今年の春、世界初の42V型フルHDプラズマテレビ「TH-42PZ700」の製品投入を行なったばかりのパナソニックが、早くも2世代目の42V型フルHDモデルを投入してきた。型番は春モデルの700から750になっただけだが、プラズマパネルも一新され、実質的にはフルモデルチェンジに近い画質性能向上が図られている。 価格は実勢販売価格で40万円前後。同サイズのフルHD液晶よりもやや高いとはいえ、十分競合できるレベル。前回の「KURO(PDP-5010HD)」に引き続き、熟成を始めたフルHDプラズマの実力を検証した。
■ 設置性チェック ~静粛性に優れ、映り込みにも配慮。消費電力に要注意
PZ750シリーズはいずれもサイドスピーカーモデルとなり、今回評価した42V型以外に50V型、58V型、65V型がラインナップされている。サイズや消費電力など以外の基本的な機能や画質傾向はシリーズで統一されている。 本体の外形寸法は1,077×113~137×689mm。サイドスピーカーモデルながら横幅は同型のアンダースピーカーモデルと比較しても5~6cmしか変わらず、サイドスピーカー型だからといって設置性が劣っているわけではない。 額縁は黒の光沢処理が施されており、インテリアとしての高級感はある。プラズマというデバイスの特性上、表示面はガラスになるのだが、PZ700系から導入された「低反射クリアパネル」技術により、液晶に近いレベルまで外光の映り込みを低減している。ただ、映り込みが皆無というわけではないので、照明の位置や窓の位置などが表示面に入り込まない場所に配慮したい。 本体重量はディスプレイ部だけで36kg。今回も成人男性2人で階段を上って2階まで運んで設置できた。なお、背面には運搬用の際にしっかりと持つためのくぼみが設けられている。 スタンドが別売り設定なのは、PZ700シリーズと同じ。これは設置環境にあわせたスタンドや金具をユーザーが自由に選択できるようにするための配慮からだ。今回の評価機には、据え置きスタンドとして「TY-ST42D1-JG/JM」(24,150円)がセットされていた。なお、これは前モデルのTH-42PZ700と同じスタンドだ。 スピーカー内蔵の“ラックシアター”「SC-HTR200-K(実売9万円前後)」も用意。壁掛け設置用の取り付け金具も、TH-42PZ700シリーズと兼用で、取り付け角度固定式の「TY-WK42PV3U」(44,100円)、取り付け角度可変式の「TY-WK42RP3U」(44,100円)の2種類が用意されている。
消費電力は前モデルと同じ約498W。42V型/フルHD液晶のシャープのAQUOS「LC-42GX4W」は約235Wなので、TH-42PZ750SKの半分以下。同サイズで比較してしまうとやはりプラズマの方が消費電力は高い。「目には優しい」が、「電気代には厳しい」のがプラズマで、このあたりはユーザーになろうとしている人は理解が必要だ。 動作音は非常に静かだ。先週評価したパイオニアのPDP-5010HDと比較しても、「ジー」というプラズマ特有の動作音が明らかに低減されている。背面には4基の冷却ファンが常時回転しているが、この回転ノイズはほとんど聞こえない。静粛性に関しては液晶と同等といっていいと思う。
■ 接続性チェック ~ディスプレイ製品顔負けの高い接続性。SDカードスロットも装備
入出力端子も充実している。HDMI入力は背面に2系統、前面に1系統の合計3系統を装備。ビデオカメラだけでなく、最近は次世代ゲーム機が軒並みHDMIに対応してきている。「前面HDMI」はゲームユーザーにとっても、かなり歓迎される要素だ。 コンポーネントビデオ系はD4入力端子を2系統装備。アナログビデオ入力端子は背面に、Sビデオ/コンポジットビデオ排他仕様(どちらか一方のみ有効)入力が2系統、コンポジットビデオ入力専用端子が1系統、さらに前面にもSビデオ/コンポジットビデオ排他仕様入力が1系統ある。
PC入力はD-Sub 15ピン端子によるアナログRGB入力にのみ対応し、DVI端子は実装していない。ただし、HDMI-DVI変換アダプタを用いて、HDMI経由でPCをデジタルRGB接続させることは可能だ。 HDMIを除くすべての入力系統に対応して、アナログステレオ音声入力端子(RCA)も配されている。PC入力については、対応する音声入力はコンポジットビデオ入力用端子と兼用仕様になっている。このあたりは利用頻度、コスト、接続端子のレイアウトスペースについて妥協した結果だろうが、それほど不便さはない。 モニタ出力端子としてはS映像、コンポジット、ステレオアナログ音声、光デジタル音声が実装されており、TH-42PZ750SKのチューナ等からの受像映像がバイパス出力される。この他、i.LINK端子 2系統や、アクトビラ接続用のネットワーク端子などが実装されている。
前面パネルにはイヤホン端子が2系統あり、左側がメインの端子で、右側は2画面表示時の右画面側の音声出力に対応している。 VIERAシリーズの定番機能といえるSDカードスロットは正面右側に実装。SDカードに記録した約1,000万画素までのデジカメJPEG写真、SD-VIDEO1.2のMPEG-1/2動画、AVCHDのH.264動画の再生に対応している。スロットはSDHC規格対応なので4GB超の大容量SDカードに対応しているのも心強い。静止画再生に対応した機種は最近は多くなってきているが、SD-VIDEOやAVCHDなどの動画再生にまで対応しているのはユニークだ。このあたりはDIGAやSDカードムービーカメラを有する総合AVメーカーのパナソニックらしい機能設計だといえよう。 TH-42PZ750SKは紛れもないテレビ製品だが、ディスプレイモニタ的な活用にも十分耐えうる接続性を身につけている。コンポーネントビデオとDVI入力はないが、コンポーネントはD4で、DVIはHDMIで代用できるため、ユーザーにとって不都合はほとんどない。
■ 操作性チェック ~アクトビラ・ビデオ・フルにも対応。テレビ機能の最先端を行く 電源オンから地上波デジタル放送の映像が表示されるまでの所要時間は約6.5秒。最近のテレビ製品としてっは標準的な起動速度だが、TH-42PZ700よりも若干だが改善されているようだ。チャンネル切り替え所要時間は地上波デジタルで約2.0秒。こちらも早いとはいえないが標準的な速度だといえる。
リモコンは、TH-42PZ700とほぼ同じデザインのものをそのまま継承。オーソドックスな縦長のバータイプのデザインだが、左上部にアクセントデザイン的に、アクトビラボタン、SDカードビュアボタン、ヘルプボタンなどをせり出してレイアウトしているのが特徴的。 放送種別切り替え用の[アナログ][デジタル][BS][CS]ボタンは、押すとLED発光するが、それ以外のボタンは発光しない。TH-42PZ700の時も指摘したが、プラズマテレビのリモコンには、使用頻度の高いボタンに発光機能を盛り込むといった工夫が欲しいと思う。「明るすぎないプラズマ」だからこそ、部屋を暗くして視聴することが多くなるはずだ。 リモコンの下部には開閉式の扉があり、ここには追加の機能操作系ボタンがレイアウトされている。ハイビジョンレコーダの「DIGA」をコントロールするための再生制御ボタンや2画面機能の制御ボタン、字幕切り替え、主音声/副音声切り替えボタンなどがここに実装されている。 2画面機能はここの[2画面]ボタンを押すだけで、その瞬間に表示が2分割される。2画面機能は最近の機種としては珍しく、映像を横に並べて表示するサイド・バイ・サイド(SBS)表示モードのみに対応。親子画面表示のピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)表示モードには対応していない。SBS表示のみであっても、リモコン最上部の[画面モード]ボタンを押すと左右に並べた2画面の大きさのバランスを変化させることは可能だ。 TH-42PZ750SKはデジタルダブルチューナ仕様(地上アナログは1基のみ)のため、2画面表示時、左右画面に任意のデジタル放送を表示できる。左右の画面に対応した音声を2基のヘッドホン端子から聴くこともできるので、2画面機能の実用性は高い。 ただし、いくつかの制限もある。HDMI入力、i.LINK入力、SDカード写真再生画面、データ放送の画面は左画面への表示に限定され、PC入力、SDカード動画再生、アクトビラ、電子説明書は2画面に組み込むことができない。ちなみにHDMIとデジタル放送の2画面は許容されるので、PCをHDMI接続すれば、PCを使いながらのデジタル放送視聴は行なえる。制限はあるが、実用上それほど大きな制約とは感じなかった。 入力切り替えは[入力切換]ボタンで順送り式に行なう方式。基本は順送り式なのだが、[入力切換]ボタンを押した瞬間に画面右上に切り替え可能な入力系統名と数字がペアでリスト表示されるので、リモコン上の数字キーを押せばダイレクトに希望する入力へ切り換えることもできる。これはなかなかうまい操作設計だと思う。切り換え所要時間はHDMI→地デジ放送で約2.0秒と速度的には標準的といったところ。 アスペクト比切り換えも[画面モード]ボタンを押して順送り式に行なう。内蔵されているアスペクトは以下の5モード。これはTH-42PZ700と同じラインナップだ。切り換え所要時間は約0.6秒でかなり早い。
画調パラメータの調整は「画質の調整」メニューから行なう。プリセット画調モードの切り換えも、画調パラメータの一環として取り扱われており、ここで切り換える。 なお、画調モードの切り換えは相変わらずリモコンから一発操作切り替えできず、「画質の調整」メニューを開いてから行なわなければならない。TH-42PZ750SKはディスプレイ製品としての能力が高いだけに、ぜひとも、次期製品には画調モードの切り換えボタンは欲しいと思う。 調整可能な画調パラメータは「ピクチャー(コントラスト)」「黒レベル(ブライトネス)」「色の濃さ」「色あい」「シャープネス」といった基本的なパラメータのほか、「色温度」の調整ができる。色温度はK(ケルビン)指定ではなく「低-中-高」の3段階切り換え式。計測したわけではないが見た目では、5,000K、6,500K、8,000K程度だ。
この他、VIERAの映像エンジンの機能制御に関わる高度な画調調整項目の設定も行なえる。記憶色に近づける「ビビッド」モードの設定、部屋の明るさに動的に適応させて輝度調整を行なう「明るさオート」のオン/オフ設定は、画調パラメータの1つとして取り扱われていた。
「シネマ」「ユーザー」の2つの画調モードに限り、上級ユーザー向けの高度な画質調整が可能な「テクニカル」メニューが利用できる。「テクニカル」階層下には、画面の輝度を設定する「輝度設定」、縦線の輪郭強調度合いを設定する「輪郭強調」、ガンマカーブの変更を行なう「ガンマ補正」、中明部よりも暗い階調の沈み込ませ加減を設定する「黒伸張」、赤(R)と青(B)の発色におけるオフセットとゲインの設定を行なう「R・Bドライブ/R・Bカットオフ」、最明部の階調補正を行なう「明るさ補正」といった調整項目が並ぶ。プリセット画調モードがそれなりに完成度が高いので、一般ユーザーがここにお世話になる機会は少ないはずだ。 基本的には、「スタンダード」「シネマ」「ダイナミック」「リビング」という4つのプリセット画調モードを選択し、そこから各パラメータをお好みに調整していく、というスタイルになるが、プリセット画調モードは全入力系統で共有されている点には留意したい。つまりHDMI入力で「シネマ」モードを調整すると、その調整結果は、デジタル放送視聴時に選択した「シネマ」モードにも影響するということだ。 一方、ユーザー画調モードに相当する「ユーザー」モードは各入力系統ごとに個別管理されるので、他の入力系統には影響を及ぼさない。特定の接続機器専用の画調モードを作り込みたい場合には「ユーザー」モードを利用すべきだ。 TH-42PZ750SKは、サウンドも強化されているので、この点にもふれておこう。
TH-42PZ750SKのスピーカーは左右にステレオ設置されただけでなく、TH-42PZ700の2ウェイ式から3ウェイ式に強化されている。新たに高音域用のツイーターが追加。さらに、最大出力は前モデルの31Wから36Wに強化された。 それだけでなく、「ナノベースエキサイター」と呼ばれるカーボン素材の空気分子緩衝材をウーファに組み合わせたことにより、同口径ユニット比較で従来比1.4倍サイズ相当の大型ユニットと同等の出力が得られるように改善している。振動板はTH-42PZ700と同じ竹繊維材。 実際のサウンドも、3ウェイならではの高音域がうまく統合され、各ユニットのクロスオーバーもうまくバランスされているので、聴き味は非常にナチュラルだ。再生特性はフラットでクセがない。重低音はパワフルではあるが、ドンシャリ感はそれほど強くなく高音域との一体感があって心地よい。ナノベースエキサイターは、音量を上げたときにもビビらずにちゃんと狙った再生特性で出力よう活用されている感じだ。サイドスピーカーレイアウトにも広がりある音像造りに貢献している印象。 音場プログラムは「スタンダード」「スタジアム」「ミュージック」「シネマ」「ニュース」といったものが用意されており、常用は「スタンダード」で不満はないが、ニュース番組やバラエティ番組などの人間の音声主体の番組は「ニュース」が非常に聞きやすい。 最後に現時点ではVIERA PZ750シリーズのみがフル対応している「アクトビラ・ビデオ」についても少々ふれておこう。 アクトビラ・ビデオは登録不要、入会費、年会費不要で利用できるインターネットを利用したビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスだ。9月1日から開始されており、10月末までは完全無料で利用でき、11月以降も多くのコンテンツが無料配信される予定となっている。利用の仕方は簡単で、背面のEthernet端子からインターネットに接続し、あとはリモコンで[アクトビラ]ボタンを押すだけで呼び出せる。 インターネットを活用した情報配信サービスの「Tナビ」をベースに、2006年に新体制で「アクトビラ」と改称され現在に至っている。9月1日以降開始されたのはビデオサービスで、従来の文字/図版情報配信サービスは「アクトビラ・ベーシック」と名称変更している。SD映像相当の「アクトビラ・ビデオ」には6Mbps程度の回線速度が要求され、ハイビジョン相当の「アクトビラ・ビデオ・フル」には12Mbps相当の回線速度が要求される。 実際にアクトビラ・ビデオおよび同フルを再生してみたが、アクトビラ・ビデオはビデオレコーダの標準画質程度、同フルはハイビジョンではあるが若干、デジタル放送よりブロッキーな感じであった。操作そのものは非常に簡単なので、TH-42PZ750SKの設置環境でインターネットに接続できるなら、繋いで損はない。
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■画質チェック TH-42PZ750SKのパネル解像度はフルHDの1,920×1,080ドット。新たにTH-42PZ750SKではプラズマパネルが改良されており、前モデルTH-42PZ700からフルモデルチェンジに等しいくらいの画質向上を果たしている。
最大の改良点はネイティヴコントラストがPZ700の4,000:1に対し、PZ750SKでは2倍以上となる10,000:1を達成した点だろう。 前モデルでも画素セル内の放電速度を高速化させる技術により黒表示の予備放電が抑えられ、暗部表示のさらなる沈み込みを実現していたが、TH-42PZ750SKでは、この予備放電の駆動電圧の最適化を推し進め、さらに予備放電の“火種”を低減させることに成功したという。 実際に映像を見てみると、黒の沈み込みはすばらしく、液晶とは一線を画した「黒さ」を醸し出せていることがよく分かる。 逆にピーク輝度は先代からほとんど変わっていない印象なので、同型液晶と比べるとやはり暗い。つまり、コントラスト向上は暗部の沈み込み強化によって実現されているということが分かる。 明るさは前回紹介したパイオニア「KURO PDP-5010HD」と同程度という印象で、部屋をやや暗くすれば不満のない明るさだ。「明るすぎない目に優しいプラズマ」とはいうが、蛍光灯照明下の日本の家屋ではもうちょっと明るさが欲しいとは思う。店頭で液晶機と並べられると辛いかもしれない。 黒の沈み込みは確かに一般的な液晶より優秀だが、パイオニア「PDP-5010HD」と比べるとやや明るく感じる。PDP-5010HDのコントラスト20,000:1と、TH-42PZ750SKの10,000:1の差は感じられるか?、と問われれば、「ある」と答えられる。とはいえ、TH-42PZ750SKの黒の沈み込みと暗部の表現力に不満は無い。様々な薄型テレビを見てきたが、ここ2年くらいのプラズマ画質の成熟に確かな手応えを感じる。 階調表現は、暗部から明部にかけてのグラデーション表現のアナログ感はお見事としかいいようがない。時間積分式の明滅頻度による階調表現が行なわれているはずのプラズマ画素ではあるが、PDP-5010HD、そしてTH-42PZ750SKでは、あのプラズマ特有のざわつき感がほとんど分からないレベルに到達している。暗色の発色も不満のないレベルで、ちゃんと暗い色の中に色味が感じられている。プラズマの暗部表現は、昨年から今年モデルにかけての製品で一気にブレークスルーを果たし、液晶のそれに追いついてきた。 発色は非常に鮮烈。鋭い伸びのある純色表現が特徴的なプラズマVIERAのお家芸はTH-42PZ750SKでも健在。なお、色域はハイビジョン色域規格(ITU-R BT.709)のカバー率100%を達しているという。 赤、緑、青ともにバランスのよいチューニングで明色でも暗色でも色味に素直さがある。プラズマが苦手とする赤も朱色っぽさは皆無ではないが、それほど目立たない。色のチューニングは全体的にブラウン管発色を意識したイメージになっていると感じる。 色深度は先週のPDP-5010HDに優るとも劣らぬ深さ。2色混合カラーグラデーションや単色カラーグラデーションともに疑似輪郭がほとんどなく、非常になめらか。目を近づけてみればたしかにざわつき感はあるのだが、数十センチも顔を離せば色の出方は液晶と変わらない。色深度が深いので、自ずと色ディテール表現も優秀。人肌の肌理表現から、石畳やアスファルトの微細凹凸の陰影なども克明に描き出してくれていた。 人肌表現も黄緑感が少なく自然でリアルに見える。光が染み入ってから再び出てくるような、肌のハイライト付近の輝きは、肌特有の透き通るような質感がうまく再現されている。人肌の暗部も、小汚いざわついた茶色ではなく、なだらかな肌色の階調が表現できており、全体として顔の立体感が伝わってくる。 先週のPDP-5010HDといい、プラズマの階調表現、色表現のリニア感、アナログ感は液晶にかなり近いレベルまで到達しているといってよさそうだ。
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