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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第324回:ついに1080iに到達したXacti「DMX-HD1000」
~ 高画質とユーザビリティのバランスが高次元で融合 ~



■ 今度のXactiは全然違う

 三洋Xactiは、デジカメなのかビデオカメラなのかでカテゴリ分けが難しいカメラである。両方にまたがる製品ということでそのユニークさが際だっていたわけだが、逆に言えばデジカメだから動画はしょうがないよね、という部分と、ムービーカメラだから静止画はしょうがないよね、と言う部分が同居している感があった。

 だが今回のフルHDモデル「DMX-HD1000」(以下HD1000)では、ようやく基本的な部分から設計の見直しが行なわれ、従来ユーザーも大満足の出来に仕上がっている。フルHD/H.264記録、CMOSの採用という見所も多いが、標準バッテリで約2時間の動画撮影可能になった点は大きい。

 店頭予想価格は12万円前後となっているが、すでにネットでは9万円台前半といったところまで下がってきている。では新しく生まれ変わったハイビジョンXactiを、早速テストしてみよう。


■ 大柄だがハンドリングしやすいボディ

 HD1000には、シルバーとブラックの2色があるが、今回もシルバーをお借りしている。デザインのテイストとしては、これまでの丸みを帯びたオーガニックスタイルではなく、エッジを立たせてかっちりした姿となった。Xactiの特徴であるガンスタイルはそのままで、光学部がギョロッと大きい。物理的に妥協できない光学部がしっかりしていて、限りなく記録部が小さいというのは、ある意味カメラの理想型である。


十分レンズが大きい点に好感が持てる ガンスタイルはそのまま継承

 では細部を見ていこう。まず光学部だが、レンズは35mm換算で動画49.7~497mm、静止画38~380mmの光学10倍ズームレンズ。解放F値は1.8~2.5。レンズ供給メーカーは明らかになっていないが、テレ端でも収差の少ない、なかなかいいレンズを採用している。

撮影モードと画角サンプル(35mm判換算)
撮影モード ワイド端 テレ端
動画
49.7mm

497mm
静止画
38mm

380mm

 撮像素子はCMOSの単板で、スペック表には1/2.5型の400万画素相当とある。「相当」と書いてあるのがアヤシイ感じで、もしかしたらクリアビッド? という勘ぐりもできなくはないが、供給メーカーは明らかにされていない。画質モードは動画でフルHDからWeb-SHQまでの6段階、静止画で画素ずらしによる8MピクセルからVGAサイズの0.3Mピクセルまで8段階。

動画サンプル
モード 解像度 フレーム
レート
ビットレート 記録時間(4GB) サンプル
Full-HD 1,920×1,080ドット 60i 12Mbps 約42分
fullhd.mp4 *(15.7MB)
HD-HR 1,280×720ドット 60p 12Mbps 約42分
hdhr.mp4 (15.5MB)
HD-SHQ 30p 9Mbps 約56分
hdshq.mp4 (11.3MB)
TV-HR 640×480ドット 60p 6Mbps 約1時間22分
tvhr.mp4 (7.78MB)
TV-SHQ 30p 3Mbps 約2時間36分
tvshq.mp4 (4.00MB)
Web-SHQ 320×240ドット 30p - 約8時間38分
webshq.mp4 (1.21MB)
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。なお、1,920×1,080ドットの画像は、QuickTimeの最新バージョン7.2では再生できない不具合が報告されています

 手ぶれ補正は電子式で、補正のON/OFFで画角は変わらない。また今回は動画だけでなく、静止画でも手ぶれ補正が効くようになっている。レンズ上部には手動ポップアップ式のフラッシュがあり、その後ろにはアクセサリーシューがある。今回は外部マイク入力端子とイヤホン端子も備えており、ビデオカメラとしても本格的に使えるようになっている。


上部にフラッシュを装備 後ろにはアクセサリーシュー レンズ下にはマイク入力とイヤホン端子


液晶脇にシンプルモードの切り替えスイッチがある

 液晶モニタは2.7型ワイドで、液晶脇にはシンプルモードへの切り替えスイッチが付いている。液晶を閉じることでスタンバイモードになるのは、以前と同じだ。

 コントロール部はすべて後方に集まっている。以前のXactiは、左右に動画と静止画の録画ボタン、その間がズームレバーというスタイルだったが、今回はここにも大きく手を入れてきた。中央の左右に録画ボタンを配置し、その左にズームレバー、右に録画と再生のモード切替スイッチをシンメトリックに配置している。上にはフルオートボタン、下にメニューボタンがある。


若干操作性が変わった背面ボタン類 十字キーのショートカットはカスタマイズ可能

 ズームレバーが左側にあることで何か逆手で操作しているような気になるが、右側にあったとすると今度は親指に近すぎて、窮屈になる。まあこの位置は、このレイアウトの中では妥当なところだろう。メニュー操作はジョイスティックで行なう。また撮影時はジョイスティックを上下左右に倒すことで、必要な機能を呼び出すことができる。機能の割り付けは、ある程度カスタマイズ可能だ。

 バッテリは、今回新たに1,900mAhのものに変更された。連続録画時間が2時間となったことで、ようやくこれまでの不満点が解消された形だ。また後方下部にはACアダプタのコネクタも付けられた。つまり2時間を超える長時間撮影の場合は、AC駆動もできるということである。これで長時間のミーティングや会議、取材の記録なども、安心してできるようになった。


バッテリはさらに大型のものに変更された ACアダプタが直結できるのもポイント

 もちろんクレードルも付属している。充電以外にもUSBによるPC接続、HDMI、アナログコンポーネント端子があり、挿すだけでなんでもできるというコンセプトはそのままだ。


付属のクレードル USBやHDMI端子を備える



■ マニュアルが生きる動画撮影

 Xactiをデジカメ動画機という見方をすると、どうしてもフルオートで撮ることを想定しがちだ。もちろんそれでもそつなく撮れるのだが、本機はマニュアルでいろいろやって面白いという、初心者にもマニアにもうれしいバランスになっている。

 露出に関しては、プログラムAE以外にシャッター優先、絞り優先、マニュアルが選択できる。花などを開放で撮れば、ボケ味も結構綺麗だ。プログラム以外ではシャッタースピードなどを自分で設定するわけだが、設定を十字キーに割り当てられるので、マニュアルでも結構使いやすい。
動画サンプル

ezsm01.m2t (208MB)
Full-HDモードで撮影した動画サンプル。Canopus Edius Neoで編集後、HDVフォーマットに出力
再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

深度を浅く取ればボケ味も綺麗だ マクロモードで撮影

 フォーカスに関しては、かなりビデオカメラライクに改良されている。以前のXactiは、ズームレバーから指を離すまでフォーカスが再調整されないという問題があったが、この点もクリアされて、普通のビデオカメラと同じ挙動になった。フォーカスの追従性は、速くはないがかなり正確だ。人物のフォローなども、オートでそこそこ追従できているほうだろう。

 難点はマニュアルフォーカスで、無段階での動作ではなく、近距離では1cm~2cm単位、中距離では20~30cm単位と、ステップでしか動かない。絞り開放で撮っている時など微妙に調整したいときがあるのだが、これでは追従できないケースがあった。そう頻繁に使う機能ではないが、オートで微妙にダメなときのマニュアルフォーカスなので、やはり無段階で動いて欲しいというのが正直なところだ。

 また今回は、液晶モニタの見え具合にも慣れが必要かもしれない。というのも、録画開始する以前の表示がどうもプレビュー相当の画質になるようで、微妙にぼけて見えるのである。実際に録画を開始するとちゃんとした画質になるのだが、回し始める前にフォーカスが合ってるのかどうか、よくわからないところに不安が残る。

 また色の濃い被写体では、液晶モニタ上ではクリップしてしまうが、実際には綺麗に撮れている。前回のPanasonic「HDC-SD7」もそうだったが、今後ハイビジョンカメラに関しては、液晶モニタのグレードもまた一つのテーマになりそうだ。


花の透過光も色がクリップせずに撮れている 色の階調はなめらか

動画サンプル

ezroom.m2t (32.4MB)
室内ではS/Nが若干気になる
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 発色はオートでやや赤い感じがするが、人肌が綺麗に映える色設定になっているようだ。昼光固定だと無理が無く、ナチュラルな発色になる。解像感はフルHDモードでは十分高い。

 ただ圧縮アルゴリズム上で苦手なタイプの絵柄があるようだ。例えば水面のきらめきが反射する木立のような、中身もランダムに動いて輝度もバラバラ変わるような絵柄では、GOP単位で画質変動するのがわかる。

 室内撮影では若干S/Nが良くない部分もみられる。気になる場合は、NR設定や高感度モードなどを併用して撮影する必要があるだろう。


ホワイトバランス オートで撮影 ホワイトバランス 昼光で撮影




■ 撮りにくいがクオリティは十分な静止画

 動画と同時に高解像度の静止画を無制限に撮るという機能は、Xactiが最初だった。だがビデオカメラ業界も次第に追いついてきて、今やXactiだけのお家芸では無くなってきた。

 これまでXactiがやってきたのは、例えばSDサイズの動画を撮っているときに、ビデオよりもはるかに高解像度の写真を撮るということであった。だが今回のHD1000では、動画撮影中の静止画は、動画の画質モードに引っ張られる形で、解像度が連動するようになった。

 つまりフルHDで動画撮影中は、それと同じ1,920×1,080の2Mピクセルで静止画が撮影される。まあハイビジョンサイズで撮れれば十分ということかもしれないが、設計の面でもこれまでのXactiとはもはや別物なのだろう。

 静止画単体での撮影で気になるのは、やはりモニタ表示である。動画と静止画では、横方向も静止画のほうが若干画角が広いわけだが、それに加えて縦がかなり違う。そしてそれを16:9のワイド液晶にフィットさせる形で表示するもんだから、動画と静止画の画角表示がモニタ上でものすごく差が出てしまう。

 なんか話が見えないほどややこしいのでもうちょっと詳しく説明すると、撮影を開始していないときは、ビデオ画角で表示されている。そこで静止画のシャッターボタンを半押しすると、今度は静止画画角に切り替わる。このときの画角のギャップが凄まじいのである。つまり静止画を撮るときは、シャッターを半押しにした状態のままでアングルなどを決めなければならないのだが、うっかりするとそのままシャッターを押しちゃったりして、それはそれでもう大変なのだ。

 たぶん初心者の人は、静止画を撮ったときに一体何が起こったのか、よくわからないのではないだろうか。静止画だけを撮るときの便宜のために、液晶の脇に動画用画角表示モードと静止画用画角表示モードの切り替えスイッチが欲しいところだ。

 ただ撮れる絵はさすがにデジカメから派生しただけあって、解像感といい発色といい、凄まじいクオリティである。もちろん絞ったときは菱形絞りの形でボケ足が若干うるさくなるのは、もはやビデオカメラの宿命として、現状はしょうがないのかもしれないが、いつか解決してくれると信じている。

 また、デジカメ業界では顔検出技術が花盛りだが、本機にも搭載されている。ただすべてのケースで検出できるわけではなく、光量やフォーカス、顔が正面を向いているなどいろんな条件にハマったときに効くので、万能というわけではない。


後ろのボケが多少うるさいが、人肌はなめらかに撮れている きちんと深度があり、立体感のある絵になる 猫の顔は認識しなかった


何気ないカットだが解像感がすごい 暗部は若干ざらつく感じがある



■ 編集が今のところネック

 次に編集と保存機能を見ていこう。本体で可能な動画編集は、部分カットと結合のみで、プレイリスト機能はない。カットは、IN点OUT点を範囲選択するスタイルで、単純な分割機能しか持たないビデオカメラが多い中で、異彩を放っている。

 編集点の選択は、ジョイスティックの左右でコマ送り、左右の長押しで再生となる。早送りは再生中で左右レバーだ。範囲選択したのち、上書きするか別名保存するかが選択できるので、出来ることのバリエーションは広い。

 また動画を含めて連続再生するためのスライドショー機能では、BGMが3種類選択できる。ただBGMは動画再生時には止まるので、動画と静止画を交互に撮った場合は、ちょっとうっとうしいことになる。


カット編集は前後から範囲指定するタイプ 動画も静止画も連続で再生するスライドショー機能

 保存に関しては、従来どおり普通にSDカードの内容をムービーファイルとしてPCに保存するという手段はアリなのだが、さらに今回はクレードルにUSB外付けHDDを直結すれば、ノンPC環境でもファイルバックアップが可能になった。他社はほとんど専用のDVDドライブを接続して、DVDメディアにバックアップする道を選んでいるが、汎用のHDDを直結というのは珍しい。

 HDDからの再生は、間にXactiをはさんでテレビと接続することで、Xacti付属のリモコンから再生操作が可能だ。今回はUSB HDDを用意していなかったので実際にテストはできなかったが、HDD上にアルバムを構築する形で、ライブラリ管理もできるようだ。そのHDDが永久保存できるかという問題はあるが、テンポラリ的に使っていけるので、案外コンシューマユーザーよりは、会議やイベントを記録として撮っておくようなビジネスユーザーのほうが、この辺の機能は便利かもしれない。


付属の「Nero 7 Essentials」は、いわゆるMPEG再生ソフト

 さて、今のところ困るのが、フルHD解像度での編集である。なにせAVCHD規格でもない、H.264のフルHD解像度ファイルというのは、今まで普通に手にはいるようなものではなかったため、編集ソフトがほとんど対応できていないのが現状だ。再生だけは、付属の「Nero 7 Essentials」で可能だが、これはDVD再生ソフトみたいなものなので、本当に再生するだけである。

 またH.264の総本山とも言えるQuickTimeでも、最新バージョンの7.2ではフルHDサイズのH.264ファイルが再生できない。これでは、他のフォーマットへの変換もままならない。


「Ulead DVD MovieWriter 5 SE」はDVD Video作成までにとどまる

 HD1000付属の「Ulead DVD MovieWriter 5 SE」はもちろん対応しているが、書き出す先がSDのDVD Videoになってしまう。元々ファイルもAVCHD規格ではないので、そのまますんなりAVCHDディスクを作るわけにも行かないのだろう。以前はXactiの圧倒的な強みだったPCとの親和性の高さが、ここにきて難しくなってきている。いずれ時間が解決する問題ではあるにしても、今すぐフルHDの動画をPCで編集して活用したいと考えている人は、要注意だ。

 今回の動画サンプルは抜け穴のような機能を使って、一端非圧縮にファイル変換を行なって編集したが、PCのセキュリティが脆弱になる可能性が高い方法なので、ここでは公開しない。


■ 総論

 ちゃんとフルHDでコンテンツを作りたい人には、編集環境がまだ揃わないのがイタいところだが、絵を撮ることに関しては非常によく出来たカメラだ。Xactiをビデオカメラとして扱うかという点では、これまで議論があったわけだが、フォーカスの追従の仕方や動画同時撮影の静止画の設計変更などを考えると、HD1000はかなりビデオカメラに近い存在になったと言える。

 従来の弱点であったバッテリも、CMOSによる省電力化とバッテリそのものの大容量化で、連続2時間を確保できた。また本体だけでAC駆動できる点も、いい改善点だ。

 手ぶれ補正に関しては、従来は動画だけだったが、静止画にも効くようになったのは大きい。確かにこれまで、静止画で手ぶれしてしまうケースが多かったので、この機能を待ち望んでいた人も多いだろう。また今はやりの顔検知機能も面白い。検知の感度は誤動作を避けるためか余り高くないようだが、正面から学芸会や音楽会を撮るような用途では、重宝するかもしれない。

 三洋電機はかつて、テレビやレコーダなどAV家電の不振にあえぎ、さらに追い打ちをかけるように中越地震で半導体工場が大きな被害を受けた。結果、一般家電産業から手を引くという大きな経営転換を行なわなければならなくなったが、Xactiだけは生き残った。元々デジカメ関係では基礎技術力が高く、特許も多数保有しているので、続けることが出来たのだろう。

 初代XactiのC1が登場したのが2003年。これまでは継ぎ足し継ぎ足しで成長してきた感じだったが、ここで抜本的な設計の見直しを行なって、いいものを作ってきた。このXactiが多くの人に認められ、三洋の転機となるよう願っている。


□三洋電機のホームページ
http://www.sanyo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0708news-j/0830-1.html
□製品情報
http://www.sanyo-dsc.com/products/lineup/dmx_hd1000/index.html
□関連記事
【8月30日】三洋、フルHD/MPEG-4 AVC録画が可能な新「Xacti」
-8GB SDHCカードに1時間25分録画
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070830/sanyo.htm
【2月7日】三洋、HD撮影中に700万画素静止画撮影が可能な新「Xacti」
-720p/MPEG-4録画。クレードルにHDMIを装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070207/sanyo.htm

(2007年9月26日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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