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第313回:Roland/EDIROL/BOSS/Cakewalkの新製品をチェック
~ NAMM2008出展のPCMレコーダやキーボードを国内初公開 ~



 2月8日、東京 渋谷でローランドが春の新製品発表会を行なった。1月に米国で開催された「NAMM SHOW 2008」で発表された製品の国内での正式リリースという位置づけで、Roland、EDIROL、BOSS、Cakewalkの4ブランドにおけるさまざまな新製品が登場した。

 毎年恒例となっている2月に開催されるローランドの新製品発表会だが、今回はEDIROLブランドからは24bit/192kHz・4トラックのポータブルPCMレコーダ、RolandブランドからはシンセサイザキーボードのFantomの新モデル、エレクトリックドラムのV-Drumの新モデルなど、BOSSブランドからはエレキギター・エレキベース用のマルチエフェクト、そしてCakewalkブランドからは波形編集ソフトが発表になった。


渋谷でRolandが2008年春の新製品発表会を開催



■ SDカード記録のPCMレコーダ「R-44」

 まずEDIROLのPCMレコーダ「R-44」は、R-4Proのコンパクト版ともいえる4トラックの24bit/192kHz対応の製品だ。R-4ProがHDDにレコーディングするシステムであったのに対し、こちらはSDカードとなったことで、重量1.3kg、外形寸法が157×183×61mm(幅×奥行き×高さ)とかなりコンパクトになっている。

 R-4Proのアナログ入力がXLRのマイクジャック×4であったのに対し、R-44ではXLR/TRSのコンボジャック×4とTRSフォン対応になっているのがポイント。内蔵マイク2つを搭載しているという点ではR-4Proなどと同様だ。またR-4Proが単3アルカリ電池8本で2時間のレコーディングができるという仕様だったのに対し、R-44では単3アルカリ電池4本で4時間と省電力になっている。


SDカード記録のPCMレコーダ「R-44」

 最大の特徴ともいえるのが、2台のR-44をケーブル1本の接続で同期可能で8トラックレコーディングができるという点。R-4ProでもSMPTEとAES/EBUデジタルを接続してタイムコードとワードクロックを共有することにより、8トラックレコーディングは可能だったが、より簡単に使えるようになっている。

 3月中旬の発売予定で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は75,000円前後だ。



■ マウス対応シンセ「Fantom」シリーズ

 Rolandブランドの目玉製品はメインストリームのシンセサイザキーボード、「Fantom」シリーズのフルモデルチェンジ。今回登場したのは「Fantom G6/G7/G8」の3機種で、内蔵音源を強化するとともに、SuperNATURALという最新技術を使ったエクスパション・ボード「ARX」シリーズが搭載可能になったのが特徴。


内蔵音源を強化した最上位モデル「Fantom G8」 下位モデルの「Fantom G6」 SuperNATURAL技術の採用により、新発売の音源ボード「ARX」シリーズが搭載可能に

 ARXシリーズとしてはドラム音源の「ARX-01」、エレピ音源の「ARX-02」が同時に発表になっている。ともに4月下旬発売で、価格はオープンプライス、実売50,000円前後。これがなかなか強力な物理モデリング音源で、V-Synth GTのAP-Synthesisの進化系ともいえるものだが、かなり生音っぽいモデリングが可能となっている。

 たとえば、ドラムにおいてはチューニングキーでタムやスネアのピッチを上げ下げしたり、ガムテープを貼るなどしてミュートする強さを調整するといったことが可能。またエレピにおいては、鍵盤で叩くトーンバーの角度を変化させることで、音色を変えるなど、従来の音源では不可能だった音色パラメータを利用しての音作りができるようになっている。

 またFantom本体には、8.5インチのTFTワイドVGA液晶ディスプレイが搭載され、音色設定やDAW機能などが操作できる。しかも、マウスが利用可能になったため、まさにPC感覚で使えるので便利だ。

 Fantomシリーズは3モデルとも3月末発売で、いずれもオープンプライス。店頭予想価格はG6が24万円前後、G7が28万円前後、G8が33万円前後となっている。

 なお、そのSuperNATURALを本体に搭載した88鍵盤のピアノ音源「RD-700GX」も発表され、こちらは2月22日発売で、オープンプライス、店頭予想価格24万円前後だ。


液晶ディスプレイを搭載し、音色設定やDAW機能の操作が行なえる マウスが利用可能なので、PC感覚で設定が可能 SuperNATURAL採用のピアノ音源「RD-700GX」も用意



■ V-Drumの新音源モジュールや、SMF再生対応プレーヤーなど

 メッシュパッドが好評の「V-Drum」シリーズでは、音源モジュールの新モデル「TD-9」を発表。これは従来の「TD-6V」に比べて4倍のウェーブ容量を持つ一方で、音色数を抑えて音質向上を図っている。また、これまで弱かったトレーニング支援機能が数多く搭載された。さらにUSBメモリに入ったWAVファイルを再生する機能も搭載している。

 このTD-9単体を購入すれば従来のV-Drumにそのまま接続することが可能。単体での発売は3月21日で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は70,000円前後となる。

 またドラムセットとしては3つのタムもメッシュパッドとした「TD-9KX-S」と、スネアのみがメッシュパッドの「TD-9KS」を用意。いずれも3月21日発売で、価格はオープンプライス。店頭予想価格はそれぞれ22万円前後、16万円前後となっている。


音源モジュールの新モデル「TD-9」 3つのタムもメッシュパッド化したドラムセット「TD-9KX-S」

 ちょっと変わったところでは、SMFデータ、WAVデータ、MP3データを再生可能なマルチフォーマット・ミュージックプレーヤー「MT-90U」も発表された。これはUSBメモリに記録されたデータを再生する機材で、1つの筐体内にアンプ、スピーカーも内蔵されている。4月中旬発売で価格はオープンプライス、店頭予想価格は40,000円前後だ。

 また、バッテリ駆動可能な小型のギターアンプおよびベースアンプの「MICRO CUBE RX」、「MICRO CUBE BASS RX」も発表された。いずれも単3アルカリ電池×6本で駆動し、各種エフェクト機能なども装備している。MICRO CUBE RXは3月末発売で価格はオープンプライス、店頭予想価格25,000円前後。MICRO CUBE BASS RXは4月末発売でオープンプライス、25,000円前後となっている。


USBメモリ内のSMF/WAV/MP3再生に対応する「MT-90U」 小型のギターアンプ「MICRO CUBE RX」 ベースアンプ「MICRO CUBE BASS RX」も用意



■ PC連携可能なマルチエフェクタ「GT-10/10B」

 次にBOSSブランドを見てみよう。BOSSブランドではGT-8およびGT-8Bの後継となるマルチエフェクタ「GT-10」と「GT-10B」が登場した。GT-10がギター用、GT-10Bがベース用で、いずれもDSPチップとCOSMテクノロジーによりアンプモデリングやエフェクトを実現している。

 大きな特徴としてはUSB端子を搭載し、PCとオーディオ & MIDIのやりとりが可能となったという点だ。これにより、ギターやべースのサウンドを直接PCへレコーディングしたり、PCからの音をGT-10/GT-10Bへ送ってヘッドホンで再生するということが可能になる。量子化ビット数・サンプリングレートは明らかにされなかったが、ドライバは後日、Rolandのサイトからダウンロード可能となるという。いずれも3月末発売で価格はオープンプライス、店頭予想価格50,000円前後となる。


BOSSブランドのマルチエフェクタ「GT-10」 ベース用の「GT-10B」も用意する USB端子を備え、PC連携に対応するのが特徴

 もうひとつBOSSブランドから発表されたのは、すでに発売されているポータブルMTR「BR-900CD」のバージョンアップで、「BR-900CD Version2」。これは、従来機種のファームウェアをアップデートしたもので、従来ユーザーもWebからアップデータをダウンロードすることでVersion2にすることができる。

 このバージョンアップにより、GT-PROクラスのCOSMアンプ・タイプ46種類を搭載することができる。さらに、Windows上で利用可能なグラフィカルなリズムエディタもダウンロード可能となる。すでに店頭のBR-900CDはVersion2へ移行しており、価格はオープンプライス、実売65,000円前後となっている。


BR-900CD Version2 Windows上で利用できるリズムエディタも利用可能に



■ Cakewalkブランドの波形編集ソフト「AUDIO CREATOR」


Roland傘下となり、ロゴも「Cakewalk by Roland」となった

 さて、これまでRolandの発表会では3ブランドとなっていたが、今回からはCakewalkブランドが加わった。

 もちろん、従来からCakewalk製品は扱っていたが、EDIROLブランドのラインナップとして用意されていた。それが、Cakewalkのロゴも変更され、Cakewalk by Rolandとなった。1月7日にRolandがCakewalkの株の6割を取得したことが発表され、Roland傘下に入ったためだ。

 そのCakewalkブランドで登場したのが「AUDIO CREATOR」。海外ではPYRO AUDIO CREATORという名称で発表されているものと同じもので、さまざまな機能を持った波形編集ソフトとなっている。


波形編集ソフト「AUDIO CREATOR」

 SoundForgeやSoundEngineといった一般の波形編集ソフトとやや使い勝手が違い、SONARの1トラック分といった雰囲気のものとなっている。オーディオエンジン自体もSONAR7のものが採用されており、内部処理64bitで波形編集ができる。

 最大の特徴はノイズリダクション機能で、iZotopeの「AudioRestore」が採用されている。これはレコードやカセットテープといったアナログ素材を取り込んだ際、無音部分からノイズ成分を解析し、それを取り除くことでノイズリダクションを実現するというタイプのものだ。ヒスノイズ、ハムノイズなどがかなりキレイに取ることができる。またレコードのプチプチいうクラックルノイズや、クリッピングしたブチッというクリップノイズも別パラメータで取ることができる、かなり万能タイプのものだ。

 DirectXプラグインとして収録されているのだが、後日、どの程度の性能を持ったノイズリダクションなのかテストしてみたいと思っている。

 発売は3月末の予定で、価格はオープンプライス。店頭予想価格は7,000円前後となっている。

□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□EDIROLのホームページ
http://www.roland.co.jp/DTMP/index.html
□BOSSのホームページ
http://www.roland.co.jp/BOSS/index.html
□Cakewalkのホームページ
http://www.cakewalk.jp/
□関連記事
【2007年2月13日】【DAL】Roland/EDIROL/BOSSの新製品をチェック
~ NAMM2007出展のミキサーやキーボードなどが登場 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070213/dal269.htm

(2008年2月12日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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