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第86回:コントラスト20,000:1の超黒表現の世界
~ “KURO”の実力は? 「パイオニア PDP-5010HD」 ~


 フルHD/1,920×1,080ドット化に後れを取っていたプラズマテレビ。しかし、2006年夏、パイオニアは、民生向け量産モデルとして世界初のフルHDプラズマモニター「PDP-5000EX」を発売。プラズマにもフルHD化の流れがやってきた。その後、松下電器のVIERAシリーズや日立Woooでも続々とフルHDモデルが投入され、2007年も下半期となった今では「フルHDプラズマ」というキーワードも市民権を得たような気がする。

 ただ、ここ数年の間にフルHD/大型化が進んだ液晶テレビが消費者に浸透しており、プラズマの立場はあまりよろしくないのも事実。今、プラズマは「プラズマとしての新たなブランディング」が求められてきており、先駆者であるパイオニアは、液晶との価格競争とは別次元の「プレミアム画質なフルHDプラズマ」で勝負することを決断した。

 その第1弾製品として投入するのが50V型の「PDP-5010HD」と60V型の「PDP-6010HD」だ。“圧倒的な黒表現”をアピールすべく、ブランドも“KURO”に改めている。

 価格は50型で72万円、60型で99万円。50型のVIERA最上位モデル「TH-50PZ750SK」が実売で40万円台後半のため、価格も約1.5倍と“プレミアム”付き。今回は、50型のPDP-5010HDについて評価を行なった。



■ 設置性チェック
 ~サイドスピーカーは分離式

 PDP-5000EXは、チューナ無しのプラズマ“ディスプレイ”だったが、PDP-5010HDは、れっきとしたプラズマ“テレビ”として開発されている。地デジ/BS/CSデジタルチューナをダブルで搭載。PDP-5000EXはディスプレイのため、どうしてもマニア向け製品というイメージがあったが、今回のPDP-5010HDでは純粋なテレビ製品となり、普通の消費者向けに敷居が下げられた感はある。

「PDP-5010HD」。サイドスピーカーは自分で取り付けて配線する必要がある

 とはいっても、良くも悪くも玄人好みの作りなのはパイオニアらしいところ。

 たとえば、PDP-5010HDはサイドスピーカーデザインなのだが、スピーカー部は着脱式になっており、設置時にはこのスピーカーをドライバを使って本体側にねじ止めして取り付け、スピーカーケーブルを本体側へ配線する必要がある。

 少々面倒のように思えるが、たとえば自分でオーディオシステムを組んでいる人は、スピーカーを取り付けない選択もあるし、あるいは、PD-5010HD付属スピーカーをAVアンプ側に接続して、サラウンドシステムに組み入れる選択もとれる。AVアンプがデュアルセンタースピーカー駆動に対応していれば、付属スピーカーをセンタースピーカーとして利用することもできるだろう。PDP-5010HDはテレビ製品ではあるがPDP-5000EXのディスプレイとしての遺伝子を継承しているといえる。

 本体の大きさはスピーカー設置状態で1,444×120×722mm(幅×奥行き×高さ)。付属スピーカーが比較的大きいので、横幅は他社の同サイズ製品と比較しても大きい。

 総重量はスピーカー設置状態で約42kg。今回、成人男性二人で持ち上げて階段を上げて設置を行なった。成人男性一人だと運ぶのは難しいが、二人であればなんとか可能だ。なお、背面には運搬用の「持ち手」が実装されているのがありがたかった。

 スタンドは別売りオプション扱い。その代わり予算や設置場所に応じたスタンドが選べるのがメリットになる。

 PD-5010HDに適合する純正スタンドは、チルト/スイーベル機構なしのリジッドタイプの「PDK-TS29A」(25,000円)、チルト・スイーベル機構ありの「PDK-TS25」(25,000円)の2タイプがラインナップされている。PDK-TS25はブラックとシルバーの2色を用意し、左右±10度、前後±2度の手動式傾き調整機能を有している。画面が重い関係で、傾き調整幅は自由度は若干抑え気味だが、リジッド型と同価格でスイーベル型が選べるというのは嬉しい。なお、スイーベル型のPDK-TS25は旧モデルのPDP-507HXや、KUROのWXGAモデルPDP-508HX/428HXでも兼用できる。今回の評価ではリジッドタイプのPDK-TS29Aとの組み合わせで行なった。

 壁掛け設置にも対応しており、取り付け金具も純正オプションとして設定されている。完全固定式の「PDK-WM05」(36,750円)と、上下チルト機構付きの「PDK-WT02」(57,750円)がラインナップされている。この2つもPDP-507HX/508HX/428HX等と兼用だ。なお、壁掛け設置が可能といってもテレビ部と取り付け金具との総重量は約50kgにもなるので、壁側の補強は必要だ。

 プラズマテレビ特有の動作音はやはりあるにはある。無音状態で画面に寄れば「ジー」という動作音が聞こえてくるが、サウンドがある映像を楽しんでいる分には全く気にならない。

 表示面の額縁部分は最近流行の光沢塗装がなされており、表示面に相対する側に窓や照明があると強い映り込みがある。表示面も基本的にはガラスなので、相対する壁側に窓があったりするとこれが映り込んでしまう。設置前には、照明や窓の位置には熟慮した入念なシミュレーションをしたいところ。

前面ベゼルの光沢処理が施されており、表示面の映り込みも設置位置によって感じられる 背面上部には対角約10cmほどの電動ファンが3つ実装されているが、今回の視聴(室温26~28度前後)では回転することがなかった

 消費電力はPDP-5000EXの410Wから上昇して441Wとなった。PDP-5000EXから、スピーカーやダブルデジタルチューナ搭載分が上乗せされたためであろう。同世代の50V型/1,365×768ドットモデル「PDP-508HX」の368Wより70Wも高いのは、PDP-5010HDの画素数が1,920×1,080ドットで約2倍もあり、その分、画素駆動用のドライバブロックの消費電力が大きいためだ。

 最近はテレビといえば消費電力を無視することはできないわけだが、PDP-5010HDの消費電力は同サイズ(46~52V型)のフルHD液晶と比較すると150W~200Wほどと高め。解像度の面で液晶に追いついてきたプラズマだが、ランニングコストの面では、まだまだ液晶に及ばない。今後の課題は省電力性能にあるといってもよいかもしない。


■ 接続性チェック
  ~ビデオ6入力のうち、3系統がHDMI対応

背面左側の接続端子パネル。アナログビデオ入力端子、ビデオ出力端子、光デジタル音声出力端子、スピーカー端子などが並ぶ

 PDP-5000EXから純粋なテレビ製品と生まれ変わったといえる「PDP-5010HD」だが、“ディスプレイ”としての遺伝子は継承されており、接続性はかなり充実している。

 とはいえ、闇雲に入力端子数を増やしているのではない。入力系統を基準に接続性を設計している点がわかりやすく、一般ユーザー向け製品らしい。具体的に説明しよう。

 まず、PDP-5010HDでは、「入力系統は6系統」という割り切りをしている。実際には接続端子はそれ以上あるのだが、ユーザーが切り替えて視聴できるのは同時には6台までのAV機器と言うことだ。

 入力1はHDMI入力、コンポジット入力、S2ビデオ入力、D4入力があり、これらが排他利用できるようになっている。

 入力2はコンポジットビデオ入力、S2ビデオ入力が排他利用可能。アナログビデオソースのAV機器を接続することになるだろう。入力3はD4入力専用になっている。

 入力4は、本体正面左側の接続端子パネルの各端子に割り当てられ、D4入力、S2ビデオ入力、コンポジットビデオ入力を実装。これらがやはり排他利用できる。こちらは抜き差し頻度の高いゲーム機などの利用が想定される。

 入力5、入力6はともにHDMI入力専用系統。入力1-6とは別に「PC入力」という独立系統が設定されており、これに対応するのがD-Sub 15ピン端子になる。DVI端子はないが、最近のPCはHDMI接続も可能なので、それほど問題は無い。

正面左側接続端子にはアナログビデオ入力端子類のみでHDMI端子は無し。USB端子はJPEG写真を記録したUSBメモリ接続専用 背面右側の接続端子パネル。HDMI入力端子やPC入力端子、i.LINK端子、電話回線、ネットワーク端子、アンテナ端子などが並ぶ

 音声入力は入力1、2、3、4にそれぞれ各入力専用のアナログ音声入力(RCA)を実装している。PC入力についても専用のアナログ音声入力(ステレオミニ)を完備。PCからの音声をPDP-5010HDで出力できる。

 また、録画機器や外部機器連動用に、外部出力(いわゆるモニタ出力)端子も装備。ここにはS2ビデオ端子、コンポジットビデオ端子が実装されており、PDP-5010HDのチューナ映像を外部録画機器や別のディスプレイ機器へ出力できる。音声出力はアナログ音声出力(RCA)のほか、光デジタル音声出力を実装。これはチューナ側で受信した5.1ch AAC音声などをパススルーしてAVアンプ側で再生する際などに利用する。i.LINK入力も2系統完備。ビデオレコーダなどの接続に利用できる。

 実際の機器接続時に不便に感じた点は、HDMI端子やi.LINK端子は下方向に向いて実装されており、接続時に端子やケーブルを上向きに差し込む必要があるため、抜き差しが非常にやりにくかったということ。これは、他のビデオ入力端子同様に横向きに実装して欲しいと感じる。とはいえ、PDP-5010HDの接続端子はテレビ製品として不満なく、充実している。



■ 操作性チェック
 ~充実のテレビ機能。ディスプレイ機器としての遺伝子も継承

 正面右側面にはB-CASカードスロットと、入力切り替え、チャンネル±、音量±、電源スイッチが配されている。万一、リモコンがなくなってしまった場合でもここで基本操作は行なえる。左側面には前述した入力系統4の接続端子群も並んでいるので、PDP-5010HDの左右両側面はある程度空けておかないと使い勝手に影響する場合がある。コーナー置きの場合などには注意したい。

 電源スイッチを入れてから地デジ放送の映像が表示されるまでの所要時間は約4.5秒。最近の機種としては標準的な速さといったところ。


正面向かって右側側面にB-CASカードスロットがある リモコン。入力切り替えは独立ボタンを配備。ディスプレイ製品としての遺伝子がここにも

 リモコンは縦長で厚みのあるタイプ、最近のデザイントレンドは薄型リモコンなのだが、PDP-5010HDのリモコンは厚みがあり握り甲斐がある。底面にはくぼみが1つあり、ここに人差し指の付け根をあてて持つとちょうど親指が十字キーに乗るエルゴノミックデザインとなっている。

 ボタンは若干透明度のある透き通った感じのボタンなので発光ギミックがあるのかと思わせるが、実際には何もなし。フルHDプラズマは輝度レベルが低いので、映像をじっくり楽しみたいユーザーは部屋を暗くする人も多い。せっかくなので蓄光ギミックは欲しかった気もする。ボタンデザインは、欲張らず質実剛健といった感じ。洒落っ気は全くないが、その分シンプルでわかりやすい。

 入力切り替えは接続性チェックのところで述べたように1~6の6系統があるわけだが、その6系統に1対1に対応する形で[1]~[6]の独立ボタンが実装されている。好みの入力切り替えに一発で切り替えられるのが小気味よく、また、使い勝手もすこぶるいい。ただ、ボタン上は数字しか記載されていないので、どの入力系統に何が接続されているのかを自分で記憶しておく必要がある。

 なお、入力切り替えの所要時間は地デジ→HDMIで約1.1秒、HDMI→地デジで約3.0秒であった。前者は高速だが後者はかなり遅めだ。ただ、希望する入力に一気に切り替えられるので順送り式と比較するとストレスは少ない。

 PC入力やi.LINK機器への切り替えは、リモコン下部の蓋を開けてアクセスできる[PC]ボタンや[i.LINK]ボタンを押すことで行なえる。アクセス性はあまりよくないが独立ボタンになっていて一発切り替えできる点は評価できる。

 アスペクト比切り替えは、リモコン下部の細長の[画面サイズ]ボタンを押して、順送り式に変更できる。切り替え所要時間はほぼゼロ秒で、押した瞬間に切り替わりレスポンスは良好。

 先代PDP-5000EXはディスプレイ製品と言うこともあり、「やりすぎ」といってもいいくらいにアスペクトモードが充実していたが、PDP-5010HDでは一般的なテレビ製品と同等程度に減っている。

4:3アスペクト比4:3の映像をアスペクト比を維持してそのまま表示する
ワイドアスペクト比4:3の映像を外周にしていくに従って伸張しパネル全域に表示する、いわゆる擬似ワイド表示モード
フルアスペクト比4:3映像の中央にレターボックス記録された16:9映像を切り出してパネル全域に表示する
ズームアスペクト比4:3映像にレターボックス記録されたアスペクト比16:9映像を切り出してパネル全域に表示するモード
シネマビスタサイズ(1.85:1)の映像を左右を若干クリップアウトして、16:9で切り出してパネル全域に表示する

 PDP-5000EXで充実していた14:9関連のアスペクトモードがカットされているが、使用頻度はそれほど高くないはずなので問題はあるまい。ビスタサイズの16:9切り出しの「シネマモード」を実装しているあたりはさすがマニア好みのパイオニアといったところか。

 “テレビ”としての機能/操作性についてもチェックしておこう。リモコン中央部の数字キーやチャンネル±、音量±ボタン、放送種別選択ボタンでテレビを操作出来るのは見ての通り。実際に活用してみるとリモコンの反応にはやや癖があることに気がつく。

 意外にもリモコンの受光範囲が狭く、結構意識して、画面右下部の受光部に向けて操作しないと反応が悪い。リモコンが画面左の方に向いていると反応しなかったりするので、これは改善が必要だ。チャンネルの切替時間は地デジ局で約2.0秒。もう少し速いとよいのだが。

番組表は一挙8チャンネルを表示可能で一覧性が抜群

 番組表は8チャンネル同時表示が可能で、表示時刻は4時間分。8チャンネル分は関東圏ならばNHK2局とメジャー民放5局もカバーできるので一覧性は優秀。放送中の番組の中から好きなジャンルのものをピックアップする場合、リモコンの[番組サーチ]ボタンを押すだけで検索できるのも便利だ。

 2画面機能も充実している。まず、2画面機能の呼び出しは、リモコンの蓋を開けてアクセスできる[2画面]ボタンを押すだけで実行が可能。2画面表示のモードは横並び表示のサイド・バイ・サイド表示と親子画面のピクチャー・イン・ピクチャー表示の2つ。[2画面]ボタンを押すたびに切り替えることが可能だ。

 2画面表示が出来る組み合わせに制約もあるが、自由度はまずまず。組み合わせが出来ないのは入力1~6同士、PCと入力1~6で、それ以外の組み合わせは基本的にはOKだ。つまり、どちらかの画面にテレビ放送が入っていれば、任意の入力が入れられると言うことになる。例えば、HDMI入力を含む入力1~6とテレビ放送、PC入力とテレビ放送の組み合わせはOKになる。もちろんダブルチューナ搭載なのでデジタル放送同士の組み合わせもOKだ。

 なお、2画面表示時の音声は主画面側しかスピーカーから出力されないが、「音質の調整」メニューの「2画面ヘッドフォン」設定を有効にすると副画面側の音声はヘッドフォンで聞こえるようになる。

 サウンド機能についても言及しておこう。スピーカーは、ウーファとツィータの2ウェイバスレフ式。2ウェイ方式は大画面テレビでは珍しくはないが、PDP-5010HDでは出力が17×2chの合計34Wと高出力だ。サイドスピーカーデザインの優位性にも助けられてステレオ感も広く、臨場感も高い。音質も良好で低音から高音までがパワフルでフラットな再生特性になっており、音楽番組の視聴にも不満ない完成度だ。

 サラウンド機能のSRSも搭載。音場のワイド感を増強するSRSの他に、低音を増強するTruBassも備えている。実際のサウンドも、原音の良さを生かす形での増強で、嫌みがなく、好印象。画面の左右端の50cm以上離れた場所から音像が聞こえてくる効果は非常におもしろい。TruBassの低音もドンシャリ系にはならずナチュラルな感じで好印象だ。特に自前のサラウンドシステムがないのであればSRS+TruBass併用で常用してもいいと思う。

 メニューは[ホームメニュー]ボタンを押して起動して十字キーでカーソル操作、十字キー中央の[決定]ボタンで選択、[戻る]ボタンで階層上がり/キャンセル操作になるというオーソドックスかつ分かりやすいもの。カーソルの動きはかなりもっさりしていてレスポンスは良くない。ただし、メニューアイテムにカーソルを持って行くと、メニュー最下段に簡単だが的確な機能説明が表示されるため、使い勝手はいい。

メイン・メニュー画面 画質の調整 音質の調整 省エネの設定 その他の設定

プリセット画調モード一覧

 画質パラメータで調整可能なのは「コントラスト」、「明るさ」、「色の濃さ」、「色あい」、「シャープネス」といった基本パラメータの他、「プロ設定」メニュー階層下に入ることで映像エンジンの動作にまつわる設定が行なえる。これらについては後述する。

 プリセット画調モードは「リビング」、「標準」、「ダイナミック」、「映画」、「スポーツ」、「ゲーム」のプリセット6モードと「AVメモリー」と記されるユーザーメモリの合計7つ。この画調モードの切り替えは、リモコン下部の蓋の内側の[画質・音質]ボタンを押して順送り式に行なう。切り替え所要時間は約1.2秒と標準的な速さ。

 プリセット画調モードにおける各画質パラメータはエディット可能だが、すべての入力系統に影響してしまうグローバルパラメータである点に注意したい(PDP-5000EXとは異なる)。ただし、「画質の調整」メニューで「初期状態に戻す」を実行すれば、いつでも工場出荷状態に戻すことができる。

 一方、AVメモリーの方は各入力系統ごとに個別に管理されるので、画調の追い込みはAVメモリーに対して行なったほうが無難だ。


USBメモリ内のJPG写真閲覧機能「ホームギャラリー」

 また、USBメモリ内の画像を表示できる「ホームギャラリー」機能も搭載。PDP-5010HDの左側面にはUSBコネクタが実装されており、ここに接続したUSBメモリ内のJPEG写真の表示や、スライドショー表示が行なえる。読み込みが遅く表示速度もあまり俊敏ではないのが気になるが、基本機能はしっかりしている。

 HDMIコントロール機能も装備。これはPDP-5010HDとパイオニアのAVアンプやBDプレーヤーとHDMI接続した場合、PDP-5010HDのリモコンだけで全システムを統合的にコントロールできる機能のこと。システム内機器を操作しようとすると自動的にPDP-5010HDに電源が投入されたり、PDP-HD5010のリモコンでシステム内のレコーダの再生制御などが行なえる。ただし、動作保証されているのはパイオニア製品に限られる。残念ながら、今回はこの機能のテストは出来なかったが、PDP-5010HDには、専用の[HDMIコントロール]ボタンを備えており、パイオニア製機器で統一しているユーザーには訴求点となるはずだ。


「その他の設定」で利用できる「ビデオパターン」は、プラズマの弱点である「焼き付き」が起こったときの解消メンテナンス機能。これはありがたい HDMIコントロール設定


■画質チェック
 ~コントラスト20,000:1が見せつける超黒表現の世界

 プラズマパネルは各画素内のプラズマ放電によって発生した紫外線を蛍光体にぶつけて発光させる、自発光画素方式のディスプレイデバイスである。この自発光式は、液晶に対してアドバンテージといわれてきたが、フルHD化における画素高精細化の折、耐久性を保ちつつ微細化することと、開口率の維持が両立できず、自発光の強みが弱みに変わってしまったという経緯がある。

 各社、技術ブレークスルーを模索したわけだが、パイオニアが、そのプラズマのフルHD化の実現のために開発した革新技術は「高純度クリスタル層」と呼ばれるものだった。

 画素セル内の表示面内側に形成させた薄膜層である高純度クリスタル層は、プラズマ放電に励起されて自らが電子を放出する特性があることから、画素セル内の放電速度を従来比の3倍にも高速化することができる。これにより、発光効率も向上し、高精細化によって各画素の開口率が低下していても必要十分な輝度が得られるようになった。また、高速画素駆動は副次的に黒表示時の予備放電の「火種」を抑制するため、暗部の沈み込みや暗色の再現性向上にも貢献した。

アドレス側に新材料の電子発生源を配置した新セル構造を採用し、予備放電を大幅に低減した

 この技術の粋を集めて開発されたのが先代PDP-5000EXだったわけだが、今回のPDP-5010HDではさらに磨きのかかった二世代目「高純度クリスタル層・フルHDプラズマ」と言うことで期待がふくらむ。

 今回の新パネルでは、同じ高純度クリスタル層ベースのパネルではあるが、電子発生源に新素材を採用したことで、予備放電の「火種」をさらに抑制することに成功している。

 この火種の抑制により黒輝度は従来の1/5に低下させることができたそうで、コントラスト比は、ネイティヴで20,000:1を達成しているとのこと。これは液晶の10倍以上の強烈な値だ。

 実際に、全画面黒表示を見てみると、本当に電源が入っているのかと疑ってしまうほど、黒が黒い。部屋に照明が入っていると電源オフ時の状態とオン時の全黒表示とではほとんど区別がつかない。暗室にしてみると、辛うじて気がつく、というほど。

 「黒が黒い」。言葉としては当たり前だが映像機器ではなかなか実現し得なかったことだ。パイオニアが今世代プラズマパネル製品に「KURO」(黒)ブランドを展開したことも頷ける。

 圧倒的なコントラスト感は、明部の輝度向上ではなく、暗部の沈み込み強化で行なったというのはすばらしいことなのだが、だからこそ気がつくこともある。それは、画面全体の輝度はやや暗めであると言う点だ。

 720pのプラズマと比較すると明らかに暗いし、同型フルハイビジョン液晶と比較しても暗い。数年前と異なり、フルHDプラズマは最大輝度スペックを公開しなくなっているのはそうした事情があるからだと推察される。

 パナソニックは「プラズマは明るすぎない、目に優しい」という宣伝しているが、蛍光灯照明下の日本では、やはり暗いという印象はある。高純度クリスタル層をもってしても画素面積が半分になってしまうフルHDパネルでは以前のような明るさは実現できていないのだ。

 とはいえ、昼間見る際には、カーテンを軽く引いてやればいいし、天井の蛍光灯も一段階暗くすれば実用上は問題はない。間接照明の環境のしっとりとした雰囲気のリビングであれば、実際、ちょうどよい明るさだ。

画素の分離感は気にならない。十分な高精細感がある

 プラズマといえば、RGBのサブピクセルの分離感を気にする人がいるが、1,920×1,080ドットのフルHD解像度であるPDP-5010HDのパネルに限界まで近づいて見てもサブピクセルは非常に密に並んでおり、面表現でも50cmも離れてしまえば粒状感は感じない。「RGBが分かれてしまっている」という、かつてのプラズマの弱点は感じさせない。

 そして、毎回、パイオニアのプラズマで感心させられるフォーカス感というかくっきり感はPDP-5010HDでも健在だ。大画面プラズマになると、画面の中央に相対する正面から見ていても映像の外周はある程度角度がついて、いわば斜めから見ていることになるのだが、プラズマでは液晶と違い、このとき画素が微妙にぼやけて見えることがある。しかし、PDP-5010HDでは、画面の中央から外周に至るまで画素の見え方が非常にくっきりとしている。

 これは、PDP-5010HDの「新ダイレクトカラーフィルタ」による効果だ。新ダイレクトカラーフィルタは、表示面側のガラス基板に直接カラーフィルタを形成する技術で、画素セルからの出力光の内部反射や外光からの影響を徹底的に抑える効果がある。

 一般的なプラズマでは、表示面を指で触った際に、ガラス面の遙か向こうに画素がある、と感じる。しかし、PDP-5010HDでは指のすぐ向こう側に画素があるように感じられるはずだ。これが新ダイレクトカラーフィルタの有無の違い。出力光が余計な経路を経ずに表示面から目に届くので画素表示がくっきりとしているのだ。例えは変かもしれないが、PDP-5010HDの“画素の見え方”は液晶パネルに近い。

 発色もすばらしい。PDP-5000EXよりも純色のパワーバランスは洗練された印象がある。PDP-5000EXで感じられた、あの伸びのある緑と深みのある青は、PDP-5010HDでも変わらない。そしてなによりこの青と緑に負けないほどのパワー感のある赤がすばらしい。プラズマ特有の朱色感がなく、鋭い濃厚な赤の表現は、これまでプラズマで見たことがない。

 色深度の深さもすごい。カラーグラデーションにはほとんど疑似輪郭が見あたらず、その表現は非常に正確だ。二色混合グラデーションでも、見え方に不自然さは全くない。

 階調表現もプラズマとしては最高レベルだと思う。黒から白へのグラデーションだけでなく、黒からRGB単色へのグラデーションを表示させたときにもしっかりとしたリニアリティが実現できている。黒からのカラースケール表示でも、ちゃんと漆黒の黒から立ち上がっていて、それでいて、かなりの暗い階調でも、RGBそれぞれの色味が感じられるのは感動的。時間積分式の階調表現を採用しているプラズマではあるが、暗部階調に不安なところがないのだ。暗色のセーターの陰影、黒いスーツのしわの凹凸、黒い車に写った情景など……プラズマには不得意とされる映像を見ても、暗色部にプラズマ特有のざわつきが見られない。

プロ設定」メニュー

 人肌の質感もいい。黄色っぽい感じもなく非常に自然。色深度の深さも手伝って、肌質の透き通った感じも、かなりリアルな質感を伴って見える。階調能力も高いので肌の肌理もしっかりと見えるし、髪の毛の一本一本の陰影も高い解像力を持って見える。

 PDP-5010HDには「画質の調整」メニューの「プロ設定」階層下に、映像エンジンの動作設定項目があり、ここでは項目名だけではわかりにくい設定項目についていじると画質にどういう影響が出るのかも検証してみた。なお、「プロ設定」階層下には「色温度」や「ガンマ」のような一般的なパラメータも存在するが、それらの解説は省略する。


【各種高画質化機能のインプレッション】
 
●ピュアシネマ
 「ピュアシネマ」はいわゆるフレームレート変換機能に相当する。具体的には映画やアニメなどの毎秒24コマ(24fps)の映像をどう表示するかの設定になる。PDP-5010HDではこのピュアシネマ機能において「しない/標準/スムース/アドバンス」の4設定を持つ。

 「しない」はOFF、「標準」は通常の3-2プルダウン処理して60fps化して表示するもの。「アドバンス」は24fps映像を3-2プルダウン処理せず1コマを3回表示して結果的に72fps表示するパイオニア製プラズマ特有の表示モードになる。

 この機能の効果の違いは横にパンする映像で確かめるとわかりやすい。「標準」はスクロールスピードが一定でないカクカクという動きとなる。「アドバンス」はカクカクこそなくならないが、そのスクロールスピードが一定化される効果が得られていた。「標準」が「カクカックカクカック」という不安定なリズムなのに対して「アドバンス」では「カクカクカクカク」という一定のリズムになるというイメージだ。

 そしてPDP-5010HDでは新機能として「スムース」という設定が追加され、これがPDP-5000EXにはなかったウリの機能となっている。

 これは、目的こそ違うが、液晶の倍速駆動に使われている技術と同種のもので、映像フレームと映像フレームの間の足りないフレームを算術合成して作り出すもの。

 効果は非常にわかりやすい。「標準」、「アドバンス」では消しきれなかったカクカクが嘘のように消え去る。ただし、スムース設定は諸刃の剣のようで、実際に試すと「スターウォーズ・エピソード2」(DVD)のチャプター19(00:44:15~)では、スムースは効果的に効いてくれたが、「デジャヴ」(BD)のチャプター14(1:43:40~)では画面の一部が強くぶれるなどの弊害を確認した。

 常用するならば72fpsモードの「アドバンス」設定が無難だろう。

 
●インテリジェントシステム

 映像フレームをリアルタイム解析してそのフレームに最適な輝度、コントラスト、シャープネスまでを制御する仕組み。「する」「しない」の二択設定。

 実際に活用してみたが、あまり、嫌らしく効いてくるものではなく、特に違和感は感じられなかった。常用しても問題はないと思われる。

 
●DREピクチャー

 映像の平均輝度からリアルタイムに最適な階調表現を再構成して表示する機能で「しない/強い、中、弱い」の設定が選べる。

 実際に活用してみると、階調特性の変調はそれほどアグレッシブではなく鼻につくいやらしさはない。

 無理に活用する必要性は感じないが、どうしても活用したいというのであれば、照明下で視聴する場合は「中」以上、暗室で見るならば「弱い」か「しない」あたりでいいだろう。

 
●黒伸張

 暗部を意図的に沈み込ませてコントラストを稼ぐ。「する/しない」の設定が選べる。PDP-5010HDはネイティヴコントラストが十分ハイコントラストなので使う必要性を感じない。「しない」設定でいいだろう。

 
●ACL(Automatic Contrast Limitter)

 映像の平均輝度からその映像に最適なコントラストを割り出して動的にコントラストを調整する機能。「する/しない」の設定が選べる。

 液晶プロジェクタではおなじみのダイナミックコントラスト機能に相当するものだが、PDP-5010HDでは活用の必要性を感じない。暗いシーンを若干明るく描いてくれたりもするので、照明下で視聴する際などでは、若干映像が見やすくなることもある。

 
●エンハンサーモード

 映像をリアルタイム解析して、ディテール描写部分を選択式にシャープネス強調する機能。「1/2/3」の3段階が選べ、「2」が基準で1がシャープネス強調、3がソフト化の設定に対応していてややこしい。

 「1」設定は埋もれている色ディテールを浮き立たせてくれる。「3」設定は逆にいろディテールを強くぼかす。あまり必要性を感じないので「2」設定でいいだろう。

 
●CTI(Color Transient Improvement)

 色の滲みだしを低減し色境界を鮮明にするフィルタ機能。「する/しない」の設定が選択できる。

 コンポジットビデオ入力、S2ビデオ入力にはいいが、デジタルソースにはディテールが甘くなって逆効果。通常は「しない」でOK。

 
●色域

 色再現方針を決定する。モード「1」と「2」が選択でき、「1」は記憶色再現志向、「2」はナチュラル志向になる。

 「1」がデフォルト設定で、鮮やかな色合いになるが、人肌などは「1」だと赤みが強すぎ、「2」のほうが自然に見える実感もある。

 これは好みによって設定したい。

 
●3DNR(3D Digital Noise Reduction)

 フレーム相関適応型ノイズリダクション。複数フレームを解析してノイズと思われる箇所に平滑化フィルタを適用する。「しない/強い/中/弱い」の設定が可能。

 地上波アナログ放送や古めのビデオソースの画面で見えるざわざわとしたノイズは、これを適用することで、映像が落ち着いて見やすくできた。DVD/BD/デジタル放送などのデジタルコンテンツに適用するとディテールが甘くなり逆効果なようだ。

 映像ソースによっては「弱い」や「中」設定を適用するといい。

 
●フィールドNR

 色の滲みだしを低減し色境界を鮮明にするフィルタ機能。「する/しない」の設定が選択できる。

 コンポジットビデオ入力、S2ビデオ入力にはいいが、デジタルソースにはディテールが甘くなって逆効果。通常は「しない」でOK。

 
●ブロックNR

 低ビットレートMPEG映像で目立ちやすい、矩形状のモザイクのようなエリアシングが発生するノイズ(ブロックノイズ)を低減する。「する/しない」の二択式の設定が行なえる。

 「する」にしても効き目はかなり弱め。ディテールが失われることはほとんどないので「する」で常用しても問題ない。

 
●モスキートNR

 低ビットレートMPEG映像で目立ちやすい、輪郭や境界付近で見える湯気のような「モスキートノイズ」を低減する機能。「する/しない」の二択式の設定が行なえる。これも「する」設定にしても効き目はかなり弱いため、常用しても問題ない。

 

【プリセットの画調モード(ガンマモード)】
 1,920×1,080ドットのJPEG画像をPLAYSTATION 3からHDMI出力して表示した。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用。レンズはSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC。撮影後、表示画像の部分を800×450ドットにリサイズした。

 
●リビング

 一般的なプリセット画調モードと一風変わっているのがこの「リビング」モードだ。

 このモードでは、映像パターンからコンテンツ種別を自動判別して画調モードを選択。さらに正面右下部の照度センサーがその時点での視聴環境を自動認識して、輝度、階調、コントラストを自動調整する「オートマチック画調調整モード」だ。

 部屋の明るさに応じて輝度を変える省電力機能は他社製品でも存在するが、映像種別まで自動判別して画調を自動調整するという試みは新しい。実際に使ってみると、結構賢い。部屋が明るいと徐々に輝度をあげてくれるし、その移り変わりも自然だ。

 普段のテレビ放送視聴は「リビング」モード常用で問題ない。

 
●標準

 モード名から想像できるように、クセのない自然な色調で、階調も作為的なところが感じられない、一言で言うならば均整のとれた画調。色温度は「中」設定となっており、白には赤みがなく純白に近い。リビングモードの動作に不安を感じたときは、これを常用すればいい。

 
●ダイナミック

 中明部以上をやや明るめに持ち上げてはいるが、明部は飛ばさず、暗部の過度な沈み込ませも行なわない。なので、モード名の印象とは裏腹に、意外に画作りはしっかりしている。ただし彩度は強く使い勝手はあまりよいとはいえない。無理して使う必要はない。

 
●映画

 色温度がグッと下がり白が赤みを帯びる。階調は、暗部を若干持ち上げて、暗部描写をしっかり描き出そうという意志が感じられる。最明部までの階調のリニアリティはうまく調整されている。標準よりも彩度が抑えめになり、人肌にも過度な赤みが消え自然な感じになる。

 やや気になるのはシャープネスが弱めに設定され、ディテールがボカされてふわーとした表示になりがちな点。暗めな映画や人物主体の映画などにはマッチしそうだが、常用したいとモードとは思えなかった。

 
●スポーツ

 「ダイナミック」と「標準」の中間的な画調。色温度は「標準」よりは高めで、白はやや青め。中明部の持ち上げ方は「ダイナミック」よりはだいぶ優しいが、彩度は「標準」よりは強い。抑えた「ダイナミック」という感じで、あえて使う必要性を感じない。

 
●ゲーム

 色調的には「スポーツ」に酷似しているが、階調特性は「映画」に近い。つまり、白が青めで、彩度も強調気味だが、暗部の階調が持ち上げ気味、ということ。

 このモードを選択したときのみ、「その他の設定」メニューにて、「ゲームモード」における表示傾向を特別に設定できる(詳細は後述)。これはゲームプレイ時専用画調モードととらえて問題はない。

 

【映像ソースごとのインプレッション】

●Sビデオ(NEC PK-AX20、Sビデオ接続)

 今なお重要なSD映像の表示品質だが、PDP-5010HDはこの点においてかなり優秀であった。角度の浅い斜め線もぼやけず、それでいてジャギーもない。「解像度変換によって拡大されて表示されている」感はほとんどなく、SD映像の固定画素系への表示としては最高品質に近い。

 インターレースのプログレッシブ化も良好で、横スクロール時のコーミングも皆無。ピュアシネマの「アドバンス」も良好に効く。アニメなどではピュアシネマ「スムース」にすると驚くほど動きも美しくなる。


●DVDビデオ(デノンDVD-2910、HDMI接続)

 SF映画「スターウォーズ・エピソード2」を視聴した。

 暗部階調表現がすばらしく、主人公アナキンの衣装の茶色いローブのシワの陰影に、ちゃんと色味を残した暗色表現が出来ているのに感動した。時間積分型の色表現のプラズマではあるが、この高純度クリスタル層による超高速駆動はアナログ感が感じられるほど階調表現がすばらしい。PDP-5010HDの階調表現を見る限り、液晶のアナログ表現に見劣りする部分はなかった。

 画調モードは色調が派手すぎず地味すぎず、ベストバランスな「標準」がベストだと感じる。

 ノイズリダクション関係の効きもデフォルト設定でベストバランスな感じで、色ディテールを埋もらせない程度のシャープネスを維持しつつ、それでいてGOP切り替わり感はちゃんと抑えている、という感じの絶妙なチューニングはお見事。1080i接続時、PDP-5000EXでまれに出ていたコーミングはPDP-5010HDでは解消されていた。


●ハイビジョン映像(BD=PLAYSTATION3/HDMI接続)

 ミュージカル映画「ドリームガールズ」、サスペンス映画「デジャヴ」を視聴した。

 何より驚かされたのがコントラスト感。ナイトクラブなどのシーンが主体で、しかも主に黒人スターが活躍するこの「ドリームガールズ」で、暗い背景に立つ褐色の肌の質感が立体的に見えたのには驚嘆させられた。ハイコントラスト性能とハイダイナミックレンジ表現のなせるわざといったところか。

 今は液晶も、動画性能の弱点を克服しつつあるので比較する必要はないが、PDP-5010HDの画面の描画応答性能もかなりいい。「デジャヴ」ではカメラがパンするシーンが多いが、フルHD解像度の解像感が維持されたままフレームが動く様は、DVD画質とは一線を画した映像体験として目に映る。昔のプラズマのように画面スクロールで疑似輪郭が見えるようなことはPDP-5010HDでは起こらない。

 階調能力の高さや色ディテール表現能力の優秀性はフルHD映像でも見た目に効果として現れる。ひげの生え際や唇のシワのリアリティは今そこに俳優がいるかのような錯覚すら覚えるほど。


●PC(AMD RADEON HD2900XT、HDMI入力-デジタルRGB接続、D-Sub 15ピン入力-アナログRGB接続)
入力解像度 DVI-D(HDMI) D-Sub 15ピン
(アナログRGB)
640×480ドット ×
720×480ドット ○*1
720×576ドット ○*1
848×480ドット ○*1
800×600ドット
1,024×768ドット
1,152×864ドット ○*1
1,280×720ドット
1,280×768ドット ○*1 ○*1
1,360×768ドット ○*1
1,280×960ドット ○*1 ○*1
1,280×1,024ドット
1,920×1,080ドット △*2

 PCの接続はD-Sub 15ピン入力端子によるアナログRGB接続のほか、市販のDVI-HDMI変換アダプタなどを活用したデジタルRGB接続が可能となっている。

 HDMI接続では「その他の設定」メニュー階層下の「HDMI設定」にて「信号種別」を「ビデオ」から「PC」へ変更することでアンダースキャンモードに切り替わり、PC画面の全域を表示してくれるようになる。また、ノイズリダクション関係の設定もすべて解除してくれるため、PC画面が不用意に滲んだりする問題を回避できる。

 なお、今回のデモ機では、評価機であるためか、アンダースキャンモードすると微妙に画面が小さく映ってしまい、ドットバイドット表示は行なえなかった(GeForce、RADEONの両方で最新ドライバにて確認)。


※パネル画素に一対一に対応した表示……、正常表示……、表示はされるが一部に違和感あり……、表示不可能……×
*1他の解像度に誤認されているが表示は行える、*2 2画面下半分が表示されなかった

 また、PC接続の場合は「HDMI設定」の「映像」にてカラーモードをデフォルトの「自動」から「カラー4」に設定すること。ビデオではRGBの表現幅を16~235までと見なして表示するのが一般的だが、PCでは0~255の全域を使って表示するため。自動ではうまく認識できない場合もあるため、明示的に「カラー4」(0~255設定)にすべき。

「HDMI設定」メニュー 「信号種別」で「PC」を選択するとオーバースキャンがキャンセルされる

「PC接続時は「映像」でカラーモードを「モード4」に設定する。これで各RGBを8bitフルレンジの0~255の階調表現が可能になる

 説明書によれば「D-Sub15ピン入力によるアナログRGB接続では1,920×1,080ドットのパネル解像度表示には未対応」とある。確認のために実際に試してみたが、画面半分が表示されない簡易表示となってしまっていた。PCを本格的に接続したい場合はHDMI接続を推奨する。


●ゲーム(Xbox 360、アナログRGB接続/PLAYSTATION 3、HDMI接続)

 PS3はHDMI接続で問題なくフルHD表示を確認。

 Xbox360はアナログRGB接続を行なったところ1,360×768ドットと1,280×720ドットにて正常表示を確認できた。

 プラズマで気になるのは3人称/1人称スタイルの3Dゲームで視点をフリーに移動させたときに見えることがある色割れ現象。時間積分式のカラー表現のプラズマの弱点とされているが、実際に試してみたところ若干、色調が白方向にシフトする感じもするが、ほとんど気にならない。この問題も、PDP-5010HDにおいて、ほぼ解消されたといっていいかもしれない。

 プリセット画調モードを「ゲーム」モードに選択した時に限り、「その他の設定」において「ゲームモード」の設定が行なえ、設定は「画質優先」と「操作性優先」が選択できるようになる。

 前者「画質優先」はPDP-5010HDの映像エンジンを活用して高画質化機能を有効化する設定で、後者「操作性優先」は逆にこれをすべてカットして表示遅延を低減させる設定になる。格闘ゲームや音楽アクションゲームなどをプレイする際には「操作性優先」を選択した方が無難だが、PDP-5010HDは画調モードが「ゲーム」モード設定でなくても比較的遅延が少ない。その意味ではPDP-5010HDはゲームユーザーにはお勧めだ

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■ まとめ
 ~まさにプレミアム画質。VIERAとの価格差をどう考えるか

 やや暗いということを除けば、発色、階調性能、黒表現、コントラスト、全方位に優秀な画質性能を有している。まさに現状では、フルHDプラズマ画質の理想形といっていい。もともとプラズマ画質が苦手だった人にこそ、PDP-5010HDの映像を見て欲しいと思う。

 そして、PDP-5010HDでは、チューナ付きのテレビ製品となったことで、取っつきやすくなった。実際テレビ製品としての完成度が高くなった点も評価したい。欲を言えば、2007年後期発売の製品なので「アクトビラ・ビデオ」に対応して欲しかった気もするが、それは次期モデルに期待するとしよう。

 惜しむらくは、価格が同サイズのフルHD液晶はもちろん、他社製フルHDプラズマよりも高価な点だ。性能がいい分価格が高い、というのは頭では理解できるのだが、よほどこだわりがないとなかなか手を出しにくい。例えばパナソニックの50V型フルHDプラズマの「TH-50PZ750SK」との9月上旬時点の実勢価格の価格差は約20万円。PDP-5010HDの卓越した発色、階調性能、黒表現、コントラストのためにこの価格差が出せるか……、ここがポイントになってくるわけだが、なかなか厳しい価格差だ。

 PDP-5010HDは、ここしばらくはフルHDプラズマ画質の最高峰として他製品を圧倒するであろう。同時に、一般消費者にとっての“高嶺の花”商品としても君臨しそうだ。

□パイオニアのホームページ
http://pioneer.jp/
□ニュースリリース
http://pioneer.jp/press/release594-j.html
□KUROのホームページ
http://for-emotion.jp/
□関連記事
【8月2日】パイオニア、“圧倒的な黒表現”の新プラズマ「KURO」
-50/60型フルHD。「価格競争から脱却、感動を伝える」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070802/pioneer1.htm
【8月27日】パイオニア、新プラズマ「KURO」の体験イベント開催
-全国17カ所で展開。「感動体験」をシステムで訴求
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070827/pioneer.htm

(2007年9月13日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1000を超える。

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AV Watch編集部

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