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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第302回:熱狂のApple、クールなSONY
−対照的な両社のプレスカンファレンス



■ Apple、Final Cut Studio2を発表

 会期前日となる日曜日は、プレスカンファレンスが数多く開催されている。午前中のメインはなんと言っても、ベネチアンホテルで開催されたAppleのスペシャルイベントである。元々固定ファンの多いAppleだが、映像のプロにとっても「Final Cut Studio」が持つ斬新な機能、優れたGUI、安定性、価格などの面で、コンシューマと同じような固定ファンを増やしている。


果てしなく続く一般来場者の列

 スペシャルイベントということだけあって、プレスだけでなく一般来場者も事前にレジストレーションすれば参加できたようだ。プレス登録してあったのだが、間違って一般来場者の列に並ぶところだった。そこはもう会場の通路遙かかなたまで続く大行列で、プレス関係者も含めると3,000名近い動員数であったと思われる。

 壇上でまず最初に発表されたのは、ビデオサーバー上のメディア管理とワークフローの自動化を行なう「Final Cut Server」。これまでAppleのFinal Cut Studioはクリエイターを中心に広がっていたが、昨今は放送局などでも使われるケースが増えている。しかし報道向けのワークフローとしては、ビデオサーバーで素材から完パケ管理を行なう方法が主流となっている。Appleにはハードウェアとしてのサーバーは存在したが、大勢の人間がファイルにアクセスしながら使用する場合、バージョン管理や検索、完成承認、メタデータ入力などに対するファイルアクセス制限などが必要になる。

 Final Cut Serverは、これらの作業を効率的に行なう管理ツールだ。これまではAvidなどネットワークソリューションに長けたメーカーに大きく水を空けられていた部分だが、それを埋める製品となるだろう。米国での価格は、10クライアント版が999ドル、クライアント無制限版が1,999ドル。日本では10クライアント版が118,000円、クライアント無制限版が238,000円で販売される。発売時期は今年の夏を予定している。こういう製品をApple Storeでも販売しちゃうところもスゴい。

 続いて発表されたのは、どちらかといえばこちらのほうがメインの「Final Cut Studio 2」。映像制作ツールパックの新バージョンである。

発表の最初は、Final Cut Server 大幅なアップデートがなされた「Final Cut Studio 2」

 中核をなす編集ソフトであるFinal Cut Proは、新たにバージョン6となった。新たに追加された「ProRes 422」は、非圧縮のHDストリームを画質を維持したままでSDサイズに圧縮するというHD映像用の圧縮コーデック。名前の通り4:2:2で10bit、1,920×1,080のフル解像度をサポートする。またVBRであることから、同社得意のMPEG-4をプロ用に特化したものだろう。

 イベントでは、非圧縮の映像とProRes 422の映像を画面半分ずつにして再生するというデモンストレーションを行なったが、プロジェクションされた映像で見る限り、その違いを見分けることができなかった。このような専用コーデックは、これまで多くのノンリニアメーカーが採用してきた方法だ。つまりそのソフトウェアにとって、あるいはプラットフォームにとって最適な解を自分たちで創るという意味では正しいのだが、これがある意味囲い込みとなって、排他的なシステムになりがちであった。

 これまでAppleは、逆にオープンなカムコーダのネイティブフォーマットをそのまま採用することで、間口を広げてきた。だが現実問題として大量のHDソースの扱いとなると、非圧縮ではストレージ容量が多すぎ、逆にHDVなどの高圧縮ソースではリアルタイムで複数ストリームの同時再生に難がある。新コーデックはこれらの点を解消する狙いがあるとともに、Server製品の登場ですべて自分たちの環境の中で完結できるという方向性へシフトするのかもしれない。

 またFinal Cut Pro 6では、新たに「Open Format Timeline」という仕組みが組み込まれた。これは異なる解像度、フレームレートを画像変換することなく、1本のタイムラインに混在できる。

 合成ソフトの「Motion」は、新たに仮想3D空間によるシーン配置が可能になった。従来からのパーティクルエフェクトも、X-Y軸だけでなくZ軸方向へも拡散できるようになり、より立体的なエフェクトが構築できる。元々映像合成ソフトは、レイヤーという考え方で奥行きの軸を想定し、疑似3Dの効果を得ていた。それがオブジェクトを3D空間内に配置して、それを俯瞰してみられるような形になったわけである。

Open Format Timelineでは異なるフォーマット、解像度、フレームレートが混在できる 3D空間内でオブジェクトのレイアウトを行なう

 元々このようなレイヤー型映像合成ソフトの3D空間化は、今に始まったことではなく、Adobe AfterEffectsではすでに2001年のVer5.5の時代から立体的な空間配置を可能にしている。またハードウェアのエフェクタとしては、2002年にGrass Valleyの「Krystal」が、各エフェクトチャンネルの上位に仮想カメラチャンネルを配置するという設計で、3D空間を実装した。そしてMotionの3D化で、いよいよ映像作家も3DCGがわからないとやっていけない時代になったと言えるかもしれない。


立体的な色空間ベクトルを使ってカラー制御が可能

 Final Cut Studioに新しく追加されたソフトウェアが、「Color」だ。その実態はカラーコレクション用ソフトだが、画面全体のコレクションに加えて複数のセカンダリレイヤーを持つことで、部分的なカラーコレクションエリアを動きに追従させるなど、複雑な映像効果を可能にしている。特にこれまでGUIとしての表現が難しかった、色相、彩度、輝度の立体的な空間の中から特定の色を抽出できるなど、単純なカラーコレクタとは一線を画す作りだ。

 ただGUIは以前からMac用として発売されていたカラーコレクションツール「FinalTouch」と酷似していることから、同ソフトウェアか、もしくは開発会社そのものを買収したものと思われる。

 新しいFinal Cut Studio 2は、米国では5月から発売予定で、価格は1,299ドル。旧Final Cut Studioからのアップグレードは499ドルで、Final Cut Pro単体からのアップグレードが699ドル。日本語版は発売時期が6月下旬で、価格は148,000円。旧Final Cut Studioからのアップグレードが58,000円、Final Cut Pro単体からのアップグレードが78,000円となっている。


□関連記事
【4月16日】アップル、プロ向け映像編集の「Final Cut Studio 2」
−新ツール「Color」追加。ProRes 422採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070416/apple.htm



■ ソニー、メモリー記録のXDCAMを発表


落ち着いた雰囲気で進行するソニーのプレスカンファレンス

 同日午後にBallysホテル内で行なわれたソニーのプレスカンファレンスは、さまざまなユーザー企業の代表が交代でスピーチするという、オーソドックスなスタイルで行なわれた。

 壇上ではいくつかの新商品が発表されたが、実機の展示が行なわれたのは2つ。まずは液晶を使ったマスターモニタシリーズ「BVM-L」シリーズが発表された。これまでマスターモニタは未だにブラウン管のものしかなく、しかもブラウン管の製造自体はソニーもすでに撤退しているため、今後の供給が不安視されていた。今年の秋に最初のモデル「BVM-L230」が発売される予定。

 そしておそらく今年のNAB最大の目玉となるのが、メモリーカードに記録するXDCAM、「XDCAM EX」シリーズの登場だ。まだ技術発表の段階ではあるが、ついにソニーもメモリーに来たかと思うと、感慨深い。


参考展示された「XDCAM EX」

 記録メディアはサンディスクと共同開発を進める新フォーマット「SxS」(エス・バイ・エス)。PCの比較的新しいインターフェイス規格であるExpressCardタイプとなっており、参考展示されたハンディタイプのカメラには、このカードが2枚装着できる。記録フォーマットはXDCAMと同じMPEG-2 Long GOP。

 またディスク記録のXDCAMも順調にフォーマット拡張が行なわれ、今年はデュアルレイヤーに対応、50GBとなり、高画質記録時の容量面での不満を解消した。XDCAMはBlu-rayの技術開発をベースに、初期の段階からプロ用に枝分かれしたフォーマットだ。Blu-rayのほうはすでに2層記録まで可能になっているが、今回はそれに追随する形となった。

 さらにテープ記録型ハイエンドフォーマットのHDCAM SRは、最上位スタジオモデルの「SRW-5800」を発表。スタジオ機としては初となる1080/59.54P記録を実現した。また59.94iモードでは800Mbpsという広帯域記録を生かして、RGB 4:4:4記録も可能。合成用のテレシネの受けフォーマットといった形での利用価値が高い。

 なおこれらの新商品に関しては、明日から開催されるコンベンションのブースレポートで詳しくお伝えする予定だ。


□関連記事
【4月16日】ソニー、PCI Express採用の業務用カメラ向けメモリ「SxS」
−800MbpsでPCに転送。対応カメラをNABで展示
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070416/sxs.htm


□NAB 2007のホームページ
http://www.nabshow.com/
□関連記事
【4月16日】世界最大の放送機器展「NAB 2007」がラスベガスで開幕
−HD当たり前の時代、放送が選択する道とは
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070416/nab.htm
【2006年5月1日】【EZ】NAB2006レポート その2
〜 HD次世代へ転身するための改革 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060501/zooma255.htm
【2006年4月26日】【EZ】NAB2006レポート
〜 HD当たり前の時代へ向けての猛ダッシュ 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060426/zooma254.htm
【2005年4月27日】【EZ】NAB2005レポート 後編
〜 HDが作る新たな潮流 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050427/zooma203.htm
【2005年4月20日】【EZ】NAB2005レポート
〜 ようやく走り出したHDソリューション 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050420/zooma202.htm

(2007年4月17日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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