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第319回:PCM録音できるプレーヤー、KENWOOD「MGR-A7」
〜 16bitながら高音質。“ときどき録音”に最適 〜




MGR-A7

 今回で3回連続のリニアPCMレコーダ記事となってしまったが、今回紹介するのはKENWOODの「MEDIA Keg MGR-A7」だ。2月初旬に発売された製品だが、新製品を優先して紹介していたら、掲載タイミングがちょっと遅くなってしまった。

 MGR-A7はこれまで紹介してきた機材と異なり、レコーダメインの機材ではなく、MEDIA Kegシリーズというポータブルプレーヤーの付加機能としてリニアPCMレコーダが搭載されている。付加機能として実際どの程度の実力がある機材なのか、あくまでもリニアPCMレコーダとして評価した。



■ 本体はバッテリ込みで95g。3マイク搭載

 すでに掲載された新製品レビューでも紹介されているとおり、MGR-A7は高音質再生&PCM録音という1台2役をこなすという機材であり、見た目もスペックも、先週紹介したRolandの「R-09HR」や、その前に紹介したTASCAMの「DR-1」などとはかなり異なる。

 新製品レビューでも指摘されていたとおり、ほかのリニアPCMレコーダがかなり物々しい感じであるのに対し、MGR-A7はスマートなプレーヤー風であるため、威圧感がない。実際、各機種のテストのため、野外に持ち出して野鳥の声などを録音しているが、このMGR-A7なら人に見られても怪しまれそうにないので、安心して使える。いかにもレコーダという機材だと、「この人、何をしているんだ?」と怪しまれそうな気がしてならないが、これなら人からは音楽を聴いているようにしか見えないだろう。


左からMGR-A7、R-09、R-09HR、iPod touch、DR-1 厚み比較


SDカードスロット部

 また、実際に持ってみて感じるのは、とてもコンパクトで軽いという点だ。バッテリが単3電池などでなく、内蔵のリチウムイオン充電池を使うこともひとつの要因だと思うが、バッテリ込みで95gというのはいい。

 レコーディングメディアは、2GBの内蔵メモリのほかにSDカードも利用できるようになっている。気になる点は、やはりリニアPCMレコーダとしてのスペックだ。最近は24bit/96kHzが主流となっている中、このMGR-A7は16bit/44.1kHzと、16bit/48kHzの2つなのだ。これで音質がどうなのかをいろいろな方向からチェックしていこう。

 さっそく録音してみようと、本体の電源を入れてRECボタンを押すが、何の反応もない。やはりAGR-A7は基本的にプレーヤーなので、RECボタンがすぐ使える状態にはないのだ。

 使えるようにするためには、一旦ホーム画面を表示させた上で、録音というメニューを選択する。この状態にして初めてレコーディングモードに入り、録音可能となる。また、録音モードにすると同時にヘッドフォンにはマイクからの音がモニタリングされるようになっている。ちなみにヘッドフォン端子はマイクの反対側、本体底面にある。


ホーム画面 「録音」メニューを選択 ヘッドフォン端子は底面に

 ちょっと変わっているのがこのマイク。本体上部にL/Rの2つとセンターマイクの計3つのマイクが内蔵されており、どれを使うかを背面のスイッチで切り替えられるようになっているのだ。

 具体的にはセンターのマイクだけを使うMONO、L/Rを使う2MIC、そしてすべてを使う3MICの3つ。使ってみると、センターだけが非常に感度が高く、L/Rのみを使う場合と入力レベルが大きく変わるのがわかる。つまり、MONOと3MICの設定の場合、2MICのときと比較して、かなり入力レベルを落とす必要があるのだ。

 スペック上はL/Rが無指向性、センターが単一指向性のマイクということになっているが、センターでもかなり左右の音を拾うので、指向性で考えるよりも感度で考えて使い分けるのがいいというのが実感だ。


3基のマイクを搭載 背面スイッチ


マイク/ライン入力もそれぞれ独立の端子で装備

 また入力レベルはリアのスイッチでMANUALとAUTOの切り替えができる。やはりリニアPCMレコーダを使うのならMANUALにするのが基本であるが、この場合0〜60の範囲で入力レベルを調整することができる。ただ、ほかのリニアPCMレコーダと比較して、2MICの設定の場合、最大の60に設定しても入力レベルがやや小さめに感じる。またマイク感度の設定はないため、小さな音を拾うのはあまり得意ではなさそうだ。一方、MONOか3MICにすると、結構感度が上がるので、これを感度スイッチ代わりとして使うのも手かもしれない。

 なお、今回は使っていないが、マイク入力、ライン入力もそれぞれ独立したステレオミニジャックが装備されている。設定上、とくに内蔵マイクと外部入力を切り替える項目は用意されておらず、デフォルトで内蔵マイクが選択され、ステレオミニジャックを差し込むとそちらが優先される設計になっている。なお、外部マイク入力を使う場合、プラグイン・パワーも利用できるようになっていて、そのオン/オフは背面のスイッチを使う。



■ REC EQでノイズ軽減が可能。音質には限界も

 さっそく、MGR-A7にヘッドフォンをつけた状態で野外に持ち出し、いつものように野鳥の声を録ってみた。WAVの48kHzに設定。これがこの機種の最高の設定となるが、ほかにWMAの64kbps、96kbps、128kbpsの選択もできるようになっている。

 ここでマイクはまずは2MICの設定で行なった。液晶ディスプレイのレベルメーターを見ながら、入力レベルを調整し、最大の60に設定してみたが、音量的にはかなり小さめだ。ただ、そのためか多少の風が吹いていても、その影響は受けないで音を捕えることができる。次に3MICにすると、この入力レベルだとすぐにPEAKインジケータが赤く点灯してしまう。明らかにセンターのマイク感度が違うのを実感する。そこで入力レベルを40程度にまで下げると、結構大きい音で入ってくる。風が吹けば、すぐにその音を拾ってPEAKに達してしまうので、何度もトライしながら風が吹かないときを狙った結果、うまく録音することができた。


「録音フォーマット」からWAV48kHzを選択 レベルメーター画面

 なお、MGR-A7にはREC EQという掛け録りのためのEQが用意されている。デフォルトではオフになっているが、music、vocal、voice、noise cut、low cut1、low cut2の6つの設定が用意されている。noise cutを使うと、ある程度ザワザワしたノイズが軽減できるし、low cutを使うことで、飛行機の騒音なども結構カットできる。モニタしていると、風切り音も軽減されるのだが、インジケータを見ていると、たびたびPEAKが点滅している。つまりEQである程度ノイズは軽減することができるが、リミッターではないから、クリップを避けることはできないということだ。なお、ここでは、EQは使わずに録音を行なっている。


noise cut low cut1 low cut2

 2MICの場合と3MICのときの音の違いを聴いてみてほしい。これまでほかの機材では、24bitでレコーディングし、音を聴きやすくするためにノーマライズ処理をした後、ディザリング処理をして16bit化していたが、ここでは2MICと3MICのレベルの違いを見るために、まったく処理していない音も用意した。また多機種との比較のためにノーマライズ処理をかけた音を用意しているが、MGR-A7の場合、24bitレコーディングはできず、16bitであるため、そのままの状態だ。

 聴いてみるとわかるが、処理前の音を聴くとマイク感度がいい分3MICのほうが音量が大きく、またリアルな音となっている。16bitとはいえ、結構いい音で録れている。ただ、センターマイクとL/Rマイクの感度の差からか、ステレオ感はイマイチ。2MICのほうが、よりハッキリしている。一方、ノーマライズ処理をすると、2MICの音もハッキリと聴こえ、ステレオ感も出るが、分解能が少ないせいだろう、ちょっと音がボケた感じになってしまう。この辺が16bitの限界というところだろう。

【屋外での録音サンプル】
サンプル ノーマライズ前 ノーマライズ後
3MICで録音
(鳥の声 PCM、16bit/48kHz)
3maic.wav
(2.27MB)
3mic_n.wav
(2.27MB)
2MICで録音
(鳥の声 PCM、16bit/48kHz)
2mic.wav
(2.27MB)
2mic_n.wav
(2.27MB)
編集部注:録音ファイルは、16bit/48kHzで録音した音声をトリミングして保存したWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。



■ 16bitレコーダとしては健闘。サブ機としても

 続いて、部屋に戻っていつものようにCDの音を録る実験も行なった、素材もいつものようにTINGARAのJUPITERを使わせていただいている。

録音サンプル : 楽曲(Jupiter)
【音声サンプル】(7.62MB)
楽曲データ提供:TINGARA
編集部注:録音ファイルは、16bit/48kHzで録音したWAVEファイルです。編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 こちらは音量も大きいので3MICは使わず2MICでのレコーディング。三脚穴などがないので、スピーカーの高さとほぼ同じ高さの台の上に寝かせて、L/Rのマイクをスピーカー方向へ向けた上で16bit/48kHzでレコーディングを行なった。

 聴いてみると、16bit/48kHzというスペックの割に、いい音で録れているのがわかるだろう。こちらも通常は、24bitでレコーディングして、ノーマライズ処理をかけているが、16bitのままノーマライズ処理をすると、解像度が落ちてしまうので、そのままにしている。

 ただ、ほかの機材と比較すると、音が若干曇った感じではある。この辺は分解能というよりもマイク性能の問題かもしれない。実際波形を見ても、ピーク値が下がっていることを別にしても、他の機材と明らかに違う周波数特性になっていることがわかる。具体的には12kHz以上あたりからレベルが落ちている。この辺がプレーヤー兼レコーダの限界といったところなのかもしれない。

 と、リニアPCMレコーダとしては、やや厳し目な評価とはなったが、主目的はSupremeが使える高音質プレーヤーで、ときどきちょっといい音で録音したい、というライトユーザーには、本体も軽くて、お勧めできる。16bit/44.1kHz、16bit/48kHzというスペックの機材としては、かなりいい線をいっていると思う。

 一方、とにかくリニアPCMで最高音質で録りたいんだというマニアユーザーには、スペックも音質も物足りなく感じることだろう。とはいえ、サブで録っておく機材としては結構使えるだろう。



□ケンウッドのホームページ
http://www.kenwood.com/jhome.html
□ニュースリリース
http://www.kenwood.co.jp/newsrelease/2008/20080130.html
□製品情報
http://www.kenwood.co.jp/j/products/home_audio/personal/mgr_a7/index.html
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−生録をもっと気軽に。ケンウッド「MGR-A7」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080307/np034.htm
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080130/kenwood.htm
【ポータブル リニアPCM/DSDレコーダ一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080228/pcmrec.htm

(2008年3月24日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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