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第318回:Rolandの24bit/96kHz対応新PCMレコーダ「R-09HR」
〜 録音品質向上や、リモコン対応など 〜




新モデル「R-09HR」(右)とR-09(左)

 先週、TASCAMのPCMレコーダ「DR-1」を紹介したが、既報のとおり3月13日にはRolandが「R-09」の新モデル「R-09HR」を発表した。

 各社が新たにリニアPCMレコーダの世界へ参入する中、Rolandは「R-1」、「R-09」に次ぐ第3世代。またマルチトラックでも「R-44」、「R-4」、「R-4 Pro」といった製品を出していることもあり、製品としてかなり成熟してきている。

 先日のニュース記事と多少重なる面もあるが、発表会での内容を交えつつ、従来機種であるR-09とどう変わったかなどをレポートしていこう。



■ PCMレコーダの代表格が最新スペックでリモコン対応など

 ミュージシャンの間でもかなり評価が高く、所有率も高いR-09。しかし、SONY、ZOOM、OLYMPUS、TASCAM、KENWOOD……と各社が続々と新製品を投入してきており、2年前に発表されたR-09はその後カラーバリエーションが登場したとはいえ、多少古い感じもしてきていた。

 とくにSONYの「PCM-D50」や、OLYMPUSの「LS-10」など、24bit/96kHzに対応した高品位な製品が登場し、スペック面でも見劣りするようになってきていたが、ついに後継機種、R-09HRが発表された。

 パッと見た目はR-09とソックリにも感じたが、並べてみると多少長くなっているようだ。また、左からKENWOODの「MGR-A7」(近日レポート予定)、R-09、R-09HR、iPod touch、TASCAM DR-1と並べた写真を見ていただくと、大木がわかりやすいだろう。


左からMGR-A7、R-09、R-09HR、iPod touch、DR-1 厚み比較

 厚さではR-09より若干薄くなっていることもあってか、持った感じでは、それほど大きくなったような実感はない。またラバー塗装されているため、黒い部分を触ったときの質感はよくなっている。さらに、有機ELのディスプレイが2倍程度にまで拡大しているため、かなり見やすくなっている。

 R-09からR-09HRへの進化における最大の特徴は、やはり24bit/96kHzに対応したという点だが、サンプリングレートのみならず、さまざまな点が強化されている。

 ユニークな点からあげていくと、IR式のリモコンに対応したこと。一般にリニアPCMレコーダは録音スイッチなどを操作する際に大きなノイズを拾ってしまい、これがかなり耳障りとなるが、リモコン操作によってそうしたノイズをシャットアウトできる。また、高い位置からターゲットとなる音を狙う場合などでもリモコンなら、まったく問題なく操作できる。


ディスプレイは大型化され、見やすくなった リモコンが付属し、本体スイッチに触れずに録音などの操作が行なえる

 本体のメニュー設定でリモコンをENABLEに設定しておくことで、リモコンが効くようになる。リモコンで操作できるのは入力レベルと出力レベルの調整と、トランスポート用としてPREV、NEXT、STOP、PLAY/PAUSE、RECに加え、SPLITがある。SPLIT機能は、本体に追加されているが、これをクリックすると、その場所でファイルが切り分けられる。曲の切れ目などで便利に扱えるだろう。

 リモコン操作時などに便利なのが、2つのマイクの中央部に搭載された赤いLEDだ。従来どおり、RECボタンを1回押すと、RECボタンの周囲が赤く点滅し、再度押すと録音がスタートするとともに、赤く点灯するのだが、それと同時にそのマイク中央部の赤いLEDも点滅、点灯する。また、レベルオーバーしてクリップした際には、従来どおりPEAKインジケータが点灯するとともに、そのLEDが激しく点滅するために遠くからでもすぐにわかるようになっているのも、便利なところだろう。


本体の設定を有効にすることでリモコン操作が可能になる 天面のマイク中央部にLEDを搭載。RECボタン周囲のLEDと同じ点灯をすることで、離れていても録音状況が分かる 従来同様、RECボタン周囲にもLEDを搭載。録音中に点灯する

 本体を固定させたい場合に必要な三脚穴や、マイクスタンドとの接続を可能にするコネクタは、R-09HR本体にはない。他社製品の多くが本体に三脚穴を装備する中、Rolandでも設計段階で検討したようだが、本体強度を出すために三脚穴は見送った模様だ。そのかわり、R-09と同様にオプションの専用カバーを取り付けることで三脚穴が利用が可能となっており、このカバーにはミニ三脚も付属している。

 ただし、R-09とR-09HRは本体の大きさが異なるため、R-09用のカバーは流用できない。さらに、この三脚穴をマイクスタンドに取り付けるためのアダプターも別売されており、これはR-09用にあったものがそのまま利用できる。

 本体には、R-09になかった便利な機能として、背面に小さなモノラルスピーカーが搭載され、ヘッドホンをしなくても、とりあえずどんな音が入っているのかを確認できるようになった。

 OLYMPUSのLS-10はステレオのスピーカー搭載だが、ここがステレオ化されていてもさほど大きな意味は持たないので、これでも十分といえるだろう。


R-09HR本体には三脚穴は用意されておらず、利用には別売の専用カバーが必要 背面にはスピーカーを内蔵。音の確認ができるようになった

 また、Rolandによると今回のR-09HRで非常に力を入れたのが録音品質の向上。残留ノイズレベルを約10dB向上させているという点だ。R-1時代から使われているRolandのIARC(Isolated Adaptive Recording Circuit)という独自開発のアナログ回路をさらにブラッシュアップすることで、残留ノイズレベルを約10dB向上させているのだが、そこに大きく影響しているのは新開発の内蔵マイク。

 従来どおり、外側に120度の角度を持つ形で、比較的指向性の高いマイクとなっているが、このマイク・シャシーを取り付ける際、振動を抑えるためのゴム・ダンパーが搭載されており、これがノイズ軽減に一役買っている。


マイクは外側に120度の向きで配置。指向性は高め 振動を抑えるためのゴムダンパーを搭載し、ノイズを軽減



■ 基本機能はR-09を踏襲しながら、不満点を改善

 基本的な機能や使い勝手は、R-09をそのまま踏襲し、よく使う機能切り替えはリアのスイッチで行なえるようになっているが、これについてもいろいろと強化されている。

 まずはAGC(Auto Gain Control)。R-09ではマニュアルでの入力音量調整かAGCか、という切り替えだったのが、R-09HRでは、さらにリミッター機能も搭載され、AGCにするかリミッターにするかはメニュー画面で設定した上で、そのオン/オフをリアのスイッチで行なう。

 またローカットについてはR-09では単にそのオン/オフの切り替えができるだけだったが、R-09HRでは周波数を100Hz、200Hz、400Hzから切り替え可能となっている。


頻度の高い機能の切替は背面のスイッチで設定可能 リミッタ機能を追加 ローカットは周波数帯の設定も可能となった

 R-09でちょっと気にいらなかったのが、SDカード、バッテリの出し入れをするための蓋の開け閉めがしづらかった点だ。このことを指摘していたユーザーも多かったようだが、これは大きく改善され、SDカード用の蓋はとても開けやすくなった。SDスロットの横にUSBコネクタも搭載され、PCと接続した際、SDカードをUSBマスストレージとして認識される。

 またバッテリ用の蓋は従来SDカード用と兼用になっていたが、今回は独立した。バッテリは従来どおり単3電池2本だが、バッテリ寿命は若干延び、従来の連続録音時間が約4時間だったのが約4時間半となっている。なお、ACアダプタも標準で付属しており、電池を使わないでの運用も可能となっている。


SDカードの蓋が改善され、開けやすくなった バッテリ収納部が独立。連続録音時間は30分ほど向上している



■ R-09を上回る高音質を実現

 R-09HRの発表会では、R-09の発表会と同様にライブ演奏がされ、手渡されたR-09HRで録音してみることができた。今回はソレイユ・カルテットによる弦楽四重奏と、ジャズ・トリオによるジャズ演奏の二演目で、それぞれ演奏者から約2mという近距離で録音を試みた。

 マイクゲインはHighとLowに設定できるが、ここではHighに設定し、レベルメーターを見ながら最大がー6dBを上回らない程度に調整した上で、ローカットが効かない設定で録音を試みてみた。周りで鳴るカメラのシャッター音が気になったが、そうした音もありのままに録音されている。シャッター音はともかくとして、音楽そのものはいずれも、かなりいい音で収録できているのが確認できるはずだ。


ソレイユ・カルテットによる弦楽四重奏の生演奏を録音 ジャズ・トリオのジャズ演奏も生録音。演奏者からは約2mの近距離で録音した

【会場での録音サンプル】
サンプル 1
(弦楽四重奏、PCM、24bit/96kHz)
sample1.wav
(23.0MB)
サンプル 2
(ジャズ・トリオ、PCM、24bit/96kHz)
sample2.wav
(118MB)
編集部注:録音ファイルは、24bit/96kHzで録音した音声をトリミングし、ノーマライズ処理を施して保存したWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 ちなみに、ここに掲載したデータはともに24bit/96kHzでレコーディングした音ではあるが、聴きやすくするためにトリミング処理した上で、最大が0dBになるようにノーマライズ処理を施している。かなり原音そっくりな感じで録音されていて、驚かされる。音質的にも確実にR-09よりよくなっているのが実感できた。

 ただ、1点気になったのがモニター用のヘッドホンの差し込み位置。R-09では右サイドについていたのが、R-09HRでは従来外部マイク接続端子が置かれていた2つのマイクの間の位置に置かれたのだ。

 実際、使ってみて問題にはならなかったものの、ケーブルの動く音をマイクで拾ってしまうのでは……とちょっと気になってしまった。Rolandに聞いてみたところ、R-09でユーザーからヘッドホン位置をサイドではなく上にしてほしいという要望が多くあったことから変更したとのことだ。確かに、iPod的にプレーヤーとして使うのであれば、この位置が使いやすいとは思うが、個人的には、従来の位置の方がよかったと、残念に思った。


24bit/96kHz設定で録音 モニター用ヘッドフォン出力の端子がマイクの間に配置されているのが気になった


メーカー資料のマイクの周波数特性グラフには、20kHzまでしか記載されていない

 メーカー提供の資料を見ると、マイクの周波数特性グラフがあるものの、周波数が20kHzまでしか記載されていない。やはりサンプリングレートが96kHzにまでなったのだから、48kHzまでのグラフがどうなっているか興味があるところだ。

 そこで、さきほどの弦楽四重奏とジャズ・トリオのそれぞれのデータを周波数分析にかけてみた。その結果は20kHz以上もきちんと48kHzまでサンプリングされていることが確認でき、マイク性能的にもしっかりしていそうなことがわかる。

【弦楽四重奏】 【ジャズ・トリオ】

 R-09HRを使って、いつものようにいくつかのテストをしてみた。まずは野外で野鳥の声を捕らえた。鳥がいた位置がR-09HRを構えた位置からやや離れていたためか、よく聴いてみると野鳥の声以外の遠くで犬が鳴く声、遠くの自動車の音、その他のさまざまな生活音などもかなり捕えているのがわかる。

 ただし、R-09もそうだったが、現在のところオプションにおいてもウィンドスクリーンが用意されていないため、風がある日は内蔵マイクで音を捕えるのは厳しそうではある。

【屋外の録音サンプル】
サンプル
(野鳥の声 PCM、24bit/96kHz)
sample3.wav
(13.5MB)
編集部注:録音ファイルは、24bit/96kHzで録音した音声をトリミングし、ノーマライズ処理を施して保存したWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。


録音サンプル : 楽曲(Jupiter)
【音声サンプル】(6.88MB)
楽曲データ提供:TINGARA
編集部注:録音ファイルは、24bit/96kHzで録音した音声をノーマライズ処理し、16bit/44.1kHzフォーマットで保存したWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 CDの音をスピーカーで再生して、R-09HRで録るという実験もいつものように行なった。いつものようにTINGARAのJUPITERを使わせていただいている。

 こちらは、弦楽四重奏やジャズ・トリオのときよりも、さらに大音量を録音することもあって、マイクセンスはLowに設定し、24bit/96kHzでレコーディング。そもそもCDの音を録っているため、96kHzでのレコーディングする意味はあまりないので、後で波形編集によってアンチエリアスをかけて44.1kHzにリサンプリングするとともに、16bitに変換している。

 こちらも周波数分析をしてみたが、以前R-09で試したときよりも、さらに原音のグラフに近づいているように見える。

 ところで、こうした波形編集の処理は、他の機材との比較において条件をそろえるために、Sony Creative Softwareの「Sound Forge」を使っているが、実はそれに相当する波形編集ソフトがR-09HRには添付されている。

 それが、まもなく発売になる「Cakewalk Audio Creator」の機能削減版である、「Cakewalk Audio Creatore LE」だ。SONARのエンジンを使った波形編集ソフトだが、ざっと触った感じでは、製品版とほとんど機能は変わらないようだ。異なる点としては、MP3やWMA、FLACなどへのエンコードを行なうエンコーダが30日の期間制限があることなどだ。


「Cakewalk Audio Creator LE」が付属。MP3やWMAなどに変換するエンコーダは30日の期間制限がある


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□EDIROLのホームページ
http://www.roland.co.jp/DTMP/index.html
□ニュースリリース
http://www.roland.co.jp/news/0373.html
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/jp/R-09HR/index.html
□関連記事
【3月13日】ローランド、24bit/96kHz対応で実売4万円のPCMレコーダ
−ノイズレベルを10dB改善した「R-09HR」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080313/roland.htm
【2006年4月24日】【DAL】Rolandの24bit WAVEレコーダ「R-09」
〜 低価格「生録」の本命。使い勝手/録音品質とも向上〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060424/dal233.htm

(2008年3月17日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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