZE」ボタンを1秒間長押しするだけ 音量が小さい場合は音量を上げるよう指示される

 音量がマッチすると、何回か異なる周波数特性のノイズが出力されるとともに、その周波数特性をグラフィック表示。15秒程度で終了となり、グラフィックイコライザが最適な形に設定される。

何度かトライし、15秒程度で補正作業は終了。EQが最適な形に設定される

 試しにフラット特性で、ルーム・アコースティック・コントロールを行ない、何も設定していない状況と比較してみると、驚くほど音が前に飛び出てくる。EQの設定は素人にはもちろん、プロだってなかなか思うとおりの音を作り出すのは難しいが、その環境に最適な設定を簡単に行なってくれるのはやはりすごい。一度、これで設定した上で、後から手動で補正することも可能なので、絶対に使う価値がある。

 内蔵の小さなマイクでは頼りないというのであれば、ディップスイッチを設定することにより、1chのマイク入力をルーム・アコースティック・コントロール用に使うこともできる。このほうが、より最適な音作りができるかもしれない。


場所ごとのEQ設定を「シーンメモリ」として保存できる

 なお、室内/屋外など、さまざまな場所でルーム・アコースティック・コントロールを行ない、それをシーンメモリとして記憶させることも可能だ。シーンメモリは、ルーム・アコースティック・コントロールに限らず、各チャンネルの設定や、エフェクト類の設定など、さまざまなパラメータをすべて保存し、呼び戻すことができる機能で、計8種類のシーンを記録できるようになっている。


■ 種類は少ないが、効果的に利用できるデジタルエフェクトを装備

 ところで、このM-16DXにはデジタルミキサーであるだけに、デジタルエフェクト機能も備わっている。それほどオールマイティーなエフェクトというわけではないが、インサーション用のエフェクト、AUX2用に使えるセンド・リターンのエフェクト、そしてファイナライズ用のエフェクトの大きく3種類が存在する。

 まずインサーションエフェクトは1ch、2chのみで使えるもので、ボーカル/ナレーション専用。真空管アンプをシミュレーションするCOSMエフェクトとコンプレッサを使ったパワー・コンプレッサが3種類と、ボーカルエンハンサー、ナレーションの計5種類が利用できる。

 またAUX2用に使えるのはエコー2種類とリバーブ5種類の計7種類。パラメータ数は少ないが、ディレイタイムやリバーブタイムなどが設定できるようになっている。そしてバランスのとれた音に仕上げるファイナライズエフェクトはナチュラル、FATコンプレッサ、ファイナライズ1〜4の計6種類。グラフィックEQと合わせて使うことで効果的に利用できる。

インサーションエフェクトはボーカルエンハンサーなど5種類装備 AUX2用には、エコー2種とリバーブ5種の計7種。ディレイやリバーブも設定できる ファイナライズエフェクトはFATコンプレッサなど6種類

 今回はM-16DXをアナログミキサー感覚で、単体利用する際についての機能を紹介してきたが、コンパクトながらかなりいろいろな機能が詰まっていることが理解いただけたと思う。また、デジタルミキサーだけに、S/Nは非常にいい。次回は、デジタル機器と接続した場合や、USB接続してオーディオインターフェイスとして使った場合の特徴などについて紹介する。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□EDIROLのホームページ
http://www.roland.co.jp/DTMP/index.html
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/M-16DX/index.html
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〜 NAMM2007出展のミキサーやキーボードなどが登場 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070213/dal269.htm

(2007年3月26日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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