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第85回:世界初42型フルHDプラズマの実力は?
~ 液晶と真っ向勝負「松下電器 TH-42PZ700」 ~


 液晶が「フルHD」を前面に押し出してシェアを拡大していく中で、高精細化に不利なデバイスの原理上、守勢に回っていたプラズマだが、2005年以降、徐々にフルHD解像度の製品が出てくるようになった。

 しかし、画素サイズを小さくしにくいという問題から、多くのメーカーが50V型以上の大型サイズの製品投入に留まっていた。そんな中、パナソニックは、フルHDプラズマとしては最小画面サイズの42V型を投入してきた。それが「TH-42PZ700/SK」だ。

 注目度が高く売れ筋な37~45V型の画面サイズのフルHD薄型テレビというジャンルでも、プラズマという選択肢が登場したわけだ。


■ 設置性チェック
 ~世界初の42V型フルHDプラズマ。消費電力は約500W

 TH-42PZ700シリーズは、スピーカーの取り付け位置によって2製品をラインナップしている。画面左右横にスピーカーが取り付けられたサイドスピーカータイプが「TH-42PZ700SK」、画面下側にスピーカーを配しているのがアンダースピーカータイプの「TH-42PZ700」だ。実売価格はPZ700SKが43万円前後、PZ700が41万円前後となっている。

 今回評価したのはサイドスピーカー型だが、スピーカー形状と、外形寸法の違い以外のスペックは同一なのでアンダースピーカー型の購入を検討している読者にも参考にはなると思う。

 37V型AQUOSユーザーの目から見て、42V型のTH-42PZ700の画面は37型と比較しても一回り大きい。ただ、以前評価した50V型のTH-50PZ600ほどの迫力はないので、37V型ユーザーがより大迫力を求める際の買い換えには50V型の方がお勧めだ。


画面サイズは92×52cm(横×縦)。大きいが40cmも離れれば画面全体を視界に入れられるのでパーソナルな多目的ディスプレイとしてもギリギリ“大きすぎず”で活用できると思う

 今回評価したTH-42PZ700SKの外形寸法は1,077×111~137×689mm(幅×奥行き×高さ)。なお、アンダースピーカー型の比較しても、両端に約2.5cmずつせり出しているのみなので、コーナー置きでも設置性にはほとんど差がないと考えていい。

 本体重量は約39kg。運搬用の窪みが背面の下部の左右に設けられているが、1人では持ち上がるものの運搬は不可能であった。設置には成人男性が2人必要だと思った方がよい。

 TH-42PZ700の標準商品セットではスタンドが付属していない。これは、設置環境に合わせたスタンドや取り付け金具をユーザーが選択すべきだという考えからだ。今回の貸出機では、最も基本的なスタンドび「TY-ST42D1-JG」(24,150円)を利用した。低重心に設置するためか、このスタンド自体もかなり重い。スタンドにはスイーベル機構があり、左右±20度の首振りが可能になっている。なお、上下方向の傾き調整はない。

基本的スタンドの「TY-ST42D1-JG」(24,150円) 設置スタンドとAV機器ラックが一体化した「TY-S42PZ700S」(68,250円)もオプションとして設定されている。こちらはスイーベル機構無し

 壁掛け設置用の取り付け金具も、取り付け角度固定式の「TY-WK42PV3U」(44,100円)、取り付け角度可変式の「TY-WK42RP3U」(44,100円)の2種類が用意されている。

 背面上部には4基の冷却ファンが取り付けられており、稼働中は常時回転しているが、驚くほど静かであった。また、プラズマテレビ特有の「ジー」という動作音はかなり抑えられており、正面で視聴する限りはほとんど気にならない。この静粛性はこれまでのプラズマを知るものとしては素晴らしいと思う。ただ、発熱は大きく、長時間駆動していると部屋の中が熱く感じるほど。

 消費電力は約498W。同画面サイズ/解像度のシャープAQUOS「LC-42RX1W」が257Wであることを考えると、消費電力が約2倍大きいことになる。消費電力約500Wというと同じ松下系の10畳向けルームエアコン「CS-X287A」(定格冷房能力2.8kW)の消費電力445Wよりも大きい。



■ 接続性チェック
  ~背面2、前面1系統のHDMI。AVCHD対応のSDスロット装備

背面。HDMIに加え、RGBなども装備し、多目的モニタとしても活用できる

 VIERAは接続性の高さに定評があったが、それはTH-42PZ700にも受け継がれている。

 HDMI入力は全部で3系統。背面に2系統、前面にも1系統あるのが特徴だ。前面のHDMI端子はPLAYSTATION 3をはじめとしたゲーム機やビデオカメラなど脱着頻度の高い機器を接続するのに便利だろう。

 コンポーネントビデオ入力はD端子を2系統装備。入力解像度はD4相当まででD5には対応しない。D5(1080p)入力を行なうにはHDMI端子を利用するしかないということだ。ビデオ入力は合計で4系統。S2映像+コンポジットビデオ(排他)が、背面に2系統、前面に1系統ある。背面のビデオ入力3はコンポジットビデオ入力のみとなっている(ステレオ音声入力付き)。

 PC入力はD-Sub 15ピン端子のアナログRGB入力を1系統装備。なお、PC入力時の音声入力はビデオ3入力のステレオ音声入力端子と兼用となっている。PC入力時のサウンドを本機で出力はできるのは嬉しい。

 DVI端子はないが、市販のHDMI-DVI変換アダプタを用いることでPCとのデジタルRGB接続自体は可能だ。ただし、デジタルRGB接続したPC映像を正しく表示するにはいくつかの設定オプションを調整する必要がある(これについては後述)。

電話回線、i.LINK端子、LAN端子、アンテナ端子は背面に下向きに端子が出ている

 i.LINK端子は分かりにくいが背面に下向きに2系統が実装されている。D-VHSデッキなどのi.LINK接続のビデオ録画機器はここに接続することになる。

 光デジタル音声出力端子は、内蔵チューナのテレビ受信放送音声を外部オーディオ機器に出力するためのもの。デジタル放送のAAC音声を、自前のサラウンドサウンドシステムで楽しむ場合には利用することになる。また、HDMI入力からの音声トラックも特別な暗号化がなされていない限りはこの光デジタル音声出力にパススルーされる。例えばPS3と本機をHDMI接続するとPS3からのゲームの効果音が本機の光デジタル音声出力端子から接続される。このほか、テレビ向けネットワークサービス「アクトビラ」用のEthernetも装備する。

 前面には最近のVIERAの機能として定着しつつあるSDカードスロットも装備。SDメモリーカード、4GB超のSDHCカードの読み込みに対応し、最大1,000万画素のJPEG写真や、動画の再生が可能となっている。再生可能な動画フォーマットはSD-Video 1.2のMPEG-1/2映像のほか、ビデオカメラ用のAVCHDなど。パナソニックのハイビジョンビデオカメラ「HDC-SD1/SD3」はSDカードにAVCHD規格のハイビジョン映像が直接撮れるので、カメラから取り出してTH-42PZ700のSDカードスロットに挿すだけで再生できる。このあたりはパナソニックファミリー製品ならではの囲い込みとして強力だ。

 テレビだけでなく、多目的ディスプレイモニタとしてのポテンシャルも高い。特に前面と背面にHDMI端子、SDカードスロットを装備している点は、時代のニーズに対応した魅力的なアピールポイントになっていると思う。

SDカードスロットを装備。動画と静止画の再生に対応 SDカード内の写真閲覧モードを起動したところ 正面下部の扉を開くとそこにも接続端子群。HDMIを前面にも実装



■ 操作性チェック

リモコンは老若男女が使えるようにという配慮からか、ボタンは大きく、またその印字の文字も大きく見やすい

 操作の要となるリモコンは一見するとオーソドックスなシルバーのバータイプだが、左側にSDカード再生機能や、ネットポータル「アクトビラ」、ヘルプ[?]ボタンなどのVIERAの特徴的な機能呼び出しボタンを配したセクションがせり出した、ユニークな形状をしている。

 リモコン上の放送種別切換ボタンの[アナログ][デジタル][CS][BS]ボタンは半透明ボタンになっており、押した瞬間だけ自照式に光るようにはなっているが、主要なボタンには蓄光式や自照式の発光機能はない。ピーク輝度が低いプラズマでは部屋を暗めにして視聴するユーザーも多いと思われるので、主要なボタンにも何らかの発光機能は欲しい。ちなみに、シャープAQUOSなどでは一部のボタンを蓄光式にしている。

 リモコン下部の扉を開くことで、より高度な機能のためのボタンにアクセスできる。主音声/副音声切換の[音声切換]や[字幕]操作、2画面同時表示機能の操作ボタン群、レコーダ「DIGA」シリーズの基本再生操作群などはここにレイアウトされている。高機能な最新製品の割には操作系は最適化されてシンプルにまとめられている印象だ。

 電源オンから地上デジタル放送の画面が出てくるまでの所要時間は約8.5秒。最近のテレビ製品としては早くはないが、それでも標準的な速度だ。チャンネル切換所要時間はBSデジタル、地上デジタルともに約1.5秒。こちらも速さは平均的だ。

 モニタとして活用した際に最も使用頻度が高くなる入力切換は、リモコン最上部の[入力切換]ボタンを利用する。切換所要時間はHDMI→地上デジタルで約2.0秒、Sビデオ→BSデジタルで約1.8秒と速度的には標準的。基本的には[入力切換]ボタンを押して順送り式に行なう操作系なのだが、ボタンを押した瞬間に有効な入力系統名と数字のペアが縦に並んだメニューも出現するので、このタイミングで数字キーを押せば希望の入力に直接切り換えられる。一部の他社製品でも見られるようになってきた[入力切換]+[数字]で任意の入力に一発で切り換える操作系は、わずか2操作で合理的で切換ができるうまいやり方だと思う。

 アスペクト比切換は[画面モード]ボタンを押すことで順送り式に行う方式。こちらは数字キーによる操作には対応していない。アスペクトモードは以下の全5パターン。切換所要時間は0.3秒程度で、切り換えたほぼその瞬間に切り替わる。

セルフワイド最適なアスペクト比に自動的に切り換える
ノーマルアスペクト比4:3映像のアスペクト比を維持して表示する
ジャストアスペクト比4:3映像の外周を伸張して表示する疑似16:9モード
ズームアスペクト比4:3映像にレターボックス記録されたアスペクト比16:9映像を切り出してパネル全域に表示するモード
フルパネル全域に映像を表示する

 TH-42PZ700SKのサウンド機能についても触れておこう。

 スピーカーユニットは2.3cm径のミッドレンジと8cm径のウーファからなる2ウェイ。サイズから想像できないほどの力強いサウンドを出してくれる、新開発の竹繊維振動板を採用したスピーカーユニットの実力なのだろう。クロスオーバー特性も実にナチュラル。高音域も抜けるような鋭い出音になっておりなかなか優秀。全体的にフラットな特性のチューニングなので音楽番組もカジュアルに楽しむ分ならば文句ないレベル。

 リモコンの[サウンド]ボタンで音場を切り換えられるが標準の「スタンダード」の常用で不満はない。それ以外のモードについてはTH-50PZ600の回のインプレッションを参考にして欲しいが、ニュース番組、バラエティ番組などの人の声に注力して聞きたい場合は「ニュース」モードがお勧めだ。

 2画面機能も装備。リモコン下部の[2画面]ボタンを押せば、その瞬間に2画面表示モードへと移行する。表示モードは2画面を左右に並べたサイド・バイ・サイドにのみ対応。PinP(子画面表示)には対応していない。左右に並べた2画面の大きさ比率を変えることは可能だ。2画面表示モード中にアスペクト比切換用ボタンの[画面モード]ボタンを押すことで同一サイズ表示と大小表示を切り換えられるようになっている。

2画面同サイズ表示 2画面大小表示

 本機にはデジタルチューナーがダブル搭載されているので、BS/CSデジタルや地上デジタルの同種放送の任意の2チャンネルを並べて表示できる。例えば「地上デジタルのNHKとフジテレビ」といった組み合わせの2画面表示が可能だ。

 外部入力同士の2画面表示も許容されるが、PC画面(アナログRGB)、SDカード画面、電子マニュアル画面を2画面モードに組み入れられない。また、HDMI入力同士の2画面も不可だ。ただ、HDMI入力画面とデジタル放送の2画面表示は可能。概ね日常の仕様で要求される2画面の組み合わせはサポートされているので、かなり強力だと思う。

 さて、TH-50PZ600の時に操作系で気になった点を3点挙げていたが、これらが改善されたかもチェックした。

電子マニュアルはリモコンの[?]ボタンを押すことで一発起動できる。ページ切り替えの速度はあまり速くない

 1点目のTH-50PZ600でリモコンの受光感度があまりよくなかったという点を指摘していたがTH-42PZ700では操作していてストレスを感じないので改善されたようだ。

 2点目、メニューや電子マニュアルの応答速度については、TH-42PZ700では若干だが高速化されているようだが、まだキビキビしているとは言い難い。

 3点目、プリセット画調モードの切換が「画質の調整」メニューを開いてからしか行なえないという点は、TH-42PZ700においても改善されていない。モニタとしてのポテンシャルも高いだけに、プリセット画調モード切り替え用ボタンは是非とも欲しいところだ。

 画調パラメータの調整項目は歴代VIERAから大きな変更はない。「ピクチャー(コントラスト)」「黒レベル(ブライトネス)」「色の濃さ」「色合い」「シャープネス」といった基本パラメータのほか、「色温度」などの調整が行なえる。色温度は一般ユーザーを相手にしている商品のためK(ケルビン)指定ではなく高中低の3段階指定方式。

 VIERA特有の画質向上機能の設定も行え、記憶色に近づける「ビビッド」モードの設定や、部屋の明るさに応じた表示輝度に自動調整する「明るさオート」モードのオン/オフも画調パラメータの一環として設定できるようになっている。

 前述したように画調モードの切換も、この「画質の調整」メニューから行なうようになっており、「シネマ」「ユーザー」の2モードに限っては、上級ユーザーのための「テクニカル」メニューモードが用意されている。

 「テクニカル」メニューモードでは輝度モードの「輝度設定」、縦線の輪郭強調度合いを設定する「輪郭強調」、ガンマカーブの変更を行なう「ガンマ補正」、中明部よりも暗い階調の沈み込ませ加減を設定する「黒伸張」、赤(R)と青(B)の発色におけるオフセットとゲインの設定を行なう「R・Bドライブ/R・Bカットオフ」、最明部の階調補正を行なう「明るさ補正」といった、かなりディープな調整項目にアクセスできるようになる。

 プリセット画調モードは、PZ600型番から1つ増えた全4種類。「スタンダード」「シネマ」「ダイナミック」に加え「リビング」が追加されている(インプレッションは後述)。

 4つのプリセット画調モードは任意に調整可能で、調整結果は本体を電源オフしても維持される。メニュー中の「標準に戻す」を実行すればいつでも工場出荷状態の設定に戻すことができるので、大胆に調整を試みることができる。4つのプリセット画調モードの他、ユーザー独自の自由な画調の作り込みが行なえる「ユーザー」メモリも用意されている。4つのプリセット画調モードは全入力系統で共有され、「ユーザー」メモリのみが各入力系統専用に用意されているという管理方式になっている点には留意しておきたい。

 一般ユーザーにはシンプルで扱いやすい操作系を提供し、上級ユーザーにはとことんマニアックな調整機能までを提供する二段構えの機能設計は、テレビメーカーとしての洗練されたワザが感じられる。

メニュー画面。メニュー位置の調整はできない 「画質の調整」メニュー 「音質の調整」メニュー 「設定」メニュー 「画面の設定」メニュー
「機器を操作する」メニュー 「情報を見る」メニュー 「番組ナビ」メニューと番組ナビの画面


■画質チェック
 ~極まったフルHDプラズマ画質
  圧倒的なハイコントラストと優秀な階調再現性

 プラズマパネルの画素微細化は画素開口率低下に直結しているため、プラズマの自発光画素というメリットが逆に足枷となり、開口率低下が輝度効率低下へと進んでいく。液晶の場合は何も考えなければバックライトの輝度を上げれば済む問題が、プラズマでは画素セルの隔壁の耐久性やプラズマ蛍光体の発光効率の向上など、のしかかる技術的ハードルは多かった。これが液晶に比べてフルHDパネルの製品投入が遅れた最大の理由と言われており、この期間に液晶はフルHDテレビのシェアをぐんと伸ばしている。

 その意味では液晶画面サイズで「フルHDプラズマとしての巻き返し」を託されたTH-42PZ700の任務はVIERAとしてはもちろん、プラズマ陣営として見ても大きいといえる。

 もっとも気になる最大輝度について率直に言うと、視聴に全く不満はない。ただ、同画面サイズの液晶と並べてしまうとピーク輝度は暗いと分かる。パナソニックはTH-42PZ700の公称最大輝度を明らかにしていないが、「一般的なリアプロテレビに近い明るさ」という認識でいいと思う。ホラーやサスペンスのような、暗めのシーンが多い映像ソースを視聴する際には部屋の照明を暗めにした方が楽しめるだろう。また、輝度を重視し、なおかつフルHDプラズマという括りで製品を探しているならば、58V型以上の画面サイズがいいだろう。

画素表示の高精細感は液晶に劣るところはなし

 TH-50PZ600と比較すると画素がより微細化されているはずで、そうすれば隔壁の影、すなわち画素格子がより目立ってしまっていないかと心配されそうだが、格子感は20cmも離れれば気が付かないほど細く、単色領域もちゃんと“面”として見え、粒状感はほとんど感じない。

 公称コントラスト値は4,000:1で、TH-50PZ600と同等のコントラスト性能が実現されている。これはシーン毎に輝度を調整したダイナミック・コントラストではなくネイティブなコントラスト性能値だ。

 実際に見てみると、そのコントラスト感の鋭さには唸らされる。特に黒の沈み込みは素晴らしく、黒は液晶とは異質な、漆黒ともいうべき黒さに沈んでいる。ピーク輝度はそれほどでもないのにここまでのコントラスト感がでているのは暗部の沈み込ませ方が優秀なためだ。資料によれば、画素セル内の放電速度を高速化させたことで黒表示時の予備放電の“火種”を抑えることに成功し、これが暗部の“うすら明るさ”の低減に結びついた、とのこと。

 発色は記憶色再現志向のパナソニックらしい色遣いでブラウン管に近いイメージのチューニングとなっている。

 特に赤、青、緑の純色は非常に鮮烈度が高く、TH-42PZ700の色域の広さが感じられる。なお、資料によれば、ハイビジョン色域規格(ITU-R BT.709/sRGBと同一)のカバー率100%を達しているという。

 緑や青には深みがあり、最明部の青と緑には力強さを感じる。ピーク輝度はやや低いはずなのに、この純色の力強さは色域の広さから来るものなのだと思う。

 赤はプラズマ特有の朱色っぽさがそれほど無く、渋めの鋭い赤の表現までが行なえている。プラズマの赤表現としてはかなり優秀だと思う。

 階調表現は、液晶に近いアナログ感が感じられるほどのリニアリティが実現されている。プラズマ画素の発色(階調)は明滅頻度による時間積分式に行なわれているので、液晶に比べてプラズマは暗色の発色やなだらかなグラデーション表現が難しいと言われてきた。TH-42PZ700の映像を見る限りでは、その弱点が分からないレベルにまで押さえ込めている。今までのプラズマではディザリングノイズのチラチラした感じになってしまいがちの暗色が、しっかりと“暗い色”として発色できているのは感動的だ。これは動的ガンマ補正の演算などを従来の最大14ビット精度から、最大16ビット精度に拡張したことと、放電速度の高速化などのの相乗効果によるものと推察される。明部の階調もしっかり描き分けられており、「プラズマの階調表現精度はここまできたか」と感心させられた。

 人肌の表現も非常に自然で美しい。安価な液晶機種に見られる人肌の黄色っぽさがなく、血色が感じられる柔らかくも透き通る質感がよく表現できている。

 色域の広さと階調表現の優秀さの相乗効果で色ディテールの表現力も素晴らしく、石畳の微細凹凸や、人肌の肌理、衣服の繊維模様などが非常にリアルに見える。ハイビジョン映像はもちろん、SD解像度のDVDなどでも、解像度が上がったのではないかと錯覚するくらい情報量の多い映像を見せてくれる。この描写力は、ハイエンドフルHDプロジェクタの映像を見たときの驚きに近い感覚だ。

 VIERA特有の各画質向上機能のインプレッションも述べておこう。なお、TH-50PZ600の時から若干、調整項目が変更されているようだ。

 「ビビッド・カラー・クリエーション」は動的に輝度と色合いのバランスに適応しつつ、青や緑を意図的に記憶色再現に振るような色補正を行なう機能で、「画質の調整」の「ビビッド」にてオン/オフできるもの。南国の風景やスポーツ中継などはかなり派手目に見えて見た目に鮮烈だが、やや人工的な感じを受けたりもする。もともと技巧的な作りであるアニメやCG映画などとの組み合わせは結構しっくりするので、そうしたソースと組み合わせるのはいいかもしれない。

ビビッド・カラー・クリエイション=OFF ビビッド・カラー・クリエイション=ON
DVDビデオ「Mr.インクレディブル」
(C)2005Disney/Pixar

 「NR」はノイズリダクションの略で、画面全体がざわつくような高周波ノイズを低減させる効果を持つ。地上アナログ放送の映像に効果が大きいが、強く掛けると映像がぼやけ眠くなる。DVDなどの映像ディスクや、デジタル放送などの映像に対しては基本オフか「弱」設定でいいだろう。なお、TH-50PZ600に搭載されていた「MPEG NR」と「モスキートNR」の2つのNR機能は後述する「HDオプティマイザー」機能に統合されている。


【プリセットの画調モード(ガンマモード)】
 ソースはDVDビデオの「モンスターズ・インク」(国内盤)。撮影にはデジタルカメラ「D100」を使用した。レンズはSIGMA 18-200mm F3.5-6.3 DC。撮影後、投影画像の部分を800×450ドットにリサイズした。

(c)DISNEY ENTERPRISES,INC./PIXAR ANIMATION STUDIOS
 
●スタンダード

 色温度が「高」設定なので白が若干青みを帯びた感じになってはいるが、人肌はそれなりに暖かみはあるので不自然さはない。

 デフォルトでビビッド・カラー・クリエイションがオンになっているので青や緑はかなり鮮烈だ。デジタル放送を見る場合にはそれほど違和感はないかも知れないが、映像ソフトを見る場合にはやや技巧的な印象を受ける。

 階調表現はリニアで素直なチューニングになっており、グラデーション表現も美しい。ピーク輝度は他画調モードと比較するとやや暗い印象。

 スタンダードというモード名の割には、ちょっと尖った画調であまり汎用性が高いと思えない。

 
●シネマ

 色温度を「低」設定としことで白がやや赤っぽくなる。人肌も赤みが柔らかくなり、皮膚の質感のリアリティが増す。

 階調表現は暗部を若干持ち上げた感じになり、暗部表現の情報量が増える。ただし、コントラスト感を重視しているためか最暗部はやや過度に沈み込ませている傾向を感じる。

 モード名から連想されるイメージとは裏腹に、ピーク輝度はスタンダードよりも高く、コントラスト感も高いのが印象的。ビビッド・カラー・クリエイションはオフになるので全体的な発色は落ち着いた感じになり、スタンダードよりも汎用性の高さを感じる。

 
●ダイナミック

 色温度が「高」設定で、ビビッド・カラー・クリエイションもオンとなっていることから、見た目的には「スタンダード」モードの高輝度版といった風情のチューニングになっている。

 発色は原色が派手で、青や緑だけでなく、人肌も鮮烈になる。

 階調表現は、中明部以上に輝度パワーを割り当てている感じで、映像の見た目の明るさは全モード中ナンバーワンになる。最暗部はやや死に気味となっているが、その分コントラスト感は高い。実用度は低いモードだとは思うが、昼間遮光できない時など、明るい部屋で視聴する場合などに利用したい。

 
●リビング

 色温度を「中」として、ビビッド・カラー・クリエイションをオフ設定にしており、「スタンダード」よりも、“より標準的”という手応えを感じる画調モード。

 発色には過度な派手さもなく、人肌もナチュラル。階調表現も実にリニアで、偏った調整意図を感じさせない理性的なバランスのよいチューニングになっている。輝度も必要十分でコントラスト感も高い。

 全4モード中最も汎用性が高いと感じさせてくれた。迷ったらこのモードでいいだろう。

 

【映像ソースごとのインプレッション】

●Sビデオ(NEC PK-AX20、Sビデオ接続)

 720×480ドットのSD映像を1,920×1,080ドットパネルに拡大表示するので相当な拡大表示になるわけだが、表示映像の品質はかなり高い。斜め線の表現もスムーズで、エッジの描写もしっかりしており、インターレースの映像の横スクロールなどにおいても、コーミングもなし。総じて、固定画素系の表示品質としてはかなり高いといえる。


●DVDビデオ(デノンDVD-2910、HDMI接続)

 ホラー映画「SAW3」を視聴した。本文でも触れたように色ディテールの描写力に優れているので見た目の解像感が高く、DVDの映像としてはかなり品質が高い。

 シャープネスの調整も絶妙でGOPが切り替わる瞬間のポッピングもうまく見えにくくできている。

 お勧めの画調モードは「リビング」。「シネマ」でもいいが、「リビング」の方が、人肌の自然な感じやホワイトバランスや原色発色の素直さに優れているように感じる。


●ハイビジョン映像(BD=PLAYSTATION3/HDMI接続)

 「イルマーレ」(1080p)を視聴した。映像が動いた際の動画解像度に優れるというのが売り文句となっているVIERA PZ700シリーズだが、これはDVD映像を見ている限りだと分かりにくかった。しかし、BDのようなHD映像を見た場合だと、その実力を体感できる。

 画面全体が上下、あるいは左右にパンしたときに、その映像に描かれている解像感が維持された状態で画面が動くのだ。DVDだと、SD解像度の映像に落とし込まれているため、静止状態とパンしている状態とのディテールや解像感の違いが分かりにくいが、HD映像ではその違いをちゃんと知覚できる。

 森の映像がゆっくりとパンするシーンは自らが首を回して景色を見ているような臨場感がある。もちろん、従来のプラズマと違って、色ズレもほとんど分からない。


●PC(NVIDIA GeForce7900GTX/HDMI接続、Windows Vista)
入力解像度 DVI-D(HDMI)
640×480ドット ○*1
720×480ドット ○*1
720×576ドット ○*1
848×480ドット ○*1
800×600ドット ○*1
1,024×768ドット ○*2
1,152×864ドット ○*2
1,280×720ドット ○*2
1,280×768ドット ○*2
1,360×768ドット
1,280×960ドット ○*2
1,280×1,024ドット ○*2
1,920×1,080ドット

 PCとの接続テストはせっかくなのでHDMI-DVI変換アダプタを用いてHDMI経由で接続してみた。

 結論から言えばPCモニタと変わらない感覚で接続することが出来たが、3点、注意すべき点があった事を報告しておく。

 1つは、デフォルトでは表示がオーバースキャンされ、PC画面の最外周がスキャンアウトされて表示されないという点。これは「画面の設定」の「HD表示領域」をデフォルトの「標準」設定から「フルサイズ」設定にすることで回避することができる。なお、PC以外の映像ソースにおいても、オーバースキャンを回避することで余計なスケーリング回路の処理をバイパスし、画質が向上することもあるので試してみるといいだろう。

 2つ目は「NR」や「HDオプティマイザー」といった画質向上フィルタの処理をキャンセルしないと、PC上の文字や映像に不本意な染みがでてしまうことがあるということ。PCやゲーム機の映像に対して、こうした画質向上フィルタは掛けても意味が無いだけでなく、表示遅延を起こす場合も考えられるので、なるべく「オフ」設定にしておこう。

 3つ目は1,024×768ドットのような4:3画面も16:9として表示されてしまうという点。一部の解像度では「HD表示領域」をフルサイズとしてもオーバースキャンされてしまうことがあった。4:3画面モードは素直にアナログRGB接続して表示したほうがよい。HDMI接続でまともに表示できたのは1360×768ドットと1,920×1,080ドットの2モードで、最も美しく表示されたのはドットバイドット表示となる1,920×1,080ドットモード時であった。


※パネル画素に一対一に対応した表示……、正常表示……、表示はされるが一部に違和感あり……、表示不可能……×
*1オーバースキャン、*2 16:9固定


●ゲーム(Xbox 360、アナログRGB接続/PLAYSTATION 3、HDMI接続)

 PS3はHDMI接続で何の問題もなく接続できたが、Xbox360のアナログRGB接続は、1,360×768ドットモードの場合、「PC画面調整」の「入力解像度」設定にて「WXGA」モードを選択して「水平位置」や「垂直位置」を手動調整する必要があった。1,280×720ドットモードなどは画面外周に繰り替えし表示されてしまう部分などが出てしまっており、常用するには少々見苦しい。TH-50PZ600を評価したときも感じたことだが、他社製品と比較してVIERAシリーズはゲーム機やPCとの接続は「簡易的対応」というスタンスを感じる。

 三人称/一人称視点タイプの視点をフリーに移動できるタイプのゲームでは視線をグリグリと動かすと色割れが見えるが、レースゲーム、アクションなどの一般的なゲームプレイにおける残像や色ズレなどはほとんど知覚されなかった。

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■ まとめ
 ~42V型。液晶か、プラズマか

 TH-42PZ700はフルHDプラズマという製品カテゴリにおいて、とても象徴的な製品だ。

 というのも、液晶しか選べなかった40V型前半の画面サイズにおいて、プラズマが選べるようになった…… ということが非常に大きな訴求ポイントになってくるからだ。

 そうなると消費者側の視点では、37~46V型の売れ筋薄型テレビで、液晶かプラズマか、どっちを選んだらよいのか、ということが気になってくるはずだ。

 明るさ重視で選ぶならば、液晶だろう。TH-42PZ700も頑張ってはいるが、ピーク輝度はやはりちょっと暗い。テレビコマーシャルでは「明るすぎないから目に優しい」という逆転の発想で広告展開をしているが、蛍光灯照明下の多い日本のリビングでは、明るい液晶の方が有利かも知れない。

 画質に関して言えば、TH-42PZ700は、これまでに培われてきたプラズマVIERAの系譜をちゃんと受け継いだ妥協のない画作りになっている。

 「特に1点だけTH-42PZ700におけるる画質のアピールポイントを挙げよ」と言われたら、やはり液晶を寄せ付けない圧倒的なネイティブコントラスト性能を挙げる。黒表現の極まり方も驚かされたが、暗部階調の出色がプラズマでここまで出せるようになったかと感動させられた。

 VIERA PZ700シリーズは50V型も発売されており、42V型との実売価格差は7~8万円程度。両者の輝度スペックは公開されていないが「ピーク輝度は42V型と50V型であまり変わりない」と関係者は言っているようだ。なので、予算と設置スペースなどが許せば50V型モデルのTH-50PZ700シリーズを選ぶのもいいだろう。


□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/index3.html
□製品情報
http://panasonic.jp/viera/products/pz700/
□関連記事
【4月10日】松下、50/42型フルHDプラズマテレビ「VIERA PZ700」
-フルHD PDPで世界最小。VIERA LinkはAVCHD対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070410/pana1.htm
【2006年9月28日】【大マ】50型フルHD「VIERA」はコントラストで勝負
~ プラズマもフルHD時代。「松下 TH-50PZ600」 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060928/dg70.htm

(2007年5月10日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1000を超える。

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AV Watch編集部

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