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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第345回:ソニー的オールマイティ「HDR-UX20」
~ 3メディア搭載のビデオカメラ登場 ~



■ 「ハイブリッド」全盛期?

 聞くところによると、スタンダードディフィニションのビデオカメラにおいて、シェア1位は日立なんだそうである。以前からHDDとDVDのハイブリッド機が好調という話は聞いていたが、まさか1位とは思わなかった。

 各社とも「そこかー!」と思ったのかどうかわからないが、先日の2007 International CESでは、各社一斉にハイブリッドモデルが登場した。中でもソニーのAVCHDのDVDモデルは、内蔵メモリを搭載し、さらにはメモリースティックにも動画が撮れるという、「ハイブリッドプラス」として生まれ変わった。

 もちろんDVDに直接記録もできるが、それよりも主体はもはやメモリ記録で、気に入ったところを本体だけでDVDに保存、という流れである。ここに来て、ビデオカメラにおけるDVDメディアの意味が、大きく変わってきている。

 今回はこのハイブリッドプラス機、「HDR-UX20」(以下UX20)をお借りすることができた。2月20日発売予定で、店頭予想価格は13万円前後だという。3メディアを使いこなすビデオカメラとは、一体どのような使い勝手なのだろうか。早速試してみよう。


■ DVD搭載ながらも薄型

 まずはデザインから見ていこう。パッと見て感じるのは、非常に「薄い」というイメージだ。従来のDVDモデルは、高さがあってさらに厚みがあるという印象だったが、ドライブの厚みを感じさせない作りとなっている。


一見普通のDVDカメラだが 後ろから見るとスリムさがわかる DVDドライブは前から開く

 DVDドライブ自体は、メディア部はただ平たいだけだが、回転軸があるので厚み方向もそれなりにあるものだ。だがUX20のドライブ部は非常に薄く、奥行きが必要な回転軸などのパーツを本体内に食い込ませているようだ。特に後ろから見ると、このドライブ部の薄さ感も手伝って、全体的に薄いというイメージを作り出している。

 では光学部から順に見ていこう。レンズは光学15倍というちょっと変わった倍率のズームレンズで、16:9動画撮影時は40~600mm、4:3静止画撮影時は37~555mmとなっている。手ぶれ補正は光学式だ。


レンズはもちろんカールツァイス、フィルタ径は30mmとやや小さめ HDMI端子は前面下部にある


撮影モードと画角サンプル(35mm判換算)
撮影モード ワイド端 テレ端
動画(16:9)
40mm

600mm
静止画(4:3)
37mm

555mm

 撮像素子はクリアビッド配列の1/5インチCMOSセンサーで、総画素数236万画素、静止画の最大画素数は、2,304×1,726ドットの400万画素。さらに今回は、同時撮影の静止画も、フルHDサイズ以上の2,304×1,296ドットが撮影できるようになった。

 今回のCMOSは、デジタル一眼「α700」などに搭載されている「Exmor」の低ノイズ化技術を取り入れたものとなっている。暗部での撮影で、高S/Nが期待できるだろう。

 画像処理エンジンには、これもαシリーズに使われていた「Bionz」を搭載した。大容量画像データの高速処理が可能になったため、以前は動画と同時撮影の静止画は3枚までという制限があったが、今回はこの制限がなくなっている。

 内蔵メモリは8GBで、キヤノンの16GBよりは少ない。だがDVDドライブも搭載しており、画像を退避させるのは簡単だ。撮りっぱなしではなく、マメに映像をいじる人に向けたスペックと言えるだろう。


2.7型ワイドの「クリアフォト液晶プラス」を搭載

 液晶モニタは、2.7型ワイドの「クリアフォト液晶プラス」を採用した。これはサイバーショットで採用された広色域液晶だ。昨今のハイビジョンハンディカムは、広色域撮影のx.v.Colorモードを備えているが、液晶モニタまではx.v.Color対応ではなかった。

 クリアフォト液晶プラスもx.v.Color対応というわけではないが、少なくとも従来よりも広色域をサポートしたことで、撮っている時も綺麗に見えるという点に配慮したものだろう。ただカメラのサイズと比べると、若干モニタが小さすぎるように思う。

 メモリースティックポートは、液晶内側にある。斜めに滑り込ませるように装着するのはユニークだ。一見すると長いメモリースティックが入れられそうな溝があるが、実際にはフタが閉じるので、メモリースティックPROデュオサイズしか入らない。

 装着するのは簡単だが、取り出すときは垂直に出っ張るわけでもなく、ボディラインに沿ってお尻が出てくるだけなので、指でつまめない。上から指で押さえつけながらスライドさせるようにして取り出すことになるわけだが、指が滑って取り出せないこともある。この設計は、あまり良いとは言えないだろう。

 電源とモードチェンジは、これまで同様ダイヤル型スイッチ。高速起動用のクイックオンボタンがあり、これを押すと約1秒で起動する。


メモリースティックはボディに沿って差し込む 背面にクイックオンスイッチがある 電源とAV出力は背面底部に


アクセサリーシューのカバーはスライド式

 上部にはアクセサリーシューがあり、カバーをスライドさせて開くようになっている。これまでシューのカバーは、外すとプランプランしてしまって、外部マイクを付けたときなどは困ったものだが、これなら気軽に利用できる。

 本体マイクは上部にあるが、今回はメニューで5.1chと2chに切り替えられるようになった。5.1chはDVDにするといいのだが、それ以外の用途では編集に困ったりして、善し悪しがあった。また音楽会など、前面からの音以外には必要のない場合は、サラウンド収録しかできないと困ったものだった。このあたりも少しずつ改善のあとが見られる。


■ 写実的な表現の動画


動画の書き込み先指定が今回のポイント

 では撮影である。入学シーズンに備えてそろそろ各メーカーのカメラが出そろいつつあるが、いかんせんこの時期は花が咲くわけでもなく、被写体が寂しいのが難点である。

 UX20では、記録メディアの指定が重要になる。動画の指定は、内蔵メモリとメモリースティック、DVDディスクの指定が可能だ。そのうちメモリー系では、SD解像度の撮影もできる。一方静止画の保存先は、内蔵メモリとメモリースティックのみだ。

 これまでソニーは1,920×1,080のフルHD記録には消極的だったが、今回はフルHD記録モードを備えている。また圧縮も、これまでMainProfile止まりだったが、今回はH.264 HighProfileを採用した。競合他社がこれらのスペックを次々と実現していく中で、後押しされた格好だ。

 画質モードはメモリ記録をふまえて、最高16Mbps記録のHD-FHモードを新設した。DVD記録ではそこまでのビットレートは無理だが、14MbpsのHD-FSモードがある。

動画サンプル
モード ビットレート 解像度 8cm 2層DVD
記録時間
内蔵メモリ
記録時間(8GB)
サンプル
HD-FH 16Mbps 1,920×1,080ドット 55分
ezsm01.mts (22.0MB)
HD-FS 14Mbps 21分
HD-HQ 9Mbps 1,440×1,080ドット 35分 1時間55分
ezsm02.mts (17.6MB)
HD-SP 7Mbps 45分 2時間20分
ezsm03.mts (14.1MB)
HD-LP 5Mbps 60分 3時間
ezsm04.mts (9.37MB)
編集部注:再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 メモリースティックへの記録条件は、内蔵メモリと同じだ。他社のハイビジョンカメラがSD撮影モードを搭載しない中、ソニーのハンディカムはずっとMPEG-2記録のSD撮影モードもサポートし続けている。WEBコンテンツ用などSDで十分なケースや、長時間撮影が必要なケースに対する配慮だろう。

 今回のレンズは、ワイド端は前作と変わらないものの15倍ズームとなったことで、かなり遠景まで狙えるようになった。ただテレ端では、四隅の収差が気になる。中心部の解像度は出ているので、多くの人は気にならないのかもしれないが、ちょっと無理をしている感じがある。

 解像感は寄り目のシンプルな絵柄では出るが、細かいディテールが多い遠景では、もっさりとしてしまう。青空のような平坦な部分は、無理に圧縮しすぎることはなく、ノイズを感じる手前ギリギリのところまでパラメータを攻めている感じだ。

寄りの絵柄では細かい産毛まで見えている 発色はややあっさりしている

 色味に関しては、今回もx.v.ColorをONで撮影している。液晶モニタは広色域になっているが、全体的にモニタの発色はあっさりした色味になっているので、撮影していてややとまどいがある。またタッチパネルなので、液晶に指の脂が付いてしまうのも、結構気になるポイントだ。別売の液晶保護シート(PCK-L27W)を併用した方がいいかもしれない。

動画サンプル

ezsample.m2t (208MB)

ezroom.m2t (32.4MB)
動画撮影サンプル 室内撮影の動画サンプル
編集部注:動画サンプルは、Canopus HQ Codecに変換後、EDIUS Neoで編集し、HDV形式(.m2t)で出力したファイルです。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 今回の目玉機能の一つとして、動画に対応した顔検知機能がある。静止画ではおなじみの機能だが、動画で子供などをフォローするときに、フォーカスや露出の追従性が高くなるのは便利だ。ただ公園で子供を遊ばせているような場合は、そうそう正面ばかり向いているわけでもないので、役に立つケースが少ない。むしろ音楽会のような板付きの舞台で活用できる機能だろう。


■ 同時撮影静止画の使い勝手が向上

 動画と同時撮影の静止画では、無制限の連続撮影が可能になったわけだが、先週のキヤノンHF10では、両方の記録先を内蔵メモリに指定すると、動画の録画終了後に書き込み処理を待たされた。だがUX20では、両方を内蔵メモリに指定しても、撮った直後に7秒弱かけて書き込みを行なう。

 従って動画撮影中に書き込みの7秒間が過ぎてしまえば、すぐに次の設定や撮影が可能だ。これは動画を内蔵メモリ、静止画をメモリースティックに書き込み先を分けても変わらない。

 7秒は長いように思われるかもしれないが、書き込み中の表示が出るので、それほどイライラしない。人は何の表示もなく待たされると、なぜ待たされているのかわからないことにイライラするのである。

 使い勝手の面では、「クイックオン」ボタンが小さく、また微妙に親指では押しにくい位置にあるので、あまり使いやすくない。本気はビューファインダも備えているところから、液晶の開閉だけではクイックモードに移行できないのもわかるのだが、もう少し液晶の開閉アクションから綺麗に繋がる位置に、ボタンがあったほうが良かった。

 ただクイックオンで待機中は、レンズカバーが閉じるようになっている。HF10もそうだったが、徐々にスタンバイ時でもレンズカバーが閉じるように、動作が統一されていくのかもしれない。

 静止画撮影は、動画同時撮影のものより若干黒が締まって高コントラストになるが、色味の傾向はあまり変わらない。解像感は以前より若干抑えめだが、等倍で見ても、鳥の羽の模様のような細かい部分でのモアレが目立たなくなった。このあたりは、トレードオフの関係にあるのだろう。

動画同時撮影の静止画 静止画モードの静止画 細かい模様のモワレも押さえられている

 室内での発色は、フラッシュ撮影だとパリッとした色味だが、フラッシュなしではかなり浅めだ。ただ両方とも黒は良く落ちていて、S/Nは悪くない。

フラッシュ撮影 フラッシュなしで撮影


■ 簡単に編集、ダビングが可能

 続いてダビングなどの機能を見ていこう。UX20は本体でDVDへのバックアップができるのが特徴である。本体のDUBBINGボタンを押すと、メディア間のダビングパターンの選択肢が出てくる。HD撮影したものはAVCHDとして、SD撮影したものはDVD規格で書き込むことになる。

 ダビングの種類としては、全部をバックアップする「バックアップ」、選択したものだけを書き込む「選択ダビング」、日付を選んでその日の映像全部を書き込む「日付ダビング」、プレイリストを作ってそれだけをバックアップする「プレイリスト全ダビング」の4つがある。

 最初は日付ダビングをやろうとしたのだが、撮影数が多いらしく、容量が足りませんとあっさり前の画面に戻された。日付ダビングでは、複数枚にわたるダビングというのを想定していないのだろうか。ちょっとびっくりである。選択ダビングでは、メディア残量を確認しながら追加していける。

まずダビングのメディアを選択 続いて書き込みのパターンを選択 選択ダビングでは、メディア残量が確認できる

サムネイルの拡大表示も可能

 サムネイルの選択操作では、液晶画面が小さいため、指の大きい人では上手く選択できないという点が問題になるが、ズームレバーでサムネイルを4×3から3×2サイズに拡大できる。このあたりもよく考えられている。

 AVCHD規格のDVDライティングでは、ほぼメディア一杯まで書き込んで時間は約8分42秒と、まずまず早い。16MbpsのHD-FHモードの動画は、DVDでの撮影はできないが、ダビングによる書き込みと再生はできる。ファイナライズ時には、3種類のトップメニューが選択できるなど、結構細かい機能を本体に持たせている。

 ソニー機はDVDのライティングやUSB接続時に、いちいちACアダプタを接続しなくてもバッテリで動作できる。出先で書き込んで、そのまま人に渡すといった使い方も可能だ。

クリップ分割も本体で可能

 また簡単な編集機能も、本体に備えられている。クリップを選択して分割できるほか、プレイリストもあるので、必要なシーンだけ抜き出してまとめるといったことも可能だ。あとはプレイリスト全ダビングを作ってDVDメディアに保存、という段取りになる。

 付属の「Picture Motion Browser」を使えばPCでも同様のことができるが、カメラ本体の再生機能を使えば大きなテレビ画面での作業もできるし、日本ではノンPCで完結するソリューションは重要である。12cmメディアにまとめたいときにPCを使うか、あるいは別売のDVDライター「VRD-MC5」を使うということになる。


■ 総論

 UXシリーズはこれまでAVCHDのDVD記録機として続いてきたが、ここで2系統のメモリに記録するビデオカメラに転身した。いやもちろんDVDに直接録画してもいいのだが、容量の面でも無理にDVDを使うメリットはないだろう。

 むしろメモリに撮って、整理したあと8cmDVDメディアに保存できるという点が大きい。これまで8cmメディアは、撮影素材そのものが記録されているだけだったが、不要部分を整理することで容量の少なさもカバーできるだろう。

 メディアとしては両メモリは同じ立場というか、メモリースティックは内蔵メモリの拡張として機能する、と割り切っている。それは内蔵メモリからメモリースティックへ、DVDメディアからメモリースティックへのダビング機能がないことからも、よく現われている。つまりメモリースティックを、動画記録されたリムーバブルメディアとして使うというソリューションはない、と考えているわけである。

 撮影機能としては、レンズの倍率が上がったことで、若干周辺部の収差が気になるようになったが、それよりも倍率が高い方がメリットがあるということなのだろう。小型化したCMOSは、S/Nに不安はないものの、若干色味があっさりしているところが気になるところだ。

 全体的に花鳥風月を撮ってどうこう言うカメラではないが、レンズの高倍率化や顔検知機能を動画に応用したりと、家庭用ビデオカメラとしてオールインワンの、隙のない作りになってきている。

 最近ビデオカメラは、入園入学や運動会のタイミングではなく、出産時に買われるケースが多くなっている。世の若いお父さんお母さんにとって、これだけ買えば保存や配布まで含めて、ほかに出費がいらないのは助かることだろう。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200801/08-0117B/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/handycam/PRODUCTS/HDR-UX20/index.html
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(2008年2月13日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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