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第307回:CakewalkのDAW最新版「SONAR 7 Producer Edition」
〜 使い勝手を改善。マスタリングエフェクトも充実〜




SONAR 7 Producer Edition

 まもなくRolandからCakewalkのDAW、「SONAR 7」の日本語版が発売される。毎年、ほぼこの時期に発売されるので、定例バージョンアップといった感じではあるが、そのSONARの新バージョン、SONAR 7の最上位版となるSONAR 7 Producer Editionを一足早く入手した。

 今回のバージョンアップでどんな機能が追加されたのか、実際の性能をチェックした。



■ ラインナップは合計5製品


メイン画面

 SONAR 7も前バージョン「SONAR 6」と同様のラインナップとなっており、「SONAR 7 Producer Edition」、「SONAR 7 Studio Edition」、「SONAR 7 Power Studio 25」、「SONAR 7 Power Studio 66」、「SONAR 7 Power Studio 101」の計5種類となる。簡単に説明するとProducer Editionが今回紹介する最上位版。Studio Editionが普及版であり、プラグインのソフトシンセやエフェクト、また後で説明するV-Vocal機能などがないバージョンだ。

 一方Power StudioはSONAR 7 Studio EditionとRolandのハードウェアとのバンドル版。Power Studio 25は「UA-25」、66は「FA-66」、101は「UA-101」とセットとなっている。ただ、通常のStudio Editionと異なり、V-Vocal機能が追加されている。こうした点においてもSONAR 6と同様だ。発売はProducer EditionとStudio Editionが今月21日の予定で、Power Studioは来年1月になる見込みだ。

 ちなみに、SONAR 6ではStudio Editionの下にSONAR Home Studio 6/XLという製品が存在するが、そのSONAR 7版というのは現時点では登場していない。またHome Studio自体、その前のバージョンがSONAR 4ベースであったことを考えると、SONAR 7ベースのものは登場しない可能性もありそうだ。

 以前紹介したLogicもそうだったが、最近のDAWは完全に成熟期に入っており、それほど大きな機能アップがない。その事情はSONAR 7でも同様。ユーザーインターフェイスもSONAR 6でほぼ完成しており、SONARの顔ともなっているので、今回はそれを踏襲している。また、ほかのDAWに先駆けて、Windows VistaさらにはVistaのx64版にもSONAR 6で対応済みであったので、この点でも従来どおりだ。

 とはいえ、これは便利という機能が色々と追加されている。また編集機能の使い勝手も向上しており、いいソフトに仕上がっている。



■ 細かな使い勝手を改善する新機能を多数追加

 分かりやすい点から挙げると、まずはステップ・シーケンサ機能だ。画面を見ると分かるとおり、これはドラムマシン的な機能で、1小節分とか2小節分といったドラムフレーズを打ち込んでいく。

 ピアノロールなどで打ち込んでいくのと比較して圧倒的にスピーディーにフレーズを作ることができ、できあがったドラムパターンは、ループ素材と同様にマウスでドラッグするだけで繰り返していくことができる。もちろんドラムに限らず、ベースフレーズ用としても利用できるため、便利だ。

 また、ピアノロール画面などでマウスカーソル付近を拡大表示できる拡大鏡画面もかなり便利。細かい操作では重宝する。さらにこのピアノロール画面では、CTRLキーやSHIFTキーなどと組み合わせて最大20種類の操作をアサインする機能が追加されたのでも、便利なポイントだ。


新たに「ステップ・シーケンサ機能」を追加 ループ素材と同様にマウスでドラッグするだけで繰り返し設定が可能 カーソル付近を拡大表示する「拡大鏡画面」

 また単純な機能ながら、使えるのがDim solo機能だ。従来のDAWはSOLOを選択すると、ほかのトラックがすべてミュートされてしまったが、ハードウェアのミキサーコンソールの場合、Dim機能により、完全にミュートするのではなく、音を小さくすることができる。SONAR 7では、Dim Soloモードにした状態でSOLOボタンを押すと、ほかのトラックのレベルを下げることができるのだ。また設定によって、そのレベルを下げ方を-6dBか、-12dB、-18dBを選択できるようにもなっている。

 エフェクト周りで最近流行っているのがサイドチェイン機能。つまり、あるトラックにインサーションとして設定したエフェクトに対し、別のトラックからもセンドの形で信号を送り込むというものだ。

 サイドチェインでよく利用されるのがコンプレッサであり、ある信号を別の信号のレベルに合わせて制限することになる。たとえば、キックドラムがあるところでベースギターのレベルを下げたり、放送番組のように話し手が話すと、自動的に音楽のレベルが下がるといった使い方ができる。ちなみにSONAR 7でサイドチェインに対応しているのは「Sonitus Compressor」、「Sonitus Gate」、「Vintage Channel VC-64」の3種類となっている。


ソロトラック選択時に、他トラックをミュートせずにボリュームを下げる「Dim Solo」機能 サイドチェイン機能が追加された SONAR 7のサイドチェインに対応するコンプレッサ「Vintage Channel VC-64」

 また、エフェクト関連でいうと、外部エフェクトをインサーションとして利用できるようになったのもSONAR 7の新機能だ。プラグインのエフェクトが強力になったとはいえ、やはりお気に入りの手持ちのエフェクトモジュールを使いたいというケースもあるだろう。そんなとき、この機能が活躍するのだ。

 使い方は簡単。予めオーディオインターフェイスの使用していない入出力ポートに外部エフェクトを接続し、プラグインエフェクトと同様の手順で外部インサートエフェクトを選択するのだ。その後、設定画面で接続しているポートを指定すれば、すぐにも使うことができる。


外部エフェクトをインサーションとして利用できる 外部インサーションエフェクトの概略図


MIDI感覚でボーカルをエディットできる「V-Vocal」は1.5にバージョンアップした

 SONAR 5で登場し、いまやSONARの大きな特徴ともなっているV-Vocalが、V-Vocal 1.5へとバージョンアップしている。V-Vocalというのは、ボーカルをMIDI感覚で自在にエディットできる機能で、ピッチのズレを補正したり、音符を伸ばしたり、縮めたりといったことができるほか、男性の声を女性のようにしたり、ロボットボイス的にすることも可能。

 たとえば初音ミクで作ったボーカルフレーズは、微妙にピッチがズレているが、V-Vocalを通すことで、かなり安定した音程にすることができる。

 V-Vocalそのものの機能は基本的に変わっていないが、Ver1.5になって強化されたのが「Pitch to MIDI」という機能。これは、その名のとおり、V-Vocalのピッチ情報をMIDIに変換するものだ。

 使い方はPitch to MIDIのボタンを押して、V-VocalからMIDIトラックへドラッグ&ドロップするだけ。もちろん、ここで持っていけるのはピッチだけでなく、タイミングやデュレーション、さらにはベンド情報などもMIDI変換することができるので、ボーカルとユニゾンで演奏するピアノパートを作りたいといったときに利用できそうだ。



■ プラグインも豊富に用意。マスタリング用エフェクトも

 こうしたSONAR本体で機能アップが図られている一方、やはり大きなポイントとなるのはプラグインの追加だ。

 従来のSONAR 6 Producer Editionに搭載されて評判のよかったサンプラー系のドラム音源、「Session Drummer 2」がSONAR 7 Studio Editionにも搭載されたほか、「DropZone」、「D-PRO LE」、「RAPTURE LE」といったものが追加された。


前バージョンで搭載されたドラム音源「Session Drummer 2」も搭載 プレイバックサンプラー「D-PRO」の機能制限版を搭載 ウェーブ・テーブル・シンセサイザ「RAPTURE LE」も追加

 DropZoneはHOME STUDIO 6などにもバンドルされていたサンプル・プレイバッカーで、ボーカルやループ素材などを読み込んで、そのまま利用することができる。

 一方、D-PRO LEは、Cakewalk Instrumentsとして発売されているプレイバック・サンプラー「D-PRO」の機能制限版。製品版のD-PROはかなり大容量なサンプリングデータが収録されているのに対し、こちらは比較的小さいものが中心とはいえ、エレピ、オルガン、ベースなどアコースティック系の音源を中心に400種類以上のデータが入っている。またその中にはオーケストラ音源として著名なGarritan Pocket Orchestraも入っている。

 そして、RAPTURE LEはエレクトロニカやダンス系で威力を発揮するサウンドを数多く詰め込んだウェーブ・テーブル・シンセサイザ。やはりCakewalk Instrumentsシリーズである「RAPTURE」という製品版ソフトの機能制限版で、音色数が少なくなっているのとともに、エディットできるパラメータに制限が設けられている。

 一方、Producer Editionにのみバンドルされるものではあるが、Cakewalk Instrumentsシリーズのひとつ「Z3TA+」(ゼータ)が、そのままバンドルされている。こちらは、多彩なサウンドを生成できるウェーブ・シェイピング・シンセサイザという方式のもの。6基のオシレーターを装備し、60種類のビルトイン波形と6種類のユーザー波形の中から好みのものを選択して使う。そして、選択した波形は14種類のアルゴリズムを使って変形が可能という結構マニアックな音源だ。

 フィルター、LFO、EGともパラメータもかなりそろっており、最大16組のモジュレーション・マトリックスを活用して、サウンドを作り上げることができる。これらの新規音源のほかにも従来からあったPentagon I、PSYN II、TTS-1、Groove Synthなどがそろっている。

 ソフトシンセよりもさらに新規性が高いのがProducer Editionに追加されたエフェクトだ。「LP-64 Linear Phase EQ」、「LP-64 Multiband Compressor」というものがそれだ。


Producer Editionにのみバンドルされる「Z3TA+」 マスタリング用追加エフェクト「LP-64 Linear Phase EQ」 「LP-64 Multiband Compressor」もProducer Editionにのみ追加されるマスタリング用エフェクト

 いずれもマスタリング用のエフェクトで、Linear Phase EQは位相変化のないリニア・フェイズ仕様のハイエンドEQ。SONAR 6 Producer Editionから搭載されているVintage Channel VC-64と同様に、内部64ビット倍精度浮動小数点処理をして高音質を実現している。また複数レイヤーのたたみ込み演算処理も使用しており、イコライジング・ポイントは20個も設定できる。

 Multiband Compressorは、ダイナミックス系エフェクトにありがちな不自然なレベル変化を抑えるPDR(Program Dependent Release)機能も搭載。これにより、いかにもコンプレッサでつぶしたという感じにならず、自然な音圧アップに使える。もちろんこちらも位相変化のないリニア・フェイズ仕様で、内部64ビット倍精度浮動少数点処理となっている。

 実際にこの2つのエフェクトをマスタリング用として最終段に組み込んで使ってみると、いい感じで効いてくれる。もちろん、自分で作った曲に使うのもいいのだが、とりあえずCDからリッピングした曲に対して掛けて自分だけのリマスタリングをしてみると、かなり遊べる。この2つのエフェクトだけでも十分買う価値があるといっても過言ではない。

 以上、SONAR 7 Producer Editionを新機能中心に紹介したが、確かに従来ほどドラスティックに変化したというイメージではないが、音質面、操作性ともにクォリティーという面ではずいぶん進化してきているのは間違いない。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□Cakewalkのホームページ
http://www.cakewalk.jp/
□製品情報(SONAR 7 Producer Edition)
http://www.cakewalk.jp/Products/SONAR7/
□関連記事
【2006年10月23日】【DAL】フィジカルコントローラが使いやすくなった「SONAR 6」
〜 細かな使い勝手やプラグイン強化も 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061023/dal255.htm

(2007年12月10日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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