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第269回:Roland/EDIROL/BOSSの新製品をチェック
~ NAMM2007出展のミキサーやキーボードなどが登場 ~



 2月9日、ローランドは東京 渋谷でRolandEDIROLBOSSの3ブランドの新製品発表会を行なった。これらは主に、1月に米国の「NAMM SHOW 2007」で参考出品されたものが中心で、発表会翌日の2月10日には、一般向けの製品お披露目イベント「サウンド・スパーク2007」も開催された。

 デジタル系の機材を中心に数多くの製品が発表されたが、ここでは主なものについて紹介していこう。

東京 渋谷で開催されたRoland/EDIROL/BOSSの新製品発表会



■ EDIROLシリーズのデジタルミキサー新製品を展示

 今回の新製品群のうちEDIROLブランドの目玉製品といえるのが、「EDIROL Mシリーズ・ミキサー」というデジタルミキサー3機種。最近各社とも小型のミキサーの競争が激しくなっており、多機能で低価格な製品がいろいろあるが、このMシリーズ・ミキサーはアナログ・ミキサー感覚ながら完全デジタルで、低価格なのがポイントとなっている。

 フラッグシップモデルとなる「M-16DX」は24bit/96kHz、16chという仕様で、ミキサー・コントローラ部と入出力端子が並ぶコネクタ・ボックスが別々のモジュールになっているのが大きな特徴。2つのモジュールはD-sub 15ピンのケーブルで接続されるが、セパレートになったことで、デスクトップ上に配置しやすくなっている。またここにはUSB 2.0端子も備えられており、16in/2outのオーディオインターフェイスとしても使えるようになっている。

フラッグシップモデル「M-16DX」のミキサー・コントロール部 コネクタ・ボックスが独立しているのが特徴

 各チャンネルには3バンドのEQ、PAN、AUX、Select、Solo/Mute、Levelなどの操作子が配置されており、完全にアナログ感覚で利用できる。すごいのは、モード設定などしなくても、EQを触ればEQの周波数特性が自動的に液晶ディスプレイにグラフ表示されること。この使い勝手はなかなかいい。

 さらに便利なのが「ルーム・アコースティック・オート・コントロール機能」というもの。これは最近のAVアンプなどにある自動音場補正機能に近いもので、スピーカーを設置した後に、現在設置されている空間にピッタリの形に周波数特性を自動的にフラットに補正してくれる。本体に小型のマイクが内蔵されているため、スピーカー設置後に、この機能を使うだけでOK。とくに初心者の場合、EQをどういじればいいかの扱いはなかなか難しいが、これなら簡単に最適な特性を得ることができる。

触れたEQの周波数特性が自動的に液晶ディスプレイ上にグラフ表示 空間に合わせて周波数特性を自動補正する「ルーム・アコースティック・オート・コントロール機能」

 M-16DXの下位モデル「M-10DX」という10chの製品も基本的にはM-16DXの機能をそのまま受け継いでいる。ただし、こちらはオーディオインターフェイス機能は装備せず、モジュールも2つに分かれず一体型となっている。

 さらにエントリーモデルの「M-10MX」も10chの仕様だが、「ルーム・アコースティック・オート・コントロール機能」などは装備しない、シンプルなミキサーとなっている。

 価格は3機種ともオープンだが、M-16DX、M-10DXの発売は3月、実売価格はそれぞれ7万円前後、4万円前後。M-10MXは2月発売で13,000円前後となっている。

M-16DXの下位モデル「M-10DX」はモジュール一体型 エントリーモデル「M-10MX」はシンプルなデジタルミキサー



■ USB MIDIキーボード「PCRシリーズ」をフルモデルチェンジ

 EDIROLのUSB MIDIキーボード「PCRシリーズ」もフルモデルチェンジとなり、61鍵盤の上位モデル「PCR-800」、49鍵盤の「PCR-500」、32鍵盤のエントリーモデル「PCR-300」の3製品が登場する。いずれも2月下旬の発売で、オープンプライス。実売価格はそれぞれ35,000円、30,000円、25,000円だ。

EDIROLのUSB MIDIキーボード上位モデル「PCR-800」 49鍵盤の「PCR-500」 32鍵盤の「PCR-300」

 デザイン的にも大きく変わった新PCRシリーズだが、一番のリニューアルポイントはアフタータッチに対応したこと。また9ロータリー、9スライダーなど50系統のコントローラを装備するとともに、ベロシティー・センスに対応した18基のパッドも装備したため、ドラムの打ち込みなどにも利用可能だ。またスライダーも45mmのロングストロークになったため、従来機よりも、ミキサー操作などがより細かく行なえるようになった。

 さらに、MIDI端子、USB端子などの端子類が、サイドパネルに集約された結果、リアがスッキリしたのも大きなポイント。これによってデスクトップ上などの狭いスペースでも効率のいい設置が可能となっている。

サイドパネルに端子類を集約 背面端子類がなくなったことで、効率のよい設置が可能に

 もうひとつ大きい変更点は付属ソフトで、従来添付されていた「SONAR LE」ではなく、「Cakewalk Production Plus Pack」というものがバンドルされるようになった。

新たにバンドルされる「Cakewalk Production Plus Pack」では、従来の「SONAR LE」に加え、ほか2本のソフトもパックになった

 これはDAWである「SONAR LE」、「Cakewalk Project 5 LE」、「D-Pro LE」の3本をパックにしたソフトだ。Cakewalk Project 5 LEはCakewalk版Reasonといった感じのシンセサイザ・ワークステーション、またD-Pro LEはプレイバック型のソフトサンプラーだ。

 つまり、これらを用いればかなり強力な音源として即利用することができ、PCR本体とトータルで見ればキーボード・シンセサイザとして使えるわけだ。またソフトウェアとの連携をスムーズにするダイナミック・マッピング機能というものも搭載され、DAWからより簡単に使えるようになっている。

 この機能に正式に対応する最初のDAWは2月下旬にVista対応版としてアップデートされるSONAR 6.2。これはPCRのダイナミック・マッピングボタンを押すだけで、SONAR6のACT機能と連携し、アクティブになっているウィンドウの主要パラメータが自動的にフィジカル・コントローラに最適にアサインされるのだ。

 なお、SONAR 6.2はそれ以外にもMIDIのインプットクォンタイズに対応したり、AudioSnap機能が拡充されている。



■ DSP3基搭載のV-Guitar新システム「VG-99」

 さて、Rolandブランド製品として、なかなか面白かったのが、V-Guitarの新システム、「VG-99」だ。

RolandのV-Guitar新システム「VG-99」

 V-GuitarとはDSPによるCOSMテクノロジーによりギターのボディや弦、さらにアンプの特性やマイク位置までシミュレートして、ギターサウンドを忠実に再現するもの。たとえば、テレキャスターを弾きながら、ストラトキャスターやレスポール、さらにはアコースティックギターなどのサウンドにしたり、それに接続するアンプをいろいろ変えたり、エフェクトをかけることができる。

 今回登場したVG-99はDSPを3基搭載することで、デュアルCOSMギター、デュアルCOSMアンプ、デュアルCOSMエフェクトなどを実現できるようになったもの。また大型液晶を搭載するとともに、Dビームやリボン・コントローラを搭載するなど、従来のV-Guitarとはちょっとイメージも変った。

 リアにはUSB端子も装備するとともに、専用のエディタソフトも同梱されている。PC/Macと接続することで、VG-99のすべてのパラメータをソフト側から操作できるのだ。

専用のエディタソフトにより、ソフト側から全てのパラメータを操作可能

新型フットコントローラ「FC-300」もVG-99と同様4月発売予定

 なお、新型のフット・コントローラ「FC-300」も同時に発売され、VG-99とはLANケーブルで接続できるようになっている。VG-99、FC-300の発売は4月。ともにオープンプライスで実売価格はそれぞれ14万円前後、3万円弱となっている。



■ 音源エンジンをデュアルコア化した「V-Synth GT」

V-Synth新モデル「V-Synth GT」は音源エンジンのデュアルコア化などを実装

 RolandのVシリーズとしては、もうひとつ「V-Synth」の新機種、「V-Synth GT」が登場。これは音源エンジンのデュアルコア化を実現するとともに、新開発のAP(Articulative Phrase)-Synthsisというものを搭載している。

 これは、単にアコースティック楽器の生音をサンプリングし、再生させるだけでなく、演奏者の振る舞いまでを実現するというユニークなもの。たとえば、バイオリンのグリッサンド奏法やビブラートやクレッシェンドといった特徴的な奏法、またフルートのトリル奏法などなど、プレイヤーは特に意識することなく、普通に鍵盤を弾くことで再現できるようになっている。

 通常のサンプリング・シンセサイザの場合、単にギターやバイオリンの音を選んで鍵盤で弾いてもギターやバイオリンっぽくならないケースが多い。それっぽく弾くためには、ピッチベンドや、モジュレーション・コントローラを利用するなど結構なテクがいるが、そうした必要がなく演奏できるのはなかなか画期的だ。このV-Synth GTは4月発売で、価格はオープン。実売価格が37万円前後になる模様だ。



■ BOSSのギターエフェクト新モデルも登場

 そのほか、小物ながら購買欲をそそるのがBOSSのギターエフェクト群だ。今回発表されたのは「DN-2」、「FZ-5」、「ML-2」、および「FBM-1」、「FDR-1」の計5機種。

BOSSからは、各種ギターエフェクトが登場。右から「DN-2」、「FZ-5」、「ML-2」 Fenderロゴがプリントされたギターエフェクトのレジェンドシリーズ。右から「FBM-1」、「FDR-1」

 DN-2はピッキングの強弱やギターのボリューム・コントロールでひずみの量と音色の変化をダイナミックにコントロールできるオーバードライブ、FZ-5は個性的なビンテージ・ファズ3モデルのサウンドをCOSMでリアルに再現したファズ、そしてML-2は攻撃的なハイ・ゲイン・サウンドを生み出す、ラウド系サウンドに最適なディストーション・ペダルだ。

 一方、FBM-1とFDR-1は米FenderとRolandが提携強化を図ったことで生まれた、Fenderのレトロ機材を復刻させた「BOSS レジェンド・シリーズ」。BOSS製品ではあるが、Fenderのロゴがプリントされているのは大きなポイントだろう。

 まず、FBM-1はFender '59 Bassmanを再現したもの。太くて透明感のあるきらびやかな音色がしっかりとシミュレーションされており、まさにレトロなFenderの音がする。

 FDR-1はFender '65 Deluxe Reverb AmpをCOSMで忠実に再現したもの。小型の真空管アンプ特有のレスポンスとナチュラル感が得られる。オリジナルと同様のコントロールつまみが装備されており、Deluxe Reverbの特徴でもあるスプリング・リバーブも忠実に再現している。

 DN-2、FZ-5、ML-2の発売は2月、FDR-1、FBM-1は3月。いずれもオープンプライスで、実売価格は前者3製品が10,000円前後、レジェンド・シリーズ2機種は15,000円となっている。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□EDIROLのホームページ
http://www.roland.co.jp/DTMP/index.html
□BOSSのホームページ
http://www.roland.co.jp/BOSS/index.html
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(2007年2月13日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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